2025年7月11日(現地時間) – Blender Studioは、ゲームプロジェクト「DOGWALK」をSteamおよびitch.ioで正式にリリースしたことを発表しました。さらに、プロジェクトで採用されたBlenderとオープンソースのゲームエンジンGodotを連携させるための、詳細な技術ワークフローも公開しています。
「DOGWALK」とは
『DOGWALK』は、Blender Studioの2作目となるゲームプロジェクトです。 –
このゲームは「風変わりな冬の冒険」をテーマにした、短時間で楽しめるインタラクティブな物語体験が特徴です。プレイヤーは大きな犬「チョコミール」となり、人間の相棒「ピンダ」と一緒に雪だるまを飾るための最高のアイテムを探しに行きます。
ゲームはBlender studio公式サイトのほか、Steamとitch.ioで公開されており、誰でもプレイすることができます。
プロジェクトの初期のコンセプトは以下の記事をご覧ください。
技術的ハイライト:Blenderを中心とした制作パイプライン
本作の最大の技術的挑戦は、BlenderとGodotエンジン間にシームレスな制作パイプラインを構築することとされていました。
Blender Studioのチームは、映像制作で培ったスキルを活かすため、アセット制作からシーンの組み立て、アニメーション、衝突判定の設定まで、可能な限り多くの作業をBlender内で行う「Blender中心」のワークフローを考案しました。このパイプラインの要点は以下の通りです。
「glTF」フォーマットの選択
BlenderとGodot間のデータ連携には、両ツールでネイティブサポートが充実している「glTF」形式が採用されました。Godotには.blendファイルを直接読み込む機能もありますが、チームは意図的にこの方法を避けました。
その理由は、作業ファイルとゲーム用アセットの区別をなくさず、「アセットを本番環境に送る」というエクスポート工程を明確にすることで、制作プロセスをより厳密に管理するためでした。
交換のためのカスタムコード(連携ツール)
このパイプラインを円滑に動かすため、BlenderとGodotを連携させる2つの専用ツール(拡張機能とプラグイン)が開発されました。これらはアーティストの作業を自動化し、データの整合性を保つためのものです。
- Blender拡張機能(アセット送信用ツール): アーティストがボタン一つでアセットをGodotへ送れるようにするツールです。Blender標準の「コレクションのエクスポート機能」を利用しつつ、アセットへのID割り当てや参照への置き換えといった、データ交換に必要な複雑な処理を自動で実行します。
- Godotプラグイン(アセット受信用ツール): Blenderから送られてきたアセットをGodot側で正しく受け取るためのツールです。glTFファイルがインポートされると、アセットIDを基にシーンの階層構造を再構築したり、マテリアルやアニメーションをライブラリに登録したりします。

同じ .blend ファイル内の複数のアセットのコレクション エクスポーター設定のスクリーンショット
アセットの分離とチーム開発
パイプラインの核となる原則は、各アセットファイルがそれ自身のデータのみを含む「アセットの分離」です。例えば、シーンファイルの中に木のアセットを配置する場合、木のデータそのものをコピーするのではなく、木のアセットへの「参照」情報だけを埋め込みます。
これにより、データの重複を防ぎ、管理を容易にしています。また、複数人での作業を円滑に進めるため、バージョン管理にも工夫が凝らされました。
アーティストがアセットをエクスポートした後、必ずGodotを開いてインポート処理を完了させ、Godotが生成したファイルも含めてコミットするというルールを徹底し、チーム内でのデータ不整合を防いだとのことです。

アセット分離原則の概要
以上により、Blenderを中心とした制作パイプラインを実現し、「DOGWALK」の開発が進められました。
こちらの公式ブログでは、より詳しいワークフローや注意点、教訓などが共有されています。興味がある方は見てみてください。
今後の展望
BlenderとGodotの連携をさらに深めるための継続的な取り組みも行われる予定です。
特に、glTFフォーマット自体の拡張である「複雑なシーンのためのglTF(glTF for complex scenes)」のような開発が進展すれば、今回Studioが独自に構築したパイプラインの大部分が、将来的には標準機能で実現できる可能性があるとのことです。
また、開発期間中、Godot財団から非常に協力的なサポートがあったことにも触れており、両コミュニティの良好な関係が今後も続くことが期待されます。
コードの公開と注意点
今回開発された連携ツールを含む制作リポジトリ全体が公開されています。
dogwalk-repo.zip (9.9 GB) をダウンロード
しかし、スタジオはこれがあくまで内部利用のために作られたプロトタイプであり、サポートやドキュメントのない現状のまま共有するものであることを強調しています。Blender Studio Toolsのように実際に使える製品として公開しているわけではないことに注意してください。
その理由としてスタジオは、「これを使いやすく、パイプラインに統合できる柔軟性を備えた実用的なツールにするには、膨大な追加作業が必要になります。現時点では、その労力をBlenderとGodotがネイティブでスムーズなワークフローをすぐにサポートできるようにすることに費やしたいと考えています。」と述べています。
他にもコンテンツや開発ブログが共有されています。
一部のコンテンツはBlender Studioのサブスクリプション加入が必要となっています。Blender Studio サブスクリプションに加入すると、制作レッスンの視聴、詳細な記事の閲覧、アセットのダウンロード、そしてゲーム全体のソースコードベースのダウンロードが可能です。



























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