Blenderでは、伝統のひとつとして、年の始めに開発予定が発表されます。この度2026年のBlenderの開発目標が発表されましたので、その内容を紹介したいと思います。
2025年のリリースの振り返り
昨年は計画通り3つの主要なリリースが行われ、多くの成果が上がりました。まずはその内容を振り返りです。
2025年のリリース
- アニメーションスロット。
- コンポジターのCPUリライト。
- Grease Pencil v3の機能パリティ(同等性確保)。
- ビデオシーケンサーのテキスト編集の改善。
- 700以上の課題に対応。
- Vulkanの完全サポート。
- 起動とEEVEEシェーダーコンパイルの高速化。
- Grease Pencilのコンポジターパス。
- アニメーションタイムラインの強化。
- ジオメトリノードでの複数フォーマットのインポート。
- 全モードでのUV表示。
- HDRサポートを備えたより高速なビデオシーケンサー。
- コンポジターのプロシージャルノード。
- 400近くのバグを修正。
- ACESパイプライン。
- HDR機能の向上。
- UV同期。
- ジオメトリノードにおける新しいボリュームとSDFノード。
- ストーリーボードのテンプレートとワークフロー(シーン同期)。
- 配列(Array)や表面への散布(Scatter on Surface)などの新しいモディファイア。
- コンポジターのクリエイティブエフェクトアセット。
- アニメーションとリギングの改善。
- VRシーン検査、周辺減光(ビネット)、スナップターン。
- 600近くのバグを修正。
結果として、新機能、安定性、パフォーマンスの向上、計画されたプロジェクト、そして長年の課題への対応が組み合わさったリリースとなりました。
さらに2025年には、Blender 3.6 LTS、4.2 LTS、4.5 LTS全体で20回のLTS(長期サポート)リリースが行われました。
振り返り

リリースされた内容を昨年のプロジェクト発表と比較すると、いくつかの機能が発表されていなかったことがわかります。
この状況は、開発プロセスにおける前向きな側面を示しています。モジュールチームとコミュニティの開発者・アーティストが緊密に連携することで、プロジェクトが当初の計画から柔軟に方向転換しながら発展していくというBlender開発ならではの動的な性質が表れています。こうしたコミュニティからの貢献は、将来的にフルタイム開発者となる人材の発掘にもつながるため、開発リソース拡大の観点からも重要視されています。
一方で、発表されたすべてのプロジェクトが完了・リリースに至ったわけではありません。野心的な目標設定、スコープの拡大、設計や要件の不明確さ、スケジュールの遅延、リソース不足、優先順位の変動など、さまざまな要因が影響しています。開発チームはこれらの課題を認識しており、プロセス改善に向けた意欲も示しています。
このように未達の項目がある一方で、コミュニティの努力を共通の方向へ導く指針としてロードマップを提示することは、Blenderプロジェクトにおいて欠かせないプロセスと位置づけられています。
以下は、チームが計画している具体的な取り組みと、今年掲げられた目標となります。
今後の計画
今年提案されているプロジェクトは、以下の分野に整理されています。
ストーリーテリング
ビデオシーケンサーの改善
Story Toolsとコンポジターのノードモディファイアに続き、さらなるビデオシーケンサーの改善が予定されています。
GPUサポート、シーケンサーエフェクト、メディアビン、リップル編集および3点編集などが含まれます。

ワールド構築とアセット作成
3Dブラシとレイヤーテクスチャ
3Dブラシによるテクスチャワークフローの改善、そしてレイヤーテクスチャへの取り組みが予定されています。
後者は単純なものではありません。その本来の設計は2022年に遡りますが、適切な注意を払えるようになるまで保留されていました。今年中にBlenderに実装されることはありませんが、ベイクワークフローの刷新などの機能が視野に入っているとのことです。
NPR(非写実的レンダリング)
レンダリング面では、今年はNPRがより一層注目される年になるとされています。
NPR(非写実的レンダリング)は2024年から2025年にかけてプロトタイプ作成と反復が行われ、開発の準備が整っています。
アニメーション
アニメーションレイヤー
一時中断していましたが、アニメーションレイヤーが再び議題に上がっています。
当初の目標は、既存の機能を基盤としてアクションエディターでこの機能を公開することです。設計は最終段階にあり、第2四半期中に作業が開始される予定となっています。
ライティング、レンダリング、コンポジティング
Cycles テクスチャキャッシュ
長年求められてきた機能であるCyclesのテクスチャキャッシュは現在、開発の最終段階にあり、多数の高解像度テクスチャを扱うレンダリングを大幅に効率化する見込みです。これに続いて新しいPrincipled機能やOpenPBRノードも導入される予定です。
シーンレイヤーコンポジティング
シーンレイヤーコンポジティングに対する新しいアプローチも注目すべきポイントです。これは、ビデオシーケンサーエディターに追加されたコンポジターモディファイアに近い、エフェクトのスタック方式になると想定されています。実際の動作も非常に似ており、シーケンサー向けに設計されたエフェクトはシーン側でもそのまま機能します。
内部的には従来どおりノードが存在しますが、アーティストが必ずしもそれを直接扱う必要はありません(必要であれば掘り下げることも可能です)。これは、新しいジオメトリノードのArrayモディファイアが、アーティストには意図された「エフェクト」の全体像に集中させつつ、より高度な制御を求めるユーザーにはノードレベルでの柔軟性を提供している構造とよく似ています。
こうした二層構造により、Blenderはさまざまなワークフローやスキルレベルのユーザーにとって、より扱いやすく、より強力なツールとなります。
コラボレーション
オンラインアセット
オンラインアセットは、今年上半期にBlenderへ導入される予定です。これにより、インターネット上のマテリアルやコレクションなどを通じて、Blenderをネイティブに拡張できるようになります。
Blender FoundationはExtensionsプラットフォーム上で小規模なアセットライブラリを提供する計画で、サードパーティのプラットフォームも同様の仕組みを採用できるようになります。
プロジェクトセットアップ
プロジェクトセットアップは、変数とパステンプレートによって2025年に最初のマイルストーンに到達しました。次のステップとして、専用のプロジェクトエディターの追加や、アセット・アドオン・プロジェクト固有の変数などを一元管理できる共有プロジェクト設定が予定されています。
ダイナミックオーバーライド
オーバーライド機能は、2024年後半の設計に基づいて再検討されます。
「ダイナミックオーバーライド」と呼ばれる新システムでは、実行時に定義される柔軟な調整が可能となり、単一キャラクターのシンプルなリグにも適した仕組みになります。これは、かつての(2.80以前の)プロキシシステムに近い操作感となるかもしれないということです。

バーチャルリアリティ (VR)
ロケーションスカウティング
ロケーションスカウティング(ロケハン)は昨年開発が始まりましたが、まずはVRロコモーション(移動)の改善を優先するため、一時的に保留されていました。
このVRロコモーションの改善はBlender 5.1で導入される予定で、早期導入ユーザーにはすでに馴染みのある機能となっています。
ロケーションスカウティング自体は、Blender Conference 2025でプロトタイプがデモされており、今年の上半期に登場する見込みです。

Vulkan と OpenXR
一方で、VulkanとOpenXRの相互運用性の取り組みも並行して進められています。
これにより、XR体験がBlenderのその他のグラフィックス改善と同等の品質へと引き上げられることになります。
インタラクティブ性
ヘアダイナミクス
ヘアダイナミクスの開発は、昨年すでに目標として強調されていた作業に基づいて進められています。クロージャ(Closures)やバンドル(Bundles)を直接体験するのはテクニカルアーティストだけかもしれませんが、パッキングのようなアセット統合機能やモディファイアUIの改善により、Blender 5.0での新しい組み込みモディファイアが可能になりました。
レガシーなパーティクルシステムを置き換えるまでにはまだ長い道のりがありますが、ユーザーフレンドリーなインターフェースを備えた新しいヘアソルバーは、その方向への重要な一歩とされています。
モーダルノードツール
ノードに関しては、モーダルノードツールによってノードベースツールが拡張され、モーダル操作がサポートされるようになります。
モーダル操作とは、実行後にマウスの移動などの対話的な入力を行って調整する機能のことです。この機能は(2023年、2024年、2025年)、と数年にわたり設計が進化してきましたが、いよいよプロトタイプ段階から本格的な開発フェーズへ移行する準備が整いました。
さらに、この取り組みはジオメトリノードシミュレーションにおけるインタラクティブモードの基盤にもなるもので、今後のワークフロー改善に向けた重要なステップと位置づけられています。
プラットフォーム
Android対応
Androidデバイス(タッチ操作対応)への初期移植が始まります。これは、Blenderが正式に対応する最初のモバイルプラットフォームに過ぎず、今後は他のプラットフォームにも展開されていく見込みです。
当面の焦点はタブレット向けですが、同じ基盤技術によって、将来的にはBlenderをXRデバイス上でネイティブに動作させることも可能になります。
こうしたユーザビリティ向上の取り組みは、外出先で作業するアーティストだけでなく、すでに通常のディスプレイタブレットや非ディスプレイ型タブレットを使用しているアーティストにとっても大きなメリットとなります。
Blender Lab
自然言語入力とMCP
Blender Labイニシアチブの立ち上げに向けて、開発チームはBlenderにおける自然言語入力の可能性を探求する計画です。
この取り組みは、既存のPython APIを通じて通信を行う仕組みを活用し、Blender向けのMCPサーバーを構築することを目的とした実験的プロジェクトです。
Model Context Protocol(MCP)は、LLM(大規模言語モデル)が外部のデータ、ツール、システムと連携できるようにするためのオープンソース標準です。
Blender Lab については以下をご覧ください。
進行中のプロジェクト
モジュールでは常にメンテナンスと継続的な開発が行われています。以下は作業が進められている分野の一部です。
EEVEE
より良い平面反射など、EEVEEの(EEVEE-next以前のリリースとの)機能パリティ。および、レイトレーシングパイプラインの改善とシェーダーコンパイルの最適化。
EEVEEでは、より高品質な平面反射など、EEVEE-next以前のリリースとの同等の機能の確保が進められています。
加えて、レイトレーシングパイプラインの改善やシェーダーコンパイルの最適化も進行中です。
Grease Pencil
最近のアップデートでは、カーブタイプのサポート改善とレンダリングオプションの追加が行われました。
現在の焦点は、フィル(塗りつぶし)作成ワークフローの刷新と、穴(ホール)サポートの追加へと移っています。
直近のBlender Live Today では、このGrease Pencil についてメインで紹介されています。
Cycles
初期のCycles関連プロジェクトが完了した後の次のステップとして
- ライトトランスポートの改善
- 複雑なシーン処理の強化
のいずれかに取り組む計画が検討されています。また、外部レンダリングエンジンAPIの改善についても調査が進められています。
その他
- マルチレゾリューションのスパイク(突起状の不具合)修正。
- コレクションのインポート。
- FlamencoおよびBAT(Blender Asset Tracer)の改善。
- エディタータブとドッキング可能なエディターの調査。
- その他のモジュール作業。
リリース予定
2026年に計画されているリリースとその当初の日程は以下の通りです。
- Blender 5.1(3月)
- Blender 5.2 LTS(7月)
- Blender 5.3(11月)
これに加えて、年間を通じてLTSリリースの更新が予定されています。
- Blender 4.2 LTS – 2026年7月まで
- Blender 4.5 LTS – 2027年7月まで
- Blender 5.2 LTS – 2028年7月まで
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