2026年9月9日(現地時間)- PlayCanvasチームは、ブラウザ上で軽快に動作する3D Gaussian Splattingエディター「SuperSplat」の大型メジャーアップデートとなるバージョン3.0を発表しました。
目次
主な新機能
今回のアップデートは、エディター本体をWebGPUベースでゼロから再構築した、バージョン2.0以来の最大規模の刷新です。
大規模なスプラットシーンを読み込み・編集する際のメモリ消費量が大幅に削減されたほか、3D空間を直感的に選択できる新ツール、選択領域へのリアルタイムカラーグレーディング機能、表示制御を体系化した「Appearance」パネルなど、制作フローを効率化する数多くの機能強化が盛り込まれています。
エディターをWebGPUで全面刷新
SuperSplat Viewerには、先行して2026年6月にコンピュートベースのWebGPUレンダラーが導入されていましたが、バージョン3.0ではそのアーキテクチャをエディター本体にも全面的に採用しました。レンダラーとデータモデルの双方が一新され、エディターはWebGPU専用へと移行しています。
- GPU上での一貫したパイプライン処理: シーン内の全Gaussianに対し、投影からフラスタムカリング、コンパクション、深度ソート、描画コマンド発行までをGPU上で毎フレーム完結して実行します。コンピュートベースの投影処理、GPU基数ソート(Radix Sort)、間接描画(Indirect Drawing)の導入により、これまでCPU側のボトルネックとなっていたソート処理は完全に廃止されました。
- GPUチャンク単位のストレージ管理: エディターがJavaScript側にシーン全体の巨大なコピーを保持する方式を改め、編集状態を保持する最小限のインスタンスリストのみをやり取りする設計へと変更されました。
- GPUコンピュートによる選択処理: ヒストグラム生成、範囲選択、カラーマッチング、バウンディングボックス計算などの選択ロジックもGPU上で高速に並列実行されるため、大規模なデータセットでもツールの応答性が損なわれません。
- splat-transformによるストリーミング書き出し: PLY、圧縮PLY、SOG、SPZ、
.ssproj、Publishへの書き出し処理がチャンク単位のストリーミングに対応し、保存前にシーン全体をメインメモリへ再展開する必要がなくなりました。
これらのアーキテクチャ刷新によって、メモリ効率は大幅に向上しています。以下は、440万スプラット(PLY形式で約990MB)のシーンを読み込んだ際の、SuperSplat 2.xと3.0におけるJavaScriptヒープメモリのピーク値比較です。
| 操作・処理内容 | SuperSplat 2.x | SuperSplat 3.0 |
|---|---|---|
| シーン読み込み(アイドル状態) | 1,557 MB | 105 MB(約93%削減) |
| PLY保存 | 1,722 MB | 623 MB |
| 圧縮PLY保存 | 2,982 MB | 1,759 MB |
| .ssprojプロジェクト保存 | 1,723 MB | 790 MB |
| Publish(Web公開書き出し) | 1,934 MB | 741 MB |
| 1080p動画レンダリング | 1,673 MB | 142 MB |
これまでブラウザのタブメモリ制限に達してクラッシュや動作停止を引き起こしていた巨大なデータも、安定して読み込み・編集できるようになりました。
また、複数スプラットの投影・ソートをGPU上で一括処理できるようになったため、複数のキャプチャデータを同一シーンに読み込んでの同時編集も、しやすくなっています。
なお、SuperSplat 3.0の利用にはWebGPU環境が必須となります。最新版のGoogle Chrome、Microsoft Edge、Safari 26以降、またはWebGPUを有効化したMozilla Firefoxで利用可能です。
WebGPU非対応の環境やハードウェアアクセラレーションが無効になっているブラウザではエディターが起動せず、警告メッセージが表示されます。なお、従来のWebGLベースである2.x系もGitHubのv2ブランチ(最終リリースはv2.32.5)にて引き続き参照・利用が可能です。
重いシーンの操作性を維持する「Stochastic Alpha」
数千万単位のGaussianを毎フレームソートする処理は、3D Gaussian Splattingの描画負荷において最も重い要因のひとつです。バージョン3.0では、カメラ移動中の負荷を解消するStochastic Alphaモードが新たに搭載されました。
この手法では、Gaussianを不透明かつ深度テスト有効の状態で、ピクセル単位のカバレッジ(確率的ディザリング)を用いて描画します。ソート処理をバイパスできるため、どれほど巨大なシーンであっても視点移動やカメラワークの操作中にフレームレートが低下しません。カメラが静止した瞬間に自動でソート・ブレンディングが行われ、高品質で正確なフレームへと瞬時に切り替わります。
設定は Preferences > Rendering > Stochastic Alpha から変更可能で、Disabled、Enabled、Movement、そして新標準のAutoの4モードが用意されています。デフォルトのAutoでは、GPU負荷に余裕がある場合は通常のソート描画を維持し、ソート処理が重くなったと判定された場合のみ移動中にStochastic Alphaへと切り替えます。負荷が軽いシーンでは見た目の変化が生じず、重いシーンでのみ滑らかな操作性が維持される合理的な挙動となっています。また、Rings表示モードでも同様に機能します。
約2,000万Gaussianで構成された植物園スキャンデータの検証動画(x1.5、圧縮済み)は以下のとおりです。
直感的な3Dサーフェス選択を実現する「スフィアブラシ」
不要なスプラットの除去やオブジェクトの切り出しなど、編集工程の大半を占める「選択作業」に向けて、新たな選択ツールスフィアブラシ(Sphere Brush)(ショートカット:Shift+B)が実装されました。
描画したストロークの各点が3D空間上の位置にデプスピックされ、その移動経路に沿った球状の範囲内でGPU判定が行われます。ブラシ半径は描画しているサーフェス上の実スケールと連動し、深度差が大きい不連続点ではストロークが自動的に切り離される仕組みとなっています。そのため、手前のサーフェスを塗っている際にブラシが奥の無関係なオブジェクトまで突き抜けて巻き込んでしまう心配はありません。
ブラシサイズは従来の2Dブラシと共通で調整でき([ / ]キー、またはAlt+ホイール)、追加・削除・交差などの各種モディファイアもそのまま使用可能です。
また、選択ロジックの刷新に伴い、ツールバー下部に2つのトグルスイッチが新設されました。Selection Depth(N)はカメラから見えている表面のみを選択対象とし、Selection Footprint(M)はGaussianの中心点だけでなく楕円体としての広がり全体を交差判定の対象とします。
さらに、完全に透過しているアルファ値0のスプラットも選択できるようになりました。頻繁に使うツール群(ラッソ/ポリゴン、フラッド/スポイト)は長押しで切り替え可能な統合ボタンへとまとめられ、アイコンも現代的にリファインされています。
選択範囲に直接適用できるカラーグレーディング
色調補正ツール群も大幅に強化されました。Colorsセクションはシーンマネージャー内のTransform直下へ配置が見直され、アクセスしやすくなっています。機能面における最大の進化は、選択したGaussianのみに対してカラー編集を適用できるようになった点です。
対象を選択した状態で、Tint(色合い)、Temperature(色温度)、Saturation(彩度)、Brightness(明るさ)、Black Point、White Point、Transparency(透明度)をスライダーで操作すると、ビューポート上でリアルタイムに変更が反映されます。仕上がりを確認後、Applyで確定、またはResetで即座に元に戻せます。選択が解除されている状態では、従来どおりシーン全体に対するグローバル補正として機能します。
表示体系を整理した新「Appearance」パネル
複雑なスプラットシーンを適切に把握しながら作業できるよう、右側ツールバーに表示設定を集約したAppearanceパネルが新しく追加されました。
Display項目では、Gaussians・Centers・Ringsの切り替え、中心点の表示サイズやリングの線幅、選択・非選択スプラットの強調カラーを設定できます。Selection項目では、選択時のハイライトカラーやセンター・リング・アウトラインの個別表示トグルが用意されています。各設定にはショートカット案内付きのツールチップも表示されるようになっています。
運用面での大きな変更として、各種表示オーバーレイが初期状態でオフになりました。シーン読み込み直後から実レンダリングに近い素のビジュアルで確認できます。Tabキーを押すことで、個別の設定値を保持したままオーバーレイ全体の表示/非表示を一発で切り替え可能です。
また、ビューポートの各種ガイド(XZ/XY/YZグリッド、バウンディングボックス、寸法表示、カメラポーズ、カメラ情報など)は、目のアイコンから開くOverlaysポップアップに集約されました。ここには直近1秒間のGPUフレーム時間を可視化するFrame Timings診断グラフも備わっています。これらに伴い、Preferences(旧Settings)はアプリケーション全体の共通設定に特化する形へと整理されました。
その他の機能改善と修正
- グリッド描画の刷新: XZ・XY・YZの各平面を個別に切り替え可能になり、視点の距離に応じてスケール線が自動調整されます(遠景での過密表示や近接時の過剰分割を防止)。アンチエイリアス処理により、地平線付近のモアレやスプラット交差部のチラつきも改善されています。
- オリエントツールの高速化: メジャーツールと同様にポイントピッキングをGPU処理化。240万Gaussianのテスト環境において、クリック時のレスポンスが従来の約8.5秒(UIフリーズ状態)から25ミリ秒未満へと劇的に短縮されました。また、
Fキーでアクティブツールの中心へ素早くフレーミングできます。 - 対数ヒストグラムの改善: データパネルに
Log CountsとLog Binsが個別実装され、符号付き対数ビニングと正確な数値ラベルの表示に対応しました。 - カメラパスのインポート高速化: JSONやCOLMAP形式のインポート処理がバッチ化され、スプラインおよびタイムラインの再構築コストが大幅に軽減されました。
- 正投影レンダリングと深度ピッキングの修正: 正投影カメラがシーン境界の内部に入り込んだ際にも正確に動作するよう修正されました。
- OSネイティブ連携(PWA)の強化: インストール可能なウェブアプリ(PWA)として、
.ply、.splat、.sog、.spz、.ksplat、.ssproj各拡張子のファイルハンドラーが登録されました。 - キーボードショートカットのポップアップ画面: ツールバーアイコンも刷新されました。さらに、選択ツール、ドラッグツール、データパネル、パブリッシング機能など、あらゆる面で安定性に関する修正が多数含まれています。
- 基盤エンジンの更新: PlayCanvas Engine 2.22.0およびsplat-transform 3.3.3をベースに構築されています。
修正の詳細やコミットログは、GitHub 3.0.0 リリースノートより確認することができます。
ライセンス・システム要件および移行時のポイント
SuperSplatおよび基幹となるPlayCanvas Engineは、MITライセンスのもとで完全無料のオープンソースソフトウェアとして提供されています。3.0の利用にあたっては、WebGPUを標準サポートしたモダンブラウザ(Chrome、Edge、Safari 26以降、または設定変更を行ったFirefox)が必須です。
2.x系からバージョン3.0へ移行される場合は、以下の挙動の変化にご留意ください。
2.xから移行する際のチェックポイント
- キャッシュの更新: 旧バージョンのサービスワーカーとオフラインキャッシュは初回起動時に自動破棄されます。万が一古いバージョンが読み込まれる場合は、ブラウザのハードリフレッシュ(Ctrl+F5 / Cmd+Shift+R)をお試しください。
- 表示オーバーレイ: 初期値が非表示に変更されています。スプラットの輪郭やセンター点を確認したい場合は、
TabキーまたはAppearanceパネルから有効化してください。 - UI配置の変更: オーバーレイは上部アイコン、カラー調整はScene ManagerのTransform直下へ移動しています。Stochastic Alphaの初期設定は
Autoです。 - プロジェクト互換性: 3.0で新規保存した
.ssprojプロジェクトはフォーマットバージョン1となるため、2.xでは開けなくなります(2.xで作成されたプロジェクトファイルは3.0でそのまま開くことが可能です)。
公式リソース・リポジトリリンク
- SuperSplat Editor: GitHub (playcanvas/supersplat)
- SuperSplat Viewer: GitHub (playcanvas/supersplat-viewer)
- PlayCanvas Engine: GitHub (playcanvas/engine)
- SplatTransform: GitHub (playcanvas/splat-transform)
- Gaussian Splatting マニュアル: 公式ユーザーマニュアル
- SuperSplat 操作ガイド: 公式ユーザーガイド


