2022年3月9日(現地時間)Blender Foundationとオンライン開発者コミュニティは、Blender 3.1 をリリースしました。
Blender 3.1 新機能ハイライト
Blender 3.1 では次のような新機能があります。
- M1プロセッサとAMDグラフィックカードを搭載したコンピュータ用にAppleが提供したMetalGPUバックエンドのサポート
- サブディビジョンモディファイアのGPUアクセラレーション
- メッシュ編集の高速化
- アセットブラウザのインデックス化
- イメージエディターの大容量画像への対応
- .objと.fbxのエクスポート速度の改善
- マルチスレッド、ノードツリー評価の改善、ジオメトリノードのメモリ使用量の削減
この他にも多くのパフォーマンスの改善が全面的に行われています。グラフエディタの新しいアニメーションツール、ジオメトリノードのプロシージャルモデリングのための新しいノード、ユーザインタフェースの改善、ビデオシーケンサエディタ、グリースペンシル、数百のバグフィックスなど、その他多数。以下の動画で新機能をざっと確認することができます。
Cycles
■Apple Metal GPUバックエンド
CyclesにAppleから提供されたMetal GPUバックエンドが追加されました。
次のグラフは、M1プロセッサ搭載のApple MacBook Airでのサンプルシーンのレンダリング時間です。数値は低いほど良いです。
現在、macOS 12.2以降を搭載したApple M1コンピュータ、およびmacOS 12.3以降を搭載したAMDグラフィックスカード搭載のAppleコンピュータでサポートされています。
■ポイントクラウド
新しい点群(Point Cloud)オブジェクトは、Cyclesで直接レンダリングして、砂、水しぶき、パーティクル、モーショングラフィックスを作成することができるようになりました。
これは、各ポイントにオブジェクトをインスタンス化するのに比べて、メモリ使用量とレンダリング時間がはるかに効率的です。点群はジオメトリノードで生成したり、他のソフトウェアからインポートしたりすることができます。
点情報(Point Info)ノードは、点群オブジェクトのマテリアルノードツリーで使用でき、個々の点のデータにアクセスすることができます。点群オブジェクトに割り当てられた1つのマテリアルにバリエーションを持たせるのに便利です。
■その他のアップデート
- レイトレーシングの精度
- 魚眼レンズ多項式モデル
- ベイキング用の新しい「Adjacent Faces」
- アダプティブサンプリングによるOpenEXRレンダーの統合
- OptiX Temporal Denoising
- ベクトルのマップ範囲
- オプションの Embree Compact BVH
すべてのCyclesのアップデート内容の確認はこちらから
ジオメトリノード
メッシュモデリングツール、時間へのアクセス、高度なフィールドコントロール、驚くべきパフォーマンスの向上、不要なアップデートの削減など、19の新しいノードが追加されました。
■ユーザーインターフェイスの改善
ソケットをドラッグして、自動的にフィルタリングされたノードのリストを取得することができるようになりました。
- ソケットの種類によってフィルタリングされ、接続可能なものだけが表示されます。
- 数学関数やブレンドモードの検索。
- 入力ソケットと出力ソケットで動作。
- ジオメトリ、シェーディング、コンポジタノードで利用可能。

■インスタンス属性(Instances attributes)
インスタンスにも動的な属性を持たせることができるようになりました。
これにより、メッシュがインスタンスからデータを継承し、ポイントからデータを継承し、インスタンスからデータを継承する…というようなワークフローが可能となります。

ASSET BROWSER
ノードグループアセット
(Node Group Assets)
ノードグループをアセットとしてマークし、アセットブラウザからシェーディング、ジオメトリノード、またはコンポジターにドラッグ&ドロップすることができます。
USER INTERFACE
タイミングオーバーレイ
(Timings Overlay)
ノードの処理にかかる時間が表示され、ノード(ノードグループを含む)のパフォーマンス速度が一目瞭然となります。
SPREADSHEET
ボリュームグリッド
(Volume Grids)
スプレッドシートに、グリッド名、データ型、クラスなどのボリュームグリッドの情報が表示されるようになりました。
■新しいモデリングノード
待望のExtrudeノードが追加され、プロシージャルモデリングに全く異なるアプローチが可能になりました。 この例では、単純な押し出しとスケーリングの複数のステップで、プロシージャルなチョコレートバーを実現しています。
この .blend ファイルをダウンロードする。スケールエレメント(Scale Elements)ノードは、新しい押し出し(Extrude)ノードに関連するノードです。選択範囲の接続された要素は、それぞれの中心を中心に拡大縮小することができます。個々の面を押し出し、上の面を選択範囲として使用することで、上記の動画のようなことが可能となります。
この .blend ファイルをダウンロードする。Field at Indexノードは、評価されたフィールドの値を別のインデックスで読み出すことを可能にするノードです。このノードは、要素がデータを交換する必要がある場合に、あらゆる種類のカスタム操作を可能にするために重要なビルディングブロックとなります。上記の動画では、UV空間に基づいた方向性のあるストレッチマップを生成するために使用されています。
この .blend ファイルをダウンロードする。Accumulate Fieldノードは、グループ内のフィールドの値をダイナミックに加算することができるノードです。上記の動画では、スタック内の各キューブについて、前のキューブの累積高さを計算することによって、キューブを積み重ねるために使用されているのを見ることができます。
この .blend ファイルをダウンロードする。■その他の新しいノード
カーブサークルに似ていますが、不完全な円を作成することができます。
選択されたメッシュの頂点や点群の点を所定の距離内でマージします。
リアルジオメトリをインスタンスに変換します。
メッシュの面を頂点に、頂点を面に変換します。
選択された面の頂点と辺の巻き順を逆にして、その法線を反転させます
Compare Floats ノードがより汎用的にアップグレードされました。
メッシュの頂点数のような、任意の属性領域のサイズを返します。
ドライバなしでシーンの現在時刻に直接アクセスできます。
頂点と各頂点に接続されている面の数へのアクセスができます。
各面の頂点数およびエッジで接続された面の数にアクセスできます。
辺の頂点のインデックスとその位置へのアクセスができます。
各エッジがいくつの面を使用しているかを表示します。
メッシュの各面の表面積へのアクセスができます。
メッシュの各接続された頂点に対して個別のインデックスを出力します。
2つの多様体表面の法線間の角度を表示します。
■パフォーマンスの向上
Blender 3.1は、ジオメトリノードのパフォーマンスが大きく向上しました。多くのノードがマルチスレッドになり、使用するメモリが少なくなっています。また、以下のようなパフォーマンスの向上があります。
- 大規模なフィールドでのメモリ使用量を最大100分の1に削減
- メモリ使用量が最大20%向上
- 中負荷でのマルチスレッド化を最大10倍まで改善
- フィールドノードによる単一値処理を2~3倍高速化
- Realize Instances ノードがマルチスレッドに対応
- ジオメトリノードのアクセス速度が最大40%高速化
- 領域補間の計算を必要な値のみにするように変更
- Set SplineTypeノードのマルチスレッドに対応
- 大きなノードツリーの表示が2倍近く高速化
- Cube mesh primitiveが約75%高速化
- Grid mesh primitiveがマルチスレッドに対応
- バウンディングボックスノードがマルチスレッドに対応
- マルチスレッド時のオーバーヘッドを削減
- 編集・アンドゥの高速化
■その他のアップデート
- Map Rangeノードにvectorデータ型のオプションが追加
- Boolean Math ノードが拡張され、より多くの演算が可能に
- Attribute Statisticノードに選択入力が追加されました
- String to CurvesノードにLineとPivot Pointの出力が追加
- Delete Geometryノードでインスタンスを削除可能に
- Triangulate ノードに選択入力が追加
- Resample Curve ノードに選択入力が追加
- Set HandlePositionノードの新しい「Offset」入力
- Spline Lengthノードに、コントロールポイントの数が含まれるように
- Star curve primitiveノードには、外周点の選択出力が追加
- Set SplineTypeノードでのNURBSからBézierスプラインへの変換の改善
- Curve Handle Positionsノードに、で、対応する制御点からの相対位置を出力するトグルが追加
- 円錐と円柱のメッシュプリミティブに、上部、側面、下部の選択出力が追加
- フレーム内のノードの選択の改善
すべてのジオメトリノードのアップデート内容の確認はこちらから
モデリング:サブディビジョンサーフェス
サブディビジョンサーフェスの頂点クリージングがサポートされるようになりました。これにより、頂点を任意に尖らせて、特徴的な形状をより効率的に作成することができます。
また、モデリング、レンダリング、Alembic、USDインポート/エクスポートのためのPixar OpenSubDivがサポートされています。
さらに、Subdivision Surface modifierのGPUアクセラレーションサポートにより、3Dビューポートでの再生がより速くなりました。
アニメーション
■Copy Global Transform
内蔵の Copy Global Transform アドオンにより、アクティブなオブジェクト/ボーンのワールドスペーストランスフォームをコピーし、任意のオブジェクト/ボーンにペーストできるようになりました。
グリースペンシル
■塗りつぶしの拡張・縮小
塗りつぶしツールで負の値を使用できるようになり、塗りと線の間にすき間を作成できるようになりました。
■コレクションの反転オプション
コレクションの反転選択を切り替える新しいオプションが追加されました。これにより、コレクションを簡単に除外して、シーンの「残りの部分」を選択することができます。
■その他のアップデート
- シュリンクラップモディファイア
- ラインアート バックフェイス カリング
- PDF書き出しにおけるシーン枠の書き出し
- MergeオペレータのMerge All Layersオプション
- 長さ(Length)モディファイアのパラメータをランダム化
- LineArtノイズトレラントチェーニング
- フェイスマークフィルタリングを使用するときにLineArt輪郭線を保持する
グリースペンシルの全てのアップデート内容の確認はこちらから
パフォーマンスの向上
■OBJファイルの高速化
C++への移植により、.objファイルのエクスポートが大幅に高速化されました。
■FBXファイルエクスポートの高速化
Armatures が REST ポジションにあるファイルで、大幅な改善が見られます。
■イメージエディターパフォーマンスの向上
イメージエディターで、より大きな画像をプレビューや編集で扱えるようになりました。52Kもの画像での繰り返し表示も可能です。
■その他のアップデート
ベンチマーク
ベンチマークが更新されました。自分のコンピュータではどれくらいの速度で動作するのかを調べることができます。Blenderコミュニティによって提供されたオープンにアクセスできるベンチマークと自分のスコアを共有し比較することもできます。
ベンチマークのダウンロードはこちらのページから
その他のアップデート
- USDプレビューサーフェスシェーダーのエクスポート
- アニメーション化された頂点カラーをAlembicにエクスポート
- OpenEXRDWAB圧縮のサポート
- いくつかのglTF2.0の改善
- AlembicファイルのOverrideレイヤーの読み込みに対応
- Python 3.10
- 再同期が必要な場合のアウトライナーレポート
- カーブマッピングウィジェットの改善
- アウトライナーで選択したアイテムの名前を一括で変更
- コレクション、ボリューム、ライトの一括名前変更のサポート
- エリア分割に関するフィードバックの改善
- より多くのエディターでパイメニューを表示
- フォント閲覧時にサムネイルビューでファイルブラウザを開くことが可能に
- Compositorの新しい色空間変換ノード
- macOSおよびLinuxでのフォントのデフォルトパス
- Rigifyの改善
- UIでの浮動小数点フォントサイズのサポート
- VSEではデフォルトでタイムコードを使用
- コンポジターのシーンタイムノード
- アウトライナーからVSEへのデータブロックのドラッグ&ドロップ
- VSE Meta Strips Python API の分離
- PythonAPIの追加と変更
- VSEでの自動プロキシ構築
- PDB / XYZインポーターの改善
- UDIM Substitution Tokens のサポート
- NURBSノット計算の改善
- ジェネリック属性演算子(generic Attributes operator)の変換
- グラフエディタでのハンドルの均等化
- 画像エディタのティアリングアーティファクトを修正
- テキストエディタで自動で 括弧/引用符 を閉じる機能
- PythonAPIを介したCrazy Spaceへのアクセス
- ワイヤーフレームボーンの不透明度を制御
- アクションのカスタムフレーム範囲
- グラフエディタースライダーオペレータ
- ノードグループがアセットとしてマーク可能に
- フレームノード内のノード選択が改善されました
この他にも多くのアップデートがあります。
Blender 3.1 のすべてのアップデート内容の確認はこちらから
ダウンロードと開発のサポート
最新バージョンのダウンロードはこちらから
リリースは開発基金(Development Fund)のメンバーのおかげで行われています。現在、2900以上の個人と団体からの寄付によって開発がされています。6ドル/月からBlenderの開発をサポートすることができます。
開発基金への参加はこちらから
Credits
List of developers that contributed to Blender 3.1
Blender 3.1 splash by Lorenzo Aiello (orencloud). Cycles point clouds by Mario Hawat. Abandoned House by sozap. Geometry Nodes examples by Simon Thommes. Witch’s Study artwork by Margarita Posledovich (based on an illustration by evergreenqveen). Grease Pencil Fill Tool demo by Matias Mendiola. Snow character by Blender Studio. Benchmark background by Gleb Alexandrov.
Page design and layout by Pablo Vazquez. Features video by SouthernShotty.
Additional help by Blender Institute and the Blender community.
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