2021年に予定されているBlenderのプロジェクトの紹介です。2020年の軽い振り返りも合わせて紹介したいと思います。
2020年の振り返り
2020年、Blenderは1つの長期サポートリリースを含む4つのリリースがされ、大きな発展を遂げました。以下は当サイトで紹介した昨年のBlenderのリリース内容となります。




また、スタジオサイドでは、Sprite Frightと呼ばれる新しいオープンムービーが現在制作の初期段階になっています。
Sprite Frightは、Blender Studioの13番目のオープンムービーで、英国を舞台にした80年代風のホラーコメディです。詳しくは以下をご覧ください。
https://cloud.blender.org/films/sprite-fright
2021年のプロジェクト
Everything Nodes
これは超大作プロジェクトで、この機能が成熟する頃には、Blender内での作成方法は全く新しいものになるとされています。
Everything Nodesでは、ほぼすべての側面においてノードを使用してプロシージャルにシーン作成することができます。現在、ノードはシェーダやマテリアルを作るために使われていますが、それが大幅に拡張されたようなものと考えてください。
おそらくですが、このプロジェクトにはシーンノードの先駆けとして近年人気のあるHoudiniが影響していると思われます。最近では、Houdiniのシーンノードに似た機能が Cinema4D や 3DCoat にも初期段階の実装がされています。


■なぜノードを使ってすべてのものを作成したいのか?
このアプローチでは、柔軟性と細かいコントロールが大幅に向上し、複雑な結果の生成と管理が容易になります。別の言い方をすれば、手の込んだ作品を作成するのに必要な時間と労力を削減できるということです。
Simon Thommes氏のTwitterでは、Blenderのノードでどんな表現が可能になるかを確認することができます。
Wow, this has been quite the month (and a half)!
I’m finally done with all 30 #nodevember prompts!Each is made from a sphere primitive with a procedural shader in Blender.
Thanks to everyone for the amazing support and overwhelmingly positive feedback! 🙂#nodevember2019 #b3d pic.twitter.com/qOR8kxQqq6
— Simon Thommes (@simonthommes) December 17, 2019
Everything Nodesのベースはすでに整っており、その一例として、2.92で利用可能になった新しいGeometry Nodesモディファイアがあります。Everything Nodesのすべての機能と同様に、Geometry Nodesモディファイアは実世界でのアプリケーション(例えば、小石の散乱、花や木の散乱など)が優先されています。
実世界でのアプリケーションについて:このプロジェクトの初期ターゲットは、Blenderスタジオの新しいオープンムービーSprite Frightによって決定されており、クリエイティブチームはEverything Nodesの設計とテストに積極的な役割を果たしています。つまり、Everything Nodesはアーティストが最も必要としていることを実現することに集中しているということです。
また、Everything Nodesは全く新しいアドオンの可能性を生み出すとも言われています。
Asset Browser
Asset BrowserはBlenderの新しいエディタウィンドウで、アセットライブラリを作成して保存することができます。シーン、アニメーション、オブジェクトとコレクション、ジオメトリ、シェーディング、イメージとサウンド、環境などのカテゴリに整理されています。
Asset Browserメリットとしては、標準的なシェーダ、ノードグループ、テクスチャ、HDRIマップ、ヘアの設定がより簡単にマスターでき、使用できるようになり、Blenderでのコンテンツ管理が簡単になります。また、項目のプレビューが良くなるので、アセットをか簡単に見つけることができるようにもまります。
VSE(Video Sequence Editor)
2021年には、制作環境の課題に対応するために、ーVSE(ビデオシーケンスエディタ)は大幅な改良が行われる予定です。
基本的な目標は、短編映画の制作に取り組む際に、素晴らしい編集体験を提供することです。例えば、絵コンテ、アニマティクス、ビデオクリップを組み立てることで、これらのユースケースを支援するために、VSEのデザインは技術的なレベルだけでなく、UI/UXの面でも改善されます。これはパフォーマンスの向上につながり、キャッシュ機能の向上、スムーズなビデオ再生とスクラブ、タイムラインでのインタラクティブなストリップ操作、ビジュアルメディア変換、リタイミングツールの改良、メディア管理と3点編集ワークフローなどの改善につながります。
EEVEE
EEVEEの最初の大きな目標は、Vulkanを組み込むことです。Vulkanを使用することで、EEVEEは将来性と効率性を両立させることができるようになります。
EEVEEの中期的な目標には、「EEVEEを長編映画で使うためには何が必要か?」という疑問に答えることが含まれています。その回答のひとつは 「モーションブラー」であり、これは、2020年にモーションブラーが優先された理由です。もう一つの回答は「被写界深度」で、これは次に取り組む予定になっています。
また、先日Blenderに追加されたNishita SkyはEEVEEへの移植が予定されています。2021年の目標は、EEVEEをプロダクションレベルのレンダリングを行うためのオプションのひとつとすることです。
VR
コミュニティは、より多くのVRをBlenderに入れることに情熱を注いできました。彼らの努力のおかげで、Blender内部に入力デバイス(VRコントローラ)が追加されるなど、BlenderでのVR開発はマイルストーンに沿って急速に進んでいます。
BlenderのVRでは、単純なウォークスルーだけでなく、好きなものがすぐに作れるようになります。別の言い方をすれば、VRはBlender内での制作のための本当のオプションになるということです。
Cycles
2021年、特にメッシュや髪の毛、ボリュームオブジェクトが多いシーンでのパフォーマンス向上に力を入れて開発がされている予定です。また、GPU/CPUハイブリッドレンダリングにも注意が払われます。たくさんのレンダーエンジンがある中で、Cyclesをより競争力のあるものにすることを目指して開発されるということです。
Animation 22
これは、以前は「Animation 2020」と呼ばれていましたが、事情により昨年から開始できませんでした。このプロジェクトについての良いニュースは、Blender FoundationがAWSから今後3年間のキャラクターアニメーションツールに投資するための大きな助成金を受けたことです。

業界の経験豊富なキャラクターテクニカルディレクター(ベテランのJason Schleifer)を開発に巻き込みたいと考えており、挑戦したいトップデベロッパーを募集しています(募集開始は’21年第2四半期)。
スペックとしては、スピード(スレッディング、プリフェッチ、キャッシング)、ドライバ/制約/変形のためのノードシステム、キャラクターのデバッグツール、アーマチュアをmocap用に再設計、コントロールと自動化されたシステム(筋肉)、マルチレイヤーのポージングとキャッシュの上での微調整を可能にすること、高度なインタラクション/選択(ウィジェットレスのポージング、ダイアグラムビューを含む)、そしてUSDとうまく連携することなどが含まれています。
Pipeline Development
Blender InstituteとBlender Studioの両方が、Blenderの新しいオープンムービーであるSprite Frightの制作の一環として、パイプライン開発に取り組んでいます。パイプライン開発の目的は、ディレクターからアートディレクター、リガーまで、全員がどのように協力して作業するかを定義するのに役立ちます。コラボレーションが広がれば効率が上がり、創造的な作業のためのエネルギーが高まります。
より詳細なレベルでは、パイプライン開発のホットトピックとして、オーバーライドの改善、ファイルの自動構築、プロダクション管理、レンダー管理、ストレージシステムの統合などが挙げられます。
USD
2.82では、PixarのUSD exporterの簡易版が導入されました。2021年は、USD I/O のより広範なサポートを導入するための取り組みが活発に行われています。bf-usd メーリングリストでは、このトピックについて活発な議論が行われています。
詳しくはこちらから
Blender本部の再編
増え続けるBlenderのツールキットは、才能ある頭脳の持ち主、アムステルダムにいる人たち、そしてより広いコミュニティにいる多くの人たちによって作られています。
また、Blender本部のチームによってもサポートされており、このチームは現在、Blenderのあらゆる面の成長を支援するために拡大しています。開発者やアーティストだけでなく、Blenderは管理、コミュニケーション、人事チームの構築にも忙しく取り組んでいます。
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