2025年6月18日(現地時間) – Nvidia は、Studioドライバの最新アップデートをリリースしました。
6月の NVIDIA Studio Driver アップデート
今回のアップデートでは、Stable Diffusion 3.5のパフォーマンスが大幅に向上するほか、多くのクリエイティブアプリケーションやゲームに関する安定性の向上、バグ修正が含まれています。
Stable Diffusion 3.5のパフォーマンスが70%向上
AIモデルが高機能・高精細になるにつれて、VRAM(ビデオメモリ)の要求量も増加します。特に「Stable Diffusion 3.5 Large」モデルは、ベースの状態で18GB以上のVRAMを消費するため、多くのPCでは快適な動作が困難でした。
NVIDIAとStability AIは、AI画像モデルの一つである「Stable Diffusion 3.5」のパフォーマンスを向上させるため、協力して最適化を行い、TensorRT技術を用いてモデルを「FP8」という低い精度に量子化しました。これは、AIモデルの重要でない部分をより軽量なデータ形式で処理する技術で、画質をほとんど損なうことなく、VRAM使用量を劇的に削減します。

Stable Diffusion 3.5 量子化 FP8(右)は、FP16(左)と同等の品質で、半分の時間で画像を生成します。
この最新のドライバを適用することで、NVIDIA TensorRTとFP8精度のサポートが有効になり、パフォーマンスが70%向上し、VRAM(ビデオメモリ)の消費量を40%削減します。
- VRAM消費量を40%削減: この最適化により、VRAM要件は11GBまで削減されました。これにより、従来はメモリの制約で実行が難しかったPCでも、大規模なAIモデルを扱えるようになります。
- パフォーマンスが最大2.3倍に向上: TensorRTは、モデルの処理方法(グラフ)そのものもRTX GPUに最適化します。その結果、FP8量子化と組み合わせることで、「Stable Diffusion 3.5 Large」は従来のBF16 PyTorch実行時と比較して2.3倍の性能向上を達成しました。また、「Stable Diffusion 3.5 Medium」モデルでも1.7倍の高速化を実現しています。

FP8 TensorRTは、SD3.5 LargeのパフォーマンスをBF16 PyTorchと比較して2.3倍向上させ、メモリ使用量を40%削減します。
SD3.5 Mediumでは、BF16 TensorRTは1.7倍の高速化を実現します。
最適化されたモデルは、すでにStability AIのHugging Faceページで公開されています。さらに、2025年7月には、開発者がより簡単にアプリケーションへAI機能を組み込める「NVIDIA NIM」マイクロサービスとしても提供される予定です。
TensorRT for RTX SDKがリリース
今回のパフォーマンス向上の背景には、Microsoft Buildの発表に含まれていた新しい「TensorRT for RTX」の技術があります。
この度、プレビューの新しいWindows MLフレームワークの一部としてすでに利用可能になっているTensorRT for RTXが、開発者向けのスタンドアロン SDK として利用できるようになりました。
以前は、開発者がGPUの種類ごとに最適化済みのエンジンを準備する必要がありましたが、汎用的なエンジンをアプリケーションに組み込むだけで、ユーザーのPC上で自動的に最適化(JITコンパイル)が行われます。これにより、開発プロセスを簡素化しつつ、ユーザーは常にデバイスに最適化された最高のパフォーマンスを実現可能になります。
- 8分の1に小型化: SDKのパッケージサイズが大幅に縮小され、アプリケーションへの統合がより容易になりました。
- Windows MLとの連携: Microsoftの新しいAI推論バックエンドである「Windows ML」フレームワークから直接呼び出すことができ、Windowsアプリケーションへの実装が簡素化されます。
新しいSDKは、NVIDIA Developerページからスタンドアロンでダウンロードできるほか、Windows MLのプレビュー版でもテストが可能です。
修正リスト
クリエイティブアプリとゲームの修正
- Adobe Substance 3D Painter: ベイク後のビューポート表示の破損
- Blackmagic Design Fusion: UIオーバーレイが正しく表示されない問題
- Twinmotion: 起動時にクラッシュする問題
- Dragon’s Dogma 2: 影がちらつく問題
- Enshrouded: ゲーム起動後にクラッシュする問題
- Ghost of Tsushima Directors Cut: 光源周辺のちらつきや表示の破損
- Indiana Jones and The Great Circle: 画像の破損
- 各種ゲームの安定性向上: 『Clair Obscur: Expedition 33』、『Dune: Awakening』、『EA Sports FC 25』、『Forza Horizon 5』、『Gray Zone Warfare』、『GTA V Enhanced』、『Honor of Kings: World』、『Marvel Rivals』、『Monster Hunter World (DX12モード)』
一般的なバグ修正
- GeForce RTX 5090 FE: アイドル時および低負荷時の静音性を改善
- Webブラウザでのビデオ再生時に、赤や緑のフラッシュが短時間表示されることがある問題
- NVIDIA Appでキャプチャした動画が、Windows Photosアプリで編集後に色あせて見える問題
- DisplayPort 1.4対応モニターをDisplayPort 2.1対応グラフィックスカードに接続した際に、画面がランダムに黒くちらつくことがある問題
- NVIDIAコントロールパネルの3D設定を変更すると、シェーダーディスクキャッシュの再構築がトリガーされることがある問題
ダウンロード
以上の最新アップデートをサポートする新しい6月のNVIDIA Studioドライバ(576.80)が利用可能です。
ドライバはNVIDIA アプリまたはこちらのドライバのダウンロードページからダウンロードすることができます。

























コメント