第78回クリエイティブアーツエミー賞 視覚効果部門:受賞&ノミネート作品のVFXをチェック!

2026年9月5日・6日(現地時間)、ロサンゼルスのピーコック・シアターにて第78回クリエイティブ・アーツ・エミー賞の授賞式が開催されました。2夜にわたり計102の部門で受賞者が発表され、本編である第78回プライムタイム・エミー賞(9月14日放送)に先立って、撮影・編集・視覚効果などのクラフト部門を中心に表彰が行われています。

視覚効果(VFX)関連の部門は「シーズンまたは映画における視覚効果賞」と「単話における視覚効果賞」の2つです。本記事では、この2部門にノミネートされた作品と、それぞれが手がけたVFXの内容をまとめて紹介します。

目次

シーズン/映画部門

シーズン/映画部門(Outstanding Special Visual Effects in a Season or a Movie)のノミネートは『Alien: Earth』『Foundation』『It: Welcome to Derry』『Prehistoric Planet: Ice Age』『Stranger Things』の5作品で、受賞は『Stranger Things』でした。

『Stranger Things』シーズン5【受賞】

The Visual Effects of Stranger Things Season 5 Stranger Things 5 | VFX Breakdown | The Yard VFX Stranger Things S5 VFX Breakdown — Rodeo FX Stranger Things S5 | VFX Breakdown | Eyeline Working on Stranger Things 5 | Wētā FX Behind The Magic | Stranger Things Season 5 | ILM Behind The Magic | Stranger Things | Exotic Matter | ILM Stranger Things Season 5 | VFX Breakdown | Accenture
配信Netflix
主要VFXスタジオWeta FX、ILM(BigHug FX、Accenture Song、Eyeline、Rodeo FX、The Yard VFXも参加)

あらすじ

Netflixの人気ドラマ、最終シーズン。ホーキンスの町とその裏側「アップサイドダウン」を巡る物語がついに完結します。

VFXについて

プロダクションVFXスーパーバイザーのBetsy Patersonのもと、Weta FXとILMが全8話・1,100ショット以上を分担しました。Weta FX(VFXスーパーバイザー:Martin Hill)はヴェクナ、デモゴルゴン、デモドッグ、若き日のウィルの演技合成、そして深淵(アビス)を舞台にしたマインド・フレイヤーとの大規模な戦闘シーンなど、クリーチャー関連の作業を中心に担当しています。

一方、ILM(VFXスーパーバイザー:Bill Georgiou)は環境系の作業に重点を置き、アップサイドダウンの崩壊描写や、「エキゾチック・マター」と呼ばれる特殊物質の表現、ホッパーを締め上げる蔦の表現などを手がけました。デモゴルゴンについては、Weta FXがアップグレードしたモデルをILMに引き継ぎ、MAC-Z軍事基地での戦闘シーン向けに改変するという分業体制が取られたとしています。ムンバイ拠点のチームは、裂け目に子どもが引き込まれるシーンのシミュレーションを担当したとのことです。Accenture Songも本シーズンのVFX制作に参加しています。

『Alien: Earth』

Alien: Earth - VFX Breakdown by Zoic Studios Alien: Earth BTS | Zoic Studios FIN ALIEN EARTH VFX BREAKDOWN | Fin Design + Effects Alien: Earth - VFX Breakdown by UPP Alien: Earth VFX Breakdown | UPP(LinkedIn) Alien: Earth | Untold Studios
配信Hulu(FX)
主要VFXスタジオWeta Workshop(実物効果)、Untold Studios、UPP、Zoic Studios、Fin Design + Effects、Pixomondo、Second Skin Studio、CosFX、Crafty Apes

あらすじ

『エイリアン』シリーズ初のテレビドラマ。ウェイランド・ユタニ社の宇宙船「マジノ号」が地球に墜落したことをきっかけに、複数の異星生命体と人類が遭遇していく物語です。

VFXについて

プロダクションVFXスーパーバイザーのJonathan Rothbartは、1979年の第1作『エイリアン』の質感を再現することを一貫した方針に据えたとしています。全体で約2,000ショットが制作されました。

象徴的なゼノモーフは、Weta Workshopが製作したアニマトロニクス・スーツを俳優が着用して撮影し、そこにCGで手足や尻尾を置き換える、実写とデジタルのハイブリッド手法が採られました。Zoic Studiosが「ティック」と「オーキッド」を、Fin Design + Effectsが登場人物モロウのCG義手を、UPPが宇宙船関連ショットの大半を担当したとしています。新クリーチャーの「アイ・ミッジ」はUntold Studiosが担当し、タイ・バンコクのSecond Skin Studioが製作したパペットとプロテーゼ効果を組み合わせて表現しています。

『Foundation』シーズン3

Foundation Season 3 | VFX Breakdown | Framestore Foundation Season 3 | VFX Breakdown | Outpost VFX Foundation Season 3 VFX Breakdown | Rodeo FX
配信Apple TV
主要VFXスタジオFramestore、Rodeo FX、Accenture Song、Outpost VFX、PFX、Crafty Apes、SSVFX、Otomo FX、BOT VFX

あらすじ

アイザック・アシモフ原作のSFドラマ第3シーズン。銀河文明の崩壊を予見していなかった存在「ミュール」の登場を軸に、心理歴史学者ハリ・セルダンの計画が揺らいでいく様子が描かれます。

VFXについて

3シーズン連続でVFXスーパーバイザーを務めるChris MacLeanのもと、本シーズンは約4,000ショットが制作されました。Framestoreは約500ショットを担当し、ミコジェンの巨大な都市景観の構築やVESノミネート対象となった「クラリオン・ステーション」のシーケンスなどに関わったとしています。Rodeo FXは494ショットを担当し、カルガン軍の戦闘シーンなどを手がけました。Outpost VFXは3シーズン連続で参加し、ロボットのキャラクター「デマーゼル」が処刑用のビームで溶解していくシーケンスなど、キャラクターワークを中心に担当したとしています。

『It: Welcome to Derry』

IT: Welcome To Derry Red Band VFX Breakdown — Rodeo FX IT: Welcome to Derry — VFX Breakdown by MR.X IT: Welcome to Derry | VFX Breakdown | Digital Domain IT: Welcome to Derry — VFX Breakdown by Alchemy24 FOLKS | VFX Breakdown | IT: Welcome to Derry IT: Welcome to Derry VFX Breakdown | Outpost VFX
配信HBO Max
主要VFXスタジオRodeo FX、Crafty Apes、Digital Domain、DNEG、Folks VFX、MR. X、Alchemy 24、Herne Hill、Outpost VFX、Rocket Science VFX

あらすじ

映画『IT』シリーズの前日譚となるドラマ。1960年代のデリーの町を舞台に、後の恐怖の起源となる出来事を描きます。

VFXについて

プロダクションVFXスーパーバイザーのDaryl Sawchukによれば、全14ベンダーで総計約2,700ショットのうち、Rodeo FXが主要ベンダーとして約730ショットを担当したとしています。ペニーワイズの複数の姿(ピクル・モンスター、宙を舞う死んだ赤ん坊など)を中心に制作。MR. Xも「スケルトン・マン」などのクリーチャーを担当し、Digital Domainは複数話にわたるクリーチャーVFXを、Alchemy 24も一部ショットを手がけています。Folks VFXとOutpost VFXもそれぞれ独自のブレイクダウン映像を公開しており、環境拡張やクリーチャー関連の作業に参加したとしています。

『Prehistoric Planet: Ice Age』

Prehistoric Planet: Ice Age VFX Breakdown | Framestore Prehistoric Planet: Ice Age Motion Graphics and Titles | Framestore
配信Apple TV
主要VFXスタジオFramestore

あらすじ

BBC Studios Natural History Unitとの共同制作による自然史ドキュメンタリーシリーズ第3弾。恐竜絶滅後、氷河期(更新世)を生きた哺乳類たちの生態を5話にわたって描きます。

VFXについて

プロダクション側VFXスーパーバイザーのRussell Dodgsonが率いるFramestoreのチームが、ロンドン・モントリオール・ムンバイの拠点で、40種を超える科学的に正確なクリーチャーのVFXとアニメーションを手がけたとしています。前2シーズン(恐竜編)はMPCがVFX、Jellyfish Picturesがコンセプトアート、Moonraker VFXがタイトル・グラフィックスをそれぞれ担当していましたが、2025年にMPC(親会社Technicolorグループ)が事業停止、Jellyfish Picturesも稼働停止したことを受け、本シーズン(Ice Age)ではFramestoreがVFXだけでなくタイトル・モーショングラフィックスまで単独で制作する体制に変わっています。撮影現場ではパペットを使って演者の演技や照明の基準を作った上で、後からCGクリーチャーに置き換える手法が採られました。本作はアニー賞のBest FX、VESアワードでも受賞しています。

単話部門

単話部門(Outstanding Special Visual Effects in a Single Episode)のノミネートは『Gen V』「New Year, New U」、『A Knight of the Seven Kingdoms』「In the Name of the Mother」、『Paradise』「Exodus」、『Spider-Noir』「Nightmare on a Gurney」、『The Walking Dead: Daryl Dixon』「Costa da Morte」の5話で、受賞は『Spider-Noir』でした。

※この部門はノミネート対象がその1話に限定されますが、スタジオが公開するVFX映像はシーズン・シリーズ全体を通した総集編リールであることが多く、対象話数のカットはその一部として含まれている場合があります。以下では、確認できた範囲で「その話数専用の映像」と「シリーズ全体の総集編(対象話数のカットを含む)」を紹介しています。また、VFXスタジオ制作のブレイクダウン映像が見つからない作品についても、配信元が公開する公式トレーラーやティザーの中にVFXショットが映り込んでいる場合があるため、参考として掲載しています(トレイラーはVFX紹介を目的とした映像ではない点にご留意ください)。

『Spider-Noir』「Nightmare on a Gurney」【受賞】

Spider-Noir | VFX Breakdown | Eyeline Spider-Noir | VFX Breakdown | Barnstorm VFX VFX Showreel 2025 | Barnstorm VFX Studio Reel
配信MGM+ / Prime Video
主要VFXスタジオBarnstorm VFX、Cinesite、ILM、Eyeline VFX、CoSA VFX

あらすじ

マーベルコミック「Spider-Man Noir」を原作に、1930年代のニューヨークを舞台にしたノワール探偵ドラマ。第6話「Nightmare on a Gurney」では、負傷して捕らえられた主人公ベンが、薬物を投与された状態で悪夢のような幻覚に苛まれます。

VFXについて

プロダクションVFXスーパーバイザーのHnedel Maximoreのもと、12ベンダー・約3,200ショットという規模で制作されました。エミー賞を受賞したCinesite(VFXスーパーバイザー:Suzie Askham)は、フェイバー博士の研究室でベンが幻覚を見るシークエンスなど高難度のクリーチャー・世界観演出を担当しています。Barnstorm VFXはシーズン全体で450ショットを担当し、1930年代の環境再現やCGの列車などを手がけました。Eyelineはニューヨークの環境と火災表現を、CoSA VFXは全編にわたるデジタル若返り(デエイジング)を担当したとしています。

本作は「オーセンティック白黒版」と「フルカラー版」の2バージョンで視聴できる仕様のため、VFXは両方の見え方を同時に成立させる必要があり、通常よりも作業量が増えたと関係者は述べています。

🔗 外部リンク(エミー賞受賞スタジオ・単独ブレイクダウン映像は非公開) Emmy Award win for Spider-Noir Visual Effects cinesite.com

『Gen V』「New Year, New U」

Gen V Season 2 - Official Trailer | Prime Video Gen V: Season 2 | Official Teaser Trailer

※上記はPrime Video公式のシーズン2トレーラー/ティザーで、VFXブレイクダウンを目的とした映像ではありません。VFXスタジオ(DNEGなど)による単独のブレイクダウン映像は本記事執筆時点で確認できていません。

配信Prime Video
主要VFXスタジオDNEG、Eyeline/Scanline、Luma Pictures、Spin VFX、Cinesite、Splice

あらすじ

『The Boys』のスピンオフドラマ、シーズン2。超能力を持つ大学生たちの日常と陰謀を描くシリーズです。

VFXについて

VFXスーパーバイザーのKaren Hestonのもと、DNEG(VFXスーパーバイザー:Andrew Simmonds)を主軸に複数のベンダーが分担して制作にあたりました。DNEGの発表では436ショットを担当としていますが、全8話を通じて同時進行したポスプロ全体では最大1,400ショット規模だったとする関係者証言もあります。単独のVFXブレイクダウン映像は本記事執筆時点で公開が確認できていません。

『A Knight of the Seven Kingdoms』「In the Name of the Mother」

A Knight of the Seven Kingdoms — VFX Breakdown by El Ranchito
配信HBO Max
主要VFXスタジオEl Ranchito

あらすじ

ジョージ・R・R・マーティンの「ダンク&エッグ」シリーズを原作とする、『ゲーム・オブ・スローンズ』世界の物語。第5話「In the Name of the Mother」では、主人公ダンクが100年ぶりに行われる「7人による裁きの決闘(トライアル・オブ・セブン)」に挑みます。

VFXについて

全体VFXスーパーバイザーのArron Roebuck、全体VFXプロデューサーPaul Russoのもと、スペインのEl Ranchito(VFXスーパーバイザー:Angel Rico Riesgo、Sonsoles L. Aranguren)が全6話・約600ショットを単独で担当しました。決闘のクライマックスでは、ドラゴンのベイラー・ターガリエンがダンクの上に落下して息絶える場面が描かれ、シリーズを象徴するドラゴンのクリーチャーVFXが本エピソードの見どころとなっています。

『Paradise』「Exodus」

Paradise Season 2 | Official Trailer | Hulu Paradise Season 2 | Special Look | Hulu

※上記はHulu公式のシーズン2トレーラー/スペシャルルックで、VFXブレイクダウンを目的とした映像ではありません(「Exodus」単体のトレーラーではなくシーズン全体の予告編です)。VFXスタジオ(Onyx Visual Effects)による単独のブレイクダウン映像は本記事執筆時点で確認できていません。

配信Hulu
主要VFXスタジオOnyx Visual Effects

あらすじ

南極で発生した超巨大火山噴火による壊滅的な津波と、米大統領暗殺事件を軸にしたディザスター/政治スリラー。シーズン2最終話「Exodus」では、生存者たちが暮らす地下シェルター都市が崩壊していきます。

VFXについて

VFXスーパーバイザーJohn Weckworthが率いるOnyx Visual Effectsが、2シーズンを通じて唯一のベンダーとして全8話で約1,000ショットを制作しました。台本が撮影の進行に合わせて逐次届く体制だったため、VFXを事前に作り込む時間的余裕がほとんどなかったとしています。「Exodus」では、シェルターを収容する山全体がVFXで構築され、マットペインターが山の見た目違いのバージョンを12種類ほど用意したというエピソードも紹介されています。

『The Walking Dead: Daryl Dixon』「Costa da Morte」

The Mill – Daryl Dixon S3 Costa da Morte VFX Breakdown The Walking Dead – Daryl Dixon | VFX Breakdown(シリーズ全体)
配信AMC
主要VFXスタジオThe Mill、BUF、Mathematic

あらすじ

『ウォーキング・デッド』のスピンオフ、シーズン3。物語の舞台をヨーロッパへ移し、ダリルとキャロルが海を渡る場面から幕を開けるエピソードです。

VFXについて

全体VFXスーパーバイザーのJao M’Changamaのもと、The Mill(VFXスーパーバイザー:Mathieu Legros、VFXプロデューサー:Yann Nivet)が60ショット以上のVFXを担当し、Houdiniによる波のシミュレーションを中心に、荒れた海洋シークエンスをフルデジタルで構築しました。俳優をブルースクリーンで囲んで撮影し、荒波や嵐の空模様を含む没入感のある海洋環境を拡張したとしています。BUFやMathematicもシーズン全体のVFXに参加しています。


第78回プライムタイム・エミー賞の本編は、2026年9月14日(現地時間)に開催され、受賞結果が発表されました。ドラマ部門をはじめとする全部門の受賞結果は、以下の記事でご確認いただけます。

目次