2026年9月15日(現地時間)- Canva傘下のクリエイティブソフト「Affinity」は、大規模なアップデートを実施したことを発表しました。
目次
主な新機能
今回のリリースでは、長らく要望が寄せられていた「ブレンドツール」やアプリ内スクリプト機能をはじめ、写真編集・グラフィックデザイン・ページレイアウトの各分野にわたり、60項目を超える新機能や改善が盛り込まれています。
ブレンドツール:直感的な造形と高い編集自由度の両立
ブレンドツールは、2つ以上のオブジェクトの間に一連の中間オブジェクトを作成し、シェイプ・カラー・不透明度・サイズ・位置を自動的に一方から他方へ移行させる機能です。ブレンドに沿って設定したステップ数や距離に応じてオブジェクトのコピーが作られ、幾何学的シェイプ・閉じたシェイプ・開いたカーブのいずれでもブレンドを作成できます。
ユーザーから長く要望が寄せられていた機能で、デザイナー諮問委員会やベータコミュニティとのやり取りを経て開発されたとのことです。形状の補間や有機的なグラフィックパターンの生成がスムーズに行えるようになっています。
- 2つ以上のオブジェクト間で、形状、カラー、不透明度、サイズ、位置を自在にブレンドできます。
- ライブで編集可能な「ブレンドグループ」が生成され、ステップ数や間隔の距離を後から柔軟に再調整できます。
- 単一パスはもちろん、複数パス間でのブレンド作成に対応し、外部パスに沿わせる配置やパスの置き換えも可能です。
- 位置・回転・シェイプ・スタイルの4項目に対し、それぞれ独立したバイアスチャンネルで繊細にコントロールできます。
- 2本目のパスをキャンバス上へドラッグすることで、リアルタイムにブレンドが再配置される「2パス制御」をサポートしています。
図形の変形方法はデフォルトで自動算出されますが、必要に応じて手動での頂点制御やポイントごとの対応付け(マッピング)も行えます。バイアスやイージングのカーブを調整することで、ブレンドの変形速度や特定の形状が強調されるポイントをきめ細かく制御できる設計となっています。
アプリ内スクリプト機能:反復作業の自動化とAI連携
ユーザーから最も待望されていた機能の一つである「アプリ内スクリプト」が搭載されました。Affinity内で直接スクリプトを記述・実行でき、ベクター・ピクセル・ページレイアウトをまたいだ一連の作業ルーチンを一括で自動化できます。
- 作成したスクリプトはライブラリへ保存して再利用でき、ドラッグ&ドロップでカテゴリ別に整理・管理が可能です。
- 専用の「スクリプティングスタジオ」内で、コードの記述から実行、デバッグまでを一貫して行えます。
- 個別のスクリプトファイルはもちろん、整理されたカテゴリ単位で他のAffinityユーザーと手軽に共有できます。
コーディング経験が少ないユーザーに向けて、Claude用のAIコネクターを通じたスクリプト作成支援も提供されています。チーム内で定型タスクの自動化スクリプトを共有・活用することで、単調なルーチンワークの負担を減らし、本来の創作作業により注力できる環境が整えられています。
スクリプトでできること
典型的な使い方として、次のような例が挙げられています。
- 選択したオブジェクトの一括編集(整列、変形、リネーム、スタイル変更など)
- 選択範囲からガイドやレイアウト補助線を生成
- 奇数/偶数ページなど、ページ範囲を指定した項目の調整
- ポイントの追加など、カーブジオメトリの編集
- 手作業では煩雑な繰り返し作業の正確な実行
自分でスクリプトを書くほか、AIアシスタントに生成を任せることもできます。なお、スクリプト機能は現時点ではベータ版で、Affinityの一部の領域はまだスクリプトの対象になっておらず、今後のアップデートで対応範囲が広がっていく予定です。
マクロとの違い、できないこと
スクリプトは、記録した操作をそのまま再現するマクロとは異なり、ドキュメントの内容を検査・変更するコードとして動作します。ただし、内蔵ツールや本格的なプラグインシステムの代わりにはならないともしており、次のようなことはできません。
- 新しいツールの追加
- コアとなるユーザーインターフェースの変更
- バックグラウンドでの常時実行
- ユーザー入力のインターセプト
- 組み込みツールの動作の上書き
- リアルタイムのイベント駆動型オートメーション
スクリプトは起動時に一度実行され、その場でタスクを終えて終了する仕組みで、構造化された繰り返し作業に向いています。
写真編集ワークフローの強化
今回のアップデートは、同ソフトの歴史の中でも最大規模の写真編集機能の拡張と位置付けられています。高度なRAW現像パイプラインの刷新から、AIを活用した知的な画像レタッチまで、制作現場の実用性に配慮した機能が多数追加されました。
- RAW現像プリセットのグローバル化:個別ドキュメントに紐付く形からアプリケーション全体で保持される仕様へ変更され、パノラマ合成、HDR結合、フォーカス結合、一括処理バッチ、スタック処理などでシームレスにプリセットを活用できます。
- ブレンド光補正:複数の色温度が混在する照明環境で撮影されたカットに対しても、AIが適切なホワイトバランスへ自動補正します。
- モーションぼかし軽減:撮影時の手ぶれに起因する像の流れやブレを、機械学習モデルによって自然に補正します。
- レイヤーを分離(シーン分割):統合された平坦な単一画像レイヤーを解析し、再編集や再構成が可能な複数の独立したレイヤーへと自動分解します。
これらに加え、カラー補正、シャープネス、ディテール調整に関連する9種類の調整機能が新設されています。RAW現像関連では、マルチバンド/ハイパスによる詳細オプション、赤外線やネガ再現のためのチャンネル反転、マスクに対応した選択カラー、彩度・色相カーブのスプライン補間、ウェーブレットノイズ除去、ボーン構造に基づく変形ツール、さらには天体写真専用ワークスペースの追加など、専門性の高い機能が網羅されています。また、最新RAWエンジンへの更新により、Panasonic LUMIX DC-L10、Sony α7 V(ILCE-7M5、RAW圧縮対応)、Sony α7R VI(ILCE-7RM6)などの新型カメラ機材も新たにサポートされました。
天体写真スタジオ
天体写真専用の新しいワークスペース「天体写真スタジオ」も追加されました。星空などのディープスカイと広角の星景、両方の撮影ワークフローに対応し、スタック撮影した天体写真画像のポストプロダクションに必要なパネルとツールがまとまっています。デフォルトでは非表示になっており、スタジオマネージャーから有効にする必要があります。
- 天体ストレッチツール:暗い天体写真データを引き伸ばして見えやすくします。
- アストロ背景を削除:背景のグラデーションを自動的に除去します。
- 星と背景を分離:星形と背景のデータを別レイヤーに分け、レタッチしやすくします。
- 構造の強調:「明瞭度」「マルチバンドシャープ化」などのフィルターと組み合わせ、星雲のディテールを強調できます。
このほか、画像内の明るさと色の分布を表示するスコープパネル、操作を記録して再現できるマクロ・ライブラリパネルも搭載しています。ツールバーには、線形フィット、カラーマップモノレイヤー、カラーキャリブレーション、星形で配置、ML、星と背景を分離、輝度と色を分離といったオプションも用意されています。

マスクツール
空や被写体(人物)の自動輪郭検出、エッジの境界処理、テクスチャディテールの付与、ペイント操作を行いながら調整できる編集可能グラデーション機能が、1つのツールへと統合されました。
従来のようにマスクレイヤーの新規生成や各種ブラシツールの切り替えを個別に行う手間が大幅に省かれ、マスキング工程の効率化が図られています。

ボーンベースの変形ツール
ピクセルスタジオの変形ツールに、骨格を模した「ボーン」と関節を追加してドラッグ操作でポーズを付けられる機能が加わりました。
ピクセルレイヤー上でクリックを繰り返し、手足など変形したい領域に沿って一連の関節を配置してボーンを組み立て、その関節をドラッグすることで自然な変形が可能です。
- マスター:ポイントをドラッグした際の変形の強さを調整します。
- 線形制約:「剛体」(アンカーポイント周辺のピクセルの回転・移動のみを許可)と「類似」(周囲のピクセルの伸縮も含めて変化させる)から選択できます。
画像上でクリック(macOS)またはAltクリック(Windows)を繰り返し、手足など変形したい領域に沿って一連の接続されたポイント(関節)を配置し、ボーンを構築することができます。用途に応じて変形の強度や挙動を調整でき、[適用]をクリックすると変換が確定します。
グラフィックデザインの強化
ベクター作業の精度を高める機能も追加されています。
G2カーブツール
工業デザインや滑らかなサーフェス表現に不可欠な「曲率連続性(G2)」を意識したパス編集が可能になりました。
「曲率コーム」表示により、カーブの長さに沿った曲率変化が可視化され、意図しない歪みや急な平坦化を視覚的に把握できます。曲率対応のスナップ機能も備わっており、接続する2つのセグメントについて接線方向だけでなく曲率半径まで滑らかに一致させた美しい連続曲線を構築できます。
Before
Afterシャープなコーナーを丸める(コーナー処理)
ノードツールに「コーナー処理」機能が追加され、シェイプや開いたカーブのシャープなコーナー(とがった角)を選択的に丸められるようになりました。ポリゴンや星形、三角形といった、ノードがシャープであることが前提の幾何学的シェイプが主な対象です。
シャープコーナーのノードをドラッグすると、画面上に赤い「シェイプ処理」リングが表示され、これをドラッグすることでコーナーのサイズを直感的に調整できます。開いたカーブのシャープなコーナーを丸めたい場合は、専用のコーナーツールに切り替えなくても、ノードツールのまま同様の操作が行えるとしています。

測定ツールの改善
測定ツール・エリアツールは、固定点とオブジェクトの端・コーナー・中心・交差点との距離を水平・垂直・斜めに測定したり、オブジェクトの面積やシェイプの周長を測定したりできる機能です。
この測定ツールで作成した寸法線が永続的なオブジェクトとして保存されるようになりました。これまでは一時的なホバー表示でしたが、寸法線はレイヤーパネルに表示される独立したレイヤーオブジェクトとして残ります。非表示・並べ替え・グループ化ができ、いつでも編集でき、印刷やドキュメントへの保存も可能です。
3Dモデルサポート
CG制作やDTP・Webアセット制作において利便性の高い3D連携機能が強化されました。
汎用フォーマットである「GLBファイル」をキャンバス上に直接配置し、ヨー(左右回転)・ピッチ(上下傾き)・ロール(回転)および画角(FOV)を直感的に変形・アングル調整できます。
さらに、対象物を撮影した写真データから3Dモデルを生成する機能も備わり、外部のDCCツールを立ち上げることなく、Affinity内で直接アングルの変更や簡易的なライティング調整を行うワークフローが可能となっています。
Canva AIによる制作支援機能
過度な自動化ではなく「反復的で手作業に時間を要する処理を加速させ、最終的なクリエイティブの決定権は制作者自身が担う」という基本方針のもと、Canva AIを活用した実用的な支援機能が導入されています。
- 生成アップスケール:入力画像に忠実な解像度向上スタイルと、細部へ質感を補完するクリエイティブスタイルの2種類を用途に応じて選択可能です。
- レイヤーを3Dに:ラスター画像、ベクター、レイヤーグループ、テキスト要素を、プロンプト指示によって3Dオブジェクト化できます。モデルは、Tripo3D 3.1 が利用できるようです。
- 生成画像/ベクター/拡張/塗りつぶし:新設された「AIモデルセレクター」からモデルを選択でき、指定したモデル特性に応じた各種コントロールが利用できます。
- 生成ベクトル:ビットマップのベクター化ではなく、最初から扱いやすい100%ネイティブなベクターデータとして生成されます。
- 機械学習(ML)ベースの各補助機能:ノイズ除去、モーションブラー軽減、被写体・領域検出、SDRからHDRへのトーン変換、ラフスケッチからクリーンなパスへのシェイプ化などに対応しています。
なおこれらの機能の利用は、月額1180円または年額11800円のCanvaプロプランで可能です。
【Tips】プロジェクトデータとプライバシーについて
Affinity内での制作データやキャンバス上のコンテンツは、AIモデルの機械学習トレーニングには一切使用されません。また、プロジェクトファイルはユーザーローカルのデバイス上に保存されるため、外部サーバーやサービス提供側から勝手にアクセスされることはない方針が明示されています。
その他のアップデート
上記以外にも、グラフィックデザイン・写真編集・ページレイアウト・一般機能にわたり、細かなアップデートが多数加えられています。
グラフィックデザイン
- 拡散カーブグラデーション塗りつぶしタイプを追加(描いたカーブの内側/外側に向けてカラーをにじませ、シェイプの形状に合わせたハイライトをスカルプトできる)
- ベクターワーププリセットを追加(アーチ、上部円弧、下部円弧、膨らみ、フラッグ、ライズ)
- 複合パスがデフォルトで作成されるように変更
- メッシュ塗りつぶしに新しいブレンド方式を追加
写真編集
- HDR結合に、非スタジオ向けのトーン圧縮オプションを追加
- OCIO 2.5.2によるカラーマネジメントに対応
- 乗算平均値を用いた「スムーズモードスタビライザー」を追加(ペイントブラシ・消去・ピクセルブラシツールでのフリーハンド境界線のジッターを平滑化)
- カーブ調整に、ブラックポイント・ホワイトポイント・グレーポイント・ホワイトバランス用の新しいカラーピッカーを追加
- コントラストスライダー付きの「ライブトーンブレンドグループ」を追加
- ラスタライズ・画像サイズ変更・エクスポート時にMitchellリサンプリングを選択可能に
ページレイアウト
- Adobe InDesign(.INDD)およびMicrosoft Publisher(.pub)のネイティブインポートに対応
- Canvaシートとのライブデータ結合により、ワンクリックで結合データを更新可能に(CSVの書き出し・再インポートは不要)
- RTFインポート時にハイパーリンクを保持するように改善
- ノート番号付けに再起動オプションを追加(フレーム・ページ・スプレッド・セクション単位で設定可能)
- プリフライトで独自のテキストパターン(プレーンテキストまたは正規表現)を定義できるように
- 不足しているフォント・グリフをページ上でハイライト表示
- リフロー型EPUB書き出し時に、見出しや強調などの構造をHTMLタグとして付与できるように
- 読む順パネルに基づく、ランニングヘッダーのオプションを追加
- テキストのインポート・貼り付け時に、自動補正・自動置換ルールを適用できるオプションを追加
- 未使用のマスターをまとめて削除できる機能を追加
- ハイパーリンクされたオブジェクトを視覚的インジケーターで表示
- PDFアクセシビリティ向けに、ハイパーリンクURLへAltテキストを追加できるように
一般
- ヘルプメニューに、ツールやコマンドを素早く探せる「機能検索」を追加
- ドキュメント内の塗りつぶし(単色・グラデーション・ビットマップ・拡散・メッシュ・陰影)からパレットを作成できるように
- CanvaのアニメーションツールCavalryのAffinityファイルインポートに対応(本格的な連携は2.8リリースで対応予定としています)
セキュリティ面では、Affinity PROP_ALIGNEXに関する脆弱性(CVE-2026-81546)が修正されました。詳細な影響範囲はCanva Trust Reportsで公開されているとのことです。このほか、PDFの取り扱いやデータ結合、ブランドキットアセットに関する不具合、各種クラッシュの修正など、多数の細かな改善が行われています。
すべてのアップデート内容はAffinity 2026年9月リリースノート(公式ドキュメント)へ
価格とシステム要件
今回のリリースの大部分は無料で利用でき、写真編集・ベクター・レイアウトの主要ツールもすべて含まれています。なお、「Canva AIスタジオ」に関連するクラウド連携・生成系機能については、Canvaのプレミアムプランの契約枠に応じて提供されます。
各プラットフォーム(Windows / macOS / iPadOS)の最小システム要件やサポート環境の詳細については、公式サイトの動作要件ページをご確認ください。


