2024年2024年11月19日(現地時間)- Blender Foundation とオンライン開発者コミュニティはBlender 4.3 のリリースを発表しました。
当初予定されていたリリース日から1週間程延期されてのリリースとなりました。
Blender 4.3 新機能紹介
Blender 4.3の 主要な新機能としては、グリースペンシルとブラシアセット、そしてグリースペンシルに関連した新機能を含むジオメトリノードがあります。ここでは、その他の細かい新機能も紹介したいと思います。
ジオメトリノード
For Each Element
新しいFor Each Elementゾーンが追加されました。これにより、ジオメトリの各要素(点や面など)に対してゾーン内のノードを評価することができるようになりました。
各要素の評価の出力は、新しいジオメトリまたは新しいアトリビュートに結合されます。

一般的にFor Eachは、プログラミング言語において、リストや配列などのコレクションの各要素に対して繰り返し処理を行うためのループ文を表します。上記の例では、3x3に配置されたポイントのインデックスの値(0~8)に3を追加した値をStarのポイント数にして星型を作成する処理を繰り返し行っています。
このゾーンの使用は、これまで不可能であった、あるいは非常に複雑であった多くのユースケースに最適です。単純なフィールド評価のパフォーマンスは、ゾーンの内部で同じ数学ノードを評価するよりもはるかに優れているとのことです。
グリースペンシル
ジオメトリノードがグリースペンシル(Grease Pencil)データの扱いをサポートしました。
ジオメトリノードから見ると、グリースペンシルのジオメトリはレイヤーのフラットなリストで構成され、各レイヤーはカーブを持っています。レイヤー、カーブ、カーブコントロールポイントはカスタムアトリビュートを持つことができます。

すでにカーブを扱う多くのノードは、グリースペンシルデータも暗黙的に扱うように更新されました。これらの場合、各レイヤーは独立して処理されます。

■変換ノード(カーブのグリースペンシル化、グリースペンシルのカーブ化)
すべてのカーブ編集機能を利用するために、対応する変換ノードを使用してグリースペンシルをカーブに変換して戻すことができます。変換はまだ完全にロスレスではありませんが、すべての一般的なアトリビュートとマテリアルは引き継がれます。変換ノードは、他のジオメトリタイプを生成するための入力としてグリースペンシルを使用したり、ジオメトリノードでゼロからグリースペンシルデータを生成するためにも使用できます。
グリースペンシルと他のジオメトリは互換性のない種類のマテリアルを使用しますが、どちらの種類のマテリアルもマテリアルソケットを使用することに注意してください。
また、グリースペンシルをカーブに変換する際、各レイヤーは別々のカーブインスタンスになります。これにより、各レイヤーを個別にカーブとして処理できます。Layers as Instances入力を無効にすると、すべてのレイヤーのストロークを含む単一のカーブジオメトリが出力されます。同様に、インスタンスはカーブをグリースペンシルに変換するときにレイヤーに変わります。

■Merge Layersノード
Grease Pencilのオリジナルデータではレイヤー名は固有のものでなければなりませんが、ジオメトリノードではそうではありません。レイヤー名を固有にするとかなりのコストがかかるため、これはパフォーマンスにとって重要です。グリースペンシルモディファイアは適用すると、同じ名前のレイヤーはすべて1つにマージされます。これは、新しいMerge Layersノードを使ってジオメトリノードで明示的に行うこともできます。レイヤーは、名前またはカスタムグループ ID によってマージできます。

パックされたベイク
Bake(ベイク)ノードまたはSimulation(シミュレーション)ゾーンで作成されたベイクは、.blend(ブレンド)ファイルにパックできるようになりました。
これまでは、ベイクデータは常に別々のファイルに保存されていました。.blendファイルにまとめることで、共有性が向上し、ベイクの開始が簡単になります。非常に大きなベイクの場合は、オンデマンドで読み込むことができるため、別々に保存することが推奨されます。
ベイクはデフォルトでパックされていますが、ベイクターゲットはジオメトリノードモディファイアごと、または個々のベイクごとにカスタマイズできます。一度ベイクされたデータは、ロスレスでパックおよびアンパックすることができます。

また、ベイクのサイズを確認することも可能になりました。
新しいノード
ギズモ(Gizmo)
ノードグループにギズモを追加できるようになりました。これにより、ノードエディタやモディファイアスタックに入ることなく、3Dビューポートで直接ノードツリーの入力を編集できるようになりました。

この初期バージョンでは、3種類のギズモを使用できます:
- リニアーギズモ (Linear Gizmo): スカラー値をビューポート内でリニアに動かすことができます。これは、寸法やカウントなどを設定するのに適しています。
- ダイヤルギズモ(Dial Gizmo): ダイヤルの動きでスケール値をコントロールできます。角度の入力に最適です。
- トランスフォームギズモ(Transform Gizmo): 変換マトリックスの値を制御できます。これは実際には、平行移動、回転、スケールのための複数のギズモの組み合わせです。また、3Dビューポートのグローバル/ローカルトランスフォームの向きも考慮されます。
これらのノードを使うときは、それ自体が入力値ではないことを理解することが重要です。代わりに、すでに存在する他の入力値に付加して、それらをコントロールするものです。これらのノードを使う必要があるのは、ギズモのあるノードグループをオーサリングするときだけで、他の人が追加したギズモを使うときには必要ありません。
- モディファイア インタラクション
- ノード インタラクション
Transform Geometryノードのような組み込みノードにはまだギズモがありませんが、後のリリースで追加される予定です。
警告(Warning)
ノード グループにカスタム警告を追加できる新しい警告ノード(Warning)が追加されました 。
デフォルトでは、全ての警告タイプは親ノードグループに転送されますが、新しい Warning Propagation ノード設定では、特定の警告がさらに上に伝わることを無効にすることができます。これは、内部ノードがエンドユーザには関係のない警告を持つ可能性のあるアセットで使用できます。

また、ジオメトリノード(Geometry Nodes)モディファイアの警告の表示が再編成されました。
警告はパネルに表示され、重要度とアルファベット順に並ぶようになりました。

また、ジオメトリノードモディファイアのノードによって生成された警告は、Pythonでもアクセスできます。
for warning in modifier.node_warnings:
print(warning.type, warning.message)
ジオメトリ名設定(Set Geometry Name)
新しい Set Geometry Name ノードでジオメトリに名前を付けることができるようになりました。オブジェクト名やコレクション名に基づいて名前を初期化するノードもあります。名前はほとんどのノードに伝搬されます。ジオメトリに名前を付ける主な目的は、より複雑なインスタンス階層のデバッグを簡素化することです。この目的のために、スプレッドシートはネストされたインスタンスのデータも表示できるようになりました。

ユーティリティノード
いくつかのセットアップに役立つ、小さな新しいノ ードが追加されました。
- Hash Valueノード
- Integer Mathノード
- Matrix Determinantノード
- Value to Stringノードが浮動小数点精度の問題のない整数の変換をサポートしました
その他
- ノードのタイミングがより正確になりました。 (🔗)
- シミュレーションゾーンのスキップチェックボックスが誤ってクリックしないように非表示になりました。(🔗)
- ノードツールでスカルプトマスクにアクセスできるようになりました。 (🔗)
グリースペンシル
グリースペンシルは、より深い制限を取り除き、全体的なパフォーマンスを向上させるために書き直されました。
書き換えの焦点は Blender 4.2 との互換性と機能の同等性でしたが、このリリースにはいくつかの新機能も含まれています。
レイヤーグループ
レイヤーをグループ化する新しい方法としてレイヤグループ(Layer Groups)が追加されました。
ここでは、グループ内のすべてのレイヤーの表示、ロック、オニオンスキニングを簡単に切り替えたり、カラータグを使って色分けすることができます。

ブラシアセット
Blenderの他のエリアと同様に、グリースペンシルはブラシアセットシステムを使用するようになりました。

詳細はスカルプトのブラシセクションを参照してください。
ドロー(Draw)ツールの変更
ドローツールの以下の動作が更新されました。
■半径の基準(Radius Unit)
Blender 4.2 では、グリースペンシル(Grease Pencil)ブラシはブラシのサイズを定義するのに 「pixels」 を使用していました。デフォルトの「Strokes Thickness
」 設定が「World Space」
だったため、この単位は誤解を招くものでした。Blender 4.3では、ブラシの半径単位を View
か Sceneに
設定できるようになりました。
View(ビュー)
を使うと、ブラシのサイズは現在のビューを基準としたピクセル単位になります。Scene(シーン)
を使用すると、ブラシのサイズはシーンのLength
単位で定義されます。デフォルトでは、このオプションはメートル単位です。
■間隔(Spacing)
Blender 4.2 では、これはInput Samples
と呼ばれ、サンプル間のより多くのポイントを生成するために使用されていました。この設定は Spacing と呼ばれるようになりました。現在のブラシサイズに対するパーセンテージで定義されます。
例えば、Spacingを100%に設定すると、ドローツールはすべての点が次の点から最大でブラシサイズ1つ分離れます。50%に設定すると、すべての点が次の点からブラシサイズの最大50%(または2分の1)離れている状態になります。
■アクティブスムーズ(Active Smoothing)
アクティブスムージングのアルゴリズムが書き直されました。反復カーブフィッティング(iterative curve-fitting)アプローチに基づくようになり、 浮いたような感じではなく、より正確な感じになりました。
アクティブスムーズ
設定は、カーブフィッティングを元のサンプルにどの程度近づけるかをコントロールするものです。値を高くすると、線は滑らかになりますが、精度は落ちます。
■スクリーンスペース簡略化(Screen Space Simplify)
Blender 4.2では、ドローツールのSimplify(簡略化)
設定は現実世界の距離で測定されていました。このため、スケールやズームレベルによって挙動が大きく異なっていました。
これを解決するために、設定はピクセルで測定されるようになりました。値が大きいほど、より多くのポイントが削除されます。
■ストロークジャンプの修正
Blender 4.2 では、ドローツールは一時的なストロークバッファを使用し、ペンを離した後にストロークが “ジャンプ”(メッシュの後ろなど)することがありました。4
.3では、ドローツールは正しい位置に直接描画するようになりました。


消しゴムツールの変更
消しゴムは、ストロークを「カット」できるように書き換えられました。単に点を削除するのではなく、消しゴムのエッジの交点を正しく解決し、ストローク上に新しい点を作成するようになりました。
ソフト
消しゴムでもこれは行われ、消しゴムの中心から外側に放射状に広がる複数レベルの透明度を持ちます。
ジオメトリノード
グリースペンシルがジオメトリノード内でサポートされるようになりました。
詳細はジオメトリノードセクションを参照してください。
グラデーションツール
塗りつぶし( Fill )グラデーションを編集するための新しいツールが追加されました。
このツールは、編集モードで補間ツールの下のツールバーにあります。

ユーザーは、塗りつぶしストロークを選択し、グラデーションツールをアクティブにした状態でクリックドラッグすることで、塗りつぶしグラデーション(マテリアル設定で定義)を変更することができます。
パフォーマンスの改善
グリースペンシルは、可能な限り複数のスレッドを使用するようになりました。
ハードウェアや使用可能なCPUコア数にもよりますが、モディファイアの実行などグリースペンシル内の多くの操作が同等かそれ以上に速くなることが想定されています。
ファイルサイズの改善
グリースペンシルのデータはよりコンパクトになりました。これはファイルサイズの大幅な減少につながります。この減少はロード時間の短縮にもつながり、アンドゥ(元に戻す)の速度も向上させることができます。
以下は、テストファイル (圧縮(Compress
)オプションを使用して保存) のディスク上のサイズの比較です。
テストファイル | Blender 4.2 | Blender 4.3 | 変化 |
---|---|---|---|
Pirate by Sergi Miranda | 158.8 MB | 64.4 MB | ~2.5x smaller |
Picknick by Susanne Weise | 147.3 MB | 42.8 MB | ~3.4x smaller |
その他の変更
- ドローモードのツールの並び順が変更されました: プリミティブツールはグループ化され、最初のセクションにあるドローツールの一部となりました。
- トリムツールは、同じストローク上で複数のトリムを同時に行えるようになりました。
- 3Dビューの右上のレイヤー選択ポップオーバーがトップバーに移動しました。
Canvas
オプションがオブジェクトデータプロパティから移動しました。3Dビューポートのオーバーレイの一部になりました。- Grease Pencilオブジェクトは、
Envelope Weights
オプションを使ってアーマチュアにペアレントできるようになりました。
変換と互換性について
4.3以降、グリースペンシルオブジェクトはファイルロード時に自動的に新しいアーキテクチャに変換されます。
後方互換性はないことにご注意ください。つまり、4.3以降で作成または保存されたグリースペンシルのファイルは、4.2以下では正しく読み込まれません。
Blender 4.3以前に作成されたファイルは、4.3で開いてもほとんど同じように見えるはずですが、以下の違いがあります。
- Noise モディファイアは異なるノイズ結果を生成する可能性があります。
- 複数の 「Time Offset 」モディファイアが使用されている場合、スタック内での順番(他の 「Time Offset 」モディファイアとの相対的な順番)が4.2とは異なるため、結果が異なる可能性があります。
■レイヤー調整
Blender 4.3では、レイヤー調整(Layer Adjustments)はレンダリング前に適用されていましたが、4.3ではモディファイアの評価の前に適用されるようになりました。
これによって、モディファイアはレイヤー調整による変更を利用することができ、評価されたジオメトリもこれらの変更を考慮することができます。
4.3以前に作成されたファイルが同じように見えるように、レイヤー調整はモディファイアに変換され(スタックの最後)、デフォルト値にリセットされます。
■厚みスケール
Blender4.2のグリースペンシルデータには、「Thickness Scale」(pythonではpixel_factorと
呼ばれる)設定がありましたが、この設定は4.3ではなくなりました。
4.3以前に作成されたファイルが同じように見えるように、厚みスケールはスタックの一番最後にあるモディファイアに変換されます。
廃止予定の機能
以下アのような4.2 に存在する一部の機能は削除されました。これは主に、アーキテクチャの変更と保守の難しさが理由です。
- スクリーン空間のストロークの太さ(Screen Space Stroke Thickness):ストロークは常に 「World Space 」太さモードになりました。ジオメトリノードモディファイアを使用すると、「Screen Space 」太さエフェクトを再現することが可能です。基本的なセットアップはここからダウンロードできます。
- 補間ツールの選択順序:補間するストロークのペアを指定するために使用されていた選択順序(編集モード)が削除されました。この機能の移植は困難であったため、将来的にはより良いバージョンに置き換えることになりました。
- 描画ガイド:描画モードのガイドは 4.3 には移植されていません。バグを増やさずにコードを変換するのが難しい、複数の問題がありました。これは将来のリリースでより高性能なシステムに置き換えられることが決定されました。
- カーブ編集モード:編集モードでは、選択したストロークをベジェカーブに変換する「カーブ編集」を切り替えることができました。この機能は、
Curve Type
ストロークの に置き換えられました。編集モードでは、Set Curve Type
オペレータを使用してストロークの曲線タイプを変更できます。 - Python APIの変更:Grease Pencil の Python API は、新しいデータ構造に対応するために書き直されました。アドオンを 4.3 に移行したい開発者はこちらから変更点を確認することができます。
スカルプト
ブラシアセット
4.3ではブラシの扱いが大きく変更され、すべてのスカルプトおよびペイント モードのブラシがプロジェクト間で共有されるアセットライブラリに保存されるようになりました。
Blender に同梱されている Essentials アセットライブラリには、それぞれ一貫したスタイルでデザインされた新しいサムネイル付きの 130 個のデフォルトブラシアセットが含まれています。ブラシは、既存のビルトインブラシを複製することで新しく作成可能で、各ブラシは、テクスチャやその他の依存関係がパックされた状態でユーザーアセットライブラリ内の独自のブレンドファイルに保存されます。
ブラシ選択インターフェイスも再設計されており、アセットライブラリ内のブラシにすばやく簡単にアクセスできるようになっています。
ツールバーの代わりにブラシを選択する主要な場所はアセットシェルフとなり、ブラシはツールごとにグループ化されるのではなく、アセットカタログに整理されています。
スカルプトモードとペイントモードで、3Dビューポートとイメージエディタの下部にアセットシェルフが水平に表示されます。プロジェクトのニーズに応じて、カタログのサブセットを表示するように設定することも可能です。また、ブラシはツール設定からポップアップで選択することもできます(ショートカット:Shift Spacebar
)。
ブラシアセットについては以下の記事でも紹介しているのでご参考に。
ブラシの変換について
既存のブラシを使用可能にするには、ユーザーアセットライブラリフォルダのブレンドファイルに保存します。デフォルトでは、このフォルダは Documents/Blender/Assets です。次に、Blender Fileビューのアウトライナーで、各ブラシを右クリックし、アセットとしてマーク(Mark as Asset)します。
より詳しい情報はマニュアルへ
ブラシの更新
新しいブラシのサムネールの他に、既存のブラシに様々な編集が加えられました。
- Mask =ハードネスを上げ、強度を1.0に。
- Multiplane Scrape =「Plane Angle 」を0に設定し、ノーマル半径を減少。
- Density = オートスムースを追加。
- Clay Strips = コミュニティのフィードバックに基づいてオーバーホール。
- Clay = 自動スムースを微調整し、半径の圧力感度を無効化。
- Nudge & Thumb =ノーマル半径を小さくし、面の向きを検出しやすく。
- Relax Slide = ストロークの間隔を小さく。
- Crease = 他のブラシと区別するためにCrease Polishに改名。
新しいブラシ
メッシュオブジェクト用に様々な新しいブラシが導入され、基本ブラシがより充実しました。
■ペインティング(テクスチャ、頂点、スカルプト)
- Erase Hard、Erase Soft、Erase Hard Pressure
- Paint Hard、Paint Soft、Paint Hard Pressure、Paint Soft Pressure、Paint Square、Paint Blend
- Blend Hard、Blend Soft、Blend Square
- Airbrush、Sharpen
■一般的なスカルプト
- Grab 2D、Grab Silhouette
- Crease Sharp、Elastic Snake Hook、Pull、 Plateau、Trim、Relax Pinch
■クロススカルプティング – 布のスカルプティングブラシが様々なブラシにオーバーホールされました
- Pinch Folds Cloth、Pinch Point Cloth
- Grab Cloth、Grab Planar Cloth、Grab Random Cloth
- Drag Cloth、Push Cloth、Inflate Cloth、Expand/Contract Cloth、Bend/Twist Cloth、Stretch/Move Cloth、Bend Boundary Cloth、Twist Boundary Cloth

パフォーマンス向上
問題の解決、パフォーマンスの向上、将来の開発を容易にするために、ブラシ評価、ビューポート描画、およびスカルプトモードの他の多くの部分がほぼ完全に書き直されました。これにより以下のようなパフォーマンスの向上がされています。
- スカルプトモードへの移行が約5倍高速化(Ryzen 7950xで1600万面メッシュを使用した場合、11秒から1.9秒に短縮)。
- メッシュのスカルプトでは、ブラシの評価が約8倍高速化(600万面メッシュの大部分をスカルプトするベンチマークでは2.9秒から0.36秒に短縮)。
作業の全リストは開発タスクで確認できます。
その他
- ボクセルサイズ操作(Voxel Size operator)がデフォルトで相対モードで動作するようになりました。 (🔗)
- 投げ縄ツール(lasso tools)に、オプションでストロークの安定化(手動)が追加されました。 (manual) (🔗).
- ポリラインジェスチャ(polyline gesture)をダブルクリックで終了できるようになりました。 (🔗)
- ノードツールでスカルプトマスクにアクセスできるようになりました。(🔗)
- Mask from Boundary(境界からのマスク) 操作が追加され、メッシュまたはフェイスセットのアイランドに基づいてマスク値を変更できるようになりました。(manual) (🔗)
アニメーション&リギング
ボーンのスポイト
ボーンのプロパティに、ボーンをピックするためのスポイトボタンが追加され、3Dビューポートまたはアウトライナーからボーンを選択できるようになりました。
3Dビューポートでは、ボーンはアーマチュアが Pose Mode か Edit Mode にあるときのみピックできます。Object Modeの間は、選択は失敗し、警告が表示されます。
その他
- プロパティエディタ:アクションセレクタが、プロパティエディタのデータブロックに表示されるようになりました。これにより、メッシュ(およびそのシェイプキー)、マテリアル(およびそのシェーダノードツリー)、ワールド(およびそのシェーダノードツリー)、シーン、カメラ、ライト、その他多くのデータブロックタイプのアクションを選択できるようになりました。(🔗、🔗)
- キーフレーム:キーを挿入すると、他のキーはすべて選択解除され、新しく作成されたキーだけが選択されるようになりました。これは Python API には影響しません。Pythonで簡単に同じ結果を得るために、アクションにdeselect_keysという新しい関数があります。(🔗)
- モーションパス:テーマ項目に、現在のフレームの前後のモーションパス線の色を設定する項目が追加されました。設定は 「3D ビューポート(3D Viewport)」の下にあり、「現在のフレームの前(Before Current Frame)」と「現在のフレームの後(After Current Frame)」となっています。(🔗、Manual)
コンポジター
- EEVEE のマルチパス合成のサポートが追加されました。 (🔗)
- ホワイトポイント変換モードが [Color Balance (カラーバランス)] ノードに追加され ました。これは、[White Balance (ホワイトバランス)] ビューの変換と同様に動作しますが、ターゲットとなるホワイトポイントを制御することもできるようになりました。 (🔗)
- ファイル出力(File Output)ノードに新しいグローバルなレンダリングとして保存(Save As Render)オプションが追加されました。(🔗)
- 自動レンダリングオプションが削除されました。 (🔗)
Cycles
ボリュームの散乱
ボリュームの散乱(Volume Scattering)ノードでは、より多くの位相関数をサポートするようになり、位相関数を選択して各パラメータを個別に調整できるようになりました。
選べる位相関数は以下の通りです:
- Fournier-Forand:水中環境用。
- Rayleigh:主に空の散乱、海面の色などに使用されます。
- Double Henyey-Greenstein:惑星大気やカスタムの前方/後方散乱に使用。
- Draine:主に星間ダストに使用。
- Mie:雲や霧に使用。

- Henyey-Greenstein
- Mie


- Henyey-Greenstein
- Fournier-Forand


その他
- LinuxでのHIP-RTサポート:ハードウェアアクセラレイレーシングのサポートがLinuxプラットフォームに追加されました。 ( 🔗 )
- Oren-Nayar BSDF(粗さが0でないDiffuse BSDFに使用)がエネルギー保存型になり、マルチスキャッタリングを考慮するようになりました。この結果、既存のマテリアルでは若干明るく飽和した結果になります。 (🔗)
- プリンシプルBSDFにディフューズラフネス(Diffuse Roughness)入力が追加され、ディフューズBSDFのラフネス入力のように動作するようになりました。 (🔗)
- MetalバックエンドからのAMDおよびIntel GPUサポートが削除されました。 (🔗)
- パノラマカメラがマッピングオプションとして中心円筒図法(central cylindrical projection)をサポート。(🔗)
- OptiX の B スプラインをよりコンパクトに表現。注:これによりドライバの最小バージョンが 495.89 に増加。 (🔗、🔗)
- Cycles AMD HIP バックエンドの Vega のサポートが削除。 ( 🔗 )
EEVEE & ビューポート
ライト&シャドウリンキング
すでにCyclesで利用できるライト&シャドウリンキング(Light & Shadow linking)と同等の機能がEEVEEにも追加されました。
ライトリンクでは、ライトはシーン内の特定のオブジェクトにのみ影響するように設定できます。シャドウリンクはさらに、どのオブジェクトがライトのシャドウブロッカーとして機能するかをコントロールすることが可能です。
これは、物理法則をくつがえすことで、よりアーティスティックなライティングコントロールを可能にします。例えば、ショットの環境とキャラクターで、異なるライトの設定を持たせることができます。キャラクターを目立たせるために、専用のリンクされたリムライトを持ったり、環境のオブジェクトがそれを遮らないようにシャドウリンクを使ったりできます。

Vulkan バックエンドビューポート (実験的)
まだ実験的な機能ですが、Windows と Linux では、Vulkan を使用してユーザー インターフェイスをレンダリングできるようになりました。このリリースは、互換性に関するフィードバックを取得し、モジュールを使用するアドオン開発者がgpuアドオンをテストできるようにすることを目的としています。
環境設定のシステムセクションでは、グラフィック バックエンドを OpenGL と Vulkan の間で切り替えることができます。
ハードウェアサポート
Windows
- Nvidia: GTX900以降のモデルは、NVIDIAの最新公式ドライバーでサポートされています。
- Amd: RX 400シリーズ以降のモデルは、AMDの最新公式ドライバーでサポートされています。
- Intel: UHD、IRIS、ArcベースのGPUは、Intelの最新ドライバーでサポートされています。ノートパソコンユーザーは、Intelのウェブサイトからドライバーをダウンロードする必要があります。ノートパソコンメーカーから提供されるドライバーはサポートされない可能性があります。
- 注意: 現在、Intelドライバーはクラッシュする問題があり、調査中です。
Linux
- Nvidia: GTX900以降のモデルは、NVIDIAの最新公式ドライバーでサポートされています。
- Amd: RX 400シリーズ以降のモデルは、AMDの最新公式ドライバーでサポートされています。旧型のAMD GPUは、mesaドライバーでサポートされています。
- Intel: Intel UHD、IRIS、ArcベースのGPUは、mesaドライバーでサポートされています。
その他
- 高速GI近似(Fast GI Approximation)のトグルが追加されました:最大粗さ(Max Roughness)の設定はそのパネル内に移動し、名前はしきい値(Threshold)に変更されています。高速GI近似はしきい値が最大値(1.0)以下のときのみ効果を発揮するので、その値のときはパネルの残りの設定はグレーアウトします。
モデリングとUV
新しいUV展開メソッド
新しいアンラッピングメソッド 「Minimum Stretch」が追加され、結果を反復的に改良することによって、より歪みの少ない結果が得られるようになりました。
- Angle Based
(default) - Minimum Stretch
(SLIM) - Conformal



これはUV>展開メニューから使用できます。
内部的にはSLIM(Scalable Local Injective Mappings)というアルゴリズムが使用されています。

その他
- ベベルモディファイアに、カスタム属性をベベルウェイトとして使用するオプションが追加されました。(🔗).
- マテリアルを選択物にコピー(Copy Material to Selected)は、選択されたオブジェクトのリンクタイプとアクティブなオブジェクトのリンクタイプを一致させるようになりました。これまでだと、メッシュ データブロックのマテリアル スロットが変更され、ユーザの意図とは異なる場合がありました。新しい動作では、選択されたオブジェクトがオブジェクトリンクされたマテリアルを使用するように変更されます。 (🔗).
レンダリング
シェーディング – Metallic BSDF
新しい Metallic BSDF ノードがシェーダエディタに追加されました。Metallic BSDF は、既に存在しているもののアクセスしにくいメタリック マテリアルの設定を小さなノードで公開します。
これらの設定は次のとおりです:
- プリンシパル BSDF で現在使用されている F82 Tint Conductor Fresnel 近似。
- 以前はカスタムOSLスクリプトに限定されていたConductor Fresnel(実際にはphysical conductor)。
F82 Tint近似はアーティストフレンドリーで、入力として色を使います。一方、Conductor Fresnel の使用は少し複雑で、入力として色チャンネルごとにIORとExtinction係数を入力として使いますが、実世界の金属に対してやや正確な結果を得ることができます。
EEVEEはConductor Fresnelタイプをサポートしていないため、内部的にIORとExtinction係数を色に再マッピングし、F82 Tint近似で使用するようになっています。

ニッケルと銅を再現したMetallic BSDF
新しいGabor Noiseテクスチャノード
方向と幅を制御できるランダムなインターリーブバンド用のプロシージャルなGaborノイズを作成できる新しいテクスチャノードが追加されました。

標準的なNoise Textureノードのような無指向性ノイズを作成するために使用することもできますが、計算コストが高くなるので、そのような場合はNoise Textureノードを使用するのが推奨されています。
その他
- ビュー変換が表示画像のホワイトバランスをサポートするようになりました。これは、指定されたホワイトポイント(温度とチントで表示)がディスプレイ上で白になるように色をマッピングします。
ビデオシーケンサー
タイムラインのアップデート
ストリップの接続と切断で、選択と変換が簡単になりました。

さらに、ムービーとイメージストリップのサムネイルのロードが速くなり、「ちらつき(flickering)」がかなり少なくなりました(例えば、アンドゥ時の再ロードがなくなりました)。高密度のタイムラインでは、サムネイルの再描画も数倍速くなっています。
パフォーマンスの向上
以下のような多数のパフォーマンスの向上が行われています。
- カラーバランスモディファイアが数倍速く(通常画像の場合)、または少し速く(フロート/HDR画像の場合)なりました。🔗
- 彩度(Saturation)と乗算(Multiply)ストリップカラーコントロールが数倍高速化(マルチスレッド化)。🔗
- Tonemapモディファイアが10-15倍高速化(マルチスレッド化された輝度推定、色変換の最適化)。🔗
- アルファオーバーブレンドモードを使用するボトムチャンネルの画像について、実際の「透明な黒とのブレンド(blend with transparent black)」ステップをスキップできるようになりました。これは特に、RGBA チャンネルが下部にある EXR 画像などのフロート画像に役立ちます。🔗
- 色変換に関連する画像処理の様々な部分が高速化されました (特に float/HDR 画像)。(🔗, 🔗, 🔗, 🔗, 🔗)
- フレームダウンスケールステップをマルチスレッド化することにより、100% より低い解像度でムービープロキシを再構築するのが高速化。🔗
- 複雑なタイムラインの描画が高速化:
その他
プレビュー
- プレビューエリアがスナップに対応しました。ソースポイントには、選択され表示されているすべてのストリップの四隅と原点が含まれます。スナップターゲットはプレビュー境界、プレビュー中心、または他のストリップのコーナー/原点です。🔗
- プレビューエリアのデフォルトツールがボックス選択になり、ツールバーがデフォルトで表示されるようになりました。🔗
ユーザーインターフェイス
- モディファイア: モディファイア固有の設定を先に、マスクの設定が後に移動。🔗
サウンド
- サウンドストリップをサブフレームレベルで、「Slip」 オペレータ(Shift を押しながら)またはサイドバーで直接調整できるようになりました。🔗
ビデオシーケンサーの開発状況については最近開催された以下のワークショップの記事をご参考に
パイプライン、アセット、I/O
■USDのアップデート
- 点群(Point Cloud)のエクスポートがサポートされました。 (🔗)
- インポート時にMaterial purposesが選択可能になりました。 (🔗)
- USD ファイル内の @asset@ パスの取り扱いが改善されました。 (🔗)
- 以前のフレームから変更されていない場合、アニメーション属性データをより効率的にエクスポートできるようになりました(🔗)
■glTFのアップデート
インポーター
エクスポート
- UDIMマテリアル名をタイル番号で設定 (🔗)
- カスタム属性のクオータニオンとマトリックス属性タイプを管理 (🔗)
- リーフボーンの最後尾でジョイントリーフのエクスポートが可能に (🔗)
- ログ機能
- Hook UI: ドローコードのインポートとエクスポートを区別 (🔗)
ユーザーインターフェイス
一般
- データブロック ID セレクターのホバー ツールチップには、画像、ムービー、フォントのプレビューが表示されるように。

- 2D 領域のズームでツールチップのサイズが変わらないように。
- レンダリングモードでビューポートからカラーピッキングを行うと、ビュー変換が適用されずに、その位置のリニアカラー値が返されるようになりました。
- 「増分保存(Save Incremental)」メニュー項目が、誤って選択されるのを減らすため、そのセクションの下に移動。
- 単一のエディタ領域を持つウィンドウに説明的なタイトルが表示されるように。

- 最大解像度スケールが拡大されました。インタラクティブでは 3.0 倍、非インタラクティブでは 6.0 倍です。
- 非正規のウェイトを持つ UI フォントを選択した場合、テキストのウェイトが正しく変更されるように。
- 「Widget Label 」のテキストスタイルが削除。
- ツールチップに新しいテキストスタイル追加。

- VSE ハンドル操作用にカスタムプラットフォーム固有のマウスカーソルが追加。

- ツールチップが常にすべての項目の最後に「. 」を付加しないようになりました。
- UIリストとツリーアイテムにパッディングが追加されました
- VSE および NLA のやり直しパネルにスクロールパディングが追加。
- ファイルブラウザのサムネイルファイルタイプのアイコンはアイテム境界の隅に移動。
- 該当する場合、タイトルバーのバージョン文字列に 「LTS」 を追加。
- カスタムカーブの制御点が大きくなりました。
- アセットブラウザ: わかりやすくするために、「すべて(All)」ライブラリのドロップダウン項目の名前を「すべてのライブラリ(All Libraries)」に変更。
- カラーサンプリングのパフォーマンスが改善。
- コピー保存操作で、現在のファイルの「dirty」ステータスがクリアされないように。
- Autokeying インジケータが有効な場合、赤で表示されるようになりました。
- リサイズ領域のヒットサイズが増加

- タイムライン (および同様のエディタ) では、スクロール バーのサイズが非常に短い場合、スクロール バーが非表示になります。

- 最近使ったファイルリストから見つからないアイテムだけをクリアするオプションが追加。
- 最近使ったファイル(Recent Files)リストで見つからなかったアイテムが自動的に削除されないように。
- カラーピッカーが刷新。

以上となります。正式リリース後にも改めてまとめたいと思います。
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