2026年8月27日(現地時間)- Epic Gamesは、無料サンプルプロジェクト「City サンプル」をUnreal Engine 5.8向けに更新したことを発表しました。
今回のアップデートでは、プロシージャル コンテンツ生成(PCG)フレームワークと Unreal MCP(Model Context Protocol)サーバーを活用した新たなワークフローの導入が行われています。これにより、従来はSideFX Houdiniなどの外部ツールに依存していた都市生成のパイプラインが刷新され、Unreal Engineのエディタ内だけでゼロから都市全体を再構築できるようになりました。
City サンプルとは
「City サンプル」は、Unreal Engine 5のグラフィックスとリアルタイム性能を示した技術デモ『The Matrix Awakens: An Unreal Engine 5 Experience』において、あの緻密な都市シーンがどのように構築されたのかを解き明かす無料の公式サンプルプロジェクトです。
フォトリアルな建築物、走行する車両、MetaHumanを活用した通行人の群衆を含む、広大な都市環境のアセットとシステムが一式収録されています。

このプロジェクトは、Unreal Engine 5に搭載された各機能が実際のハイエンド映像やゲーム開発現場でどのように連携・統合されているかを実践的に検証できる、極めて実用性の高い学習用リソースとなっています。プロジェクト内で活用されている主要システムは以下の通りです。
- World Partition:広大なオープンワールドをセル単位で自動分割し、メモリ使用量を最適化しながらストリーミング管理する仕組み
- Nanite:数億ポリゴン規模の詳細なジオメトリを忠実度を落とさずに描画する仮想化マイクロポリゴン メッシュシステム
- Lumen:無限バウンスや反射を計算し、動的でリアルなライティングを実現するフルリアルタイム グローバルイルミネーションシステム
- Chaos:破壊表現や車両ダイナミクス、剛体シミュレーションを担う物理エンジン
- Rule Processor:ルールベースによって都市アセットをプロシージャルに自動配置するツールセット
- Mass AI:軽量なデータ駆動アーキテクチャにより、膨大な数の群衆や交通トラフィックを効率的に制御するAIシステム
- Niagara:環境演出や各種エフェクトをリアルタイムに制御するプロシージャルVFXシステム
- MetaHuman:高度なフェイシャルリグとリアルなシェーダーを備えた次世代デジタルヒューマン基盤
- MetaSounds:サンプルレベルの制御とプロシージャルなオーディオ生成を実現する次世代サウンドシステム
- Temporal Super Resolution(TSR):高負荷な描画を高品質に保ちつつ、高解像度へスケーリングする内蔵アップスケーラー
デザイナーも開発者も、このプロジェクトを研究開発のプレイグラウンドとして利用し、大規模かつ高品質な環境構築手法を深く学ぶことができます。
なお、プロジェクトには『The Matrix Awakens』と同等規模である約4km四方の「Big City」と、マシンスペックに合わせて軽快に検証が行える「Small City」の2つのマップが用意されています。
UE内で完結する都市生成パイプライン
2021年12月、Epic Gamesは次世代コンソールおよびPC向けのUnreal Engine 5正式展開に先立ち、技術デモ『The Matrix Awakens』を公開しました。
当時、レンダリング面ではNaniteやLumenといったUE5の最新機能が使われていましたが、都市の基盤設計自体は外部ツールであるSideFX Houdiniを用いて構築されていました。具体的には、Houdini上で道路や建物の点群(Point Cloud)データを生成し、それをUnreal Engine側の「Rule Processor」に読み込んで数千ものインスタンスへ変換するというハイブリッドな制作フローが採用されていました。
今回のUnreal Engine 5.8のアップデートでは、進化を遂げたPCGフレームワークとUnreal MCPサーバーの連携により、この都市生成パイプラインをUnreal Engine内部で完結・直接再構築できるようになりました。
State of Unreal 2026で公開された新しいレベルでは、起伏のある自然な地形、滑らかな曲線を描く道路網や歩道、そして生い茂る樹木や森林エリアを取り入れ、完全にプロシージャル生成された広大な都市空間が実現されています。
PCGとLLM(AI)の連携:自然言語による都市空間生成ワークフロー
更新されたCity サンプルは、PCGを活用して複雑で高密度な3D空間を構築するための実践的なショーケースであると同時に、最先端のワークフローを体得するための学習教材としても位置づけられています。
この制作プロセスでは、お気に入りの大規模言語モデル(LLM)を活用して、あるいは活用せずに、制作プロセス全体を通じて完全に編集可能なワールドの構築を体験できます(本プロジェクトの実装例ではClaudeが活用されていますが、任意のLLMに差し替え可能な柔軟な設計となっています)。
この仕組みは「何でも自動で作る魔法のツール」ではなく、クリエイターの表現意図を正確かつ迅速にワールド上に具現化するための支援パイプラインとして設計されています。シーン構築にあたっては、World Partition、高精細なNanite フォリッジ、そして高品質な植生アセット群であるQuixel Megaplantsが効果的に組み合わされています。
『Unreal Fest Chicago 2026』のテクニカルセッションでは、LLMがPCGを一種の「空間言語」として解釈・操作する仕組みが詳細に解説されました。新機能のPCG Primitivesプラグインと、それに付随する道路、建築、森林、公園などのサンプルモジュールを活用し、都市が自動生成されていく様子が実演されています。
このフレームワークは高い拡張性を備えており、各スタジオ独自のプロシージャルルールや制作パイプラインに合わせて自由にカスタマイズできる点も大きな魅力です。
UE 5.8版「City サンプル」の更新内容
新しくなったCity サンプル プロジェクトには、従来のHoudiniベースで作成されたオリジナルレベルに加え、LLMとPCGを活用して再構築された2つの新規レベル(都市全体をプロシージャルに展開するフルレベルと、仕組みをシンプルに学べる学習用サンプルレベル)が追加されています。主な同梱アセットと機能は以下の通りです。
- PCGグラフサンプル:都市全体のプロシージャルな再構築ロジックを示す複数のPCGグラフ。Unreal MCPサーバー連携のベースライン・リファレンスとしても利用可能
- 5種類のQuixel Megaplants:プロシージャルに生成された都市全域の緑地や植生表現に使用
- PCG Assembly データアセット:ビルの屋上広場や水辺の桟橋など、即座に配置可能なスタティックメッシュの組み合わせプリセット
- シェイプグラマー定義アセット:建物や道路の構造ルールを定義し、選択したプロファイルに応じて素早くバリエーション豊かな形状を生成
- 建築用 PCG Primitive サブグラフ:City サンプルの緻密なビル群を効率的にモジュール建設するために特化設計されたサブグラフ
さらにプロジェクト内には専用の「CitySamplePCG_Demo」プラグインが含まれており、PCGを用いてCity サンプルを再現・拡張するために必要なすべてのグラフとアセットがパッケージ化されています。
実験段階の機能に関する注意事項
このサンプルプロジェクトには、複数の実験段階(Experimental)の機能およびベータシステムが含まれています。一部の機能はプロジェクト初期状態で無効化されている場合があるため、実践的なプロダクションへの導入や詳細な設定手順については、公式ドキュメントおよびリリースノートをご確認ください。
無料ダウンロード
更新された「City サンプル」は、デジタルマーケットプレイスFab、Unreal Editor内のホームパネル、またはEpic Games Launcherより、すべてのクリエイターに向けて無料で配信されています。
なお、City サンプルは「UE専用コンテンツ」として提供されており、Unreal Engineベースの製品にのみ使用がライセンスされています。他のエンジンやツールへの流用はできない点に注意してください。































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