2026年9月1日(現地時間)- NVIDIAは、「3D-Guided Neural Rendering」を導入した新技術「DLSS 5」の提供開始を発表しました。
第1弾の対応タイトルは、Visual Concepts開発・2K発売の『NBA 2K27』となります。これは、開発者がDLSS 5を用いて表現力を高める最初の実例で、同時に公開された関連情報を紹介したいと思います。
リアルタイムグラフィックスにおける写実表現の課題
NVIDIAはGeForceの歴史を通じて、リアルタイムグラフィックスの限界を押し広げてきました。2001年のGeForce 3によるプログラマブルシェーダー、2006年のGeForce 8800 GTXによるCUDA、2018年のGeForce RTX 2080 Tiによるリアルタイムレイトレーシング、そして2025年のGeForce RTX 5090によるパストレーシングとニューラルシェーダーまで、演算性能はこの間に37万5,000倍に増加しました。

それでも、ハリウッド級の写実表現は依然として手が届かない領域だったとNVIDIAは説明しています。映画のVFX映像は1フレームのレンダリングに数時間から数日を要する一方、ゲームは毎秒60フレーム以上をリアルタイムに描画する必要があります。そのため開発者は、髪の毛を簡略化したジオメトリに置き換えたり、肌のような多層構造を持つ複雑な質感の再現を諦めたりと、アーティストとしての表現を性能のために縮小せざるを得ませんでした。
この課題への対抗策として生成AIが浮上しましたが、従来の生成モデルには根本的な弱点がありました。大規模で処理が重く、確率的に出力が変わってしまう点です。同じテキストプロンプトを10回入力しても、標準的な拡散モデルは10通りの異なる結果を返します。オフラインの画像生成であれば気に入った結果を選べばよいですが、ゲームはプレイヤーの入力に応じたフレーム間の一貫性、絶対的なピクセルの一貫性、キャラクターの見た目の固定を必要とします。1ミリ秒ごとにキャラクターの顔や環境がランダムに変化してしまうようでは実用的ではありません。
DLSS 5が導入する「3D-Guided Neural Rendering」とは
2018年に登場したDLSSは、Super Resolutionを皮切りにFrame Generation、Multi Frame Generationという機能が次々と追加され、AIによる性能向上の業界標準となってきました。現行のDLSS 4.5では、画面に表示されるピクセルの24分の23をAIが描画しています。
DLSS 5では、この性能向上の役割から一歩進み、映像の質そのものを引き上げる方向へと拡張されています。これまでのDLSS技術が「既存のシーン情報の再構成」(高解像度化、追加フレームの生成、レイトレーシングのノイズ除去など)を担っていたのに対し、DLSS 5の3D-Guided Neural Renderingは、リアルタイム性能の制約によって削ぎ落とされてきた豊かなライティングとマテリアルのディテールをAIで生成する、という新しいアプローチを取ります。
大きな違いは、テキストプロンプトからフレームを生成するのではなく、ゲームエンジンがレンダリングしたフレーム(アーティストが設計したジオメトリ、テクスチャ、ライティングバッファを含む)を揺るがない土台として扱う点です。
DLSS 5はグラフィックスパイプラインの最終段として動作し、シーンにリアルな質感とライティングを注ぎ込みながらも、「何を維持すべきか」はエンジンのフレームが定義し、「何を変えられるか」はアーティストが決める、という関係を保っています。

DLSS 5の実現にあたり、NVIDIAは新しいリアルタイムAIモデルを開発し、3つの技術的課題に取り組んだとしています。
- 決定性(アーティストの意図の保持):同一の入力フレームに対して常に同じ出力を返すよう設計されており、色、表面のアルベド、詳細なライティング、法線などのエンジンデータを認識するよう学習されています。
- 時間的な安定性:複数フレームをまとめて処理する動画生成モデルとは異なり、1フレーム入力・1フレーム出力の厳密な方式で動作します。ゲームエンジンから得られるモーションベクトルを直接利用することで、プレイヤーが動いてもちらつきや揺らぎ、時間的なドリフトが起きないようにしています。
- 実行速度:リアルタイム3Dレンダリングパイプライン向けに設計された、コンパクトで高速な専用AIモデルです。GeForce RTX 50シリーズのTensor Coreを活用し、単一GPUのローカル実行で最大4K解像度まで滑らかなフレームレートを維持することができます。

この仕組みにより、DLSS 5は肌のサブサーフェス・スキャタリング(皮膚下での光の散乱)、髪や植物を通過する光の透過表現、より深いコンタクトシャドウやグローバルイルミネーションといった、リアルなマテリアル表現をシーンに加えることができます。
開発者向けの統合は、DLSS技術群ですでに使われているNVIDIA Streamlineフレームワーク、およびUnreal Engine 5用プラグインを通じて行われます。DLSS 5はSuper Resolution、Multi Frame Generation、Ray Reconstructionとは独立したオプション機能として、スタジオ側が任意に組み合わせることができます。
開発者向けのアートディレクション機能
「映像をよりリアルに見せる」ことは最終的にはクリエイティブな判断であるという考えから、DLSS 5は絵作りのためのツールを開発者の手に直接委ねる設計になっています。
ゲーマー側から見れば単純なオン・オフの切り替えですが、開発者側にはパラメーターの異なる複数のAIモデルから選択する仕組みや、質感の強度を調整する「Structure Intensity」「Tone Intensity」、キャラクターと背景を分けて効果を適用できる「セマンティックAIマスキング」、特定のオブジェクトだけを個別調整できる「エンジンレベルマスキング」といった、絵作りを細かく制御する手段が用意されています。
ニューラルレンダリングの結果はあくまでエンジンが出力するベースフレームに根ざしているため、最終出力の品質は入力の品質に左右されます。ラスタライズによる映像でも明確な向上が見られる一方、レイトレーシングやパストレーシングのようなより豊かなソースデータを与えるほど、結果は飛躍的に正確になるとNVIDIAは説明しています。
これらのアートディレクション機能は、2026年7月のSIGGRAPH 2026基調講演ですでに詳しく紹介されています。各AIモデルの使い分けや、Structure Intensity・Tone Intensityの具体的な挙動、オートマスキングやエンジン側マスキングのデモ映像については、以下の記事で解説していますのであわせてご覧ください。
DLSS 5 対応タイトル第一弾『NBA 2K27』がリリースへ
Visual Concepts社は25年以上にわたり『NBA 2K』シリーズを手掛け、実際のNBA・WNBA中継に限りなく近いプレイ体験を追求してきました。今回NVIDIAはVisual Concepts、および2Kとの緊密な協力のもと、DLSS 5の3D-Guided Neural Renderingを『NBA 2K27』に導入し、プレイヤー体験の新たなリアリティを実現しています。
【開発元コメント】Visual Concepts, Peter Kavic氏(Senior Producer)
「DLSSの3D-guided neural renderingは、マテリアルとライティングのビジュアル品質を押し上げ、ゲーム全体の写実性を大きく前進させる助けになりました」「私たちが重視しているのはコントロールの自由度の高さです。既存のアートディレクションに合わせて全体のトーンとスタイルを設定したうえで、ピクセル単位のアップリフトコントロールマスクを使い、選手の肖像を最大限尊重しながらキャラクターのディテールを細かく調整できます」と語っています。
DLSS 5により、選手の耳を通る自然な光の透過、肌の自然なライティング、髪に映り込む光の反射などが、実在の選手からスキャンした顔のジオメトリを保ったまま表現されます。


さらに、DLSS 5とSuper Resolution、Multi Frame Generationを組み合わせることで、高いフレームレートと画質向上の両方を実現することが可能です。

提供開始は2026年9月3日午後9時(太平洋時間 / 日本時間 9月4日午後1時)で、対応環境はGeForce RTX 50シリーズ搭載のPC・ノートPC、およびNVIDIAが運用するGeForce RTX 5080搭載のクラウドマシンからストリーミングするGeForce NOW Ultimate会員です。
GeForce RTX 50シリーズでのパフォーマンス
いくつかの条件下でDLSS技術群をフル活用した際の『NBA 2K27』のパフォーマンス例が公開されています。
4K・Ultraプリセット・レイトレーシング有効の条件下で、GeForce RTX 5090搭載環境なら最大370FPSでのプレイが可能です。

2560×1440では、Ultraプリセット・レイトレーシング有効・DLSS 5適用の条件で、GeForce RTX 5090で最大590FPS、GeForce RTX 5080で最大410FPS、GeForce RTX 5070 Tiで最大350FPS、GeForce RTX 5070で最大260FPSを実現します。

1920×1080では、GeForce RTX 50シリーズのほぼすべてのGPUで、レイトレーシング有効・Ultraプリセットの『NBA 2K27』をDLSS 5と組み合わせてプレイすることができます。

DLSS 5の有効化方法
『NBA 2K27』でDLSS 5を有効にするには、2026年9月3日午後9時(太平洋時間 / 日本時間 9月4日午後1時)に公開される新しいGeForce Game Ready Driverが必要です。手順は以下の通りです。
- 9月3日公開(日本時間 9月4日)のドライバーを公式サイトまたはNVIDIA appからダウンロード・インストールする
- ゲーム内の「Video Settings」で「DLSS Neural Rendering」をオンにする
- 好みに応じてDLSS Super Resolution、Frame Generation、NVIDIA Reflexの各設定を調整する
- プレイ中・リプレイ中はキーボードの「F9」でDLSS Neural Renderingのオン・オフを切り替えられる

今後の展開
DLSS 5は2026年3月に初めて発表されましたが、以降の進化は速いとNVIDIAは述べています。当初はGeForce RTX 5090を2枚使用して動作していたものが、6カ月で単一GPUでの動作へと5倍の性能向上を遂げ、全てのGeForce RTX 50シリーズ(GPU・ノートPC向けGPU)で利用可能になりました。
この成果は、パイプラインの体系的な最適化とニューラルモデルの改良を組み合わせたものとのことです。NVIDIAによれば最適化の伸びはまだ鈍化しておらず、今秋にはさらなるモデルの更新によって現状のベースラインを超える性能向上が見込まれています。

まとめ
NVIDIAはDLSS 5の特徴を、まとめると以下の通りです。
- 3D-Guided・4Kリアルタイム対応:完全に決定的で時間的に安定したニューラルレンダリングを、単一のGeForce RTX 50シリーズGPUで最大4Kまで実行
- フレームこそが土台:レンダリングされたフレームの構造とジオメトリの整合性を維持するよう学習
- インテリジェントなモデル:シーン内のオブジェクトと意味情報を解析し、リアルなライティング、サブサーフェス・スキャタリング、マテリアル表現を実現
- きめ細かな開発者コントロール:構造・トーン・セマンティックマスキングを通じてニューラルモデルを調整し、アーティストの意図を厳密に維持
- 統合のしやすさ:NVIDIA StreamlineまたはUnreal Engine 5プラグインを通じて、迅速かつ容易に統合可能
DLSS 5は既存のレンダリングパイプラインを置き換えるのではなく、それを拡張するものだとNVIDIAは位置づけています。
既存のDLSS技術群(Super Resolution、Multi Frame Generation、Ray Reconstruction)を土台にしつつ、ラスタライズやレイトレーシング、パストレーシングといった従来の手法を強化する形で、グラフィックスパイプライン全体に横断的に組み込まれます。
『NBA 2K27』でDLSS 5を体験するには、ゲーム本編とあわせて、2026年9月3日午後9時(太平洋時間 / 日本時間 9月4日午後1時)公開の最新GeForce Game Ready DriverをNVIDIA appから入手するか、GeForce NOWでプレイする必要があります。
また、今後数週間から数カ月のうちに、DLSS 5に対応するタイトルが増える見込みとのことです。
































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