2026年3月17日(現地時間)- Maxonは、建築・エンジニアリング・建設(AEC)市場向けの新たなレンダリングソリューションとして、「Redshift for Vectorworks」の商用リリースと、「Redshift for Autodesk Revit」のベータ版提供開始を発表しました。これは、MaxonがAEC市場への展開を拡大する上での重要なマイルストーンとなります。
「Redshift for Archviz」とは
建築家やインテリアデザイナー向けに設計されたこのソリューションは、映画制作の現場で実証されているGPUベースの物理レンダラー「Redshift」と、「Cinema 4D」の高度なクリエイティブ機能を、主要なCAD/BIMプラットフォーム内で直接利用できるようにするものです。第一弾として、「Vectorworks 2026 Update 4」のリリースに合わせてネイティブプラグイン「Redshift for Vectorworks」の提供が開始されます。
これにより、ユーザーは設計初期のリアルタイムビジュアライゼーションで開発速度を向上させつつ、プロジェクト完了間近には基本的なBIMデータとの連携を維持したまま、クライアントへのプレゼンテーションやマーケティング向けとなる高品質でフォトリアルな最終画像をシームレスに生成できます。
現在ベータ版として提供されている「Redshift for Revit」は今年後半に正式リリース予定であり、さらに「Graphisoft Archicad」を含む多くの連携が2026年から2027年にかけて計画されています。
Maxonのレンダリング担当エグゼクティブバイスプレジデントであるNicolas Burtnyk氏は次のように述べています。「Maxonのツールはメディア&エンターテインメント業界で長い歴史を持ち、数多くのハリウッド映画においてオスカー賞に輝くビジュアルエフェクトの制作チームに利用されてきました。今回、その映画制作で培われた技術を建築家やインテリアデザイナーにも提供し、彼らのビジョンを大画面にふさわしいシネマティックなビジュアル体験へと形にするサポートをします。」
【考察】NemetschekグループのシナジーとAutodeskエコシステムへの対抗
今回の発表から読み取れる重要な業界動向として、Maxon の親会社である Nemetschek(ネメチェック)グループ内で強まるシナジーが挙げられます。Vectorworks や Graphisoft(Archicad の開発元)も同グループ傘下であり、Maxon が AEC 市場へ参入するにあたって、まずこれらのプラットフォームをターゲットに選び、さらにバンドル割引を提供するという展開は、「BIM 設計からハイエンドなビジュアライゼーションまで」をグループ内で一貫して実現する強力なエコシステムを構築しようとする明確な戦略を示しています。
また、この動きは、AEC 市場で大きな存在感を持つ Autodesk のアプローチとも対比できます。Autodesk は、自社の BIM ソフトである Revit と、M&E 向けツールの 3ds Max や Maya、さらにハイエンドレンダラーの Arnold を連携させ、統合的なワークフローを提供しています。これに対し Nemetschek グループは、Maxon が持つ映画品質のレンダリング技術(Redshift)やモーションツール(Cinema 4D)を自社の CAD/BIM 製品に直接統合することで、Autodesk の強固なエコシステムに対抗しうる魅力的な選択肢を提示しようとしていると言えます。
主な特徴
Maxon の強力な 3D エコシステムを基盤とするこのソリューションは、シネマティックな品質と、建築ワークフローに最適化された直感的な操作性を両立し、次のような機能を提供しています。
時間帯に合わせた自然な光を再現
時間帯や太陽の位置、空の状態を手軽に調整でき、自然光がデザインにどんな影響を与えるかを確認できます。朝や夕方、曇りの日など、場所や季節に合わせたリアルな照明環境をシミュレーションできます。

天気に応じた空の表情を簡単に調整
雲の量を細かく調整でき、青空から曇り空までさまざまな天候を再現できます。光の入り方や影の出方、空気感の変化など、ビジュアライゼーション全体への影響をリアルタイムで確認できます。

空間づくりに役立つ豊富なアセット
高品質なアセットを使って、屋内外のシーンを素早く構築できます。毎月更新される大規模なアセットライブラリ「カプセル」には、家具や車両、植物、キャラクターなどが揃っており、プロシージャルツールや AI アシスト検索を使ってドラッグ&ドロップで自然に配置することが可能です。

素材の質感をリアルに表現できるマテリアル
物理的に正確なマテリアルライブラリにより、よりリアルな質感表現が可能です。コンクリート、金属、ガラス、木材など、各マテリアルは光に対して自然に反応します。色の変更もすぐに行えるため、初期プレビューから最終レンダリングまで、デザインのバリエーションをスムーズに検討できます。

さらに、日々の設計・デザイン業務を効率化するための優れたワークフローを備えています。
- リアルタイムレンダリングと直感的なカメラ操作:設計の変更をリアルタイムで視覚化し、CAD環境を離れることなくシーンをシネマティックな品質に仕上げることが可能です。滑らかなカメラアニメーションを簡単に作成でき、ウォークスルーやフライスルーに最適です。さらにワンクリックでCinema 4Dへ送信し、より高度なシミュレーションやモーションを加えることもできます。
- 容易な導入と高いコストパフォーマンス:初期のユーザーテストで高く評価された通り、セットアップが簡単で直感的に操作できるため、ライティングや構図の試行錯誤がスムーズに行えます。本AECソリューションは手頃な価格で提供され、MayaやHoudiniなどの幅広いDCCパイプラインとの互換性も備えています。
- MacとWindowsの完全な互換性:Mac、Windows、またはその両方が混在するチーム環境でも、一貫したパフォーマンスと機能を提供します。スムーズな共同作業と確実なファイル共有を実現し、設計からビジュアライゼーションまで統一されたワークフローを維持できます。
Redshift for Vectorworks の使用方法
Vectorworks環境内でのRedshiftの操作方法や、Cinema 4Dと連携した高度なワークフローについて、すぐに学べるチュートリアル動画が公開されています。
インターフェースの紹介
Vectorworks内のRedshiftインターフェースと主要なコントロールの配置について手早く確認できます。
主要機能の解説
レンダリング、物理的に正確なマテリアル、高度なライティング、リアルタイムフィードバックなど、中核となる機能が紹介されています
Cinema 4Dでさらに高度に
プロジェクトをCinema 4Dへエクスポートし、アニメーションやシミュレーションを活用した高度なワークフローを学べます。
提供価格・利用環境について
「Redshift for Archviz」のサブスクリプションは、1ライセンスあたり年間289.00ドル(日本国内価格:年間56,100円)で提供されます。
「Redshift for Vectorworks」はMaxonおよびVectorworksを通じて購入可能で、Vectorworksとバンドルして購入する場合は割引価格が適用されます。まずは無料トライアルで試すことが可能です。
日本国内における利用条件・推奨環境は以下の通りです。
対応バージョン
6月中旬リリース予定の「Vectorworks 2026 Update 4 日本語版(サブスクリプションライセンス)」にて利用可能となります(永続ライセンス版では利用できません)。
推奨ハードウェア
Windows では NVIDIA RTX グラフィックスカード、Mac では Apple Silicon(M3 Pro や M4 Pro 以上)が推奨されています。性能の高い GPU を使うことで、操作の反応速度から最終的なレンダリング品質まで大きく向上します。
その他の情報
ベータ版の登録
現在、「Redshift for Revit」のベータ版テスターを募集しています。「Redshift for Archicad」のベータ版は2026年後半に公開予定です。詳細や登録については、Maxon Archviz 特設ページをご覧ください。
関連イベント
Maxonは、2026年に開催される以下のイベントにて、本ソリューションのデモンストレーションを実施する予定です。
- DigitalBAU(2026年3月24日〜26日、ドイツ・ケルン)
- AIA26 Conference on Architecture & Design(2026年6月10日〜13日、米国・サンディエゴ)


























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