2025年3月26日(現地時間)- Autodeskは、ビジュアライゼーション、ゲーム、アニメーションのための3Dモデリングおよびレンダリングソフトウェアの最新アップデート 3ds Max 2026 リリースしました。
新機能ハイライト
このリリースでは、デフォルトのマテリアルの刷新からアニメーションワークフローの改善、そして新しい OSL マップの追加まで、幅広いアップデートが行われています。
デフォルトのマテリアルが OpenPBR に
3ds Max 2026 大きな変更点の1つは、新しい既定のマテリアルとして OpenPBR が採用されたことです。
これにより、より物理的に正確なレンダリングが可能となり、現代的なマテリアル表現を標準で利用できるようになります。
OpenPBRは、2023年アカデミーソフトウェア財団によって発表された新しいオープンソースのシェーディングモデルです。AutodeskとAdobeによって作成され、Autodesk Standard Surface と Adobe Standard Material の後継なるべく開発されていたものです。
詳細は以下の記事をご覧ください。
頂点連結モディファイヤがスプラインをサポート
これまでメッシュオブジェクトのみをサポートしていた 頂点連結(Vertex Weld)モディファイヤ が改善され、スプラインオブジェクトのサポートと新たなクリーンアップ機能が追加されました。
■スプラインオブジェクトのサポート
今回のアップデートにより、頂点連結モディファイヤでは、2つのセグメントを持たない開いた頂点を連結することが可能となりした。具体的には以下のようなことが可能となります。
- 開いたスプラインの迅速な修復:破損したスプラインや不完全な形状を効率的に修正できます。
- スプライン配列の一本化:複数のスプラインで構成された配列を、レンダリングや編集が容易な単一のスプラインセグメントに統合できます。
- 3D モディファイヤとの連携強化:連結されたスプラインは、押し出しやベベルなどの 3D 情報を付与するモディファイヤと組み合わせることで、より自然で期待通りの結果を得られます。これは、フォント、インポートされたベクターグラフィックス、ロゴ、建築データといった一般的なスプラインデータに対して特に有効です。
■クリーンアップ操作
モディファイヤが更新され、追加のクリーンアップ操作を実行できるようになりました。
ポリゴンベース オブジェクトの場合、無効な頂点(不要になったが、トポロジを変更するポリゴン操作の結果として発生する古いデータ構造)を簡単にクリーンアップできます。
スタック位置を保持
新しいスタック位置を保持(Preserve Stack Position) の切り替えオプションが追加されました。
この機能を有効にすると、新しいオブジェクトを選択する前に最後に選択していたモディファイヤが記憶され、オブジェクトを選択し直した際に、直前にそのオブジェクトで選択していたモディファイヤにすぐに戻ることができます。
モディファイヤ スタックの下にはトグルボタンが追加されており、オン/オフを切り替えることができます。デフォルトではオンになっています。
この設定は 3ds Max のセッションを跨いでも記憶されるため、頻繁にオブジェクトを切り替えて作業する際に、モディファイヤの選択状態を維持でき、ワークフローの効率化に繋がります。特にオブジェクトを頻繁に切り替えながらモディファイヤを適用するユーザーにとって、非常に便利な機能です。
作成パネルでオブジェクト検索が可能に
作成パネルに、新しいオブジェクト検索ウィジェット が追加され、目的のオブジェクトを素早く見つけられるようになりました。
これにより、多数のオブジェクトタイプの中から目的のものを、タブやドロップダウンを切り替えることなく、キーワード検索で素早く見つけられるようになります。
グローバル検索フィールドの技術に基づいた、以前に使用したオブジェクトの履歴表示や、検索語句のハイライト機能も搭載されており、多数のオブジェクトタイプが並ぶ作成パネルでの作業が大幅に効率化されます。
パフォーマンスの向上
複数のモディファイヤの処理速度が大幅に向上しました。最適化されたモディファイヤは以下の通りです。
- ブール演算(Boolean)モディファイヤ: CARVE 使用時において、3ds Max 2025.3 Update より最大40%高速化。
- 配列(Array)モディファイヤ: 3ds Max 2025.3 Update の最適化と比較して、最大15%高速な処理。
- コンフォーム(Conform)モディファイヤ: シーンの複雑さにより最大40%の処理速度向上。
- ディスプレイス(Displace)モディファイヤ: シーンに応じて最大2.28倍の高速化。
- スキン(Skin)モディファイヤ: ビューポート処理が改善され、アニメーションとタイムライン操作がよりスムーズに。
- 3ds Max Fluids: 処理速度が最大10%向上。
アニメーションの更新
このアップデートでは、ビューポートのパフォーマンスが向上し、アニメーションの再生や操作がよりスムーズになりました。さらに、CAT (Character Animation Toolkit) と Biped のワークフローにも多数の改善が加えられています。
■ビューポートのパフォーマンス向上
マルチスレッド処理の最適化により、複雑なシーンでも高速かつスムーズな操作が可能になり、再生速度も向上しました。
■CAT の修正
モーションレイヤーのクローン作成やコピー&ペーストの安定性が向上し、Trackview の表示が整理されました。また、初期化されていないオブジェクトに関するクラッシュが修正されるなど、全体的な安定性が向上しました。
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- モーションレイヤークローンのオーバーホール: モーションレイヤーを含む CAT リグのクローン作成、またはモーションレイヤーのコピー&ペースト操作で、すべてのサブコンポーネントが含まれるようになり、要素の欠落やソースリグへの意図しない参照がなくなりました。
- フットプリントノードの安定性: モーションレイヤーとフットプリントノードの処理が改善され、クローン作成、レイヤーのコピー&ペースト操作、およびアンドゥ操作中にフットプリントが有効な状態を保つことが保証されます。
- レイヤー貼り付けのリファクタリング: 貼り付けプロセスが再設計され、適切なリンク作成が保証され、ソースリグへの意図しない参照がなくなりました。
- Trackview のクリーンアップ: Trackview でさまざまな CAT コントローラーを選択しても、ランダムで意味のない値が表示されなくなりました。
- 安定性の向上: オブジェクトが部分的にしか初期化されていない場合に発生していた、モーションエディターの UI とクローン作成やアンドゥなどの操作に関連する多数のクラッシュが修正され、これらのクラッシュを防ぐための特定の保護機能が追加されました。
- CAT コントローラーのコールバック修正: コールバックが適切にリッスンされるようにすることで、アンドゥ/リドゥ操作中の CAT コントローラーの動作が改善されました。
■Biped
BIP ファイルのロードが名前マッチングに対応し、アニメーションデータを保持したままリグの変更が容易になりました。追加ボーンの制御も向上し、より柔軟なアニメーション制作が可能になりました。
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- 追加ボーンの制御性の向上: 既存のアニメーションを維持したまま、翼や尾などの追加ボーンを追加および再配置できるようになりました。
- シームレスなワークフロー: 新しい名前マッチングシステムにより、キャラクターリグの更新時にスムーズな移行が保証されます。
- 互換性の向上: BIP アニメーションは引き続き機能し、ゲームやフィルムプロジェクトの適応性が向上します。
- #extraBonesNameMatch オプション: Maxscript 用に追加され、インデックスではなく名前によって追加ボーンのアニメーションをマッチングできるようになり、目的のアニメーション結果が保証されます。
新しい OSL マップ
Open Shading Language (OSL) を利用するユーザー向けに、以下の 3 つの新しいマップが追加されました。
- ペルラージュ(Perlage)マップ: アンティーク時計のような装飾的な円形の溝パターンを生成します。溝の形状や異方性の制御にも対応しており、OpenPBR マテリアルと組み合わせて使用することで、金属表面などのリアルな質感を表現できます。
- フロー マップ変換(Flow Map Transform): 異方性テクスチャの方向を定義するフローマップを、OpenPBR マテリアルが認識できる形式に変換します。これにより、より複雑な異方性効果を簡単に作成できます。
- 番号付きファイル名(Numbered File Name)v2 マップ: 画像連番ファイルの管理を強化するマップです。ファイル名に自動で連番を追加できるだけでなく、再生速度や範囲外の動作を細かく制御でき、アニメーション素材の取り扱いが向上します。ビットマップ タイム コントロール(Bitmap Time Control)ロールアウトと同様のコントロールがあります。
新しい長方形の作成方法
3 点を指定して長方形を作成するという新しい長方形の作成方法が追加されました。
従来の方法ではワールド座標に沿った直角の長方形しか作成できませんでしたが、この新しい方法では、ビューポート上で 3 つの点をクリックすることで、任意の角度で長方形を作成できます。
最初のクリックで始点を決め、次のドラッグで最初の辺の長さと角度を、最後のドラッグで二つ目の辺の長さを指定します。これにより、より自由な形状作成が可能になります。
リトポロジーツールの改良
■リトポロジーツールのアップデート
Retopology Tools がバージョン 1.6 にアップデートしたことにより、基本アルゴリズム ReForm が更新され、処理時間が改善されました。
また、メッシュクリーナー(Mesh Cleaner Modifier )もアップデートされ、追加のクリーンアップを実行することができるようになりました。
インストール手順を見る
このバージョンのプラグインは、3ds Max 2023、2024、2025、および 2026と互換性があります。
Retopology Tools をインストールする方法は以下の2つです。
方法①Autodesk デスクトップ アプリ:
- Autodesk デスクトップ アプリを開きます。
- 必要に応じて、アカウントにログインします。
- 左側で 3ds Max カテゴリを選択します。
- リストを下にスクロールして、[Autodesk Retopology tools for 3ds Max]を選択します。
- [インストール] (Install)をクリックします。
方法② オートデスク ポータル:
- manage.autodesk.com で Autodesk Account にログインします。
- リトポロジ ツールのインストーラ(MSI)にナビゲートします。
- インストーラをダウンロードして、手動でインストールします。
■Flow Retopology ジョブの増加
Flow Retopology は、2025.2アップデートで追加された機能で、リモートクラウドコンピューティングを利用してリトポロジー処理をすることができるツールです。
このアップデートでは、Flow Retopology ジョブの実行回数が月あたり50個に増加し、より頻繁にリトポロジー機能を利用できるようになりました。
また、Flow Retopologyは、3ds Max 2026 のインストールに含まれるようになっています。
USD for 3ds Max 0.10
Universal Scene Description (USD) のサポートもバージョン 0.10 にアップデートされ、新しい Layer Editor が導入されました。
これにより、USD レイヤの管理がより直感的かつ容易になり、大規模なシーンやパイプラインでの作業効率が向上します。
他にも以下のような機能が追加されています。
- USD for 3ds Max 0.10 では Layer Editor が導入され、USD レイヤをより効率的に処理できるようになりました。
- ライト リンクのサポートが追加され、シーン内のライトとオブジェクトの関係をより詳細に制御できるようになりました。
- USD プラグインが 3ds Max にバンドルされ、インストールが合理化され、USD 機能をすぐに使用できるようになりました。
- USD エクスプローラでクラス プリミティブを表示するオプションが追加されました。
- USD BasisCurve をビューポートに表示できるようになりました。
より詳しい情報はUSD for 3ds Max v0.10.0 リリース ノートへ
Arnold for 3ds Max 5.8.0
Arnold 7.4.0.0 Core が導入された MAXtoA 5.8.0 が付属しています。
プラグインの機能強化により、ワークフローの効率性と安定性が向上しました。MAXtoA プラグイン自体の新機能は以下の通りです。
- マテリアルとマップの分離選択:Arnold RenderView の分離選択が、オブジェクトとライトだけでなく、マテリアルとマップにも対応しました。Arnold RenderView でマテリアルやマップのみを分離してレンダリングできるようになったため、複雑なシェーダーツリーのデバッグがしやすくなります。
- MAXtoA ツールバーの改善:Arnold RenderView の操作性が向上し、レンダリング状態のフィードバックがより明確になりました。
- ASS エクスポートの最適化:不要なレンダー領域の情報が ASS ファイルにエクスポートされなくなり、ファイルサイズが削減されます。
- 指向性 Arnold ライトのビューポート表示:指向性 Arnold ライトをビューポートのカメラビューとして使用できるようになったため、ライティングの調整が直感的になります。
- Arnold RenderView の安定性向上:Arnold RenderView の起動に関連するコードが改善され、安定性が向上。
- ライセンス失敗時の強制終了のデフォルト設定:ライセンス認証に失敗した場合のデフォルトの挙動が修正されました。
- Alembic プロシージャルのモーションブラー制御:Alembic ファイルのモーションブラーのサンプル数を Arnold 側で制御できるようになり、パフォーマンスの最適化が可能になります。

また、次のようなUSD機能の強化も行われています。
- USD ステージ オブジェクト プロシージャルでの「Hydra」モードの使用がオプションになりました。MAXtoA 5.7.8.0 で導入された Max USD ステージ オブジェクトでの Hydra モードの使用は、新しいオプションレガシー移動モード(Legacy Translation Mode)をオンにすることでオフにできるようになりました
- ステージ オブジェクトのプロシージャルで、Hydra モードを既定で設定: Max USD ステージ オブジェクトで Arnold Hydra モードが使用されるようになり、互換性とパフォーマンスが向上しました。
Arnoldコアのアップデート内容は以下の記事をご覧ください。v7.3.5-v7.4.0が今回の新機能となるかと思います。
その他
- Substance 3.0.5:3ds Max 向けの Substance 統合機能がバージョン 3.0.5 に更新されました。これにより、Substance Designer で作成された高度なマテリアルを 3ds Max 環境内でよりスムーズに利用できるようになります。詳細は更新されればこちらから確認することができるようになるはずです。
- スキンモディファイヤの重みをペイント(Paint Weight)のホットキー:新しいホットキー [B] が追加され、スキン ウェイトのペイントモードのオン/オフを切り替えられるようになりました。
- カラー管理:
- OpenColorIO (OCIO) モードを使用している場合、ガンマエンコードされたファイル形式とその他のファイル形式に対して、レンダリング出力トランスフォームの設定を個別に行えるようになりました。
- イメージ ファイル リスト (IFL) を使用する際のカラー管理が改善されました。画像を開いたり保存したりする際に [自動] オプションを選択すると、3ds Max の設定に基づいて、各ファイルに適切なカラースペース変換が個別に適用されます。
- OCIO ベースのカラー管理を使用する環境でのネットワーク レンダリングに関する多くの問題が修正され、安定性が向上しました。
- OpenColorIO のバージョンが OCIO v2.4.1 にアップデートされ、最新の機能と改善が利用できるようになりました。
- コンポーネントの更新:VFX リファレンス プラットフォームと一般コンポーネントも以下のように更新されました。
- Python 3.11.9
- OpenEXR 3.3.0
- OpenImageIO 2.5.111
- Cloth 2.3.0.61
- CivilView 1.2.4
- Security Tools 2.1.8
- Studio メニューのカスタマイズ:環境変数
ADSK_3DSMAX_CUI_PRE_USER_CONFIG_%Major_Version%
を使用することで、評価パイプラインから 3ds Max に独自のカスタム メニューを Studio メニューに挿入できるようになりました。 - ATF の更新:ATF (Autodesk Translation Framework) ファイルが、SketchUp 2024 および NX 2406 モデルをサポートするようになりました。
- ホットキーとメニュー エディタの機能強化:ホットキーとメニュー エディタの操作性が向上し、より効率的なカスタマイズが可能になりました。
- ホットキーとメニュー エディタの両方で、標準的な Qt の操作であるマウスの左クリックと [Ctrl] キーまたは [Shift] キーを併用した複数選択がサポートされました。これにより、アクションリストとメニューツリー内で複数の項目を同時に選択し、まとめて削除したりコピーしたりできるようになりました。
- メニューおよびホットキー エディタに、[列による検索] フィールドが追加されました。この検索フィールドを使用することで、アクションの名前だけでなく、そのアクションが属するグループやカテゴリに基づいてメニュー項目やホットキーを検索できるようになりました。
- .Net 8 の更新:サポートされる .NET のバージョンが、バージョン 8 になりました。
価格とシステム要件
3ds Max 2026は、64ビットWindows 10,11で利用することができます。
より詳しいシステム要件の確認はこちらから
価格はサブスクリプション形式で、36,300円/月、286,000円/年、858,000円/3年となっています。42,900円/100トークン(24時間ごとに6トークン消費)からの従量課金制のFlexオプションも利用可能です。
また、3ds Max 2025は、AutodeskのMedia & Entertainment Collectionの一部としても利用可能です。
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さらに、条件にあてはまる方は 47,300円/年のIndieライセンスを購入することが可能です。
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