2022年10月10日(現地時間) – UNIGINEは、同社のリアルタイム3Dエンジンの最新アップデート UNIGINE 2.16 をリリースしました。
新機能ハイライト
このリリースでは、Community エディションで待望の倍精度、VulkanとDX12のサポート(実験的)、新しいテクスチャエディタと、アセット管理のためのAPIを含む膨大なエディタ改良パック、さらに、IGのアップデート、レンダリングの改善などの新機能が追加されました。
DirectX 12とVulkan (実験的)
2.16から実験的なDirectX 12とVulkanバージョンがエンジンに実装されました。まだ追加されていない機能(両地形、SRAA、Occlusion Queries、マルチウィンドウのサポートなど)は、今後のリリースで実装される予定です。
- Vulkan – OpenGLの実装と比較して、CPUを最大100~200%、GPUを最大30%ブーストすることができます。
- DirectX 12 – DirectX 11と比較して、CPU側で最大15~60%向上します。
■今後の予定
不足している機能を追加し、より高いパフォーマンスを実現するために、ゲーム機への移植が進められています。現在、Xbox Series X/SとPlayStation 5のバージョンは、どちらもほぼ機能が完成しているようです。
レンダラーの改善
■反射の改善
スクリーン・スペース・リフレクション(SSR)の見栄えが大幅に改善されました。空と雲は反射でレンダリングされ、最終画像の視覚的な一貫性がさらに向上、ノイズが大幅に削減され、小さなオブジェクトの反射が鮮明になりました。従来のBlinn-Phong BRDFはGGXに置き換えられ、粗い表面上の反射がより自然に見えるようになりました。
SSRの設定は高度なものなので、標準プリセットを使用することが強く推奨されています。
■Screen-space Shadow Shafts(スクリーンスペース シャドウシャフト)
スクリーンスペースにボリューム感のあるシャドウシャフトが追加されました。シャドーシャフト(別名ライトシャフト)は、クレプスキュラー光線の現実世界での効果、または大気中の散乱による大気シャドウをシミュレートするために、太陽と月のスクリーンスペースに生成することができます。これらの光線は、シーンに深みとリアリズムを加えることができます。
新しいスクリーンスペース シャドウシャフトは、霞や 環境に影響を与え、最終画像の過度の暗転を引き起こさず、太陽と月の両方に対して機能するため、以前の実装に取って代わりものとなります。
この機能には、水や透明なオブジェクトでは動作しない、マルチディスプレイシステムでの既知の問題など、一定の制限があります。
■より良いモーションブラー
モーションブラーの実装が見直されました。動いているオブジェクトと静止しているオブジェクトの間の明確なシャープなシルエットがなくなり、効果がよりリアルに見えるようになりました。これを達成するために、いくつかの新しいパラメータ(ぼかし半径、使用するサンプル数、深度しきい値)が追加されています。
■スクリーンスペース シャドウの更新
スクリーンスペースの影も改善され、ノイズが減少し、半透明な深度のパースペクティブ補正(深度バッファデータに基づく)を制御できるようになりました。これにより、植生の外観がよりリアルになっています。また、植生(サンパウリアの葉など)のファジー効果により、よりリアルな表現が可能になりました。
■ブルームの改良
TAA適用前のフレームデータを使用するようになり、明るい領域はより影響を受け、暗い領域はより影響を受けなくなりました。このエフェクトはTemporal Filteringが無効の場合、100%正しい結果を生成しますが、有効の場合でも明るさの損失は軽微です。
■新しいカメラエフェクト
色収差、ノイズ、ヴィネットマスクのポストエフェクトが、設定ウィンドウのカメラエフェクトセクションに追加され、便利に利用できるようになりました。
また、対応するコンソールコマンド (render_vignette_mask, render_chromatic_aberration, render_noise) または API 経由でこれらの効果を制御することができます。関連するサンプルは、Art Samples スイートに追加されています。
マテリアルグラフエディタの改善
■ポストエフェクト
マテリアル エディタで独自のグラフベースのポストマテリアルを作成できるようになりました。SDKに含まれるArt Samplesスイートには、新しいCustom Post Effectサンプルが追加されまています。
■ウォーター デカール
2.16 からは、ビジュアル マテリアル エディタを使用して、ウォーター デカール (水面の上に投影されるもの) 用のグラフ ベースのマテリアルを作成することもできるようになりました。
アセットストア
まだ実験的なものですが、アドオン、デモ、ツール、その他のエンジンのコンポーネントが入手できるアセットストアが登場しました。今のところ、アセットストアで利用できるのはUNIGINEが公開している無料アセットのみです。
SDKのバージョンを選択し、カテゴリを選択し、探しているものを入力すると、プロジェクトで利用可能なすべてのアセットのリストが表示されます。このタイプのデカールは、船の航跡の波やヘリコプターから水面上のローターダウンウォッシュ、泡、オイルステインなど、様々なエフェクトを作成するために使用することができます。共通設定の「タイプ」ドロップダウンで「Decal Water」を選択するだけです。
■今後の予定
2022年11月、全ユーザーに無料アセットを公開する機能が、年末には、全ユーザー向けのマネタイズ機能(アセットで収益を得る機能)が搭載される予定です。
新しいSDKブラウザ
SDKブラウザはUNIGINEの出発点でありプロジェクトを作成したり、テンプレートやサンプル、デモ、追加コンテンツにアクセスする場所です。
ゼロから作り直された新しいSDK Browser 2では、従来の機能をすべて受け継ぐだけでなく、安全性、堅牢性を向上させ、さらに機能を拡張し、新たな機能をサポートするようになりました。さらに、SDK Browser 2をシステムトレイは最小化できるようになっています。
ROSの統合
バキュームクリーナーから自律型コンバインやドローンまで、ロボットは今日、大きな役割を担っています。UNIGINEは自動車産業や、ROS(Robot Operating System)がデファクトスタンダードとなっている自律システムの世界へ積極的に進出しています。
ROS2インテグレーションの導入により、現実の世界に出る前の仮想環境におけるこれらのシステムの構築、トレーニング、テストのプロセスを簡素化しています。
ウィンドウマネージャの刷新
ウィンドウマネージャはGUIシステムのベースであり、ノードベースのスクリプト、ビジュアルUIエディタ、シーケンサー、キャラクタアニメーションエディタなどの新機能への第一歩となります。
まず、ウィンドウマネジメントと統合ワークフローが大幅に刷新されました。次のステップは、機能的で信頼性の高いGUIツールキットを作成し、増え続けるプラットフォーム用の様々な高度なビジュアルツールの開発を簡素化することとされています。
新しいテクスチャエディタ
このツールは、すべてのアーティストの仕事を容易にするために作られました。すべてのプロップへの変更はビューポート内で追加され、ブラシストロークでユニークに仕上げることができます。
これによりサードパーティのソフトウェアで微調整する必要がなくなります。さらに、豊富なブラシセットにより、プロップの最終的な外観を柔軟にコントロールできるため、ほとんど手間をかけずに完成させることができます。マテリアルのブレンド、テクスチャの適用や編集、ディテールの追加や欠陥の修正、GPUアクセラレーションは、4Kテクスチャを扱う場合でも高いパフォーマンスが保証されています。
また、アンビエントオクルージョンや曲率をオンザフライで計算したペイント、液体の流れを模倣するフローマップ、カスタムテクスチャ、その他多くの便利な機能が搭載されています。
その他のアップデート
■コミュニティ版での倍精度
64ビット倍精度浮動小数点座標を誰もが利用できるようにしました。これで、Community SDKのエディションで、非常に詳細で実質的に無制限の世界を作成することができます。最大座標値は、32ビット浮動小数点精度の536,870,912倍となり、太陽系やその先のスケールが広がります。
■Sandworm Tool のUX/UIアップグレード
UNIGINEには2つの地形生成ツールがありましが、2.16ではSandwormだけになりました。ツールとのインタラクションをより直感的で簡単にするために、UX/UIが大幅にアップグレードされたことにより、Sandworm ToolがLandscape Toolの機能をすべて備えているだけでなく、シンプルで使いやすいという点で上回わったことが理由とされています。
■Varjo XR Hand-Tracking
人間の目の解像度を持つ産業用Varjo VRおよびXRヘッドセットで利用可能な高度なハンドトラッキングにより、、指先で仮想現実を回転させることができるようになりました。
新機能は、第5世代のハンドトラッキングソフトウェア(SDK v5.0)をサポートする新しいUltraleap統合プラグインを通じて利用でき、指の忠実度の向上、両手のパフォーマンス、高いトラッキング堅牢性、その他多くの改良がされています。
■イメージジェネレータの改良
IG(イメージジェネレータ)アプリケーションにおけるリアルな航空機の作成を容易にするため、新しいIG Aircraftアドオンが追加されました。このアドオンには、エンジンや着陸装置の火災、煙、コントレイル、着陸装置、ヘリコプターの回転翼設定とブラーリング効果、ローターダウンウォッシュ効果などのエフェクトを作成できる航空機部品のセットが含まれています。また、このアドオンでは、ホイールトレースの実装も示しています。
■デモとサンプル
・デモ
コミュニティでの火星デモ:Community および Engineering エディションでもデモが利用できるようになりました。
・新しいサンプル
- カスタム ポスト エフェクト:2 つのカスタム ポスト エフェクトを示しています。画面の歪みの模倣と、補助バッファーからのデータを使用したオブジェクト ハイライター エフェクトです。
- カメラ効果と色補正:ノイズ、ビネット、色収差などのさまざまなカメラ エフェクトと、色補正設定 (カーブによる色補正、彩度と色相の色ごとの補正、およびシャープネス) を示しています。
- 川の流れと溶岩の流れ:Texture Editor で作成および編集できるフロー マップを使用して、川、渦、および溶岩流を作成する 2 つのサンプル。
- 車のビジュアライゼーション:さまざまなプロモーションまたは情報提供を目的とした UNIGINE を使用した車の視覚化の例。
- ヘアシェーディング:新しいヘア シェーディングノード の機能を使用した、UNIGINE でのリアルなヘアとファーのレンダリングのデモンストレーション。
- API サンプル:Fileサンプル ( Samples->API->Systems->File ) は、ウイルス対策システムの問題を回避するために FileSample ( Samples->API->Systems->FileSample ) に 名前が変更されました。
その他すべてのアップデート内容の確認はこちらから
価格とシステム要件
現在、Unigine は64ビットのWindows 7 SP1/8/10 と Linux (kernel 3.0+)で利用可能です。サポートされているAMD、Intel、NvidiaのGPUのリストはこちら
無料のCommunity Free版は、過去12ヶ月間に10万ドル未満の収益または資金を得ている商業的なプロジェクトで利用できます。
Community Pro版には収益の上限がなく、サブスクリプションはVATを含めて年間180ドルとなっています。その他の価格オプションやエンタープライズ版との機能比較表はこちら
UNIGINE 2.16 – Asset Store, Vulkan & DirectX 12, ROS Integration, New Window Manager
コメント