2025年9月23日(現地時間)- EpicGamesは、Unreal Engine 5.7 プレビュー版が利用可能になったことを発表しました。以下ではUnreal Engine 5.7の新機能を紹介したいと思います。
主な新機能
このアップデートでは、プロシージャルコンテンツ生成フレームワーク(PCG) や Substrateマテリアル が正式版となり、GPUパフォーマンスと表現力が大幅に向上しました。さらに、植生のリアルタイム生成を可能にする プロシージャル植生エディター や Naniteフォリッジ、開発作業を効率化する AIアシスタント といった実験的な新機能が追加されています。
プロシージャルコンテンツ生成フレームワーク (PCG) が正式版に
プロシージャルコンテンツ生成フレームワーク (PCG) が正式版 (Production-Ready) となり、大幅な拡張性とGPUパフォーマンスの向上が実現されました。これにより、PCGをワークフローに統合する際の容易さと柔軟性が向上しています。
GPU生成とゲームスレッドのパフォーマンスが継続的に最適化され、UE 5.5と比較するとPCGはほぼ2倍の高速化が実現されているとのことです。GPUパラメータオーバーライド機能により、GPUノードでの作業中に異なるパラメータ値を動的に設定することが可能になり、スケーリングの改善とパフォーマンスの向上により、PCGのGPUコンピュートパスはFastGeoの使用を含め、マルチプラットフォームへより適した形になりました。
新しいPCG専用エディタモードでは、スプライン描画やボリュームのペイント・作成など、カスタマイズ可能なツールが提供されるようになっています。さらに、PCGグラフはスタンドアロンのグラフとして実行できるようになりました。
プロシージャル植生エディター (実験的機能)
PCGは正式版となりましたが、フレームワーク自体の開発は現在も進行中であり、さらなる安定性と使いやすさを追求して進化を続けています。その中で、新しい実験的プラグインとしてプロシージャル植生( Vegetation)エディターが登場しました。
この新機能により、Fabからアセットを追加し、それを基点としてUnreal Editor内で直接、Nanite対応の植物を成長させたり、カスタマイズすることが可能になります。サードパーティ製ツールを介さずに、リアルタイムで植生を作成・カスタマイズし、プロシージャルにユニークな樹木のバリエーションや森林を組み立てることができます。
このエディタは、PCGベースのノードグラフ上に構築されており、重力やスケーリングで木を編集したり、葉や枝のレイアウトを調整したり、モデルを容易に交換したり、スケルタルメッシュまたはスタティックメッシュとしてエクスポートしたりすることが可能です。
無限のバリエーションを生成する能力を備え、プロジェクト用のユニークな植生の豊富なライブラリを迅速に構築できます。5.7の正式リリースに合わせてFabで公開される新しいQuixel Megaplantsアセットもあるようです。
Nanite フォリッジ (実験的機能)
植物関連の機能として、Naniteフォリッジが実験的機能として提供されます。
これは3つの強力なシステム上に構築された、現世代のハードウェアで高密度・高ディテールの植物を60fpsでスムーズにレンダリングおよびアニメーションさせることを可能にする機能です。
Naniteアセンブリは、アセットのバリエーションを効率的に管理するためのビルディングブロックを提供し、ストレージ、メモリ、レンダリングコストを削減します。Naniteスキニングは風などのシステムで動的な動きを駆動し、Naniteボクセルは、あらゆる距離で驚異的なディテール、アニメーション、マテリアルの特性を、ごくわずかなコストで維持することができます。
MegaLights (ベータ版)
MegaLightsはベータ版に移行し、ディレクショナルライト、Niagaraパーティクルライト、半透明ライティング、ヘアグルームをサポートするようになりました。
同時に、新しいパフォーマンスチューニングコントロールを使用して解像度スケールと更新レートを管理し、改善されたノイズリダクションによって、より優れた初期パフォーマンスを得ることが可能になっています。

Substrateマテリアル (正式版)
Substrateマテリアルが完全にプロダクションレディ(正式版)に移行しました。表現力豊かな制御と長期的な柔軟性のために構築されたSubstrateは、固定シェーディングモデルを、スケーラビリティとパフォーマンスのバランスを取るモジュラーシステムに置き換わります。
これには、ピクセルごとのトポロジやレイヤー化されたクロージャといった高度なエフェクトのためのAdaptive GBufferと、幅広いプラットフォーム互換性のためのBlendable GBufferの両方が提供されています。これにより、金属、クリアコート、スキン、布など、複数のマテリアルレイヤーを、真に高品質な物理的正確さで組み合わせることが可能になりました。

モーションデザイン (Motion Design) が正式版に
モーションデザインツールセットが正式版(Production Ready)となり、コアワークフローへの導入が進んでいます。
これに伴い、パッケージングサポートの強化、Transition Logicの安定性と使いやすさの向上、Remote Control機能のUXリファクタリングによるセットアップ時間短縮など、ユーザーからのフィードバックに基づいた多くの改善が行われました。
さらに、テキストレイアウトにダイナミックな表現を加えるリッチテキスト対応のText3Dが登場しました。新しい専用アセットを使用してText3Dのスタイルセットを作成でき、プロジェクト全体で一貫した設定をどのText3Dアクタにも適用できます。
従来、このようなレイアウトは複数のText3DアクタとAuto-Followモディファイアを必要としましたが、UE 5.7ではインラインで編集できるようになり、アクタ数を削減できます。さらに、テキストの各セクションを個別にリモートコントロールすることも可能になり、フォント、色、サイズなどを柔軟にスタイリングして、動的なUIデザインなどに活用できます。

MetaHumanのアップデート
UE 5.6でエンジン内で直接利用可能になったMetaHumanに、いくつかの新しいアップデートが加えられました。MetaHuman 5.7 プレビュー版では以下の機能が提供されます。
- LinuxおよびmacOSへの対応: Unreal Engine向けのMetaHuman CreatorプラグインがLinuxとmacOSで利用可能になりました。
- ポーズに依存しないコンフォーム: ポーズに依存せず、UV空間の頂点対応を使用したMetaHumanボディのコンフォーム機能が追加されました。
- ヘアスタイルのアートディレクション性向上: ジョイントベースの変形、ペイント、メッシュベースのヘアガイドおよびストランド操作により、髪のアートディレクションが向上しました。
- PythonおよびBlueprint API: MetaHuman CreatorのPythonおよびBlueprint APIにより、MetaHumanキャラクターアセットのほぼすべての編集およびアセンブリ操作をスクリプト化できるようになりました。
- エンジン内キャリブレーションの改善: ステレオカメラペアでキャプチャしたパフォーマンスデータのエンジン内キャリブレーションが改善されました。
- ムードオーバーライドの追加: オーディオ駆動アニメーションに適用されるムードオーバーライドが追加されました。
5.7の正式リリースでは、iPadまたはAndroidデバイスのLive Link Faceを使用して、外部カメラからリアルタイムでアニメーションを生成することも可能になる予定です。
アニメーションの改善
UE 5.6でのアニメーションに関するメジャーアップデートを基に、このリリースでは作業が継続され、より高速でネイティブな機能を提供する新しい実験的な改善が行われています。
セレクションセット
セレクションセットは、リグ内の複数のコントロールへのアクセスを高速化し、アニメーションワークフローを効率化する機能で、このセットをチームで共有して一貫性を保つことが可能です。以前は、アニメーターはこのためにGUIピッカーなどのカスタムツールに頼っていましたが、セレクションセットはよりインハウスな選択肢を提供するものです。

アニメーションモードのリファクタリング
アニメーションモードのリファクタリングによる改善はワークフローを効率化し、ツールをよりスリムなパネルに最小化できるようになったため、ビューポートのスペースをより広く確保できるようになりました。そして、更新されたコンストレイントUXウィンドウは、スペース、コンストレイント、スナッパーを単一のインターフェースに統合し、1つのアイコンからアクセスできます。
モーションマッチングをChooserに統合(実験的機能)
また、UE 5.7では、モーションマッチングをChooserに統合する最初のイテレーションが導入されました。
これにより、開発者はモーションマッチングで選択対象となるアセットを、より細かく制御できるようになります。これまでのリリースではデータベースレベルでの制御しかできませんでしたが、個々のアセット単位での制御が可能になりました。この統合により、最適なポーズを検索するだけでなく、Chooserを通じてゲームロジックなどの追加条件に基づき、アセットごとの結果をフィルタリングすることも可能になります。Chooser内の新しいPoseSearchフィールドがこの複雑な処理を管理し、モーションマッチングからChooserへの統合されたデバッグ機能も提供されます。
リギングツールの改善
リギングツールにもいくつかの実験的な改善が加えられました。
ブレンドシェイプとスカルプティング
ブレンドシェイプとスカルプティングにより、業界標準の柔軟なスカルプティングワークフローがUnreal Engineで利用可能になります。スケルタルエディターツールのアップデートにより、モーフィングシェイプ、ボーン、スキンウェイトをシームレスに作成・編集できるようになりました。

コントロールリグのための物理ワールドコリジョン
ャラクターが環境とリアルに相互作用することを可能にするコントロールリグのための物理ワールドコリジョンが強化されました。
レベルに存在するメッシュや物理ボディをコライダーとして使用し、シミュレーション中に小道具、床、環境とのリアルな接触やインタラクションを駆動させることができるようになりました。
依存関係ビュー
新しく追加されたDependency View(依存関係ビュー)では、コントロール、ボーン、モジュール間の関係性を視覚的に確認できます。データフローが明確になることで、リグのデバッグと最適化が大幅に簡素化されます。
フルボディIK(FBIK)とIKリターゲターのパフォーマンス向上
フルボディIK(FBIK)とIKリターゲタにおいて、パフォーマンスの向上と新たな制御機能が追加され、ランタイムで高いパフォーマンスを発揮するリターゲティングが可能になりました。特にFBIKは、パフォーマンスに大きな負荷をかけることなくポージングを改善し、約20%の速度向上が見られます。
IKリターゲターの改善
IKリターゲタが改善され、地面との接触(フットコンタクト)や、プロポーションが大きく異なるキャラクターのハンドリングが向上しました。これにより、多種多様なキャラクター間でアニメーションをより正確に転送でき、アートディレクションの高速化に繋がります。
骨盤が地面にめり込むのを防ぐ「Crotch Height(股の高さ)」の定義や、足が床に近いときに垂直位置を維持する「Floor Constraint(床コンストレイント)」などが追加されています。
Spatially Aware Retargeting(実験的機能)
新しい実験的機能として「Spatially Aware Retargeting(空間認識リターゲティング)」が導入されました。
これにより、アーティストはキャラクター間の自己衝突を心配することなくアニメーションを転送でき、リターゲティング後のアニメーションクリーンアップ作業を大幅に削減することが期待できます。
Rig Mapper(実験的機能)
同じく実験的機能である「Rig Mapper」は、IKリターゲタ内に統合されたアニメーションリターゲティングツールです。
このツールは、異なるリグ間でのアニメーションワークフローに新たな柔軟性をもたらし、ARKitのアニメーションをMetaHumanに適用したり、逆にMetaHuman AnimatorのアニメーションをARKitキャラクターに使用するなど、異なるキャラクターセットアップ間でモーションを転送することを可能にします。初期テストでは良い結果が得られているとのことです。
AIアシスタント
AIアシスタントが導入され、Unreal Engineを離れることなく、エディタ内の専用パネルから、質問をしたり、コードを生成したり、ステップバイステップのガイダンスに従ったりすることができるようになりましす。
これにより、オンラインで検索するために集中を中断することなく、エディタ内で直接、即座のヘルプ、サンプル、トラブルシューティングのヒントを得ることができ、開発者は時間を節約し、作業の流れ(フロー状態)を維持できます。
AIアシスタントは、タスクのステップバイステップの指示、文脈に沿ったガイダンスやヒントの提供、開発トピックのトラブルシューティング、ワークフローを加速するためのコード例の生成などが可能です。また、チャット履歴を参照したり、回答をプロジェクトにシームレスにコピー&ペーストしたりすることもできます。このAIアシスタントは、UEFNやデベロッパーコミュニティで既に利用可能な、Unreal Engineを理解し、開発を加速させるために特別に訓練されたAIと同じ技術を基盤としています。
なお、プレビュー期間中にUIが利用可能になっていることがありますが、AIアシスタントは5.7.0の正式リリースと共にローンチされる予定であり、5.7プレビュー版では利用できません。
他にもシミュレーションやライブリンクなど、新機能や改善が多数追加されています。
利用について
Unreal Engine 5.7 プレビュー版は、Epic Gamesランチャー、GitHub、Linux向けでダウンロード可能です。
このプレビューリリースで追加の問題を発見した場合は、バグ報告のガイドラインに従って報告してください。


























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