Epic Gamesが明かす「Unreal Engine 6」のビジョン:次世代ゲーム開発に向けた3つの柱が公開

2026年6月17日(現地時間)- Epic Gamesの開発チームを率いるMarcus Wassmer氏より、次世代ゲームエンジン「Unreal Engine 6(以下、UE6)」に関する初期のビジョンと開発ロードマップが公開されました。

数週間前に開催されたRocket League Championship Seriesの配信内にて「6」を冠したロゴがサプライズで公開されていましたが、今回の発表は、Unreal Fest Chicagoでの正式なアナウンスに先駆けて開発者コミュニティへ向けたメッセージとして発信されたものです。

目次
    1. サーバー分散とデータ同期の自動化
    1. Fortniteのシステムをオープン化

UE6とは何か? ゲーム開発を変革する3つの柱

UE6は、一言で言えば「UE5とUEFNが統合された、次世代のゲーム開発のための単一エンジン」です。

UE6の開発アプローチは、過去のバージョンとは大きく異なり、Epic Gamesは今後2年間をかけて、現在並行して進められている「UE5」と「Unreal Editor for Fortnite (UEFN)」という2つの主要な開発ストリームを、1つの製品「Unreal Engine 6」として統合していく方針を明らかにしました。

もちろん、レンダリングの向上、クック(ビルド)時間の短縮、イテレーションの高速化、モバイル環境への対応強化といった、エンジンの基本性能の底上げは継続されます。しかし、単なるUE5の延長線上にとどまらない理由は、現在のゲーム開発が抱える課題を解決するために、以下の3つの大きな変革を同時に進める必要があるためだと説明されています。

新しいゲームプレイフレームワークと「Verse」

UE6には、「Scene Graph(シーングラフ)」と呼ばれる全く新しいゲームプレイフレームワークが導入されます。これはEpic Gamesの次世代プログラミング言語であるVerseを基盤としてゼロから構築されています。

Verseは、関数型、論理型、命令型言語のアイデアを取り入れ、PythonやC#のような親しみやすさを持ちながら、現代のゲーム開発における「複雑さ」と「スケーリング(拡張性)」の課題を解決するために設計された言語です。最大の特徴は、独自の「ソフトウェアトランザクショナルメモリ(STM)」モデルを採用している点にあります。

サーバー分散とデータ同期の自動化

Verseにおける関数はすべてアトミックなトランザクションとして実行され、必要に応じて安全にロールバックや再シミュレーションが可能です。この概念はVerseから呼び出されるC++コードにも拡張されます。

現在のところ、この仕組みを実現するためVerseはシングルスレッドで動作し、カスタムLLVMコンパイラを介してC++コードを自動的にトランザクション化しています。将来的には、ハードウェアの進化に合わせて複数スレッドでトランザクションを同時実行できるよう拡張していく予定です。

この仕組みが真価を発揮するのは、大規模なライブゲームを構築する際です。将来的には、シングルサーバー向けに書かれたVerseのコードが、自動的に複数のサーバーに分散処理されるシステムの構築が予定されています。開発者は、複雑なカスタムネットワーク同期のコードを書くことなく、単一のマシン上で動いているかのようにゲームロジックを記述できるようになります。

さらに、セーブデータの保存システムも劇的に簡略化されます。Verseのランタイムがプログラムのグローバルな状態を自動的に同期・保存するため、開発者は外部データベースを構築したり、スキーマを調整したりする必要がなくなります。この機能の初期段階は、すでにUEFNの「weak_map」機能として実装され始めています。

ゲームの壁を越える「ポータブルなコンテンツ」

UE6の2つ目の重要な原則は、「コンテンツとコードがゲーム間やエンジン間でポータブル(持ち運び可能)であるべきだ」という理念です。

この目標に向けて、ゲーム業界全体でクロスプロモーションやプレイヤーが所有する価値を持ち運べるようにし、メトカーフの法則(ネットワークに接続される体験が増えるほど全体の価値が向上するという法則)が予測する相乗効果を最大限に活かしたエコシステムの成長を目指しています。

具体的には、UE6 では、glTF や USD といった既存のオープン標準フォーマットが、ネイティブかつ強力にサポートされる予定です。また、既存の標準が存在しない分野については、Unreal Engineのシステム自体を「Verse API」などを用いたオープンな仕様としてドキュメント化し公開することで、他のエンジンやツールからも実装可能にする計画です。

Fortniteのシステムをオープン化

この「ポータビリティ」を実証する最初のステップとして、Fortniteのコスメティック(衣装などのアイテムシステム)がオープンなUE6モジュールへと移行されます。これにより、開発者はプレイヤーがFortniteで購入した衣装を自作のゲーム内で利用できるようにしたり、逆に自作ゲームの衣装をFortnite上で動作させたりすることが可能になる予定です。

これはFortniteだけに限った話ではなく、プレイヤーのプレイ時間や消費した価値を尊重し、様々なゲームで機能する「スマートアセット」の共有エコノミーを構築するための、非常に大規模なシステムテストとしての意味合いを持っています。

AIモデルの統合による「手作業からの解放」

3つ目の柱として、生成AIやLLM(大規模言語モデル)の活用が挙げられています。

ゲーム開発においては、レベルの配置、キャラクターのリギングやスキンウェイトの調整、パーティクルの設定、ライティングの微調整など、クリエイティブな意図を形にするために膨大な手作業が必要とされます。UE6では、これらの反復的で時間のかかる作業を削減するため、AIアシストツールがパイプラインの随所に組み込まれます。

Epic Gamesが特定のAIモデルを強制するのではなく、MCPプロトコルを通じて開発者自身が好みの最先端モデル(Claude、Gemini、Codexなど)を選択し、自由に統合できるオープンな基盤が提供されます。もちろん、すぐに使えるオプションとして「Epic Developer Assistant (EDA)」も標準で用意されます。

また、Epic社内ではすでにコード生成ツールの活用が進んでおり、独自のツールの作成、大規模コードベースのインデックス作成と解析、クラッシュ原因の特定、CIS(継続的インテグレーション)ジョブの失敗解析、自動テスト生成などで大きな成果を上げているとのことです。これらのエンジニアリングにおけるAI活用の知見も、UE6のワークフローに還元される予定です。

今後のロードマップと既存プロジェクトの移行について

UE5とUEFNの統合と聞くと、現在UE5で開発中のプロジェクトへの影響が懸念されますが、Epic Gamesは「既存のプロジェクトを引き継ぐことが基本方針であり、ハードな断絶を強いることはない」と明言しています。

従来のパッケージゲームの開発や、独自のエコシステムへのリリースはこれまで通り可能です。また、初期のUE6バージョンでは現在の「Actor(アクター)」や「Blueprint(ブループリント)」も引き続きサポートされます。新しいフレームワークが十分に成熟した段階で段階的に非推奨となり、その際にはプロジェクトを移行するための変換ツールが提供される予定です。

Unreal Engine 6のリリースに向けた現在の大まかなタイムラインは以下の通りです。

2027年末Unreal Engine 6 早期アクセス(Early Access)版リリース予定
EA版から12〜18ヶ月後フルリリース予定

現在、UE6に向けた開発ストリームは、GitHub上の「ue6-main」ブランチにて一般公開されています(※現在は透明性を保つための公開であり、実用段階のアルファ版ではありません)。ここではVerse言語の実装も確認できますが、現時点では一般的な採用を意図したものではありません。UE5で行われた変更はすべてUE6にマージされていくため、開発者は現状のUE5やUEFNでの開発を安心して継続できるとのことです。

なお、今後のUE5のリリース計画についても触れられており、バージョン5.8以降の公式なUE5リリースは現在予定されていませんが、必要に応じて「バージョン5.9」をリリースするオプションは確保しているとのことです。


The road to Unreal Engine 6

目次

    1. サーバー分散とデータ同期の自動化
    1. Fortniteのシステムをオープン化