2025年7月24日(現地時間) – Blender 開発ブログにて、BlenderをiPad Proなどのタブレット端末に本格的に対応させるプロジェクトの計画が共有されました。
ということで、その内容を紹介したいと思います。
プロジェクトの背景と目的
タブレット型のマルチタッチインターフェースは、長年にわたり一般的に普及してきましたが、近年では処理能力の向上により、主要なコンピューティングデバイスとして本格的に機能し始めています。Blenderの開発チームは、「3D技術を誰もが利用できるようにする」という理念を実現するためには、こうしたプラットフォームの積極的な活用が重要であると考えています。
対象となるデバイスには、Apple iPad、Microsoft Surface、Huawei MatePad、Wacom MovinkPadなどがあり、Blenderの全機能をこれらのタブレット環境でも提供できるようにする構想が進められています。
その実現には、各プラットフォーム固有の操作体系に対応するだけでなく、情報量を抑えつつ、よりタスク指向のユーザーインターフェースを設計する必要があります。この取り組みは、既存の入力手法の拡張や、ワークスペース、アプリケーションテンプレートの改善を通じて進められており、従来のBlenderビルド上で動作することが前提となっています。
最初にこのアイデアが試されるプラットフォームは、Apple Pencilに対応したApple iPad Proとなっており、今後はAndroidデバイスや他のグラフィックタブレットへの展開も予定されています。
スタンドアロン型のタブレットが主な対象とはなりますが、設計の中心となる原則はすべてのプラットフォームに適用可能です。これにより、Blenderが各ターゲットデバイスでネイティブに動作するよう移植が進む中でも、UI/UXの改善は既存のタブレットユーザーにも直接的な恩恵をもたらすことになります。
デザイン概要
ここでは、「タブレット上のBlenderとは何か」を考える際に考慮されたプロダクトデザインの検討事項を紹介したいと思います。
対象者 – 誰のためのものか?
対象者は「Blenderユーザー」です。デスクトップユーザーとタブレットユーザーの区別はなく、マウス/キーボードユーザーとグラフィックタブレットユーザーが平等に扱われるのと同じです。したがって、Blenderや3Dに不慣れな可能性のある層にアピールするために、Blenderを簡素化したり調整したりするといった意図はありません
意図しているのは、これらのデバイスで作業するユーザーがBlenderを完全に利用できるようにすることです。
例:
- 専門的なタスク(ペインティング、スカルプティング、2Dアニメーション)のためにペンデバイスを必要とするアーティスト。
- タブレットを主要なデバイスとして使用しているアーティスト。
- 外出先でBlenderを必要とするアーティスト。
最終的な目標は完全なBlender体験ですが、初期の焦点は基本的なオブジェクト操作とスカルプティングになる予定です。これらに続いて、アニメーションツールを必要とするため少し高度なグリースペンシルとストーリーボード作成が続きます。
タブレットUXの課題
スタンドアロンのタブレットでの作業には、独自のソフトウェアおよびハードウェアの制限が伴います。
例:
- 単一のフルスクリーンウィンドウでのワークフロー。
- 比較的小さな画面領域。
- キーボード/マウスがない(標準装備ではなく、使用は任意であるべき)。
- マルチ入力インターフェース(タッチ+ペン)。
- 限られた処理能力とバッテリー。
- サイロ化されたファイルシステム。
入力方法
一部のタブレットはキーボードやトラックパッドのアクセサリとペアリングでき、その場合はデスクトップでの作業と同じ体験を提供する必要があると考えられています。
同様に、その逆も当てはまります。グラフィックタブレット(例:Wacom Cintiq)とペアリングされたデスクトップでの作業は、スタンドアロンのタブレットでの作業と同じ利点を提供する必要があります。
モックアップ
ここでは、iPad上でのUI(ユーザーインターフェース)や操作感がどのように見えるかを示す、いくつかの試作モックアップを紹介しています。これらはあくまで初期段階のデザインであり、今後変更される可能性がありますが、開発チームが現在検討している方向性を示す参考資料として提示されています。
現時点のモックアップでは、「単一エリア」構成の中で、Blenderがどのように適応し、動作できるかを描いています。これは、一時的なコンテキスト表示をフローティング領域で行う仕組みに基づいています。
このアプローチは、非オーバーラップというデザインパラダイムとは一部矛盾しますが、作業スペースの広さと必要なエディタへの素早いアクセスを両立させる、実用的な妥協案とされています。
オブジェクト操作
このモックアップは、アセットライブラリを利用したキットバッシングを示しています。
日常的なシナリオではありませんが、デスクトップで準備したファイルを出先で見ることができるというのも強力です。。
このデモが示していること:
- カスタムアプリケーションテンプレート。
- ホイールメニューウィンドウのオーバーレイ(Ctrl/Cmd、Shift、Alt、クイックお気に入り)。
- サイドバーのタブはアイコンを使用。
- 3Dビューポートからアウトライナーとプロパティエディタへ素早くアクセス。
スカルプティング
このモックアップは、単一ウィンドウでのメッシュスカルプティングのコンセプトを探求しています。
このデモでは、さらに以下を見ることができます:
- デフォルトで折りたたまれたメニュー。
- 厳選されたショートカットを持つヘルパーオーバーレイ。
- ツールパネルがサイドバーのタブからフローティングポップアップに移動。
- ツール設定ヘッダーが削除された:
- ツール固有の設定はフローティングのツールパネルに表示。
- モード設定/オプションはサイドバーに移動。
追加のデザインのモックアップはこちらで確認できます。
開発について
開発目標は、iPadのようなデバイス向けにカスタマイズされたアプリケーションテンプレートを設計しながら、Blenderに新しいコア機能を実装することです。
ユーザビリティの改善の多くは、Blenderのデスクトップ版の改善にもつながります。
例:
- クイックお気に入りエディタ。
- 厳選されたショートカットを持つヘルパーオーバーレイ。
- サイドバータブのアイコンサポート。
- 切り替え可能なサイドバータブ(すでにBlender 5.0 alphaに搭載)。
以下のような一部の機能は、タブレットやその他のタッチデバイスに特化したものになります:
- マルチタッチイベントとジェスチャー。
- 複数のアクティブなエディタ/リージョンの処理。
- ホイールメニュー。
- インタラクティブなステータスバー(例:ショートカットラベルをタップして切り替え)。
タブレット固有のアプリケーションテンプレートは、Blenderのデスクトップ版とタブレット版の両方で利用可能になる必要があります。
タブレットとiOS
開発は別のブランチで行われます。この分野で豊富な経験を持ち、貢献に興味のある開発者は、chat.blender.orgまたはDevTalkフォーラムを通じて連絡を取ることが推奨されています。
iOS固有で歓迎される貢献:
- Blenderのビルド
- タッチイベントとジェスチャーのサポート
- ファイルシステム / iCloud / AirDropのサポート
- OpenSubdiv
開発の進捗はprojects.blender.orgでフォローできます。
マルチタッチUI/UX開発作業のほとんどはデバイスに依存しないため、この分野で経験のある方は誰でも貢献を歓迎しているとのことです。
次のステップ
バンクーバーで開催されるSIGGRAPH 2025のBlenderブースにて、iPad Proで動作するBlenderの技術デモが公開される予定です。
その直後、アムステルダムのBlender HQでワークショップが開催され、現在のデザインとワークフローが再検討されます。ワークショップの成果は、開発ブログで共有される予定です。
また、Blender Conference 2025中にライブデモを見つけることができるかもとのことです。
開発をサポート
このプロジェクトは初期段階にあり、目標を達成するためには専門のデザインおよび開発リソースが必要になります。開発基金にメンバーとして参加するか、一度寄付して、これを実現させましょう。
























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