2026年1月5日(現地時間)- AMDは、2026年1月5日に開催されたCES 2026において、クライアントPC、グラフィックス、およびソフトウェアエコシステム全体にわたる一連の新製品を発表しました。
主な発表内容には、Copilot+ PC向けの新プロセッサ「Ryzen AI 400シリーズ」、薄型ノートPCおよびワークステーション向けの「Ryzen AI Max+」、そして開発者向けのミニPCプラットフォーム「Ryzen AI Halo」が含まれます。 また、データセンター向けには「Helios」ラックスケールプラットフォームの概要が公開されたほか、組み込みシステム向けの「Ryzen AI Embedded」プロセッサも新たにラインナップに加わりました。
ここでは主な発表内容をまとめて紹介したいと思います。
クライアントPC向けプロセッサ
Ryzen AI 400シリーズおよびPRO 400シリーズ

AMDは、Copilot+ PCに対応した消費者および商用向けの新型プロセッサ「Ryzen AI 400シリーズ」および「Ryzen AI PRO 400シリーズ」を発表しました。
これらは最新の「Zen 5」アーキテクチャと第2世代AMD XDNA 2 NPUをベースに構築されており、シリーズ全体を通してCopilot+ PCの要件を上回る最大60 TOPS(Trillions of Operations Per Second)のNPU AI演算性能を提供します。
内蔵GPUにはAMD Radeon 800Mシリーズが採用され、最大12コアのCPU構成により、数日間のバッテリー寿命(multi-day battery life)を実現する電力効率とハイパフォーマンスを両立しています。
企業向け機能の強化:
「Ryzen AI PRO 400シリーズ」は、現代のIT環境向けに特化しており、エンタープライズグレードの信頼性を提供します。「AMD PRO Technologies」の実装により、多層的なセキュリティ機能、IT管理者向けの管理機能の合理化、および長期的なプラットフォームの安定性が保証されています。
主な仕様一覧:Ryzen AI 400 / PRO 400 シリーズ
| モデル | コア / スレッド | ブースト / ベース周波数 | キャッシュ合計 | グラフィックス | cTDP | NPU TOPS |
|---|---|---|---|---|---|---|
| AMD Ryzen™ AI 9 HX 475 | 12C / 24T | 最大 5.2 / 2.0 GHz | 36 MB | Radeon™ 890M | 15-54W | 60 |
| AMD Ryzen™ AI 9 HX 470 | 12C / 24T | 最大 5.2 / 2.0 GHz | 36 MB | Radeon™ 890M | 15-54W | 55 |
| AMD Ryzen™ AI 9 465 | 10C / 20T | 最大 5.0 / 2.0 GHz | 34 MB | Radeon™ 880M | 15-54W | 50 |
| AMD Ryzen™ AI 7 450 | 8C / 16T | 最大 5.1 / 2.0 GHz | 24 MB | Radeon™ 860M | 15-54W | 50 |
| AMD Ryzen™ AI 7 445 | 6C / 12T | 最大 4.6 / 2.0 GHz | 14 MB | Radeon™ 840M | 15-54W | 50 |
| AMD Ryzen™ AI 5 435 | 6C / 12T | 最大 4.5 / 2.0 GHz | 14 MB | Radeon™ 840M | 15-54W | 50 |
| AMD Ryzen™ AI 5 430 | 4C / 8T | 最大 4.5 / 2.0 GHz | 12 MB | Radeon™ 840M | 15-54W | 50 |
| AMD Ryzen™ AI 9 HX PRO 475 | 12C / 24T | 最大 5.2 / 2.0 GHz | 36 MB | Radeon™ 890M | 15-54W | 60 |
| AMD Ryzen™ AI 9 HX PRO 470 | 12C / 24T | 最大 5.2 / 2.0 GHz | 36 MB | Radeon™ 890M | 15-54W | 55 |
| AMD Ryzen™ AI 9 PRO 465 | 10C / 20T | 最大 5.0 / 2.0 GHz | 34 MB | Radeon™ 880M | 15-54W | 50 |
| AMD Ryzen™ AI 7 PRO 450 | 8C / 16T | 最大 5.1 / 2.0 GHz | 24 MB | Radeon™ 860M | 15-54W | 50 |
| AMD Ryzen™ AI 5 PRO 440 | 6C / 12T | 最大 4.8 / 2.0 GHz | 22 MB | Radeon™ 840M | 15-54W | 50 |
| AMD Ryzen™ AI 5 PRO 435 | 6C / 12T | 最大 4.5 / 2.0 GHz | 14 MB | Radeon™ 840M | 15-54W | 50 |
ハイエンド向けの「Ryzen AI Max+」シリーズ

薄型ノートPCやワークステーション、小型フォームファクタ向けに設計された「Ryzen AI Max+」シリーズも発表されました。
最大12コアの「Zen 5」CPUとRadeon 8060Sシリーズグラフィックス、そしてXDNA 2 NPUを統合したシングルチップ・アーキテクチャを採用しています。
このシリーズで注目なのは、「128GBの統合メモリ(Unified Memory)を搭載して発売される史上初のx86プロセッサ」である点です。
このアーキテクチャにより、大規模言語モデル(LLM)や高解像度メディアレンダリングなどの大容量メモリを要するタスクにおいて、従来のディスクリートGPU構成と比較して効率的な処理が可能になります。
| モデル | コア / スレッド | ブースト / ベース周波数 | キャッシュ合計 | グラフィックス | cTDP | NPU TOPS |
|---|---|---|---|---|---|---|
| AMD Ryzen™ AI Max+ 392 | 12C / 24T | 最大 5.0 / 3.2 GHz | 76 MB | Radeon™ 8060S | 45-120W | 50 |
| AMD Ryzen™ AI Max+ 388 | 8C / 16T | 最大 5.0 / 3.6 GHz | 40 MB | Radeon™ 8060S | 45-120W | 50 |
ゲーミングデスクトップ向け「Ryzen 7 9850X3D」
デスクトップ向けゲーミングプロセッサとして、Ryzen 9000X3Dシリーズのフラッグシップ「Ryzen 7 9850X3D」が発表されました。
第2世代AMD 3D V-Cacheテクノロジーを搭載し、既存の9800X3Dと比較してブーストクロックが400MHz向上(最大5.6GHz)しています。
AMDの社内テストによると、Intel Core Ultra 9 285Kと比較して、ゲーム性能において最大27%の優位性を示したとしています。 104MBの大容量キャッシュと8つの高性能コアにより、低レイテンシかつ高フレームレートのゲーム体験を実現します。
| モデル | コア / スレッド | ブースト / ベース周波数 | キャッシュ合計 | TDP |
|---|---|---|---|---|
| AMD Ryzen™ 7 9850X3D | 8C / 16T | 最大 5.6 / 4.7 GHz | 104 MB | 120W |
開発者向けプラットフォーム「Ryzen AI Halo」
AI開発を促進するためのハードウェアとして、AMDブランド初となる開発者向けミニPC「Ryzen AI Halo」が公開されました。
Ryzen AI Max+プロセッサを搭載し、最大128GBの統合メモリを備えることで、最大2,000億パラメータのAIモデルをローカルで実行可能です。 グラフィックス性能は最大60 TFLOPS(AMD RDNA 3.5)に達します。 OSはWindowsおよびLinuxに対応し、AMD ROCmソフトウェアへの最適化が行われた状態で出荷されるため、開発者は購入後すぐにAIアプリケーションの開発に着手できます。

データセンターおよびAIインフラストラクチャ
AMDのリサ・スーCEOによる基調講演では、AIインフラストラクチャの将来像についても言及され、AIの需要拡大に対応する「Yotta-scale(ヨッタスケール)」コンピューティングへのビジョンが示されました。
現在の世界のAI計算能力は約100ゼタフロップスですが、今後5年間で10ヨッタフロップス以上に拡大すると予測されています。この爆発的な需要に対応するためには、単なる計算性能の向上だけでなく、数千のアクセラレータを効率的に接続し、世代を超えて進化できるオープンかつモジュール化されたシステム設計が不可欠とされています。
「Helios」ラックスケールプラットフォーム

AMDは、この次世代インフラの基盤となる「Helios」プラットフォームの概要を公開しました。
これは1ラックあたり最大3エクサフロップスのAI性能を実現し、兆パラメータクラスのAIモデルトレーニングにおいて最大限の帯域幅とエネルギー効率を提供するよう設計されています。 システム全体はオープンな「AMD ROCm」ソフトウェアエコシステムによって統合され、以下の主要コンポーネントで構成されます。
- GPU (計算): AMD Instinct™ MI455X アクセラレータ
- CPU (制御): AMD EPYC™ “Venice” プロセッサ
- ネットワーク (接続): AMD Pensando™ “Vulcano” NIC(スケールアウトネットワーキング用)
Instinct GPUロードマップと新製品
データセンター向けGPUのラインナップも拡充され、多様なAIワークロードに対応するソリューションが提示されました。

- AMD Instinct MI440X GPU(エンタープライズ向け): オンプレミスでのAI導入を加速させるために設計された新モデルです。コンパクトな8-GPUフォームファクタを採用しており、既存の企業インフラへ容易に統合可能です。主に大規模なトレーニング、ファインチューニング、推論ワークロードをスケーラブルに処理します。
- 次世代 MI500シリーズ(プレビュー): 2027年投入予定の次世代GPUです。革新的な「CDNA 6」アーキテクチャ、最先端の2nmプロセス技術、そして次世代HBM4Eメモリを採用する計画です。これにより、2023年に発表されたMI300Xと比較して、AI性能において最大1,000倍の向上(理論値予測)を目指しています。

米国政府「Genesis Mission」への参画
基調講演においてAMDは、米国政府のAIイニシアチブ「Genesis Mission」における同社の役割についても強調しました。 これはAI技術における米国のリーダーシップ確保と科学的発見の促進を目的とした取り組みです。
この一環として、オークリッジ国立研究所の最新AIスーパーコンピュータ「Lux」および「Discovery」にAMDのテクノロジーが採用されていることが明らかにされました。

組み込みシステム向け「Ryzen AI Embedded」
エッジAIアプリケーション向けに、新しい組み込み用x86プロセッサ「Ryzen AI Embedded P100シリーズ」および「X100シリーズ」が発表されました。 これらは自動車のデジタルコックピットや産業オートメーション、ヒューマノイドロボットなどをターゲットとしています。
Ryzen AI Embedded P100シリーズの特徴
Ryzen AI Embedded P100シリーズは、4~6コアのZen 5 CPU、RDNA 3.5 GPU、XDNA 2 NPUをBGAパッケージに統合。前世代比で最大3倍のAI推論性能(最大50 TOPS)と、推定35%のGPU性能向上を実現しています。 車載用途においては、最大4つの4Kディスプレイ、または2つの8Kディスプレイを120fpsで同時駆動可能な高いグラフィックス処理能力を備えています。
また、Xenハイパーバイザーベースの仮想化技術をサポートしており、Yocto/Ubuntu(HMI用)、FreeRTOS(リアルタイム制御用)、Android/Windows(アプリケーション用)など、複数のOSドメインを安全に分離して同時実行することが可能です。
| カテゴリ | 項目 | 標準 | 産業用温度範囲 (Industrial Temp) | 車載グレード (Automotive Grade) | |||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| P121 | P132 | P121i | P132i | P122a | P132a | ||
| CPU | Zen 5 コア数 | 4 | 6 | 4 | 6 | 4 | 6 |
| 最大周波数 | 4.4 GHz | 4.5 GHz | 4.4 GHz | 4.5 GHz | 3.65 GHz | ||
| L3キャッシュ | 8 MB | ||||||
| GPU | WGP (Work Group Processors) | 1 | 2 | 1 | 2 | 2 | |
| 4K120 / 8Kp120 表示数 | 4 / 2 | ||||||
| GPU最大周波数 | 2.7 GHz | 2.8 GHz | 2.7 GHz | 2.8 GHz | 2.0 GHz | 2.4 GHz | |
| NPU | TOPS | 30 | 50 | 30 | 50 | 30 | 50 |
| I/O | 10GE Ports w/TSN | 2 | |||||
| DDR5 (ECC) | 5600 MT/s | N/A | |||||
| LPDDR5X (ECC) | 7500 MT/s | 8000 MT/s | 7500 MT/s | 8000 MT/s | 7500 MT/s (w/RAS) | ||
| USB 4.0 | 2x | N/A | |||||
| 電力・熱 | 公称TDP | 28 W | 28 W | 45 W | |||
| 接合部温度 (Junction Temp) | 0 ~ 105°C | -40 ~ 105°C | |||||
ソフトウェアエコシステムの拡充
ハードウェアの進化に合わせ、ソフトウェアスタックも大幅にアップデートされました。
- AMD ROCm 7.2: WindowsおよびLinux上でのRyzen AI 400シリーズのサポートを強化し、ComfyUIへの統合やPyTorchビルドへアクセスしやすくします。過去1年間でAIパフォーマンスは最大5倍向上したとされています。
- AMD Software: Adrenalin Edition AI Bundle: ローカルAI環境のセットアップを簡略化する新機能。ワンクリックで必要なツールをインストールし、画像生成やLLMの実行をサポートします。
- FSR Redstone: 機械学習を活用した「FSR Upscaling」および「FSR Frame Generation」により、ゲームの画質とフレームレートを向上させます。これらの機能は、AMD Software: Adrenalin Edition 25.12.1ドライバ以降で利用可能です。また、レイトレーシング性能を強化する「FSR Radiance Caching」が開発者向けプレビューとして公開されました。
その他、企業動向
AMDはAI技術の普及に向けた社会貢献活動も強化しており、より多くの教室やコミュニティにAI教育を届けるために1億5000万ドル(約225億円※)を投資することを表明しました。
また、Hack Clubと提携したAIロボティクスハッカソンには15,000人以上の学生が参加したことが報告されています。
より詳しい情報は以下の基調講演全体をご覧ください。
提供時期
各製品の提供スケジュールは以下の通りです。
- Ryzen AI 400 / PRO 400搭載システム:2026年第1四半期より、Acer、ASUS、Dell、HP、GIGABYTE、Lenovoなどの主要OEMから順次発売。デスクトップ版は第2四半期予定。
- Ryzen AI Max+搭載システム:2026年第1四半期よりAcerやASUSなどから発売開始。
- Ryzen AI Halo:2026年第2四半期に投入予定。
- Ryzen 7 9850X3D搭載システム:2026年第1四半期より提供開始。
- Ryzen AI Embedded P100:現在サンプル出荷中、第2四半期より量産出荷予定。8-12コアモデルは第1四半期にサンプル出荷予定。
- Ryzen AI Embedded X100:最大16コア搭載モデル。今年上半期にサンプル出荷開始予定。
本発表に関する詳細情報は以下の公式ページをご参照ください。
AMD and its Partners Share their Vision for “AI Everywhere, for Everyone” at CES 2026
























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