2024年7月16日(現地時間) – Blender Foundation とオンライン開発者コミュニティは Blender 4.2 LTS のリリースを発表しました。
新機能ハイライト
このリリースでは、待望のEEVEEのアップデート、Cyclesやコンポジターの強化、オンラインの Extensions Platform などの新機能が追加されました。Blender 4.2は、LTS(長期サポート)リリースとなっており、今後2年間、改善や修正が継続して行われます。
次の公式動画で新機能を確認することができます。
EEVEE NEXT
次世代のレンダーエンジンEEVEEがこのリリースの目玉です。ゼロから完全に書き直され、グローバルイルミネーション、ディスプレースメント、より優れたSSS、ビューポートモーションブラーなどが可能になりました。
■ライティング
スクリーンスペースのグローバルイルミネーションがサポートされ、ライティングがより容易になりました。
EEVEEは、ワールド環境から強い光を自動的に抽出して太陽の光として扱うことができるようになったことにより、ライティングの質が向上しリアルな影が投影されるようになりました。
■ディスプレイスメント
ディスプレイスメント(displacement)がEEVEEでサポートされました。
Cyclesのように、マテリアルを 「Displacement and Bump」に設定すると、真のディスプレイスメントとバンプマッピングを組み合わせて、より細かいディテールを表現できます。頂点位置は変更されます。
■サブサーフェススキャッタリング
サブサーフェススキャッタリングがオブジェクト間でリークしないようになり、エネルギーロスがなくなりました。
サブサーフェスの半透明 ( Translucency ) は常に計算されるようになり、関連するオプションは削除されています。
■ボリューム
ディザ(Dithered)ボリューメトリックにより、シーンをナビゲートする際の結果がより安定するようになりました。
■モーションブラー
モーションブラーがカメラビューを通して3Dビューポートで見えるようになり、Cyclesにマッチしたカスタムシャッターカーブに対応しました。
■その他
- 仮想シャドウマップ
- 無制限のBSDF
- 新しい透明な影のオプション。
- ライトの数は無制限に。
- ライトがレイの可視性オプションをサポートするようにな。
- マルチスレッドシェーダーコンパイル
- 洗練されたユーザーインターフェース
- シャドウマップレイトレーシング
- 光は屈折面を通して見えるようになりました。
- 光沢のある照明がオブジェクトの背面に漏れなくなりました。
- 被写界深度の品質向上
- 影のための新しいバックフェースカリングオプション。
- マテリアルディザリングレンダリング方法
- 厚さ出力
- 改良されたブレンドマテリアル。
- レイトレーストランスミッションがすべてのBSDFノードに影響を与えるように。
- 画像の安定性の向上
もう少し詳しくまとめていますのでご参考に。
❒移行について
新しい EEVEE への変換は自動的に行われ、ほとんどのシーンは問題なく動作しますが、スムーズな移行にはいくつかの調整が必要となります。また、使用についてもいくつかの制限があることに注意してください。
Cycles
Cyclesは、レンダリングをより良く見せるだけでなく、より速くレンダリングするための大規模なアップグレードが行われました。
■レイポータルBSDF
新しいRay Portal BSDFは、レイの位置と法線を指定して、シーン内の別の場所にレイを転送します。エフェクトのためのポータルのレンダリングや、その他のプロダクションレンダリングのトリックに使用できます。
また、レイの位置とレイの方向を置き換えて、スクリーン上に別のカメラを表示するというようなエフェクトを作ることができます。
■薄膜干渉(thin film interference)
Principled BSDFは、鏡面反射と透過のための物理的に正確な薄膜干渉(thin film interference)エフェクトをサポートするようになりました。
最初のうちは、これは誘電体(dielectric)マテリアルにのみ適用され、金属(metallic)薄膜(thin film)エフェクトのサポートが計画されています。
■ソフトボリューム
Blender 4.2 LTS では、ボリュームライトのサンプリングが改善され、スポットライトやエリアライトの結果がより滑らかになりました。
■ブルーノイズ
ブルーノイズディザサンプリング(Blue noise dithered sampling)により、レンダリングのビジュアルクオリティが向上しました。これは主に、最大サンプル数を低く設定した場合や、インタラクティブなビューポートレンダリングに役立ちます。
新しいファイルではデフォルトでこのモードが使用され、既存のファイルは Sampling → Advanced パネルで変更できます。
■その他
- 品質向上のためOpenImageDenoise 2.3にアップグレード。
- ビューレイヤーの新しいワールドオーバーライドオプション。
- サブサーフェススキャタリングノードの新しい粗さ(Roughness)入力。
- Intel GPUレンダリングがホストメモリフォールバックをサポートするように。
- モーションブラー設定がEEVEEと共有されるようになりました。
- Windows + Linux 上の AMD GPU の GPU アクセラレーションによるノイズ除去のサポート。
- GPUカーネルの圧縮によりBlenderのインストールサイズが縮小されました。
- CPU レンダリングで GPU アクセラレーションによるノイズ除去をサポート。
- Huangモデルを使用したPrincipled Hairは、より優れたクローズアップレンダリングを提供します。
Extension(拡張機能)
アドオンとテーマが大きく見直され、拡張機能として統一されました。これにより、Blenderの中からすぐにアップデートできるようになりました。
■簡単インストール
拡張機能の取得はこれまでになく簡単になりました:
- extensions.blender.orgなどのウェブサイトからドラッグ&ドロップ
- 実稼働環境や教育環境でそれらをバンドルします。
- 「レガシー」アドオンのサポート。
- ディスクからインストールします。
■最新に保つ
エクステンションリポジトリは、起動時に自動的にアップデートをチェックします。これはリポジトリごとに無効にできます。
インターネットアクセスは完全にオプションで、デフォルトではオフになっています。
ディスクからのインストール(またはZIPファイルをBlenderにドラッグ&ドロップ)、またはシステムエクステンションリポジトリを使って、いつでも手動でエクステンションをインストールできます。
Extension Platform
Extension Platformは、フリーでオープンソースの Blender エクステンションを共有・発見するための新しいコミュニティ管理ウェブサイトです。
- 画像、ビデオ、ユーザー評価による詳細な説明。
- 現在および将来のリリースのバージョンの完全な履歴。
- コミュニティのレビューと承認のプロセス。
- ドラッグアンドドロップによる簡単なインストール。
■拡張機能の管理
拡張機能は設定から管理できます。
- 新しい拡張機能を検索。
- インストールとアンインストール。
- アップデートを確認。
■ドラッグアンドドロップ
ウェブからドラッグ&ドロップすることでアドオンやテーマを簡単にBlenderにインストールすることができます。
Khronos PBR ニュートラルトーンマッパー
Khronos が最近リリースした実物に忠実なアセットを表示することを目的としたトーンマッパーが、Blender に組み込まれました。
Khronos PBR Neutral は、グレースケール照明下で PBR レンダリングを使用する際に、ハイライト周辺の HDR アーティファクトを排除しながら、製品の基本色、色相、彩度を忠実に再現することを可能にします。
スカルプト
■ポリライン
Polylineが投げ縄、ボックス、ラインといった従来の描画ジェスチャの仲間に加わり、多角形のシェイプをすばやく作成できるようになりました。
ジオメトリノード
■マトリックスノード
行列(matrices)用のまったく新しいソケットタイプにより、ノードを使用した変換がこれまで以上に簡単に行えるようになりました。これは、高度なカスタムジオメトリ操作を備えたジオメトリノードの将来のための土台を築くものとされています。
新しいソケットタイプは、既存のノードへの統合だけでなく、様々な新しいノードと一緒に提供されます。
ピザの箱に使用される新しいマトリックス ソケット。
■ノードツール
ビューポートとマウス位置の情報をノードツリーで使用できるようになり、ノードツールはますますインタラクティブになりました。
新しい Wait for Click(クリック待ち)機能と合わせて、ツールを有効にする場所を正確にコントロールすることができます。
■その他のアップデート
シーケンサー
ビデオ シーケンサーは、デザイン、ツール、パフォーマンスにおいて強化されました。
■ストリップの見た目の改善
ストリップは角の丸いシェーダーを使用してレンダリングされるようになり、ストリップの終わりと次のストリップの始まりが一目でわかるようになりました。
さらに、アクティブなストリップと選択されたストリップのアウトラインが太くなり、コントラストを向上させるために周囲が暗くなっています。
■ハンドルなし
ストリップの両端をクリックして微調整することが可能になり、編集がスピードアップします。2つのストリップの間をクリックして、両方を同時に調整することもできます。
ハンドルの表示は、環境設定 (Preferences) ➝ 編集 (Editing) ➝ ビデオシーケンサー (Video Sequencer) から戻すことができます。
■欠落メディア
不足しているソースファイルやシーンを参照するストリップは、赤でハイライトされ、アイコンが使用されるようになり、見つけやすくなりました。
■テキスト
テキストストリップは、シャドウのオフセット、角度、ぼかしのサイズ、新しいアウトラインオプションを微調整できるようになりました。
■その他のアップデート
- いくつかのパフォーマンスの改善
- 新しいオペレータ: フレームシーン範囲/プレビュー範囲
- プレビュー: 輝度波形の「色を分ける」スコープが「RGB パレード」スコープに置き換えられました
- オーバーレイポップオーバーはわかりやすくするために再編成されました
- 複数のファイルのドラッグアンドドロップをサポート
- 波形はデフォルトで半分のサイズになりました
- 新しいキャッシュラインオーバーレイ
コレクションエクスポーター
コレクションは独自のエクスポータを指定できるようになり、ゲーム用のglTFやスタジオパイプライン用のUSDなど、アセットを繰り返し簡単にエクスポートできるようになりました。
ファイルメニューからワンクリックですべてのコレクションをエクスポートでき、各コレクションを一度に複数のファイルフォーマットにエクスポートできます。
エクスポート設定は .blend ファイルに保存され、Blender セッション間で簡単に共有し、一貫して使用できます。
USD
Blender 4.2 LTS で、ヘアカーブのインポートとエクスポート、点群のインポートのサポートが追加されました。
■インポート
インポート時、メッシュはデフォルトで検証され、USDドームライトはワールドシェーダに変換され、新しいオプションで定義されたプリムのみをインポートできます。
■エクスポート
新しいエクスポートオプションには、エクスポートタイプのフィルタリング、ワールドシェーダーの USD ドームライトへの変換、ステージアップ軸の設定、 XForm conventionsの指定、メッシュの三角化、USDZ 用テクスチャのダウンサンプリング、Blender シェーダーノードからの MaterialX ネットワークの生成、USD コンベンションに従ったアクティブ UV マップのデフォルトでの 「st」 へのリネームなどがあります。
■その他アップデート
- Alembic: ヘアカーブのインポート/エクスポートのサポート。
- glTF: いくつかのインポート/エクスポートの改善。
- Alembic: アニメーション曲線のレンダリングを修正。
- メッシュの検証が2~3倍高速化。
- 複数のAlembicファイルを一度にインポートする。
- COLLADAは現在レガシーと見なされている。
- USD、OBJ、PLY、STLインポーターのデフォルトとしてメッシュの検証が採用されました。
その他
■スタジオフレンドリー
ポータブル インストール、新しい環境変数、拡張機能のカスタム バンドルにより、Blender 4.2 LTS はスタジオ パイプラインにこれまで以上に簡単に統合できます。
Blender は最初からポータブルでしたが、Blender 4.2 LTS はさらに進化しました。Blenderを実行する場所の隣に 「portable 」という名前のフォルダを作成すると、最初にそのフォルダ内の設定をロード(または作成)しようとします。これにより、Blenderを持ち運ぶことがこれまで以上に簡単になりました。
■業界対応
Python 3.11、OpenEXR 3.2、OpenColorIO 2.3、OpenSubdiv 3.6 など。Blender4.2 LTS はVFX Reference Platform 2024に完全準拠しており、スタジオ パイプラインでの統合と保守が容易になります。
■その他のアップデート
- コンポジティングにGPUアクセラレーションを利用できるように
- 各ノードの実行時間を表示する 新しいタイミングオーバーレイ
- グレア(Glare)ノード: ブルームモードを追加。
- Translateノード: ニアレスト、バイリニア、バイキュービックから選択できる新しい補間オプション
- CPUパフォーマンスの最適化
- グレアノード: フォググローが最大25倍高速に
- 色相補正: 不連続性の問題を修正するためのラッピングをサポート
- ベクターブラー(Vector Blur)ノードがEEVEEのモーションブラーとマッチするようになりました
- ビューポートコンポジター: 合成スペースは常にカメラ領域に制限されるようになりました
- ビューポート コンポジター: フォグ グロー グレアのサポートを追加
- ビューポートコンポジター: レガシー Cryptomatte のサポートを追加
- ビューポートコンポジター: 高速ガウスぼかしのサポートを追加
- 重大な変更
- ダイアログの改善
- 最近の項目のコンテキストメニューに「ファイルの場所を開く(Open File Location)」が追加
- カラーフィールドにツールチップが追加
- レイアウトにおける水平および垂直の罫線のサポート
- テキストシェーダーの最適化
- インターフェースフォントの更新
- いくつかのツールチップが更新されました
- ユーザーインターフェースのスケーリングの改善
- 改良された正方形カラーピッカー
- アセットブラウザがエリアの最大化をサポートするように
- 波長(Wavelength)ノードはナノメートルスケールの入力を使用するように
- ステータスバーのキーマップ表示の改善
- 一貫した「選択(Select)」メニュー
- 「ズーム」メニューの再編成
- Linux: Wayland で画像のコピーと貼り付けができるようになりました
- Linux: ファイルタイプの関連付けの登録と登録解除のサポート
- カスタムテーマを保存するための新しいボタンの追加
- パージ(Purge)オペレータの改善
- すべてのユーザーインターフェースの変更を見る
さらに、Blender をより安定させ、貢献しやすくするための何百ものバグ修正、コードクリーンアップ、リファクタリングが行われています。
すべてのアップデート内容の確認はこちらから
また、以下の記事もご参考に
https://cginterest.com/2024/06/08/blender-4-2-lts-%e3%81%8c%e3%83%99%e3%83%bc%e3%82%bf%e7%89%88%e3%81%ab%e7%a7%bb%e8%a1%8c%ef%bc%81%e4%b8%bb%e3%81%aa%e6%96%b0%e6%a9%9f%e8%83%bd%e3%82%92%e7%b4%b9%e4%bb%8b%ef%bc%81/
ダウンロード
Blender の最新版のダウンロードはこちらから
Blender の開発をサポート
リリースは開発基金(Development Fund)のメンバーのおかげで行われています。月額またはワンタイムの寄付で Blender の開発をサポートすることができます。
開発基金への参加はこちらから
Blender ウェブサイトへBlender 4.2 LTS Release
CREDITS
List of developers that contributed to Blender 4.2 LTS
Splash artwork by Blender Studio. Features recap video by Jonathan Lampel
from CGCookie. Geometry Nodes recap video by Harry Blends.
Huge thanks to everyone involved ❤️
コメント