2025年3月18日(現地時間)- Blender Foundation とオンライン開発者コミュニティはBlender 4.4 のリリースを発表しました。
今回は、主な新機能をまとめたハイライトとより詳しい新機能情報の2つのページに分けて紹介したいと思います。
新機能ハイライト
このアップデートでは、アニメーションワークフローの改善、モデリングの向上、新しいスカルプトブラシ、よりスムーズなビデオ編集に加え、700以上の問題が修正されました。今回のスプラッシュスクリーンは、Blenderを使用して作成され、アカデミー賞の長編アニメ映画賞を受賞した『Flow』となっています。
以下は少し長めですが、公式の新機能紹介動画となります。
安定性の向上
2024年から2025年にかけての北半球の冬の間、Blenderの開発者たちは「Winter of Quality(品質の冬)」と呼ばれる取り組みのもと、品質と安定性の向上に力を入れました。
結果、わずか数か月の間に、700以上の報告された問題が修正され、古いバグレポートの再検証により未報告の問題も修正されました。
バグ修正に加えて、「Winter of Quality」では技術的負債の解消やドキュメントの改善も行われてます。

2025年1月1日以降の重大度の高いバグの数
モジュールごとの修正
より詳しい情報は公式ブログをご覧ください。
新しいアクションスロット
Blender 4.4 ではアクションスロット(Action Slot)が導入され、複数のデータ ブロックが 1つのアクションを共有できるようになりました。

アクションスロットにより何が変わる?
アクションスロットが導入される以前は、オブジェクトの位置、カメラの被写界深度、マテリアルのシェーダープロパティなど、各データブロックごとに個別のアクションが必要でした。そのため、複数の要素を同時にアニメーションさせたり、オブジェクト間やプロジェクト間でアニメーションを共有するのが困難でした。
例えば、カメラを移動させながら被写界深度を変えたい場合、2つの別々のアクションが必要になり、それらを簡単にリンクしたり再利用したりすることができませんでした。
アクションスロットを使えば、オブジェクトの位置やマテリアルのプロパティ、さらにはコンポジットエフェクトなど、あらゆる種類のアニメーションを1つのアクション内で組み合わせることができます。

アニメーション関連のより詳しい新機能情報はこちらから
ビデオシーケンサー(VSE)の改善
ビデオシーケンサー(VSE)は、テキスト編集の利便性向上、H.265や10/12ビット動画を含むコーデックのサポート拡張、さらには編集速度の向上など、品質向上のためのアップデートが引き続き行われています。
▶テキスト編集がしやすく!
プレビュー内のテキストストリップに 編集モードが登場!
Tabキーを押すだけで、すぐに編集できるようになりました。
さらに、整列機能も追加され、複数行のテキストストリップを 左揃え・右揃え・中央揃え できるようになりました。
▶パフォーマンス向上
あらゆる編集がさらに高速になりました。
- 画像シーケンスのプロキシ生成が高速化
- 浮動小数点/HDRコンテンツのプレビューパフォーマンス向上
- テキストストリップの背景塗り(ボックス)が、大きな領域でも 数倍高速化
- カーブ、色相補正、ホワイトバランスのモディファイアが1.5~2倍高速化
- マルチスレッド処理の最適化により、多くのシーケンサーエフェクトがわずかに高速化
▶コーデックのサポート拡張
- H.265/HEVCコーデックを使用した動画のレンダリングをサポート
- BT.709カラー空間 でのレンダリングに対応し、以前の不特定なカラー空間による再生の不一致を防止
- YUV → RGB変換の精度向上 により、暗い領域の色ズレやバンディングを修正
- 10ビット/12ビット動画をサポート
- H.264, H.265, AV1で 10ビット、H.265, AV1で 12ビット の色深度を設定可能
- 10ビット/12ビット動画を読み込む際は、浮動小数点画像としてロード
モデリングの強化
▶ポール数で選択
特徴で全選択(Select by Trait )オペレータの新しいオプションで、ポールの数で選択することができるようになりました。
これにより、メッシュ内のすべての3または5ポールのポイントを簡単に見つけることができます。
トポロジーへの影響を考慮して、デフォルトでは4つのエッジを持たないすべてのポールが選択され、簡単に確認できます。
▶トポロジーの影響
三角形を四角形に変換する際、四角形優先のトポロジーが重視され、より整った「グリッド」レイアウトを作成できるようになりました。
これにより、ジオメトリがよりクリーンになり、メッシュの流れが改善されます。特に、均一な四角形を好むモデルは効果的です。
この動作は トポロジー影響係数を使用して調整でき、三角形の結合方法をより細かくコントロールできます。

▶頂点&エッジの削除
エッジを削除(Dissolve)する際、メッシュの整合性を保つために、未選択のエッジも削除されることがあります。以前は、これにより 未選択のエッジに接続された頂点も削除されていました。
新しい挙動では、選択されたエッジにのみ接続された頂点が処理され、削除されるようになりました。

新しい平面ブラシ
平面の法線に沿って、ブラシ平面の方向に頂点を移動することができる新しいスカルプト用の平面(Plane)ブラシが追加されました。

これは、既存の平坦化(Flatten)、塗りつぶし(Fill)、削り(Scrape)ブラシを一般化したもので、安定化とブラシ平面の上下の影響範囲を制御する新しいオプションが追加されています。
主な機能には、ブラシ平面の上の高さの調整、その下の頂点の深さコントロール、これらの設定を反転させるオプションなどがあります。また、法線(ブラシ平面の向き)と平面の位置の安定化オプションも、正確なコントロールのために利用可能です。
ユーザーインターフェイスの改善
▶Windows 11 の新しいウィンドウ装飾
ウィンドウの装飾が Windows 11 および macOS のテーマカラーに従うようになりました。

▶スナップ機能の向上
エディターは、最小および最大サイズにソフトにスナップするようになり、スプリットプレビューやドッキングフィードバックも改善されました。
- 小さなエディターではスクロールバーが非表示に。
- エディターのリサイズ時、最小・最大・中央でスナップ。
- スクロールバーは自動的に非表示に。
▶自動非表示機能
横スクロールバーがエディターに収まらない場合、自動的に非表示に。
▶入力の有効性を一目で確認
ノード エディタ で、出力に影響しない入力が、グループ ノード、ジオメトリ ノード モディファイア、およびノード ツールに対してグレー表示されるようになりました。
▶macOS Finderでの.blendファイルのプレビュー
macOSでは、Finder、App Exposé、Spotlightでブレンドファイルの内容をサムネイルでプレビューできるようになりました。

コンポジターの強化
▶高速化
CPUコンポジターが今後の開発に備えて書き直されました。
この書き直しにより、特定のノード設定や静的リソース(画像など)のキャッシュ、ピクセルを操作する多くのノードを含む設定でのパフォーマンス向上、メモリ使用量の削減が実現されています。
特に、フィルターノードは次のように高速化しています。
- レベル(Levels)ノードは最大10倍速く
- フィルター(Filter)とKuwaharaは2倍速く
- ぼかし(Blur)ノードは最大4倍速く
- グレア(Glare)フィルターは、より高度で、6倍速く
- ピクセル化(Pixelate)ノードは9倍速く
さらにコンポジターのノードツリーの調整が大幅に高速化され、よりインタラクティブになりました。
これにより、コンポジターはユーザーがバックドロップや画像エディターを通して見ない出力を計算しないようになり、全体的なレスポンスが改善されました。
CPUでもGPUでも、コンポジティングの体験がより反応性の高いものになっています。

▶グレアノードの改善
グレア(Glare)ノードは、より良いユーザー体験と柔軟なコントロールを提供するように改良されました。
主な改善点は以下の通りです。
- 入力は、コンパクトで明確なパネルに整理されました。
- ノードオプションは、接続できる入力ソケットになりました。
- 生成されたグレアとハイライトは、出力として公開されるようになりました。
- 新しい強さ(Strength)入力により、グレアの強さを制御でき、グレアのパワーを強化できます。
- フォググロー(Fog Glow)のサイズは画像サイズに対して線形になり、任意のサイズに設定できるようになりました。
- ブルーム(Bloom)のサイズは画像サイズに対して線形になりました。
- ブルームはエネルギーをより良く保持し、より理にかなった出力範囲を持つようになりました。
- グレアの彩度と色調は、新しい彩度(Saturation)および色調(Tint)の単一値入力を使って制御できるようになりました。
- ハイライトは、新しいスムーズ(Smoothness)と最大(Maximum)の単一値入力を使ってクランプおよびフラット化することができるようになりました。

ダウンロード
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CREDITS
Blender 4.4 に貢献した開発者のリスト
スプラッシュアートワーク: Flow © Dream Well Studio, Sacrebleu Productions, Take Five – Licensed under CC-BY-SA – flow.movie
関係者全員に感謝🧡
コメント
脱字の報告です。
>新しい平面ブラシ
>ブラシ平面の方向に頂点を移動ことができる新しい
×移動こと
〇移動すること
ありがとうございます!修正しました!