株式会社バンダイナムコスタジオと東京工科大学の研究チームによるUnreal Engine向けライティング環境構築プラグイン「TrueHDRI-panel」の紹介です。2026年8月10日には、最新アップデートがリリースされています。
TrueHDRIプロジェクトの概要
デジタルアセット制作において、モデルやマテリアルの質感を適切に評価・共通化するためのルックデベロップメント(Look-Dev)工程は非常に重要です。しかし、照明環境の基準が曖昧であったり、信頼性の低いLook-Dev環境で作業を進めてしまうと、ワークフローの破綻や品質低下、作業効率の悪化を招く要因となります。
「TrueHDRI」は、現実世界の照明環境をありのままに計測・記録し、極めて信頼性の高いLook-Dev環境を提供することを目的としたプロジェクトです。
現実の素材や光を基準にすることで、CGが本物の光にどう反応するかを正確に再現できます。これにより、3Dモデルや質感作り、仕上げの調整ルールを統一しやすくなります。

技術的特徴
- 絶対輝度(Absolute Luminance)での記録:従来の一般的なHDRIは相対的な輝度差のみを記録しているため、画像間で明るさの整合性が保たれない課題がありました。TrueHDRIでは実世界の絶対輝度値を保持しているため、アセットを別のTrueHDRIに差し替えるだけで、一貫した照明環境を即座に再現できます。
- 正確な輝度とカラー情報の管理:撮影時のカメラの色彩再現性、レンズの周辺減光(Vignetting)、太陽撮影用に装着するNDフィルターの各種特性などを厳密に測定し、補正を施しています。
- 太陽の光度を含むフルダイナミックレンジ:通常のHDRI撮影では白飛びしやすい太陽の輝度も、高濃度のNDフィルターを用いることで破綻なくキャプチャし、極めて広いダイナミックレンジを保持しています。
- 広色域(Wide Color Gamut)の維持:撮影に使用したカメラセンサーが持つ広色域を維持したままアセット化されています。
- リアルタイムレンダリングに対応:TrueHDRIはリアルタイムレンダリングにも対応しています。HDRIは太陽の明るさを保持できるため、HDRI単体でも十分な照明を提供できます。しかし、リアルタイムレンダリングでは、HDRIは太陽のような高輝度の小さな光源からの光を再現できない場合があります。そのため、TrueHDRIは太陽を平行光源に置き換えたバージョンのアセットも作成します。

信頼性を担保するための測定・補正項目
TrueHDRIの制作ワークフローでは、以下の要素が厳密に測定されデータに適用されています。
- カラーマトリクス(Color Matrix)およびホワイトバランス(White Balance)
- カメラの輝度復元係数およびレンズ周辺減光(Vignetting)
- NDフィルター使用時のホワイトバランス変化、入射角による色変化、減衰率(Attenuation)
TrueHDRI-panelができること
「TrueHDRI-panel」は、高精度なライティングデータを持つHDRI(High Dynamic Range Image)テクスチャから、Unreal Engine上で正確かつ信頼性の高いライティング環境Blueprintを自動生成するためのエディタプラグインです。
Unreal Engineの標準的なライティング環境にHDRI画像をそのまま適用した場合、太陽のような高輝度な点光源のダイナミックレンジが十分に活かされず、影の落ち方やライティング結果が不自然になることがあります。
「TrueHDRI-panel」は、入力されたHDRI画像から高輝度領域(太陽光など)を分離し、自動的に平行光源(Directional Light)として再構成した環境Blueprintを生成します。これにより、パストレーシングを使用しないリアルタイムなLumen環境であっても、HDRIに由来するくっきりとした影や正しいライティングを表現できます。

用途に応じた2種類の光源環境
- Emissive Only(サフィックス:
-PathTrace):テクスチャが持つすべての輝度をEmissive(自発光)マテリアルとしてそのまま利用します。パストレーサーを使用した高品質な映像制作やLook-Devに適しています。 - With Directional Light(サフィックス:
-Directional):指定したしきい値を超える輝度領域を抽出し、平行光源に置き換えます。Lumen環境やライトマップを事前計算するリアルタイムゲーム開発に最適です。
利便性を高めるUIパネル機能
- 露光調整されたサムネイルを確認しながら、作成した光源環境をワンクリックでレベルへ適用できます。
- レベル上にSky Atmosphereが存在しない場合でも、切り替え時にSky Light Recapture(スカイライトの再キャプチャ)が自動実行されます。
- マテリアルLook-Dev用に、Logカーブでの映像出力を行うポストプロセス設定へ素早く切り替えられる機能も備わっています。
プラグインの導入と使い方
セットアップ
- 使用したいプロジェクトの
.uprojectと同じ階層にPluginsフォルダが存在しない場合は作成します。 Pluginsフォルダ内にプラグインファイルを配置します。
配置後の階層:[プロジェクト]/Plugins/TrueHDRIPanel/TrueHDRIPanel.uplugin

- Unreal Engineを起動し、メニューの Edit > Plugins から
TrueHDRIPanelおよびOpenCVプラグインが有効化されていることを確認してください。

HDRIから光源環境Blueprintを生成する
- テクスチャアセットのインポートと設定:EXR形式のテクスチャ(※sRGBカラースペースに変換されたもの)をプロジェクトへ読み込みます。読み込んだテクスチャの詳細設定を開き、Level Of Detail > Mip Gen Settings を NoMipmaps に変更します。これによりフィルタリングの影響を受けない高解像度のまま利用可能になります。

- プラグインパネルの起動:エディタ上部メニューの Windows > TrueHDRIPanel から専用パネルを呼び出します。

- アセットの生成設定:「HDRI To Lighting Environments」エリアの Textures に、コンテンツドロワーから用意したEXRテクスチャをドラッグ&ドロップします。

生成用パラメータの設定値一覧
| パラメータ名 | 設定内容・機能説明 |
|---|---|
| Asset Output Path | 生成されるBlueprintの保存先ディレクトリ(Gameディレクトリ以下)を指定します。 |
| Allow Overwriting | 同じテクスチャアセットから過去に生成された環境が存在する場合の上書きを許可します。 |
| Main Light Threshold Type | 画像内の高輝度部分を平行光源化する際、対象範囲を決定する判定基準を選択します。 ・ Percentile: 全体のパーセンタイル値に基づく判定・ Percent: 最低輝度〜最大輝度の割合に基づく判定・ Percent Ave Max: 平均輝度〜最大輝度の割合に基づく判定・ Direct Value: 指定した直接の数値による判定 |
| Main Light Threshold | 選択した判定基準(Threshold Type)に応じたしきい値の数値を入力します。 |
| 生成するアセットの種類 | 生成するライティング環境の構成パターンを選択します。 ・With Directional Light: しきい値を超える輝度を抜き出して平行光源化(サフィックス: -Directional)・Emissive Only: テクスチャの輝度をそのままEmissiveとして使用(サフィックス: -PathTrace)・Create Both: 上記2種類のアセットを同時に生成 |
設定完了後、Create Lighting Rig ボタンをクリックすると、出力先に光源環境Blueprint(BP_[テクスチャ名])とマテリアル(M_[テクスチャ名])が自動生成されます。※平行光源化を行った場合は、元のテクスチャの隣に太陽光成分を差し引いたテクスチャ([テクスチャ名]-NoSun)も生成されます。
レベルへの適用
プラグインパネル上段の Current Lighting Environment > Lighting Rig のドロップダウンメニューから作成したアセットを選択することで、即座に現在のレベル上へライティング環境が反映されます。
更新履歴
- 2026/08/10 大容量のHDRIからLighting Rigを作成する際に発生していた不具合を修正。
- 2024/12/18 光源環境の生成処理を非同期化。
- 2024/12/06 マーケットプレイス「Fab」にて無料公開を開始。
- 2024/11/20 光源環境の選択メニューにサムネイル表示を実装。マテリアルLook-Dev用のLogカーブ表示ポストプロセス切替機能を実装。
- 2024/06/06 GitHubのREADMEに詳細な利用ドキュメントを追加。
産学連携研究の取り組み
TrueHDRIプロジェクトは、株式会社バンダイナムコスタジオと東京工科大学メディア学部 川島基展研究室との共同研究として推進されています。物理ベースレンダリング(PBR)の正確性評価やライティング環境の高度化に向け、多様な成果が発表されています。




ダウンロード・関連リンク
TrueHDRI-panelは、Windowsで動作するUnreal Engine 5.3 – 5.8に対応しています。
プラグイン本体の入手や関連ドキュメント、他DCCツール(Blender)へのインポート手順については以下からアクセスできます。
その他のリファレンス・マニュアル
- TrueHDRI プロジェクト概要(バンダイナムコスタジオ公式)
- Blenderインポートマニュアル: 日本語版 (PDF) / 英語版 (PDF)































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