2021年4月20日(現地時間)に BlenderDevelopersBlog に投稿された Blender 2021 Roadmap の紹介です。
年始にも2021年に予定されているBlenderのプロジェクトの紹介をしましたが、今回はBlender 2.93ととBlender 3.0 に向けての開発情報が含まれています。

今年は、2回目のLTSリリースと、多くの新規開発を含むBlender 3.0の開発がされる予定で、また、Cycles の 10周年になります。
計画
■今年はまず、3つのコア開発チームを割り当て、アセットブラウザとポーズライブラリ、ライブラリのオーバーライド、ジオメトリノードなどのプロジェクトに2ヶ月間集中してもらっていました。これは2月に始まり、まもなく終了します。
■Blender 2.93は5月下旬にリリースされる予定です。バージョン2.83と同様に、これはLTS(Long-term Support)リリースで、2年間のメンテナンスが行われます。
■第2四半期には、不測の事態が起こらない限り、アニメーション・キャラクター・パイプライン・プロジェクトが開始されます。
■USDインポーターのために行われたNVIDIAの Industry quality workは、すでにレビューされており、これはBlender 2.93がリリースされた後に発表される予定です。
■初夏には、Blender 3.0の準備のために、アムステルダムでBlenderのデザイナーであるWilliam Reynishと他のUI/UX貢献者によるユーザビリティ・ワークショップが開催される予定です。
プロジェクト
アセット・ブラウザとポーズ・ライブラリ
アセットブラウザのプロジェクトは、2016年(アセットマネジメントと呼ばれていた頃)にさかのぼります。何年もかけて繰り返し開発され、その目標は狭まっていきましたが、2月以降、このプロジェクトはより大きな目標を掲げて再起動しました。
ポーズ・ライブラリ・システムは、このアセットブラウザプロジェクトの最初のターゲットになり、ビューポートエディタとアニメーションエディタの両方に完全に統合される予定です。
Blender Studioは長年にわたり、アニメーションプロジェクトのための堅牢なポーズライブラリシステムを必要としており、Sprite Fright は、アセットブラウザプロジェクトを支援しつつ、この問題に対処する絶好の機会となったとのことです。
ライブラリのオーバーライド
古いアニメーションプロキシシステムの置き換えは、まだ進行中で、このプロセスの一環として、現在の開発サイクルでは、リギングの同期を終え、システムの最終的なドキュメントをまとめることを目指しています。
この後には、制限の多いパイプラインに取り組むための別のプロジェクトが予定されており、リガーはアニメーターがオーバーライドできるプロパティを手動で選択できるようになります。
このプロジェクトは、テストやフィードバックをしてくれるスタジオや、UI/UXを担当してくれる人が見つかるかどうかにかかっています。
ジオメトリ・ノード
ジオメトリノードに関連する2つ目のプロジェクトが終了しました。このプロジェクトでは、初期のプロジェクトを発展させ、新しいノードとアーティストがこのシステムを使用する方法が追加されました。
この8週間のサイクルには次の4つの柱があります。
- Blender Studioの要件をまとめること、そして磨きをかけること
- すべてのノードの設計
- アトリビュートワークフロー
- ノードツール
待望のメッシュプリミティブ、高度なスキャッタリング、プロシージャルモデリングオプション、新しいテクスチャベースのパイプラインを含む、20個の新しいジオメトリノードが導入されました。さらに、複雑なノードツリーのデバッグを支援するための新しいスプレッドシートの追加やアトリビュート検索やエラーメッセージなどの使い勝手の向上も図られています。
また、コレクションノード、ヘアノードのデザインの再検証、ノードツール、ページ、ポータルなど将来のプロジェクトの準備も行われています。
Vulkan
描画バックエンドは、Vulkan に対応する準備を進めています。この描画APIの抽象化により、Blenderはより最新の描画用ライブラリを使用できるようになります。これは EEVEE のメモリをより効率的にするのにも役立ちます。
Vulkan の統合によってすぐにパフォーマンスの向上が期待できるわけではないですが、Blenderの将来性を高め、ベンダー固有のプラットフォームへの対応を可能にします。
グリースペンシル(Grease Pencil)
Blenderの2D描画ツールは、最近追加されたラインアートモディファイアで大きく改善されました。
今年は、新しいラインアートモディファイア、ストーリーボード、I/O、より良いベジエ編集、2D/2.5Dアニメーション長編映画のための機能に重点が置かれています。
Blender 2.93 LTS
長期サポートのパイロット版は、1年間で13バージョン、何百もの修正が移植され、成功を収めました。ダウンロード数は数十万にもおよんだとのことです。2回目の LTS は4月に行われます。
Blender 2.83 LTS はさらに1年間、2.93 LTS は2年間のメンテナンスが行われます。長期安定版には、優先度の高いバグやリグレッションの修正、ドライバの互換性の更新が行われます。
Cyclesの開発
Facebookと密接に連携している専任の開発者のおかげで、業界のサポートを通じて、CyclesのレンダリングAPIが大きく改善されました。
続いて、Blenderプロジェクトでは、Cyclesチームを支援する新しいシニア・レンダリング・エンジニアを採用しています。採用のプロセスはほぼ完了しています。
4月23日はCyclesの10周年を記念して、Blenderは特別なサプライズが用意されているとのことです。
アニメーション・キャラクター・パイプライン
長編映画の制作は本当に大変です。規模が大きいだけに、単なるパフォーマンスの向上にとどまらないユニークな問題が発生します。合理化されたワークフローを作り、チーム全体が同じレベルの品質を維持できるようにするためには、特定のツールが必要です。
レックスの表情テスト – Sprite Fright
このプロジェクトは、過去に業界からのサポートが得られずに頓挫したことがありますが、現在では、才能ある多分野のチームと、全員を参加させるための資金を手に入れることができました。このプロジェクトでは、業界のベテランであるJason Schleiferがリエゾンを務めます。
ポーズライブラリとライブラリオーバーライドは、このパイプラインで期待されているツールの一部です。さらに、リギング、プレイバック、アニメーションの生成のためのより良いツールの開発もされています。
USDインポーター
NVIDIAはBlenderへのUSDサポートの導入に関わっており、開発者のMichael Kowalski氏は、これを実現するために他のBlender開発チームと直接協力しています。
エクスポーターのコードがすでに存在していたので、最初の計画では、USDのインポートに焦点を当てています。Michael氏の作業は、Blender 3.0のリリースに向けて、現在レビュー中です。
インポーターは、既存のI/Oパイプラインの上に構築されています。しかし、Collections for I/Oでも議論されており、USD統合の一部になる可能性があります。
Blender 3.0 – ユーザーインターフェースワークショップ
最後に、Blender 3シリーズが必要なすべての注意を払って実装されていることを確認するためのワークショップについてです。
William Reynish氏によるマルチオブジェクト・セレクトのモックアップ
Blenderの開発チームは、第3四半期、9月にBlender 3.0をリリースすることを目指しています。メジャーリリースの際にはいつものように、時間をかけてBlenderのデザインの選択を見直し、既存の問題に大きな解決策を導入する予定です。
海外旅行が可能になり次第、アムステルダムでUI/UXワークショップが開催されます。その目的は、差し迫った問題に対する優れた解決策を見つけることです。
その他のプロジェクト
2021年には、他にもたくさんのプロジェクトが予定されています。コアチームのアイデアは、6~8週間のプロジェクトを行い、それをモジュールに引き継ぎ、繰り返していくというものなので、1年を通して明らかにされていきます。
この短いサイクルと、数週間にわたる通常のモジュール開発を交互に行うことで、より多くのプロジェクトが日の目を見ることになります。また、開発チームの機動力を維持し、その時々で最適なプロジェクトを選択することができます。
現在検討中のアイデアには以下のようなものがあります。
- ビューポートでの独立した物理クロック
- メッシュ編集の最適化
- ペイントおよびスカルプト用のブラシマネージャー
- スナッピングの改善
- リアルタイムのビューポートビデオコンポジター
- パーシステントI/Oとベーキングのためのコレクション設定
- オーバーライドを制限する
- コレクションノード
- ダイナミックパーティクル
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