2026年6月15日(現地時間) – 3Dアセットのオープンスタンダードである「glTF™」を管理するThe Khronos® Groupの3D Formatsワーキンググループは、新たに「Volumetric Media Subgroup(ボリュメトリックメディア・サブグループ)」を設立したことを発表しました。
このサブグループは、キャプチャからデータフォーマット、コンテンツの再生に至るボリュメトリックパイプラインの主要な領域において相互運用性を実現するため、glTF規格の拡張を目指しています。これにより、関連技術の革新を加速させ、広範な業界への普及を後押しすることを目的としています。
市場動向と標準化の必要性
ボリュメトリックメディア産業は、2025年時点で71億9,000万米ドルの市場規模と評価されており、現在大きな成長期を迎えています。アナリストの予測によれば、市場は2033年まで年率15%以上の成長が見込まれています。一方で、この成長に伴いハードウェア、ソフトウェア、ディスプレイデバイスの多様化が進み、市場が断片化するリスクも懸念されています。
実際に、2025年11月にMetaverse Standards Forumが実施した「ボリュメトリック産業の現状調査」では、回答者の多くが市場の成長を支えるために最も注力すべき領域は「標準規格の策定」であると回答しています。
— Ian Williams氏(NVIDIA / Volumetric Media Subgroup 議長)
「Khronosは、ボリュメトリック技術の標準規格を推進する上で最適な環境です。グラフィックスやメディア向けのハードウェアAPI、さらにはアセットフォーマットに関する深い専門知識と、Khronosの標準化エコシステムを活用することができます。これらはすべて、オープンな業界標準化のための実績ある枠組みの中で行われます。これは、ボリュメトリックメディア産業全体を前進させるために必要なツールキットなのです」
ボリュメトリックビデオとは
ボリュメトリックビデオ(メディア)とは、複数のカメラを使用して対象物や空間をキャプチャし、3次元表現(3Dモデル)を生成する技術です。
従来の2D映像とは異なり、ユーザーはこの3D空間内を自由に移動し、あらゆる角度から被写体を視聴することができます。また、さまざまなデバイスへのストリーミング配信が可能なため、複数の視聴者がそれぞれ独自の視点から同じシーンを体験できるようになります。
近年では、ガウシアンスプラッティング(Gaussian splatting)のような新しい技術の登場により、ボリュメトリックコンテンツの品質と利用のしやすさは飛躍的な向上を遂げています。この技術は、すでに次のような多様な分野で実用化や応用が始まっています。
ライブスポーツにおける観戦体験
例えば、スタジアムのピッチを100台のカメラで囲んで撮影した場合、すべての選手とファンがリアルタイムでボリュメトリックキャプチャされます。視聴者はいつでも一時停止や巻き戻し、スローモーションでの視聴が可能です。VRヘッドセットを使えばピッチ上を含むスタジアムのどこへでも仮想的に移動でき、XRデバイスを使えばリビングのテーブルに試合を立体的に投影することも可能です。また、大型テレビを用いてビデオゲームのように視点を自由に切り替えながら観戦するといった体験も提供されます。
SFX(特殊効果)とバーチャルプロダクション
従来の映像制作において、2Dビデオと3D環境を合成するためには、ロトスコープやコンポジットといった時間のかかる手作業が必要でした。ボリュメトリックビデオは、既存の業界ツールを活用しながらこのワークフローを簡略化する可能性を持っています。例えば、照明ディレクターは実写の俳優と3D環境の両方の照明をリアルタイムで調整し、その結果を即座に確認できるため、時間とコストの削減に繋がるとされています。
医療や購買における没入型体験
遠隔医療への応用も検討されています。患者が地元の診療所のキャプチャルームに入り、遠く離れた専門医がVRヘッドセットを通して患者をあらゆる角度から診察する、といった利用法が考えられます。また、企業が顧客の3Dモデルを作成し、靴などの商品をバーチャルで試着できるようにするなど、新しい購買体験の提供にも活用され始めています。
XRとメタバース空間の拡張
現実の環境全体を3Dモデル化し、メタバース内に配置することも可能になります。実際のスポーツの試合を仮想スタジアムに配信して世界中のファンが交流しながら応援したり、ライブコンサートを空間オーディオやバーチャル花火などの演出とともに仮想空間で再現したりと、新たなエンターテインメント体験の構築に利用されています。
標準化に向けたエコシステム
ボリュメトリックメディアの制作から再生に至るパイプラインは、すでにいくつかの明確なフェーズとして確立されています。これらのフェーズ間における相互運用性の標準規格を定義することは、エコシステム全体のボトルネックを解消することにつながります。
標準化が進むことで、カメラメーカー、制作スタジオ、ソフトウェア開発者などは、包括的なシステムを一から構築する必要がなくなり、自社のコア技術の開発に集中しやすくなります。

Khronosのロイヤリティフリーな知的財産(IPR)フレームワークの下、メンバー企業は3D Formatsワーキンググループと協力し、ボリュメトリックメディアのキャプチャ、エンコーディング、レンダリング、および再生をサポートするglTFの拡張機能の開発に取り組みます。
また、OpenXR、ANARI、Vulkanといった他のKhronos標準規格も補完的な技術として機能し、さまざまなプラットフォームにおいてボリュメトリック体験を効率的に開発・展開するためのツールを提供します。

Volumetric Format Association(VFA)との連携
Khronosによるこの取り組みは、既存の知見を基盤として進められます。すでにVolumetric Format Association (VFA)が、ボリュメトリックキャプチャに関するベストプラクティスと要件をまとめた複数のホワイトペーパーを発行しています。
2026年5月29日、KhronosとVFAは、glTFをベースとした新しいボリュメトリックメディア仕様の共同開発と普及に向けたリエゾン協定(連携協定)を締結しました。VFAは、これまでに策定した機能要件を提供し、KhronosのVolumetric Media Subgroupへ公式な連絡担当者を配置する予定とのことです。
— Denny Breitenfeld氏(Volumetric Format Association 会長)
「5年前、VFAはボリュメトリックメディアが市場で拡大するために必要な共通基盤を提供することを目的に設立されました。私たちが策定した再生仕様、ホワイトペーパー、機能要件は、長年にわたる業界での実践的な経験と、相互運用可能なボリュメトリックメディアという共通のビジョンの結晶です。今日、私たちは3Dグラフィックス標準の世界的リーダーの一つであるKhronos Groupとの連携を通じて、その使命を大きく前進させようとしています。この協力関係の一環として、VFAは将来の仕様における主要なフォーマットとしてglTFを採用し、相互運用可能なボリュメトリックメディアの基盤を強化するとともに、標準規格に基づいたエコシステムの共有に向けて歩みを進めていきます」
glTFの拡張と今後の取り組み
Volumetric Media Subgroupは、特定の企業やシステムに依存しないベンダーニュートラルな相互運用標準の確立に注力していきます。初期段階における主な対象分野は以下の通りです。
- ボリュメトリックメディアをサポートするためのglTF拡張:glTFを使用して相互運用性を促進するための重要な拡張機能を定義し、実装します。
- サンプル実装の作成:キャプチャから処理、そして体験の提供に至るまで、パイプラインの全体を通じてglTFを適用・検証します。
- ストリーミング体験をサポートする標準規格の適用:サーバーからボリュメトリック体験を生成し、インタラクティブに再生するためのデータおよびプロトコルの仕様を策定します。
- プレイヤーのベストプラクティス:一貫した再生動作と品質を確保するためのベストプラクティスおよび推奨ベースラインを構築します。
これらの取り組みでは、glTFを活用してパイプラインの各フェーズ間に明確な相互運用ポイントを確立することが目指されています。これにより、各ベンダーは標準規格に基づいた安定した基盤の上で、新しい製品開発を進めることが可能になります。
開発への参加について
Khronosでは、この標準化の取り組みに参加する組織を広く募集しています。
詳細については、Khronosのメンバーシップページをご覧いただくか、指定のメールアドレス(memberservices@khronos.org)にお問い合わせください。
業界全体としてボリュメトリックメディアの技術発展を目指すため、各組織への協力が呼びかけられています。
Khronos Launches Initiative to Extend glTF for Volumetric Media































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