NVIDIA、Agent ToolkitにOmniverseライブラリを追加!AIエージェントによるシミュレーション環境構築が可能に、Blenderサンプルも公開

CGソフト

2026年7月20日(現地時間)- NVIDIAは、AIエージェントを構築するためのツール群「NVIDIA Agent Toolkit」に、新たにNVIDIA Omniverse™のライブラリを追加したことを発表しました。

Omniverseについては、今年5月のライセンス変更に伴い、これまで必須だったエンタープライズ契約(NVIDIA AI Enterprise)の要件が撤廃され、本番環境での利用やアプリケーションへの組み込み・再配布までが無料化されましたが、今回の発表はそれに関連する内容となっています。

今回発表されたソフトウェアコンポーネント群を利用することで、AIエージェントは既存のアプリケーションに物理AI(Physical AI)機能を得て、3Dコンテンツをシミュレーションに適した状態へと準備するためのツールとスキルを獲得することになります。

AIエージェントによるシミュレーション環境構築の効率化

ロボット、工場、あるいは自律型システムなどを現実世界で稼働させるためには、その前にシミュレーション空間内で綿密な設計、テスト、およびトレーニングを行う必要があります。しかし、シミュレーション用の3Dコンテンツを準備する作業は、単に視覚的なリアルさを追求するだけでは不十分です。アセットには、適切な構造、マテリアル情報、スケール、ラベル、センサー、そして物理特性が正確に設定されている必要があります。

今回、NVIDIA Agent ToolkitにOmniverseライブラリが追加されたことで、AIエージェントはワークフローの構築、シーンの検査、問題点のフラグ付け、そしてアセットの準備を実行する能力を備えることになります。これにより、開発者は単なる3Dコンテンツからシミュレーション対応の環境へと、これまで以上に素早く移行できるようになります。


「物理AIの時代は、まずシミュレーションの中で構築されることになります。Omniverseライブラリを備えたNVIDIA Agent Toolkitは、開発者がすでに使用している3DツールにAIエージェントをもたらし、ロボットや工場、自律システムが現実世界に投入されるずっと前に、トレーニングとテストを行うための『シミュレーション対応の世界』の構築を支援します。」

— NVIDIA 創業者/CEO, ジェンスン・ホアン氏

物理AI開発を加速する3つの主要ライブラリ

NVIDIA Agent Toolkitは、ソフトウェアメーカーがツール、スキル、データソースを接続するAIエージェントを構築するのを支援するものです。Omniverseライブラリは、既存のアプリケーション内部から呼び出し可能なツールを提供することで、これらのエージェントの適用範囲を3Dおよび物理AIのワークフローへと拡張します。

現在GitHubでオープンに利用可能となった主要なライブラリは以下の通りです。

  • NVIDIA RTXセンサーシミュレーション (ovrtx): アプリケーションが3Dシーンからカメラ、LiDAR、レーダーなどのセンサー出力を生成するのを支援します。開発者とAIエージェントは、物理AIシステムが仮想環境をどのように知覚するかをテストできます。
  • 物理挙動 (ovphysx): GPUによる物理シミュレーションを活用し、衝突、質量、摩擦、運動などの特性を用いて、3Dシーンに現実的な挙動をもたらします。これにより、オブジェクトやシステムがシミュレーション内でどのように相互作用するかを事前に検証できます。
  • シミュレーション対応の3Dオブジェクト (CAD-to-SimReady): CAD(コンピューター支援設計)データを、OpenUSDベースで構築されたSimReadyアセットに変換します。3Dコンテンツに物理AIのシミュレーションと仮想テストに必要なプロパティが付与されます。

物理シミュレーション向けの機能に加えて、3DCGのコンテンツ制作やパイプライン構築を直接的に支援する以下のライブラリも公開されています。

  • usd-convert-asset / usd-convert-gsplat: 一般的な3DアセットフォーマットやGaussian splat(.plyや.spz)データを、シミュレーションやレンダリングに適したOpenUSD形式に変換します。スクリプトによるアセット取り込みの自動化に最適です。
  • usd-optimize: OpenUSDコンテンツのパフォーマンスとメモリ使用量を最適化します。アプリケーションやパイプラインにおけるシーンの複雑さやメモリ消費を削減したい場合に役立ちます。
  • usd-search: OpenUSDコンテンツ全体に対する自然言語での検索と推論を可能にします。大規模なUSDライブラリから特定のアセットや依存関係を見つけ出す際に威力を発揮します。
  • ovui: アプリケーションのインターフェースやインタラクションテスト、CI環境でのスクリーンショットチェックなどを構築するためのPython UIライブラリです。USDワークフロー用のローカルツールやインスペクターの作成に適しています。

主要ソフトウェアメーカーとの統合と業界の動向

SideFXやPTCなどの大手ソフトウェアメーカー、およびForgeCAD、Lightwheel、Moonlake AI、Palatialといったスタートアップ企業が、いち早くOmniverseライブラリを採用し、開発を進めています。

SideFX (Houdini) の取り組み

SideFXは、同社のプロシージャル3Dコンテンツ作成ツール「Houdini」のワークフローと、OpenUSDおよびNVIDIAの「ovrtx」「ovphysx」ライブラリを組み合わせる検証を進めています。同社の公式発表によると、AIエージェントのサポートにより、テクニカルアーティストはアーティストとしてのコントロールを維持したまま、プロシージャルコンテンツのレビュー、物理挙動のテスト、そしてシミュレーション準備を効率的に実行できるようになります。

Houdiniの強みである「複雑で制御可能な環境」や「多数のバリエーション生成」において、エージェント対応ツールは特に反復的な検査や検証タスクで力を発揮します。これにより、アーティストはルールの定義やパラメータの調整、クリエイティブな方向性の決定といった本質的な作業に集中することが可能となります。


「シミュレーション、ロボティクス、産業用AIに必要な複雑で制御可能な世界を構築する上で、プロシージャルな3D制作は不可欠です。NVIDIA OmniverseライブラリとOpenUSDを活用することで、SideFXはエージェント対応ツールがHoudiniのワークフローをどのようにサポートできるかを検証しています。これにより、テクニカルアーティストはクリエイティブなプロセスをコントロールしながら、シミュレーション用のプロシージャルコンテンツをレビュー、テスト、準備できるようになります。」

— SideFX 社長兼CEO, キム・デビッドソン氏

PTC (Onshape) の取り組み

PTCのCADおよび製品データ管理(PDM)プラットフォームであるOnshapeでは、OpenUSDとovrtxを活用し、クラウドネイティブな設計ワークフローと物理シミュレーションを接続しています。これにより、製品設計データがCAD、PDM、コラボレーション、シミュレーションの各ワークフローと継続的に連携できるようになります。


「エンジニアリングチームは、開発プロセス全体を通じて、設計、コラボレーション、シミュレーションをより緊密に連携させる方法を模索しています。NVIDIAとの協力はそうした幅広いビジョンをサポートするものであり、NVIDIA Omniverseライブラリは、製品が設計される場所のより近くに検証とテストをもたらすシミュレーション対応ワークフローの実現を支援します。」

— PTC 社長兼CEO, ニール・バルア氏

Blenderへのエージェント対応シミュレーションの統合サンプルが公開

ロボット工学や自律型システムにおける「シミュレーション対応の3Dワールド」の需要が高まる中、クリエイターが使い慣れたツール上で効率的に作業を進めるためのソリューションとして、Blender向けの実装例(ovrtx Blender Example)が公開されました。

Bringing Agent-Ready Simulation Into Blender

NVIDIA Agent Toolkitの一部として提供されるこのOmniverseスキルを使用することで、AIエージェントはクリエイティブなワークフローをシミュレーション対応環境へと変換する作業を支援できるようになります。

シーンのチェック、センサー挙動の追加、物理演算の組み込みなどを、Blenderから別のアプリケーションへデータを移行することなく実行でき、手動での統合にかかる手間を大幅に削減できます。

Blender内でできること

公開されたアドオンを使用することで、Blender内で以下の操作がシームレスに可能となります。

  • レンダリングビューポートを通じ、現在のシーンをNVIDIA ovrtxによるプレビューで確認。
  • ovrtxの画像が更新される中で、オービット、パン、フレーミングなどのビュー操作を実行。
  • アクティブなBlenderカメラを使用して最終画像をレンダリング。
  • マテリアル、ライト、カメラ設定、オブジェクトのトランスフォームを調整し、Blenderから離れることなく即座に結果をレビュー。
  • NVIDIA OVPhysXを使用し、サポートされているSimReadyの剛体モーションをBlenderのタイムライン上で再生(大規模なIsaacやOmniverseワークフローへ移行する前の事前確認)。

アドオンの仕組み(NVIDIA Library Workerとの連携)

このシステムの最大の特徴は、BlenderとNVIDIAの処理系が分離されている点です。アドオンはBlender上のシーンをUSDデータに翻訳し、独立して動作する「NVIDIA Library Worker」へ送信します。

その後、NVIDIA ovrtxがシーンをレンダリングし、ピクセルデータをBlenderのビューポートへと返します。物理プロパティが存在する場合は、OVPhysXが更新された姿勢(ポーズ)情報を提供し、レンダリングに反映させます。

動作要件とインストール方法

本アドオンの動作には以下の環境が必要です。

  • Blender 5.1
  • 対応する64ビットOSプラットフォーム
  • 互換性のあるNVIDIA RTX GPUおよび最新のNVIDIAドライバ
  • (オンラインインストールを利用する場合)インターネット接続環境

インストールプロセスはBlender標準機能に準拠しています。GitHubのプロジェクトページからov-blender-example-<platform>.zip(をダウンロードし、Blenderの「編集 → プリファレンス → アドオン」からZIPファイルを直接インストールします。

その後、アドオンの「View Details」パネルからNVIDIAのランタイムを別途インストール(オンラインまたはローカルディレクトリ指定)する形式が採用されており、NVIDIAのレンダリングおよび物理コンポーネントをBlenderのプロセス外で安定して動作させる設計となっています。

※注意

アドオンの対応プラットフォームには Windows(windows-x64)が含まれていますが、投稿時点ではリリースビルドの処理中(作成中)となっているため、Releases ページに Windows 用のインストーラー(.zip)がアップロードされていません。

幅広い動作環境とスタートアップによる活用

上述したBlenderの統合例を含むこれらのワークフローは、NVIDIA RTX Spark™を搭載したコンパクトなシステムから、NVIDIA GB300を搭載したNVIDIA DGX Station™まで、ローカル環境で幅広く動作するように設計されています。RTX Sparkシステムは今秋より各社から順次提供され、DGX Stationも各ハードウェアベンダーから注文可能となっています。

NVIDIA Inceptionプログラムに参加しているスタートアップ企業も、これらの技術を積極的に取り入れています。PalatialはCADデータからSimReadyアセットの作成と検証を自動化するためにOmniverseのスキルを使用し、Lightwheelはテキストプロンプトから物理的に正確なSimReadyアセットを生成する技術に活用しています。さらに、ForgeCADやMoonlake AIも、エージェント主導の3Dコンテンツワークフローの検証を進めています。

関連リンク・リソースまとめ

詳細な情報や利用可能なサンプル、ドキュメントについては、NVIDIA Omniverseライブラリの公式ページを、また、SIGGRAPHでのNVIDIA基調講演のアーカイブも公開されています。

本記事内で紹介した主要なウェブサイトやリポジトリへのリンクです。開発や検証にご活用ください。


NVIDIA Agent Toolkit Expands With New Omniverse Libraries, Putting AI Agents to Work Building Simulation-Ready Worlds

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