Adobe、AIや3Dの新機能を搭載したPremiere ProとAfter Effectsのベータ版を発表、Frame.ioのストレージ機能も強化

CGソフト

2023年9月13日(現地時間) – アドビは、放送業界向けの国際放送機器展「IBC2023」に先がけて、ビデオ&オーディオアプリケーション全体をまたぐ、AIおよび3Dの新機能を含むアップデートを発表しました。

今回のリリースはAdobe Premiere Pro、Adobe After Effects、Frame.ioそれぞれのベータ版となります。ベータ版では、AI搭載の新機能によって時間のかかる作業を自動化し、映像編集者やモーションデザイナーが想像力そのままのスピードでアイデアを具現化することが可能になったほか、ユーザーから要望の多かったワークフローの強化が施され、生産性が向上しています。

また、Adobe Creative Cloudビデオ製品チームは、1,000 人以上のプロのエディタから意見を聞き、その多くが今回のリリースに反映されているとのことです。

今回発表された新機能は、9月15日から18日までアムステルダムで開催される2023 IBC Showのホール7のブース7.B35で展示されます。

Premiere Pro(ベータ版)

Adobe Premiere Pro(ベータ版)には、音声の会話部分のクリーンアップがより迅速に行える「スピーチを強調」、文字起こしベースの編集における「フィラーワード(つなぎ語)の検出 」の検出と除去、より一貫性のあるカラーアウトプットのための自動トーンマッピングの強化など、AI搭載の最先端機能が追加されています。また、タイムラインの応答速度が5倍になり、編集、トリミングなど、タイムライン上で行われるあらゆる操作がよりスムーズかつレスポンス良くなりました。

スピーチを強調

映像と同録された会話や話し言葉の音質が全体的に悪く、なんらかの手を打たなければならない場合があります。マイクの位置が悪かったり、背景のノイズが大きすぎたり、低品質のアーカイブ映像しか素材が残っていなかったりといった要因がありますが、そのようなケースで音声の品質を上げるのはとても難しい作業となります。

「スピーチを強調」は、AIを使って背景のノイズを魔法のように消し去り、録音状態が悪い会話の音質をプロスタジオで録音されたかのように向上させることができます。ミックス量スライダーを操作し、背景のノイズを適切なレベルに留めながら残すことも可能です。

AI ベースのオーディオの自動タグ付け

新しい「オーディオタイプの自動タグ付け」機能は、AIを使ってクリップを「会話」、「ミュージック」、「効果音」、「環境音」に分類してくれます。分類済みのオーディオクリップをクリックすると、そのタイプに応じて最も関連性の高いツールが自動的に表示されます。スピーチを強調と併用すれば、エディターは数回のクリックでプロレベルのオーディオ品質を実現し、貴重な時間を節約することができます。

スピーチを強調とオーディオタイプの自動タグ付けは、エッセンシャルサウンドパネル にあり、どちらの機能もバックグラウンドで処理されます。

文字起こしベースの編集の強化

今年初めに「文字起こしベースの編集」がAdobe Premiere Proに導入され、文字起こししたテキストのコピー&ペーストだけで簡単にラフカットを作成できるようになりました。この文字起こしベースの編集は、HPA Engineering Excellence Award(英語)を含む、業界のイノベーションアワードを受賞しています。

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今回、アドビコミュニティからの要望をもとにした機能強化により、この機能がさらに進化しました。

文字起こしベースの編集に、会話に含まれる「あの」や「えーと」などのつなぎの言葉を自動的に識別する「フィラーワード(言い淀み)の 検出」機能が追加されました。フィラーワードだけでなく無音の「間」や、その他の不要な言葉を一括処理によりワンステップですばやく削除することも可能です。この機能は、文字起こしベースの編集ワークスペースの文字起こしパネルからアクセスできます。

パフォーマンスの最適化

最新バージョンのAdobe Premiere Proでは、タイムラインのパフォーマンスが5倍向上し、より高速な編集が可能になりました。

また、互換性のないプラグインを検索してシステムパフォーマンスを最適化する「エフェクトマネージャー」という新しいツールも追加されています。エフェクトマネージャー互換性のないプラグインを迅速に特定、トラブルシューティングし、無効にしてシステムの安定性を向上させます。

さらに、リカバリモードを使用したプロジェクトの復元が可能となりました。問題が発生した場合でも、中断したところからシームレスに作業を再開できます。

カラー処理

 

刷新されたカラー設定とトーンマッピングの強化が行われました。

自動トーンマッピングが改良され、新たに3つのトーンマッピング手法が追加されたことに加えて、Lumetriカラーパネル上のUIが再編成されたほか、LUTの管理と再リンクも強化されています。

さらに、新しいビューアガンマの設定で補正することで、期待通りのカラーでQuickTime Playerに表示させることができるようになりました。

コミュニティからのリクエスト

新規プロジェクトをすばやく立ち上げるのに便利なプロジェクトテンプレート、書き出し時のカスタム保存先の保持、メタデータとタイムコードバーンインエフェクトの追加、マーカーのバッチ選択など、プロのビデオクリエイターのコミュニティから強く要望されていた日常の作業で役立つ機能強化が行われました。他にも多くの細かいワークフローの強化が行われています。

現在のベータ版の機能の詳細の確認はこちらから

After Effects(ベータ版)

Adobe After Effects(ベータ版)では、次世代のAIを搭載したロトスコープ機能により、After Effectsのワークフローが合理化され、オブジェクトの切り抜きをより速く正確に行えるようになりました。また、新しい真の3Dワークスペースにより、映像に3Dモデルを統合することが可能になっています。

3Dワークスペース

Adobe After Effectsに新たに導入された真の3Dワークスペースでは、コンポジションに3Dモデルをネイティブに読み込み、統合された空間上で操作しながら奥行きと深みを加えることが可能になりました。

画像ベースの照明を使い、任意の画像を環境光に設定し、補完的なライティングやシャドウを設定すれば、モデルをシーンにリアルに配置できます。また、先進的な3Dレンダラーの搭載により、高品質なアンチエイリアスと透明度を併せもった美しい3Dモーショングラフィックスを高速に生成することができます。この3Dレンダラーは、 他のアドビ製品やSubstance 製品と同じ基盤となるレンダリングエンジンが使用されており、物理ベースのレンダリングにアドビの標準マテリアルプロパティを使用します。

さらに、コンポジションに2Dと3Dを合成するためのユニークな方法が追加されています。ディスプレイスメントマップ、Vector Blur、計算エフェクトなど別のレイヤーを参照するエフェクトを使えば、3Dモデルレイヤーをソースとして特有のスタイルを適用したレンダリングを作成することもできます。

AI搭載ロトブラシ

人気のロトブラシツールに新しいAIモデルが搭載され、手足や毛髪の重なりや透明度のあるエレメントなど、切り抜きが難しいオブジェクトも、背景から簡単に分離できるようになりました。ユーザーはこれまでよりも速く、より正確に映像からオブジェクトを切り取ることができます。

現在のベータ版の機能の詳細の確認はこちらから

Frame IO(ベータ版)

今回のIBCでは、新機能のリリースと新しいパートナーシップの発表が行われました。

Frame.io を使用すると、ビデオプロジェクトを確認する必要があるユーザーやフィードバックを提供する必要があるユーザーと動画プロジェクトを共有することができます。 あらゆるデータが一元化され、コメントやレビュアーのメモはすべて、Premiere Pro または After Effects のプロジェクトと連携しているため、レビューと承認を簡単に追跡できます。

Frame.io Storage Connect

「Frame.io Storage Connect」は、収益性を重視する企業ユーザーに向けたソリューションで、すでに所有しているストレージの活用により、コストを削減しながらコラボレーションを活性化させます。

この機能により、Frame.ioシステムから軽量なプロキシを経由してAWS S3ストレージに直接アクセスすることが可能になります。

Storage Connectは、Frame.ioエンタープライズ版のユーザーを対象に、今年後半に提供される予定です。

比較ビューアー

多様なアセットを扱い、比較する必要があるクリエイターを念頭においてレビューおよび承認ツールが一新されました。

Frame.ioとCreative Cloudのすべてのユーザーは、「 comparison viewer 」を使い、動画、オーディオ、写真、デザインファイル、PDFアセットを並べて表示して、同じタイプのアセットを2つ並べて比較しながらコメントや注釈を追加することが可能となりました。

Camera to Cloudのモメンタム

膨大な統合の組み合わせによって200以上のカメラシステムをサポートするCamera to Cloudが拡張されます。制作現場からのクラウド接続をFrame.ioとCreative Cloudのユーザーに提供されているこのソリューションに、新たに5つの統合が加わりました。

  • Atomosの新製品Ninja/Ninja UltraがCamera to Cloudに対応しました。それぞれ、Atomos CONNECTモジュールとの組み合わせにより、撮影チームは高品質の10bit 4K H.265の映像素材をテイクごとにFrame.ioに送出できます。また、Ninja Ultraの場合はProRes RAWとHDプロキシ(Camera to Cloud用)を同時収録できるため、より高度なオンライン・オフラインワークフローを実現できます。

  • 富士フイルムの新しい大判ミラーレス GFX100 II は、対角55mm CMOS II HSセンサー(11,648 x 8,736ピクセル)で102MPのRAW写真と最大10bitの8Kビデオクリップを撮影し、Frame.ioにリモートアップロードすることができます。アップロード機能はFUJIFILM GFX-100 IIにネイティブ統合されているため、Camera to Cloudと接続するためにハードウェアを追加する必要はありません。
  • Accsoonが発表したSeeMo/SeeMo Proも、新たにCamera to Cloudファミリーに加わりました。どちらも、Atmos、Blackmagic Design、SmallHDの製品と同等の機能を備えたプロ仕様のビデオモニタリングデバイスとしてiPhoneやiPadを使えるようにする、ビデオグラファーからジャーナリストや報道チームまで活用できる製品です。
  • HDMI経由でカメラに接続するSeeMoはミラーレスカメラに最適で、HDMIまたはSDI経由のSeeMo Proは、ENGやミッドレンジのシネマカメラに最適です。どちらも、接続したiPhoneやiPadでモニター・録画しながら新しいCamera to Connect接続で軽量なHD H.254ビデオクリップをFrame.ioに直接アップロードすることができます。

Frame.ioの機能の詳細については、Frame.ioブログ(英語)をご覧ください。

提供開始時期

今回発表いたしました新機能については、9/13よりベータ版で利用可能となり、今月末~今秋にかけて、順次製品版となる予定です。

ータ版アプリへのアクセス方法の詳細については、Adobe Premiere Pro(ベータ版)およびAdobe After Effects(ベータ版)ページをご覧ください。


アドビビデオ製品最新アップデート:強力なAIおよび3Dの新機能を搭載したAdobe Premiere ProとAdobe After Effectsの最新バージョンを発表、Frame.ioのストレージ機能も強化(IBC 2023発表)

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