Blender向け統合物理シミュレーションアドオン『Hurricane』ベータ版がリリース! 流体・布・ソフトボディ・粒状体が単一空間で相互作用

プラグイン

2026年7月14日(現地時間) – BeFX Studiosは、Blender向けパーティクルシステム統合アドオン「Hurricane」のベータ版を公開しました。

Hurricaneとは

Hurricane」は、高精度なパーティクルシステムを生成するために設計されたBlender向けのアドオンです。

従来、流体・布・ソフトボディ・粒状体はそれぞれ別々のシミュレーターで扱う必要があり、素材同士を絡ませた表現には多くの手間がかかりました。Hurricaneは統一されたアーキテクチャを採用することで、これらすべてを1つのシミュレーション空間内で相互作用させられます。「水を吸って重くなる布」「流体に沈むソフトボディ」といった表現を、Blenderの中だけで完結できるのが最大の強みです。

HURRICANE, New Blender Solver by BeFX Studios!

物理コアは2系統のソルバーで構成されています。粘性のあるリアルな流体を担当する「DDR(Double Density Relaxation)」と、布・ソフトボディ・粒状体を担当する「XPBD(Extended Position Based Dynamics)」です。XPBDはPBD(Position Based Dynamics)の拡張版にあたる手法で、Blender 5.2で導入された概念をHurricaneが独自に拡張・実装しています。

主要なコア機能

  • ハイブリッド DDR / XPBD ソルバー: 流体(DDR)と布・ソフトボディ・粒状体(XPBD)を同一の計算環境で連動。異なる素材間の衝突や力の伝達を、追加のセットアップなしに双方向で計算します。
  • ネイティブC++による高速演算: 物理コアはC++で記述され、マルチコアCPUの性能を最大限に引き出すマルチスレッド並列処理で最適化。数百万パーティクル規模のシミュレーションにも対応します。
  • 式言語「HEL」によるフルコントロール: HoudiniのVEXに匹敵する制御能力を目指した専用スクリプト言語を搭載。カスタムフォースの注入からコンストレイントの動作変更まで、シミュレーションのあらゆる挙動をコードで拡張できます(詳細は後述)。
  • Geometry Nodesとのプロシージャルな連携: Blender標準のノードシステムと連携し、生のパーティクルから液体メッシュを構築したり、泡・気泡・水しぶき(ホワイトウォーター)といった二次パーティクルを生成できます。Geometry Nodesのアトリビュートをダイナミクス計算に読み込むことも可能です。

現在のベータ版は安定性を最優先に開発されており、シミュレーションエンジンはCPU(マルチコア)向けに最適化されています。正式リリースではエンジンの完全なGPUネイティブ動作や、FLIP・MPMといった高度なソルバーの追加が予定されています

統合された3つの高度な物理ソルバー

DDR (Double Density Relaxation)

従来の流体シミュレーションで発生しがちな粒子の不自然な圧縮を防ぎ、高い安定性とリアルな体積維持を実現するために設計された二重密度緩和アルゴリズムです。

水のようなサラサラとした液体から粘り気のある流体まで、破綻のない滑らかな挙動を計算します。

PBD (Position Based Dynamics)

粒子の「位置」を直接修正することで物理的な制約を満たすよう計算するアルゴリズムです。

従来の力(フォース)をベースとした計算よりもシミュレーションが破綻しにくく、ソフトボディ(ゼリーのような柔らかい物体)や布の変形を、非常に効率的かつ安定して表現できます。

PBD-Multi Step

PBDの計算を1フレーム内で複数回(マルチステップ)に分けて実行する高度な実装です。

複雑に折り重なる布や、激しく衝突するオブジェクトのシミュレーションにおいて、メッシュが食い込んでしまう「自己交差(セルフコリジョン)」を効果的に防ぎ、高い精度を維持します。

主な機能

高度なコンストレイント(拘束)システム

Hurricaneの素材表現の土台となるのが、6種類のコンストレイント(拘束)システムです。パーティクル同士を結びつけるルールを切り替えることで、同じパーティクルベースの仕組みから布・弾性体・剛体・粘性流体といった多彩な素材を生み出します。

伸縮・せん断・曲げといった物理特性はコンストレイント単位で細かく調整でき、変形や破壊の挙動を自在にコントロールできます。多様な表現に対応するため、以下の6種類のコンストレイントが用意されています。

Cloth(クロス / 布)

メッシュジオメトリに基づいて、伸縮、せん断、曲げを個別に制御できる変形可能な布のシミュレーションです。

Softbody(ソフトボディ)

近接検索に基づいて内部の体積を維持する、立体的で変形可能な弾性体のシミュレーションです。

Rigidbody(剛体)

内部が固定された剛性を持ち、変形しない硬い構造物のシミュレーションです。

Viscous(粘性)

泥、粘土、チョコレート、溶岩などの素材に見られる、粘性のある流体の挙動を再現します。

Plasticity(塑性)

物理的な応力を受けた後、変形した状態を恒久的に維持する(元に戻らない)塑性材料のシミュレーションです。

Weld(溶接 / 結合)

一致する頂点、またはメッシュ内の離れたエッジ同士を物理的に縫合・結合します。

流体シミュレーション

DDRソルバーによる流体シミュレーションは、グラスに注がれる水のような小規模なシーンから、数百万パーティクル規模の大規模シーンまで幅広く対応します。

「Foam(表面の泡)」や「Bubbles(内部の気泡)」を追加できるほか、HELのプリセットスクリプト「Wave Generator」を使えば波のダイナミクスも手軽に生成できます。

複数のエミッターとシェーダーを組み合わせた泡や気泡のエフェクト例。
グラスを満たす水と気泡のエフェクト。
気泡エフェクトのシミュレーション例。
HELを利用して表現された波のエフェクト例。

さらに、単一のシミュレーション環境内で異なる密度の流体を混合させることも可能です。水のようなサラサラした流体と高粘度の流体を同じシーンで衝突・混合させるといった表現も、密度パラメータの設定だけで実現できます。ソルバーの計算処理とメモリ使用量が最適化されているため、数百万パーティクル規模のシーンでも安定して動作します。

最適化された計算によるシミュレーション例。
水のような流体と高粘度流体の混合。
数百万のパーティクルが衝突する大規模シミュレーション。
FoamおよびBubblesツールを使用したシーン構築例。

布(クロス)のエフェクトとシミュレーション

布のシミュレーションでは、伸縮(Stretch)・せん断(Shear)・曲げ(Bending)の剛性をそれぞれ独立して調整できるため、シルクのような柔らかい布から張りのある厚手の生地まで、素材感を細かく作り分けられます。外部からの力や衝突、流体の影響で布が破れる表現(Cloth Tearing)もリアルタイムにシミュレート可能です。

物理的な応力に基づく、動的な布の引き裂き(Tearing)シミュレーション。
コライダーと相互作用する、動的なピン留め(Pin)と解除(Unpin)の制御。
Tシャツにおける縫い目のシミュレーションと物理ダイナミクス。
変形する布と流体の間の、双方向(ツーウェイ)の相互作用。

衣服の作成は、縫合用エッジを使ってモデリングした後にWeldコンストレイント(頂点の溶接)を適用するワークフローで行います。将来のアップデートでは、衣服の生成やパターン設計に特化したツールの追加も計画されています。

砂・雪などの粒状体シミュレーション

砂・土・砂利・雪といった粒状体の挙動も、摩擦や衝突の物理演算でシミュレートできます。粒状体の計算にはXPBDベースの最適化されたカスタム実装が採用されており、物理的なストレスで動的に破断するコンストレイントと組み合わせることで、「積もった雪が崩れる」「固まった砂が衝撃でほぐれる」といった表現が可能です。

パフォーマンス面では「Sleep(スリープ)」「WakeUp(ウェイクアップ)」という管理ツールを搭載。静止したパーティクルの計算を休止させてリソースを節約し、衝突などの力が加わった際に計算を自動再開できるため、大量の堆積物を含むシーンでも効率よく作業できます。

雪エフェクトにおけるパーティクルとコンストレイントの可視化とレンダリング例。
WakeUp(ウェイクアップ)ツールで静止状態の砂が再び動き出す様子。

同一シミュレーション内でのソルバーの統合

アドオンのシステムにより、複数の物理ソルバーを同じシーン内で同時に動作させることができます。

流体(DDR)と布やソフトボディ(PBD)を混在させた場合でも、統合ソルバーがそれらの間の衝突や力関係をリアルタイムに処理します。

Surface Collisionツールによる、異なるソルバー(DDRとPBD)間の相互作用の様子。
流体と布(クロス)の相互作用シミュレーション。
ソフトボディと流体を組み合わせたシミュレーション例。
流体に落下し、影響を与え合うソフトボディのシミュレーション。

AIでの生成にも対応する独自言語HEL

HEL(Hurricane Expression Language)は、Pythonに似た構文を持つ専用のスクリプト言語です。

Blender内に統合されたエディターを使用して独自のロジックを記述し、シミュレーションエンジンにリアルタイムで反映させることができます。基本機能を拡張し、パーティクルの速度や位置、力などを細かく制御するための手段として提供されています。

HELを使用して膨張を制御し、コンストレイントを破壊するエフェクト例。
HELを利用して、Ocean(海洋)モディファイアから流体へ速度を転送する仕組み。
HELを用いた視覚的なエフェクトの作成例。
HEL制御による溶解(Melt)エフェクト。

専用エディターにはリアルタイムのエラー検出機能があり、構文エラーの箇所と種類がハイライトされるため、デバッグもスムーズに行えます。スクリプトコンソールに加え、コメント付きのテンプレート(プリセット)が多数用意されているので、コードに不慣れな方でも既存プリセットの改変から学習を始められます。

さらに、任意の生成AI(ChatGPTやClaudeなど)に読み込ませることで、HELスクリプトを短時間で無数に生成できる「Skillファイル」も付属します。

HEL自体の詳細なドキュメントも整備されているため(公式ドキュメント)、自分でコードを書こともAIに任せることも可能です。

同梱コンテンツとドキュメント

導入後すぐに作業を始められるよう、Hurricaneには数十種類のテンプレートシーン、HELスクリプト、最適化済みシェーダーが同梱されています。テンプレートから改変を始められるため、ゼロからのセットアップに悩まされることなく、まず「動くもの」を触りながら学べる構成です。

ドキュメントも充実しており、ツールの使い方を網羅した詳細なユーザーガイドに加え、HEL専用のマニュアルが付属します。ドキュメントはオンラインでも公開されており、購入前に内容を確認できます。

なお、ドキュメントは現在、英語とスペイン語での提供です

Hurricaneの今後の展開

開発チームは、Hurricaneを「Blenderにおける統合的な物理・流体シミュレーション環境」として長期的に発展させていく方針を掲げており、今後のアップデートでは以下の機能追加が計画されています。

完全なGPUアクセラレーション

物理エンジンのGPU対応(CUDA、OptiX、Metal、OpenCL)が予定されています。これにより計算速度が向上し、メッシュ生成や大量のパーティクル計算がよりスムーズに行えるようになります。

高度なFLIPおよびMPMソルバー

大規模な液体シミュレーション向けのFLIP(Fluid Implicit Particle)ソルバーや、雪、泥、変形する材料などの複雑な構造破壊をシミュレートするためのMPM(Material Point Method)の統合が計画されています。

特化型モジュール

コアエンジンを活用した特化型の統合モジュールとして、衣服のパターン作成・デザインモジュール、火や煙を扱うガスシミュレーションモジュール、視覚的な効果を作成するパーティクルVFXモジュールなどの提供が予定されています。

コミュニティ統合とプリセット

公式およびコミュニティによるHELプリセットのライブラリを拡張し、ユーザー間でカスタムの物理挙動やモディファイアを容易に共有・ダウンロードできる環境の構築が予定されています。

価格とライセンス

「Hurricane」は現在、安定性を重視したベータ版として提供されており、通常価格の30%オフとなる特別価格で入手可能です。

また、ライセンス形態としてSuperhiveのサポート期間システムに移行しています。年間サポートサブスクリプションを更新しない場合、将来の新しいバージョンやアップデートは受け取れなくなりますが、購入済みバージョンのサポート自体は開発元のBeFX Studiosから引き続き提供されます。

Individual License個人ユーザー向けライセンス(1シート)$98
Indie Licenseインディースタジオ向けライセンス(最大5シート)$392
Studio Licenseスタジオ向けライセンス(最大10シート)$784

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