Khronosグループ、glTF向けの「Gaussian Splatting」拡張機能のリリース候補を発表

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2026年2月3日(現地時間) – グラフィックスおよび空間コンピューティングの標準化団体である The Khronos® Group は、glTF® 2.0向けの新しい拡張機能「KHR_gaussian_splatting」のリリース候補版(Release Candidate)を公開しました。

この拡張は、3Dアセット配信フォーマットとして広く利用されている glTF に、近年注目を集める「3D Gaussian Splatting(3Dガウシアン・スプラッティング)」形式のデータを格納するための基盤を提供するものとなっています。

今回のリリース候補版は、最終的な仕様の承認に先立ち、業界から幅広くフィードバックを募ることを目的としています。これにより、リアルタイムグラフィックス、デジタルツイン、大規模な地理空間可視化といったパイプラインにおいて、Gaussian Splatting の標準的な表現形式が確立されることが期待されています。

「KHR_gaussian_splattingは、glTFにとって重要なマイルストーンです。これは、全く新しいクラスの幾何学的表現をサポートするためにフォーマットを拡張するものです。Khronosは、標準ベースのアプローチを通じてGaussian Splattingコミュニティを結集し、この強力な新しいレンダリング技術がツール、プラットフォーム、そしてウェブ全体でスケーラブルに利用できるよう支援します」

— Neil Trevett氏(Khronos Group 会長)

Gaussian Splattingとは

Gaussian Splatting は、複数の2D画像からフォトリアルな3Dアセットを生成する「放射輝度場(Radiance Field)」の表現技術です。写真や動画をもとにオブジェクトやシーンの疎な3D点群(ポイントクラウド)を構築し、各点には「位置・スケール・回転・色・不透明度」といった属性が付与されます。

その後、機械学習によってこれらのガウシアン(点)を入力画像と一致するよう最適化し、ラスタライズによって2D平面へ投影することで、視点変更に対して非常に高速かつ応答性の高い描画を実現します。

CesiumJS上のCesium World Terrainに埋め込まれた化学精製所の3D Gaussian Splatタイルセット。(データ提供:Bentley Systems)

このアプローチは、特に地理空間情報のキャプチャワークフローに適しているとされ、以下のような用途で強みを発揮します。

  • 都市規模や回廊規模のリアリティキャプチャ
  • 植生や不規則な形状を持つ複雑な自然環境
  • 反射素材・半透明素材・微細なディテールを含む都市表面の記録
  • 市販カメラ、ドローン、モバイルデバイスを用いた迅速な現地データ取得

Gaussian Splat は学習が高速で、高いフレームレートを実現できるうえ、個々のオブジェクトから都市全体のスケールまで対応できます。そのため、マッピング、デジタルツイン、インフラ監視、シミュレーション、状況認識(Situational Awareness)といった分野で、急速に有力な選択肢として注目を集めています。

さらに、報道写真、メディア・エンターテインメント、ロボットのトレーニング、文化財の保存といった分野でも採用が広がっており、ソーシャルメディアにおける3Dキャプチャ・表示の普及も目前に迫っています。生成・学習・レンダリング・圧縮といった関連技術も、現在進行形で進化を続けています。

これまでの標準化の流れ

標準化が進まない場合、急速に発展する技術は断片化(フラグメンテーション)を招く恐れがあります。こうした課題を踏まえ、Metaverse Standards Forumは2025年1月に公開タウンホールミーティングを開催し、Gaussian Splattingを標準化の対象とすべきかどうかを議論しました。参加者はユースケースの重複や相互運用性の問題を整理したうえで、オープンスタンダード、特にglTFアセットへのSplat格納を可能にすることが、これらの課題解決につながるとの認識で一致しました。

議論の中で特に重要とされたのは、Gaussian Splatを既存の空間データエコシステムに統合する必要性です。アセットはメッシュ、地形データ、画像、センサーデータなどと共存し、多くの場合は地球座標系で扱われます。glTF内での保存形式を標準化することは、この統合に向けた大きな一歩と位置づけられました。

詳細は以下の記事をご覧ください。

こうした背景を受け、Khronosの3D Formats Working Groupは開発を加速させ、新たな拡張仕様「KHR_gaussian_splatting」を策定しました。現在、エンジン開発者、実装者、クリエイター、アーティストに対し、仕様の確認やサンプルアセットでの検証、実装の試作を呼びかけており、最終的なフィードバックを求めています。

glTFへのシームレスな統合

KHR_gaussian_splatting は、glTF 2.0 のメッシュプリミティブを拡張し、以下の属性を含む 3D Gaussian Splat データセットを表現します。

  • 位置・方向(Orientation)・スケール
  • 色および不透明度
  • 三角形(ポリゴン)ではなく Splat としてレンダリングするための解釈ルール

この拡張により、対応するレンダラーはプリミティブを Gaussian Splat データセットとして解釈できるようになります。これにより、既存のツールパイプラインを活用して Splat を glTF アセットとしてインポート/エクスポートでき、トランスフォーム(変換)、カメラ、アニメーションの共有も容易になります。

主な機能は次のとおりです。

  • Gaussian Splat を glTF アセットとして標準化された形式でインポート/エクスポート可能
  • メッシュ、地形、フォトグラメトリ(写真測量)など、他の glTF アセットとのシームレスな共存
  • Splat 描画をサポートしないビューワー向けに、点群(ポイントクラウド)表現へのグレースフルなフォールバック(代替表示)を提供

柔軟性、将来性、拡張性を備えた設計

KHR_gaussian_splatting 拡張は、効率的なレンダリングを実現するため、非圧縮の GPU 対応データ構造を定義しています。Gaussian Splatting 技術は現在も急速に進化しているため、この拡張は特定のアルゴリズムに依存せず、将来的な拡張が容易な設計になっています。現行仕様では基本的な楕円体カーネルを定義していますが、今後の技術進歩に応じて、新しいカーネルタイプ、色空間、投影方式、ソート手法などを取り込むことが可能です。

また、効率的なデータ転送が求められるユースケース向けに、KHR_gaussian_splatting を基盤とした複数の圧縮拡張もすでに提案されています。これには、Niantic SpatialのSPZ形式QualcommのL-GSC形式のサポートが含まれます。glTF はオープンで拡張可能なフォーマットであるため、各組織は独自の圧縮方式に対応するベンダー拡張を自由に作成でき、業界で十分な関心と採用が得られれば、クロスベンダーの Khronos 標準として提案することも可能です。

Khronos は、圧縮方式やカーネルタイプについて、業界がしばらく試行錯誤を続ける可能性が高いと認識しています。そのため、不必要な断片化を避けるべく、Metaverse Standards Forum と協力しながら合意形成に向けた議論を継続しています。さらに、Alliance for OpenUSD (AOUSD)、Academy Software Foundation (ASWF)、UHD World Association (UWA)などの標準化団体とも直接連携しています。たとえば AOUSD とは、glTF 拡張と OpenUSD スキーマの整合性を確保し、両フォーマット間でシームレスな変換が行えるよう調整が進められています。

「私たちの目標は、イノベーションの余地を残しつつ、現在の相互運用性を可能にすることです。この柔軟な設計により、glTFはGaussian Splattingの急速な技術革新に追従しながら、最大限のユースケースをサポートできます」

— Adam Morris氏(Bentley Systems ソフトウェアエンジニア、本拡張機能の主要貢献者)

業界からの支持と採用

Gaussian Splatting はモバイル環境を含め、すでに実用段階に達しています。glTF に対応することで、研究者、ツール開発者、コンテンツクリエイターにとってさらに扱いやすくなり、精細で相互運用性の高いアセットやシーンの制作が加速します。

今回のリリース候補版を早期に採用する予定のアプリケーションとしては、CesiumJSEsri ArcGISNiantic SpatialのScaniverseXGRIDS Lixel Cybercolorなどが挙げられます。

KHR_gaussian_splatting 拡張は、Autodesk、Cesium/Bentley Systems、Esri、Huawei、Niantic Spatial、NVIDIA、XGRIDS といった主要ステークホルダーの貢献によって開発されました。

「私たちの目標は、イノベーションの余地を残しつつ、現在の相互運用性を可能にすることです。この柔軟な設計により、glTFはGaussian Splattingの急速な技術革新に追従しながら、最大限のユースケースをサポートできます」

— Guy Martin氏(Alliance for OpenUSD 運営委員会 副議長)

「私たちの目標は、イノベーションの余地を残しつつ、現在の相互運用性を可能にすることです。この柔軟な設計により、glTFはGaussian Splattingの急速な技術革新に追従しながら、最大限のユースケースをサポートできます」

— Patrick Cozzi氏(Bentley Systems チーフプラットフォームオフィサー / Cesium 創設者)

フィードバックの募集

Khronosは、glTFにおけるGaussian Splattingの将来を形成するために、コミュニティからのフィードバックを募集しています。Khronos 3D Formats Working Groupは寄せられた意見を検討し、2026年第2四半期に予定されている正式承認(Ratification)に反映させる予定です。

フィードバックは、Khronos GitHubへのコメントを通じて行うことができます。


Khronos Announces glTF Gaussian Splatting Extension

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