2023年5月30日に公開されたBlenderブログ「The Next Big Step: Grease Pencil 3.0」の内容についての紹介です。全面的に刷新される Grease Pencil の情報が共有されています。
Grease Pencil について
2008年、Joshua Leung氏は、Blenderの3Dビューポートに直接注釈を追加するツールを実装し、彼はこの機能を Grease Pencil と名付けました。
Grease Pencilの最初のバージョンは、基本的なカラー設定とアニメーション機能を備えたシンプルな注釈ツールになるよう設計されていましたが、Grease Pencilの周りに形成されたコミュニティは、より大きな構想を持ち、予想していなかったことにGrease Pencilを使うようになりました。
2019年、Blender 2.8プロジェクトの一環として、Grease Pencilが独自のオブジェクトタイプとなり、2Dアニメーションの専用ワークスペースとなりました。このバージョンは大幅なオーバーホールで、多くの新機能、パフォーマンスの向上、新しいレンダーエンジンを備えていました。主な開発者は、Antonio VázquezとClément Foucault、そしてアーティストのDaniel Martínez LaraとMatias Mendiolaでした。
今日、Grease Pencilはさらに成長し、世界中の小さなスタジオから大きなスタジオまで、幅広く利用されるようになりました。 “Unicorn Wars”のような映画は、これで完全にアニメーション化されています。
そして、ツールの多くの側面が時間の経過とともに非常に改善された一方で、グリースペンシルの中核となるデータ構造は、約15年間変わっていません。開発チームはその初期設計の限界に直面し、Grease Pencil 3.0で全面的な刷新に乗り出しました。
Grease Pencil 3.0とは
「Grease Pencil 3.0」は、現在の実装を全面的に見直し、次の10年以上にわたる強固な基盤を構築することを目的としています。
プロジェクトの目標は以下の通りです:
- 大量のデータ(フレーム、ストローク、ポイントなど)を扱う際のパフォーマンスとメモリ使用量を改善。
- 将来の開発のために、アーキテクチャとAPIを改善。
- 新しい機能やツールのための扉を開く。
新しい実装は、モダンなC++スタイルで書かれ、マルチスレッドを考慮に入れた新しいヘアカーブと同じバックエンドに基づいています。これにより、Geometry Nodesのサポートが可能となり、はるかに多くのデータを扱うことができます。
開発タイムライン
- 2023年2月:別ブランチで開発開始。
- 2023年5月:初期のBlender 4.0アルファビルドにてコミュニティテスト用の実験的なオプションが利用可能に。
- 2023年6月~10月:他のコントリビューターの協力を得て、チームはリファクタリングの大部分を終える。
- 2023年11月:Blender 4.0がリリースされ、Grease Pencil 3.0が完全に古いシステムを置き換える。
Blender 4.0 での新しい機能
主な焦点は、新しい機能を追加することよりも、古いシステムと機能を同等にすることになりますが、以下のようないくつかの新しい機能も計画されています。
■レイヤーグループ
レイヤーをグループ化する機能は、新しいデータ構造の再設計の一部です。レイヤーグループは、複数のレイヤーを簡単にグループ化し、ツリーで折りたたみ、可視性、編集可能性、オニオンスキニングなどを制御することができます。また、レイヤーグループは色分けすることも可能です。
■タイムラインの再構築
新しいデータ構造により、フレームに開始と終了を設定したり、描画をインスタンス化したりすることができます(異なるレイヤー上でも可)。インスタンス化された描画は、描画データを共有します(例えば、一方を変更するともう一方も変更されます)。
Grease Pencilのレイヤーは、描画が保持される時間の量を示すために、キーフレームをボックスとして描画します。インスタンス化されたキーフレームはより暗い色調で表示されます。
■Python API の変更
この実装により、チームはBlender 4.0でGrease PencilのPython APIがで壊れること予想していますが、同じ機能性が存在することを確認し、どのスクリプトでもGrease Pencil 3.0で動作するように適応できるようにする予定です。これに関するドキュメンテーションが今後数ヶ月間で提供される予定です。
Blender 4.0 以降
最初のマイルストーンが確立され、コミュニティによって検証されると、Grease Pencilの機能セットを改善し拡張することに焦点が移されます。
2022年末に、コミュニティ(趣味とプロフェッショナルの両方)が最も求めているものを把握するための調査が行われました。結果は、チームの計画が Grease Pencil に期待されるものとよく一致しており、現在以下のような機能が計画(不完全)されています。
- 塗りつぶし用のブーリアン(ブーリアン消しゴム、塗りつぶしブラシ)
- より多くの(そしてより良い)テクスチャブラシ
- Geometry Nodes の統合
- Grease Pencil のアセット
- UIの改善
貢献する
チームは、このプロジェクトに貢献したい人を喜んで支援するとしています。
- もし何か質問があれば、blender.chatのメインコミュニケーションチャンネル(#grease-pencil-module)にアクセスしてください。
- また、貢献したい人は誰でも参加できるモジュールミーティングが隔週で開催されています。ミーティングのメモや、次のミーティングがいつ行われるかは、こちらで確認することができます。
- さらに、誰でも取り組むことができるタスクのリストがあり、 Grease Pencil 3.0 workboard の「Community Tasks」欄で確認することができます。これらは特に、参入障壁の低いタスクです。もし、これらのタスクに取り組みたいのであれば、チャットで連絡をしてほしいとのことです。
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