2026年9月8日(米国時間) ― Adobeは、9月11日〜14日にオランダ・アムステルダムで開催される放送・映像関連の展示会「IBC(International Broadcasting Convention)2026」を前に、動画編集ソフト「Adobe Premiere」、モーショングラフィックス・VFXソフト「Adobe After Effects」、クラウドベースのメディアコラボレーションツール「Frame.io」に関する新しいAI機能とアップデートを発表しました。
発表の背景
動画編集では、カットの流れがつかめている最中でも、つなぎのb-roll映像や効果音が足りず、素材ライブラリや外部サイトを探し回ることでタイムラインから離れざるを得なくなり、創作の勢いが途切れてしまうことがあります。Adobeは、今回発表した機能群がこうした「編集中の素材探し」による中断を減らし、時間のかかる作業を自動化することで、クリエイティブな工程により多くの時間を割けるようにするものだとしています。
あわせてAdobeは、Premiereが2026年エミー賞において、米国テレビ芸術科学アカデミーより「テクノロジー&エンジニアリング・エミー賞(卓越した功績賞)」に選出されたことも発表しました。35年にわたりクリエイターと共にテレビの歴史を築き、ポストプロダクションの基盤であり続けてきた歩みが評価されたとしています。
ここでは、各新機能の概要を紹介したいと思います。詳しい情報は個別の新機能記事で紹介したいと思います。
Premiereの新機能
生成メディアツール
アドビが発表した「2026年版 クリエイターツールキットレポート」によると、クリエイターの10人中9人近くが、アドビが提供するようなクリエイティブAIツールを使うことでビジネスやオーディエンスの拡大を加速させている一方、圧倒的多数が最終的な創作判断は自分たちの手元に残すことが不可欠だと回答しているとしています。
この「スピードと創作コントロールの両立」をコンセプトとしているのが、Premiereの新機能「生成メディアツール(Generative Media Tool)」です。タイムライン上で直接、動画や効果音を生成できるため、他のアプリを行き来することなくシーンに必要なコンテンツを作成でき、制作全体を通じて完全な創作コントロールを保てるとしています。「ビデオを生成」と「サウンドエフェクトを生成」はすでに製品版として利用でき、後述の2機能はベータ版として提供されています。
操作は「生成メディア」を選択し、結果を配置したい位置を指定したうえで、必要な内容を文章で説明するだけです。Premiereはプロジェクトの文脈を理解した、完全に編集可能な動画・音声クリップを生成し、プロジェクトを離れることなく微調整やバリエーション展開を行えます。生成に使用するモデルは、Adobe Fireflyのほか、Google Veo、Kling、Runway、Lumaといったパートナーモデルから選択でき、用途に応じて使い分けられるとしています。
タスクバーには次の4つの機能が用意されています。
ビデオを生成
編集者は、プロジェクト内から取得した参照フレームをサンプリングし、タイムライン上の不足部分を補う動画を生成できます。周囲の編集内容のビジュアルコンテキストに合わせた映像を作成できるため、シーン全体の一貫性を保ちながら編集作業を進められるとしています。
サウンドエフェクトを生成
アドビの商用利用可能なオーディオモデルを採用しており、編集者はタイムライン上で直接効果音を生成できるほか、自分の声を使ってリズム、タイミング、強さを指定することも可能です。
サウンドスケープを生成(ベータ版)
編集者は最大15秒間の動画を分析し、環境音や効果音のレイヤーを含む、編集内容のコンテキストに基づいたオーディオを自動生成できます。オーディオ制作を始めるための出発点として設計されており、そこからさらに調整を加えていく機能だとしています。
音楽を生成(ベータ版)
編集者は、複数のバリエーションから選べるオリジナル楽曲を作成できます。テンポやループ設定を調整でき、生成された楽曲はあらゆる種類のメディアにおける同期権を含め、商用利用に対応しているとしています。
より高度なオーディオ機能
ノイズの多い録音や失敗したテイク、重なり合った台詞は編集のスピードを落とす要因になります。Adobeは、こうしたオーディオ素材のクリーンアップ、分離、調整をより簡単に行える新しいAIオーディオツール群を、パブリックベータ版として追加したと発表しました。

オーディオを強化
「スピーチを強調」を基盤とし、次世代のノイズリダクション機能を備えています。1つのクリップの中でセリフ、音楽、環境音、効果音を個別に制御できるため、不要な要素を取り除いたり、各レイヤーを独立して調整したり、ダイアログのみを完全にミュートにしたりすることが可能です。
クロストークを分離
重なり合った2人の会話を自動的に独立したトラックに分割するため、再録音することなく、それぞれの声を個別にミキシング・編集できます。
自動ダッキング
手動でキーフレームを設定することなく、セリフや音楽など複数の要素の音量バランスを自動的に調整します。
このほか、元のピッチや音色を保ったまま、より広い範囲で自然な音の長さ変更を実現する新しい速度変更アルゴリズムも追加され、日常的なワークフローの高速化につながるとしています。
カラーモード
Premiereでベータ版として提供中の「カラーモード」にも新たなアップデートが加えられました。カラーモードは、編集者のために設計された、プロフェッショナル向けのカラー調整ツールを編集作業に直接組み込むグレーディング体験です。新しい「スタイルモジュール」には「ビネット」や「ミッドトーン」などが追加され、映画のような自然な表現を実現するとしています。また、新しい「自動カラー補正」ツールでは、クリップ、カスタムグループ、シーケンス全体の色温度や露出をワンクリックで補正できます。

より詳しい情報は以下の記事をご覧ください。
After Effectsの新機能
AIアシスタント
PremiereのAIアシスタントは、アセットの整理やクリップの一括リネーム、マーカーの追加といった、時間のかかる作業を効率化する機能として、すでに多くのユーザーから反響を得られています。今回、この対応範囲がモーションデザインを含むより幅広いプロフェッショナル向けワークフローへと拡大され、AIアシスタントがAfter Effectsにパブリックベータ版として追加されました。
After Effectsに標準搭載されたAIアシスタントは、複数の工程からなるワークフローをバックグラウンドで支援し、クリエイターが表現そのものに集中できる環境を提供するとしています。どの作業をAIに委ね、どこを磨き上げるかはクリエイターが主導権を持って決定できる点が特徴です。
After EffectsのAIアシスタントは、現在開いているコンポジションだけでなく、プロジェクト全体を対象に機能します。自然な言葉で実行したい内容を指示するだけで、数千ものレイヤーを含む大規模プロジェクトの整理、技術的な問題の修正、コードを書かずにエクスプレッションのような高度なモーションエフェクトを作成することなどを支援します。コンポジションやフッテージの確認といった、指示に基づく作業の実行を依頼することもでき、通常は数時間かかる作業を数分で完了できるようになります。

より詳しい情報は以下の記事をご覧ください。
Frame.ioの主なアップデート
作業の迅速化を目的に、PremiereとAfter Effectsのプロパティパネルおよびエフェクトパネルがナビゲーションのしやすさを重視して再設計されました。
また、Frame.ioが提供するマウントされたストレージ「Frame.io Drive」が、すべてのプランで利用可能になりました。
共有されたFrame.ioのストレージをローカルにマウントすることで、ダウンロードや同期を行うことなく、ローカル保存と同等のパフォーマンスで高解像度のメディアファイルをPremiereのタイムラインへ直接ストリーミングすることができます。あわせて、日本のユーザーからの要望が多かったFrame.ioの日本語表示にも対応したとのことです。
利用について
生成メディアツールのうち「ビデオを生成」「サウンドエフェクトを生成」はすでに利用可能で、「サウンドスケープを生成」「音楽を生成」はベータ版として提供されています。
Premiereの新しいAIオーディオツール、After EffectsのAIアシスタント、Premiereのカラーモードはいずれもベータ版(一部パブリックベータ版)です。Frame.io Driveはすべてのプランで利用可能になりました。
その他詳しい情報は個別の新機能記事で紹介しています。After EffectsとPremiereの2026年9月アップデート(バージョン 26.5)もリリースされているので、合わせて紹介したいと思います。
Generate and create directly in your timeline with new AI-powered innovations in Premiere and After Effects(Adobe Blog) / 2026年版 クリエイターツールキットレポート




