3月18日、AppleはLiDARスキャナを搭載した新しいiPad Proを発表しました。
iPad Proのために作られた新しいMagic Keyboard、A12Z Bionicチップのパフォーマンス、Proディスプレイなど気になる性能は多くありますが、そのなかでもLiDARスキャナに注目してみたいと思います。
LiDARについて
LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)は、光を用いたリモートセンシング技術の一つで、パルス状に発光するレーザー照射に対する光を測定し、遠距離にある対象までの距離やその対象の性質を分析するものです。レーダーに似ており、レーダーの電波を光に置き換えたものである。対象までの距離は、発光後反射光を受光するまでの時間の差で求まる。(Wikipediaへ)
簡単に説明すると機械を用いて光を照射、物体にぶつかって返ってきた光を測定して対象までの距離や性質を調べるというものです。
今日では、自動車などの自動運転技術として注目されています。またクローンでの地形測量でも使われたり、速度超過に対する交通取締(いわゆるネズミ捕り)用としてレーダーの代わりに用いられることもあるようです。
LiDARで測定した情報から次の動画のような都市の3Dモデルも作成することも可能です。
LiDARスキャナを搭載した新しいiPad Pro
Appleの発表によると
画期的なLiDARスキャナ
画期的なLiDARスキャナが、これまでどのモバイルデバイスでも不可能だった機能を可能にします。LiDARスキャナは、最大5メートル先の周辺の対象物までの距離を計測し、屋内でも屋外でも使うことができ、ナノ秒のスピードで光子レベルで動作します。iPadOSの新しい深度フレームワークは、LiDARスキャナが計測した深度ポイント、両方のカメラとモーションセンサーからのデータを組み合わせ、さらにA12Z Bionicのコンピュータビジョンのアルゴリズムで強化されて、シーンをより詳細に理解します。これらの要素が密接に統合されて、iPad Pro上で全く新しいレベルのAR体験が可能になるのです。
既存のすべてのARKitアプリケーションは自動的に、インスタントARでの配置、そして強化されたモーションキャプチャとピープルオクルージョンが使えるようになります。新しいシーンジオメトリーAPIを含むARKitの最新のアップデートを使うことにより、デベロッパは新しいLiDARスキャナのパワーを引き出し、これまで不可能だった新しいシナリオを解き放つことができるようになります。LiDARスキャナは計測アプリケーションを改良し、人の身長測定を速く簡単にできるようになったほか、便利な縦と端のガイドが自動的に表示されるため、より素早く、正確に対象物を測定できるようになりました。計測アプリケーションには新たにルーラービューが加わり、より細かい測定値が見れるようになったほか、これまでに測定した対象物のリストをスクリーンショットと一緒に保存してあとで必要になった時に備えることもできるようになりました。
すでにiPhoneやiPadで、ARKitを使用した3Dスキャンやモーションキャプチャアプリが多く存在しています。最近ではMaxonがAppleのAR-Toolkitを使用したモーションキャプチャアプリ「Move by Maxon」を発表しましたが、こういった機能が強化され、精度などが向上することが期待されます。
4つの事例
●Complete Anatomy
ARKitの強化と新しいiPad Proの深度センサーを使って、Complete Anatomyの開発者たちは新しい身体機能評価ツールを今年後半に発表します。これは理学療法士と彼らの患者のためのツールで、患者の進歩に関する量的情報を与え、回復期間中を通じて身体機能の改善を追跡するためのものです。
今年後半に提供される予定のIKEA Placeのための新しいStudio Modeは、iPad ProのLiDARスキャナとARKitを使って、個々の家具を配置するだけでなく、家の部屋全体をARでスマートに家具配置するための機能です。Studio Modeを使うと、家の中の色々な場所を探索して、まるでIKEA Storeで見るように、既存の家具、スペース、スタイルに合った部屋のセットを見つけることができます。
●Hot Lava
新しいiPad ProのLiDARスキャナは、今年後半に提供される予定のHot Lavaの新しいARモードを使用できるようにします。これを使うと、自分の家のリビングルームを溶岩が一杯の障害物コースに変えることができます。このテクノロジーは、これまでなかったゲームと現実世界との相互作用を可能にするもので、物理的な世界と仮想世界との境界を曖昧にします。
●Shapr3D
今年後半、Siemens Parasolidのテクノロジーに基づいたプロ向けのCADシステムであるShapr3DがLiDARを使って部屋の正確な2Dフロアプランと3Dモデルを自動的に生成するようになり、バスルームやクローゼットなどのリフォームや建て増しのデザインのベースとして使うことができます。新しいデザインはスキャンした部屋の中でARを使って現実世界のスケールでプレビューすることができます。
Shapr3Dは次の動画のようなiPadでモデリングができるアプリケーションを開発しています。
Appleで紹介されたアプリは以上ですが、他にもLiDARスキャナに対応したアプリが開発されてくることが予想されます。そういったアプリも今後紹介していきたいと思います。
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