2025年3月11日(現地時間)- Adobe は、3Dテクスチャペイントソフトウェアの最新アップデート Substance 3D Painter 11 をリリースしました。
新機能ハイライト
Substance 3D Painter 11.0 では、新しい自動リソース更新ワークフロー、塗りつぶしパスツール、およびパスに関する全般的な改善が追加されました。
さらに、ベイキング用の自動ケージ機能や、スタイライズドテクスチャを作成するための新しいフィルターが複数追加されています。
リソースの自動更新
ライブラリやプロジェクトを最新のリソースに自動で更新できるようになりました。
新しい自動更新ワークフローにより、Painterがディスク上のリソースを監視し、変更を検知するとライブラリやプロジェクトに自動的に再読み込み・置き換えを行うことができます。
この新しい自動更新機能では、以下のことが可能です。
- アセットウィンドウでの自動更新の有効化:アセットウィンドウの右下に、新しい自動更新システムの設定ボタンとメニュー(小さな二重矢印アイコン)が追加されました。このオプションを有効にすると、アセットパネルがライブラリを監視し、自動で再読み込みを行います。
- プロジェクト内のリソース更新:リソースを再読み込みしても、レイヤースタック、表示設定、シェーダー設定などのプロジェクト内で使用されているバージョンは自動更新されません。これを有効にするには、「プロジェクトで使用されているリソース(Resourses used in project)」オプションをオンにしてください。
- 更新頻度の設定:Painterがリソースの更新をチェックする頻度を分単位で設定できます。0分に設定すると数秒ごとに更新を確認しますが、パフォーマンスに影響を与える可能性があります。アプリケーションのウィンドウがフォーカスを取り戻した際にも自動的に更新されます。
- 手動でのリソース更新:自動更新プロセスを待たずに、アセットウィンドウの自動更新メニューの下部にある専用ボタンを使用して手動で更新をトリガーできます。
- 不一致やエラーのログウィンドウ表示:リソースを更新すると、特に旧バージョンと新バージョンの違いが大きい場合、問題が発生する可能性があります。例えば、Substanceリソースのパラメータが変更または削除されることで、テクスチャリングの結果が大きく変わったり破損したりする場合があります。そのため、「パラメータが一致しないアセットをスキップ(Skip asset when their parameters mismatch)」オプションがデフォルトで有効になっています。問題が発生した場合は、ログウィンドウに報告されます。強制的に更新したい場合は、この設定を無効にしてください。
- Python APIによるプロジェクトメンテナンスの自動化:自動更新ワークフローはPython APIにも統合されました。新しい関数が追加され、古いリソースのリスト表示や置き換えが可能になりました。
新しい塗りつぶしパスツールの強化
新しいタイプのパスツール、塗りつぶしパス( filled path )ツールの追加に加えて、パスツールの使い勝手の改善が行われまました。
新しい塗りつぶしパスツール
このツールを使用すると、閉じたパスの内側を均一な色で塗りつぶすことができます。塗りつぶしは、テクスチャセットの各チャンネルごとに適用されます。
この新しいパスツールは以下のような機能を備えています。
・表面に自動適応

塗りつぶしパスツールは、平面だけでなく、あらゆる種類の表面に適用できます。オブジェクトの境界をまたいだり、ギャップをまたいだ形状も作成可能です。
・ミラー対称・放射対称に対応

対称プロパティをサポートしており、複雑な形状の作成がより簡単になりました。
・パスツールの切り替えが簡単に
プロパティウィンドウに新しい切り替え機能が追加され、異なるパスツール間の変更をスムーズにできるようになりました。例えば、アウトラインパスを作成し、それを複製して塗りつぶしパスに変換することで、簡単にアウトライン付きの形状を作成できます。
パスツールの改善
このバージョンでは、パスツールの使い勝手を向上させるための多数の改善が行われています。
・パスプレビュー機能 (Shift+P で切り替え)
パス編集時、新しい点を追加すると、パスがどのように変化するかを示す点線プレビューが表示されるようになりました。このプレビューは、設定メニューまたは Shift+P のショートカットで無効化できます。
・直線と角度スナップ機能
Shiftキーを押しながら クリックすると、自動的に直線を作成可能
Ctrlキーを押しながら クリックすると、角度スナップ機能が有効になり、幾何学的な形状の作成が簡単に
・パスのポイントをメッシュにスナップ
スナップ機能 (磁石アイコン) を有効にすると、3Dモデルの頂点やエッジにポイントを配置しやすくなります。
スナップモードは以下の3種類が利用可能:
- 頂点にスナップ
- エッジにスナップ
- エッジの中心にスナップ
これらの設定はパス設定メニューで変更できます。
・自動クローズ機能
塗りつぶしパスツールでは、最初の頂点をクリックすると、自動的にパスを閉じるようになりました。
Ctrlキーを押しながらクリックすると、閉じずに選択だけを行えます。
・視点の角度に応じたタンジェント編集の改善
カメラの角度によっては、カスタムタンジェントの編集が困難になることがありましたが、今回のアップデートでタンジェントが適切な平面に制約されるようになりました。
・パスの位置をコピー&ペースト可能に
マテリアルモードで作成したパスをコピーし、その位置をマスクにペーストできるようになりました。これにより、異なるマテリアルやマスク間でパスを同期できます。
・表示UIの改善
ビューポートのマニピュレーターショートカット (W, S, D) を使用すると、パスの表示を即座に切り替え可能になりました。パスのカーブやポイントはそのまま表示されるため、作業のしやすさが向上しました。
・パスの頂点に対する回転・スケールの適用
複数の頂点を選択した状態で、回転・スケールが適用できるようになりました。これにより、頂点の調整や整列が簡単になります。
・パス情報をプロパティウィンドウに表示
パスツールを選択すると、プロパティウィンドウにパスの長さや投影深度などの情報が表示され、ツールの切り替えも可能になりました。
・パスリストの保持
異なるレイヤーやエフェクトを切り替えても、パスパネルが閉じないようになりました。
・選択中のパスにフォーカス
Fキーを押すと、3Dモデル全体ではなく、現在編集中のパスにズームインするようになりました。
・パスの削除が簡単に (Backspaceキー対応)
Backspaceキーで素早くパスを削除可能に。
新しいフィルターとテクスチャジェネレーター
以下のような新しいフィルターとプロシージャルパターンが追加されました。
新しいフィルター

・Stylization
既存のテクスチャに対して、3D空間でのブラシストロークをシミュレートし、ペインタリーな見た目を作り出せる新しいフィルター。複数のプリセットが用意されており、簡単にスタイライズできます。

・Quantize
画像の色数を削減し、フラットな領域を作成できるフィルターです。スタイライズ用途にも使用可能です。

・Anisotropic Kuwahara
ノイズリダクションやスタイライズに適用できるKuwaharaフィルターが追加。

・Directional Distance
2D空間でピクセルを特定の方向にストレッチできるフィルターです。ブラシストロークのぼかしや、リーク効果の作成に便利です。

・Bevel Smooth
既存のBevelフィルターが改良され、よりスムーズでコントロールしやすい形状を生成できる新しいフィルターが追加。
・Grayscale Conversion
画像やチャンネルをグレースケールに変換するフィルターで、RGBチャンネルごとに影響を調整可能です。
新しいテクスチャジェネレーターとノイズ

・Scratches Generator
細い糸のような傷をランダムに生成できる、新しいスクラッチジェネレーター。
・Triangle Grid
三角形を接続したパターンを作成するノイズで、ランダム性や滑らかさを調整可能です。
・Tile Random
タイルパターンの作成に特化したテクスチャジェネレーター。
・Voronoi & Voronoi Fractal Noises
これまで3Dノイズとして利用されていたVoronoiノイズが2Dバージョンとして使用可能に。タイルやUVスペーステクスチャ向けに最適化されています。
・最新のノイズバージョンを統合
Substance 3D Designerの最新バージョンに基づいたノイズが追加され、ノイズのパラメータが直接編集しやすくなりました。
自動ケージ生成機能(実験的)

ハイポリメッシュをローポリメッシュにベイクする際に利用することができる、新しい自動ケージ生成モードが追加されました。
このモードを利用すると、アーティファクトを回避する最適なケージメッシュを自動生成できます。
なお、この機能はまだ実験的なもので、今後さらに改善が予定されています。
■ベイク時の新しい設定
ベイクの共通設定内のケージパラメータが以下の3つのオプションに変更されました。
- Distance-based:従来のフロント/リア距離設定
- Automatic(実験的):新しい自動ケージ
- Custom file:カスタムメッシュファイルを使用

新しい統合エクスポートウィンドウ
他のアプリケーションに簡単に送信できる「Send To」アクションが、専用ウィンドウに移動し、アプリケーションの右側にある Dock ツールバーから利用できるようになりました。
Mac OS Metal対応
■Mac で OpenGL の代わりに Metal グラフィック API を使用
このバージョンから、Painter は Mac でビューポートのレンダリングとテクスチャの計算の両方に Metal グラフィック API を使用するようになりました。
この変更により、アプリケーションのパフォーマンスと安定性が大幅に向上しました。また、MacOS では OpenGL が非推奨になったため、将来的に新機能の統合も容易になります。
■Intel Macのサポート終了
このアップデートより、Intel CPU 搭載の Mac との互換性が廃止されました。Apple Silicon(M1, M2など)のみ対応となります。
その他
- 塗りつぶしレイヤー/エフェクト(Fill Layer/Effect )のデフォルト設定変更:新規の塗りつぶしレイヤー/エフェクト作成時、デフォルトでBase Colorチャンネルのみが有効になるようになりました。(この変更は、それ自体を塗りつぶしレイヤー/エフェクトとして作成するリソースをドラッグ&ドロップした場合には適用されません)。この変更により、不要なチャンネルの計算を回避し、高解像度やUVタイル作業時のパフォーマンスが向上します。すべてのチャンネルをすばやく有効にするには、ALTキーを押しながらBase Colorボタンをクリックしてください。
- UVタイルのカスタム名設定:テクスチャセットリストウィンドウでは、UVタイルにカスタム名を直接設定することはできません。しかし、エクスポートプリセット内で専用タグ
$uvTileName
を使用することで、カスタム名を取得できます。 この新機能により、UDIM番号を特定の名前に置き換えてエクスポートすることが可能になります。。
- コピー&ペースト時の命名規則の改善:レイヤーやパスをコピー・ペーストした際の命名がより一貫性のあるものになり、予測しやすくなりました。
Steamに月額サブスクリプションが登場
SteamにSubstance 3D Indieサブスクリプションという名前の月額サブスクリプション(2800円/月)が登場しました。
このサブスクリプションでは、Substance 3D Painter、Substance 3D Designer、Substance 3D Modelerの最新バージョンを利用することができ、さらにSubstance 3D Assetsプラットフォームから厳選された以下の内容の1000点の3Dアセットアクセスすることが可能となっています。(追加のダウンロードが必要)
※Substance 3D Assetsプラットフォームと生成AI機能への無制限アクセスは、Adobeを通じてのみ利用可能で、Steam版には含まれていません。
- 627種類のパラメトリックSubstanceマテリアル:Substance Designerのグラフを利用でき、世界最高のSubstanceアーティストがどのようにマテリアルを作成しているかを知ることができます。
- 373種類のすぐに使える3Dモデル:クリーンでSub-D対応のトポロジーとユニークなUVを備えて3Dモデル。

Substance 3D Indie – Free additional content ページへ
価格とシステム要件
Substance 3D Painterは、Windows 10 (64bit)以降、macOS 11 Big Sur以降、Linuxで利用できます。
より詳しいシステム要件はこちらから
Adobe Substance 3D Painterは、Adobe Substance 3D アプリのサブスクリプションプランに含まれています。
- Adobe Substance 3Dテクスチャリングプランには、Painter、Designer、Samplerアプリと、毎月30点の3Dアセット、100GBのクラウドストレージ、25 – 毎月の生成クレジットが含まれています。
- Adobe Substance 3D Collectionプランには、Painter、Designer、Sampler、Stager、Modelerアプリと、1か月あたり最大50の3Dアセット、100GBのクラウドストレージ、25 – 毎月の生成クレジットが含まれています。
- グループ版Adobe Substance 3D Collectionプランには、5つのアプリ、毎月ユーザー1人あたり100点の3Dアセット(グループ内プール可能)、1TBのストレージ、とライセンス管理や高度なサポートが含まれています。
価格は次のようになっています。
Adobe Substance 3D テクスチャリング | 月々プラン月々払い | 2,680円 |
年間プラン月々払い | 29,980円 | |
Adobe Substance 3D Collection | 月々プラン月々払い | 6,680円 |
年間プラン月々払い | 6,480円 | |
年間プラン一括払い | 74,380円 | |
グループ版 Adobe Substance 3D Collection | 年間プラン月々払い | 13,380円 |
年間プラン一括払い | 160,564円 |
※2025年3月25日より価格が上昇します。購入を検討している方は価格上昇前に購入するようにしましょう。
Substance 3Dは、大学・高等教育機関向けCreative Cloudコンプリートプラン(小中高校は対象外)に含まれており、追加料金なしで利用できます。高等教育機関向けプランにアセットは含まれていません。
Substance 3D Collection アプリは、高等教育機関の学生と教師が無料で利用できます。(非営利、教育目的での使用のみ)
■Steam版ライセンス
Adobe Substance 3D Painter はSteamでも購入可能です。
このアップデートに合わせて Substance 3D Painter &Designer 2025 がSteamで利用可能になりました。
また、前述したように今年のリリースから月額サブスクリプションが登場しています
価格は、個別の買い切り価格が22,000円(Modelerは16500円)です。
Painter、Designer、Modelerが利用可能な Substance 3D Indie サブスクリプションが2800円/月です。
※スタンドアロン版(個別の買い切り)をご購入の場合は、2026年3月まで無償で機能アップデートが受けられるようです。
Adobe Substance 3D Painter Steam ページへ
コメント