生成AIとノードベース合成を統合したAIコンポジットツール「Beeble Canvas」

CGソフト

映像制作向けAIプラットフォームを展開するBeebleの共同創業者であるHoon氏より、次世代のAIコンポジットツール「Canvas」が発表されました。 

開発の背景

近年、AIによる映像・画像生成は驚くほどのスピードで進化し、毎月のように新しいモデルが登場しています。しかし、プロの VFX、ポストプロダクション、バーチャルプロダクションの現場では、アセットを「生成する」こと自体は課題の一部にすぎません。真に難しいのは、生成したアセットを既存のパイプラインに統合し、複数回のフィードバックを経て微調整し、シーケンス全体で整合性を保ちながらプロ品質で仕上げることにあります。

従来のワークフローでは、さまざまな AI モデルや合成技術を組み合わせるために複数のアプリケーションを行き来する必要があり、作業が断片化しやすく、管理も複雑になりがちでした。

「Beeble Canvas」とは

Canvas は、こうした現場で直面する課題を解決するために開発された、生成 AI の高速な処理能力と従来のノードベースワークフローの精密なコントロール性を融合したコンポジット(合成)ツールです。

映画製作者、VFX アーティスト、ポストプロダクション、広告代理店、コンテンツクリエイター、ビデオエディターなど、プロフェッショナルが求める高度な映像制作を一つの環境で完結できるよう設計されています。

Canvas は「Beeble のすべての AI モデルを単一のワークスペースに統合した強力なノードグラフ・エディター」と位置付けられており、単なる中間素材の生成にとどまらず、Raw 素材のインポートからノードネットワークの構築、そしてプロダクション品質の最終レンダリングまで、全工程を一貫して実行できる点が大きな特徴です。

ユーザーは、SwitchX、Image Generator、Video Matte などのツールをノードとして接続し、プロジェクトに応じた独自の処理パイプラインを構築できます。また、任意のステップからノードを分岐させ、複数のクリエイティブバリエーションを並行して作成・比較できる柔軟性も備えており、入力から最終出力までクリエイターが完全なコントロールを維持できます。

反復作業の効率化

クリエイティブのプロセスが常に一直線に進むことはほとんどありません。Canvas では、再利用可能なノードグラフを構築し、複数のバリエーションを生成して比較したり、ワークフローをバッチ処理したりすることができます。修正のたびにパイプラインを一から組み直す必要はなく、柔軟に試行を重ねながら制作を進められます。

上記の例(One Plate, Infinite Skies)では、 単一の素材から空と照明を柔軟に入れ替えています。

すべてのステップは可視化され、いつでも編集可能な状態が保たれます。これにより、プロが求める精密なコントロール(非破壊編集)を維持しながら、実験的な試行錯誤を素早く行うことができます。

上記の例(Golden Hour Drive)では、単一のグラフ内でリライト(再照明)とカラーグレーディングを反復調整しています

主な搭載機能とノード

Canvasは、前述のような高度なワークフローを実現するため、様々なAIモデルと従来の編集ノードをシームレスに組み合わせて作業を進めることができます。

生成AIツールとモデル

グラフ内に直接AIツールを組み込むことで、外部ツールを行き来することなく高度な処理が可能です。オープンなプラットフォームとして設計されており、最適なモデルをシームレスに組み合わせることができます。

  • ジェネレーティブコンポジット: ビデオからビデオへの変換を行うBeeble独自のモデル「SwitchX」や、ノーマルマップなどのPBR(物理ベースレンダリング)パスを生成するSwitchLightを搭載した「VFX Pass Generator」をノード内で直接利用可能です。
  • Video Matte(AIロトスコープ): MatAnyoneやCorridor Keyといった技術を採用。保持したい被写体を選択するだけで、瞬時に分離(ロトスコープ)が行えます。
  • LLM・画像生成 / 動画生成: グラフ内で直接、テキストや画像、映像の生成が可能です。LLMノードやImage Generatorに加え、Video GeneratorとしてSeedance 2.0、Kling 3.0、Happy Horse、Nano Banana、GPT-2、Fluxなどの主要モデルがネイティブ統合されています。
  • Camera Angle (Qwen): 一つのコンセプト静止画から、異なるカメラアングルを再レンダリングする専用ノードです。
  • Depth Generator: Video Depth Anythingを活用し、映像から深度マップ(デプスマップ)を抽出します。

ハイブリッド合成のための編集ノード

生成AIの出力結果をコントロールし、最終的な絵作りを行うための基本的なコンポジット機能も充実しています。

  • マスク・アルファ制御: Erode / Dilate(エッジの収縮・膨張によるマットのクリーンアップ)や、RGBソースとアルファマットを結合する「Merge Alpha」、色調を反転させる「Invert」などを備えています。
  • 合成(Merge): 16種類のブレンドモードを使用して、前景と背景の合成を行います。
  • Compositor(コンポジター): After Effectsのようなレイヤーベースの編集を可能にするノードです。レイヤーごとのブレンドモード、不透明度、タイミングを制御でき、背景プレートとロトスコープ映像を任意の場所に配置してシーンを構成できます。
  • 基本操作と色調補正: Trim(トリミング)、Crop(切り抜き)、Resize(サイズ変更)、Extract Frame(フレーム抽出)といった必須の操作に加え、Curves(トーンカーブ)、Flip(反転)、Blur(ぼかし)、Channels(チャンネル操作)によるピクセル単位の詳細な制御が可能です。
  • Paint(ペイント): ペンと消しゴムを用いたフリーハンド描画機能で、描画結果とマスクの両方を出力します。

ワークフローを支えるユーティリティノード

プレビューやA/B比較、エクスポートを行う「Viewer / Compare / Export」のほか、ノードグラフの整理を行う「Router / Sticky Note」、複数のプロンプトをバッチ処理する「Text Iterator」が用意されています。

実践事例:マルチカム・グリーンスクリーンの合成

発表動画後半では、従来であれば手作業による面倒なロトスコープや、複雑な3Dカメラトラッキングが必要となる「マルチカムのグリーンスクリーン素材」を用いた実践的なワークフローが紹介されています。 Canvasの「AIファースト」なアプローチでは、以下のようにAIモデル(SwitchX)を2段階で活用しています。

Introducing Canvas | The Next-Gen AI Compositor
  1. マット抽出と背景の準備: まず、背景のトラッキングマーカーをあえて残した状態でビデオマットを抽出します。背景は「Nano Banana」で生成し、シーンの連続性を保つために「Camera Angle」ノードを使用して両方のアングルに合わせて画像を回転・調整します(仕上げにGPT Image 2でリアリズムを向上させます)。
  2. 1回目のSwitchX(カメラトラッキング): ショットをSwitchXノードに入力します。この時、マットに残しておいたマーカーがAIのコンテキストとして機能し、元のカメラの動きに追従した自然でシームレスな背景が生成されます。
  3. 2回目のSwitchX(マーカーの消去): 映像からマーカーを消去するために、少し広め(loose)に反転させたアルファマスクを使用して再度SwitchXを実行します。広めのマスクを使用することでインペイント(修復)の精度が上がり、綺麗なショットに仕上がります。
  4. シーンの統合: 2つ目のカメラアングルに対しても同じプロセスを繰り返し、最後に両方のクリップを「Compositor」ノードに接続して、単一のタイムライン上でシーン全体の配置とプレビューを行います。

価格とプラン

Beeble Canvasは、個人クリエイターからスタジオ規模のチームまで、用途に合わせた3つのプランが用意されています。用途に合わせて月額払いと年額払いから選択可能です。

プラン名月額払い
(1ヶ月分)
年額払い
(月換算)
付与クレジット主な機能・特徴
Creator$19$16(年間契約で16%オフ)540 / 月SwitchX / Background Remover
VFX Pass Generator(バッチ対応)
Beeble Editor
商用利用可
Professional$75$60(年間契約で20%オフ)2,400 / 月Creatorの全機能
連番画像のアップロード対応
Team$100/ 1シート$83/ 1シート3,000 / 月(1シートあたり)請求の一元化 / 共有クレジットプール
チーム管理機能
※Beeble Editorは個人環境のみ

今後の展開

Beeble Canvasは現在、Beeble Webアプリにて利用可能となっています。

 同社は今後も、プロフェッショナル向けに新しいノード、ワークフロー、チュートリアル、そしてテンプレートを継続的に追加していく予定としています。 詳細な技術仕様については、公式のドキュメントページも併せてご参照ください。


Launching Canvas: AI Compositing for Production

コメント

Translate »
タイトルとURLをコピーしました