2025年10月7日(現地時間)- 映画業界におけるオープンソースソフトウェア開発を推進する主要組織であるアカデミーソフトウェア財団(ASWF)は、最新プロジェクトとして「OpenQMC」が加わったことを発表しました。OpenQMC は、アカデミー賞受賞歴のあるVFXスタジオ Framestoreから提供されました。
OpenQMCとは

ビジュアルエフェクト(VFX)の大部分は、複雑な3Dシーンやキャラクター、環境をレンダリングし、フォトリアルまたは様式化された画像を生成する作業です。このレンダリング処理は、光の経路をシミュレートするために方向や光源、表面をランダムにサンプリングするレイトレーシングのような技術に大きく依存しています。どのランダムサンプルを選択するかはレンダリング性能にとって極めて重要であり、その選択にはモンテカルロ法が用いられます。
OpenQMCは、高品質な準モンテカルロ(QMC)点をサンプリングし、擬似乱数を生成するためのライブラリです。グラフィックスアプリケーション向けに設計されており、Framestore独自のレンダラーであるFreakの一部として、VFX制作の現場で積極的に使用されています。
Framestoreの社内レンダラー「 Freak 」と並行して開発されたOpenQMCは、最終的な画像の忠実度とリアリズムを向上させ、ソフトシャドウ、被写界深度、モーションブラー、間接光といった複雑なエフェクトを強化します。この強力な組み合わせの成果は、『Paddington in Peru』、『Thunderbolts*』、『The Fantastic Four: First Steps』、『Civil War』、『Mickey 17』など、過去3年間にFramestoreのグローバルスタジオが手掛けたプロジェクトで見ることができます。
Framestore Company 3 Groupの最高技術責任者であるLincoln Wallen氏
「従来のモンテカルロ法は強力ですが、特にサンプル数が少ない場合に画像に多くの『ノイズ』や『ざらつき』を生じさせます。クリーンな画像を得るためには非常に長時間のレンダリングが必要になることが多く、これはコストと時間がかかるだけでなく、実行可能なイテレーション(反復作業)の回数を制限し、創造的な探求や意思決定の妨げとなっていました。」
Framestoreのレンダリング部門責任者であり、OpenQMCの主任設計者であるJosh Bainbridge氏
「OpenQMCは、より高品質なピクセルをより速く得ることを可能にします。それは、数千もの物理的なライトからの選択や、高度なボリュームエフェクトのサンプリングなど、あらゆる場面で役立ちます。サンプラーと技術のインデックスであるOpenQMCは、ライブラリの基盤となる数学を最大限に活用し、より少ない計算コストでレンダリング画像の品質を向上させます。」
OpenQMCの主な特徴
- 計算量を削減するための準モンテカルロ(QMC)点サンプリング用C++ライブラリ
- CPUとGPUの両方で異なるアーキテクチャをサポート
- プロダクショングラフィックスアプリケーションへの統合を容易にするシンプルなAPI
- 物理ベースのライティングなど、さまざまなサンプリング用途に対応するソリューション
- 開発と分析のためのツールと統計的テスト

リソース
OpenQMCへの参加に興味のある方は、アカデミーソフトウェア財団の#openqmc Slackチャンネル、およびopenqmc-discussion メーリングリストへ
コメント