ad

Blender Conference 2025 基調講演が開催!創設者 Ton Roosendaal 氏がCEO退任へ

アーカイブ

2025年9月17日(現地時間)- Blender Conference 2025 の基調講演で、Blender の創設者であるトン・ローセンダール (Ton Roosendaal) 氏は2026年1月1日をもって会長およびBlender CEOを退任することを発表しました。

Blender Conference 2025の基調講演では、プロジェクトの目覚ましい進化と将来の展望が語られ、そして、創設者であるトン・ローセンダール (Ton Roosendaal) 氏の退任という大きな発表が行われました。

この記事では、講演の内容を紹介したいと思います。

目次(ボタンクリックで各箇所へジャンプします)

0:05オープニングと昨年の振り返り
1:18未来の展望:Blender 5
3:40コミュニティと業界での成功
7:15Blender成功の秘訣
16:13【重要発表】創設者トンの退任
19:08新CEOフランチェスコ・シッディ氏の登壇
22:56新体制の未来へのビジョン

オープニングと昨年の振り返り

講演は、創設者トン・ローセンダール (Ton Roosendaal) 氏の挨拶から始まりました。

トン氏は、過去1年間に3つのメジャーバージョンがリリースされたことに触れ、その新機能について、自身が詳しく語るまでもなく、世界中のYouTuberやインフルエンサーが熱心に解説している現状を喜びと共に語りました。

未来の展望:Blender 5

続いて、現在開発が進められている次期大型アップデート「Blender 5」のハイライトが紹介されました。「私たちは空飛ぶ車は持っていないが、Blender 5が実現する未来に生きている」とトン (Ton) 氏は述べ、会場を沸かせ、次の計画されてる機能を紹介しました。

物理演算ノード (Physics Nodes)

長年の構想であったこの機能は、Blenderをリアルタイムな物理シミュレーション環境へと進化させるものです。

これは、オブジェクトを動かすとリアルタイムで物理的な反応が返ってくる、アニメーションと物理演算がリアルタイムに相互作用する「インタラクションモード」の実現に向けた重要な一歩となります。

すでにこの新機能向けてのジオメトリノードの開発状況が何度か共有されています。

ストーリーツール (Story Tool)

続いて、2Dアニメーションや絵コンテ制作で人気の「グリースペンシル」と、動画編集機能である「ビデオシーケンサー」を強力に統合したストーリーツール (Story Tool)が紹介されました。

これにより、ストーリーボードを描きながら、シーケンサー上のクリップをクリックするだけでシーンを切り替え、プレビューし、編集までをBlender内でシームレスに行えるようになります。

トン氏は「1日で映画全体が作れるようになるかもしれない」と、その革新性を強調しました。

タブレット対応

iPadやAndroidタブレットで、Blenderが本格的に「制作ツールとして使える」ように開発が進行中です。

Blenderをタブレットで「実行する」こと自体は難しくないが、UI/UXを最適化し、実際に「制作で使える」ようにすることが大きな挑戦だと語りました。

AppleやWacomといった企業とも協力し、UI/UXの最適化が進められています。

コミュニティと業界での成功

Blenderの成功は、開発チームだけでなく、コミュニティの力と業界での評価によって支えられています。つづいてトン氏は、コミュニティによる次の活躍を紹介しました。

コミュニティのハイライト「Clay Pencil」

Daniel Lyra氏が開発した「Clay Pencil」アドオンを称賛。描いた線が即座に3Dモデルになるこのツールは、2Dアニメーターが直感的に3D制作を行える可能性を示しており、タブレットでの活用事例としても素晴らしいと述べました。

オスカー受賞の快挙

Blenderが全面的に使用された映画『Flow』がアカデミー賞を受賞したことは、プロジェクトにとって歴史的な出来事でした。

特にGints Zilbalodis監督が受賞スピーチでBlenderへの感謝を述べたことで、特にハリウッドでのBlenderの評価が飛躍的に高まったと語られました。

コミュニティからの力強い支援

最新の「Blend Report」の内容を公開。企業からの大型寄付額は安定している一方で、個人の小口寄付が爆発的に増加していることをグラフで示しました。

コミュニティの力強い支援がプロジェクトの安定を支えていることへの感謝を表明しました。

Blender成功の秘訣

トン (Ton) 氏は、Blenderが今日の成功を収めた要因として、いくつかの重要な理念を挙げました。

  • 最高のコミュニティ:Blenderの成功の最大の秘訣は「コミュニティ」であると断言。「我々は最高のソフトウェアや技術を持っているわけではないかもしれない。しかし、最高のコミュニティを持っている」と述べ、会場から大きな拍手が送られました。
  • 自由なソフトウェアライセンス (GPL):当初は「GPLライセンスでは業界に普及しない」と批判もされましたが、このライセンスを守り続けたことで、Blenderが特定の企業の利益に縛られず、コミュニティと共にあり続け、「全ての人のためのソフトウェア」であり続けることができたと、その哲学の重要性を語りました。
  • パブリックプロジェクト:開発プロセスは全て公開されており、スタッフのほとんどは貢献者コミュニティから採用されています。「我々がハリウッドに行くのではなく、ハリウッドがBlender(のコミュニティ)に来て貢献してほしい」と述べ、業界との対等な協力関係を重視する姿勢を示しました。
  • 組織構造:資産を管理する「Blender Foundation」と、オープンムービーなどのリスクを伴うプロジェクトを実行する「Blender Institute」に組織を分けることで、安定した運営を実現してきたと説明しました。

【重要発表】創設者トン (Ton Roosendaal) の退任

講演の後半で、トン・ローセンダール (Ton Roosendaal) 氏は、自身の貢献を「オーガナイザー」「デザイナー」「デベロッパー」「起業家」という4つの側面から振り返った後、2026年1月1日をもってBlender Foundationの会長およびCEOを退任することを正式に発表しました。

トン氏は、現在の経営チームが既にプロジェクト運営の中心を担っており、万全の体制が整ったことが退任を決意した理由だと説明。その役職は、長年Blenderに貢献してきたCOOのフランチェスコ・シッディ (Francesco Siddi) 氏に引き継がれます。新しいBlender Foundationの理事会には、セルゲイ・シャリビン (Sergey Sharybin, 開発責任者)、ダライ・フェリント (Dalai Felinto, 製品責任者)、フィオナ・コーエン (Fiona Cohen, 運営責任者) が加わり、新体制となります。


「我々はこの日のために2019年から準備を進めてきました。私たちのフリーでオープンソースなプロジェクトを次の10年へと導いてくれる、このような素晴らしく才能ある若いチームがそばにいることを、大変誇りに思います」

– Ton Roosendaal

また、彼は新しいチームへの全幅の信頼を表明し、「彼らは『彼らのやり方』で物事を進めるだろうが、それは良い変化だ」と、次世代への期待を語りました。

トン氏自身は、新設されるBF(Blender Foundation)監査役会に移りつつ、この10年間遠ざかっていた「作り手(Maker)」としての活動に再び時間を費やしたいと、自身の未来について語りました。

新CEOフランチェスコ・シッディ (Francesco Siddi) 氏の登壇

続いて、次期CEOに就任するフランチェスコ・シッディ (Francesco Siddi) 氏が登壇。

彼は2012年からBlender組織に所属し、アニメーター、ウェブ開発者、プロデューサーなど多くの役割を担ってきました。10代の頃にオープンソースとBlenderに出会い、オープンムービープロジェクトへの参加をきっかけにキャリアをスタートさせた自身の歩みを振り返りました。

フランチェスコ氏は、初期のオープンムービー『Elephants Dream』の制作プロセスを追いかけ、公開されたプロダクションファイルを研究した経験が、プロの制作現場を知る初めての機会となり、非常に刺激的だったと振り返り、2011年のオープンムービー『Tears of Steel』のチームメンバーに応募し、採用されたことがキャリアの大きな転機となったとしています。

アムステルダムに移住し、Blender Institute(現Blender Studio)でウェブサイト構築、短編映画制作、そして現在のBlender Studioの前身となるBlender Cloudの立ち上げなど、様々なプロジェクトの中心人物として活動してきました。

新体制の未来へのビジョン

フランチェスコ 氏は、新体制が目指す未来のビジョンを明確に示しました。

自身の価値観として「デザイン(人々の生活を向上させる体験)」「テクノロジー(オープンでアクセス可能であるべき)」「人々(上記二つが奉仕する対象)」の3つを挙げ、これらがBlenderの理念と重なると語りました。

特に「ストーリーテリング」の重要性を強調。これがBlenderの存在意義の核であり、今後もBlender Studioを通じて野心的な挑戦を続けたいと述べました。

そして今後の目標として以下を掲げました。

  • 継続性と安定性:プロジェクトの安定した運営と成長を維持する。
  • 多様なコミュニティの促進:様々なバックグラウンドを持つ人々が参加しやすい環境を作る。
  • イノベーション:プロジェクトが巨大化しても保守的にならず、常に実験と挑戦を可能にする。
  • 目的の再確認:Blenderの核となる目的、すなわち「小規模チームと個人のためのツールであり続け、世界に創造する自由を提供する」という理念を堅持すること。

最後に、フランチェスコ 氏は、「未来に何が起こるかは分からないが、我々はそれを見つけるためにここにいる」と力強く述べ、Blenderの独立性と強さを保ち続ける決意を表明し、歴史的な基調講演を締めくくりました。


以上がBlender Conference 2025 の基調講演の内容です。すべての内容は記事上部にある動画を直接ご覧ください。

Blender Conference 2025 は、9月17日~19日の間に開催されています。プログラムはこちら

Blender Foundation announces new board and executive director

コメント

Translate »
タイトルとURLをコピーしました