無料オープンソースのゲームエンジン Godot 4.4 がリリース!Jolt Physics統合、インタラクティブなゲーム内編集などなど

CGソフト

2025年3月3日(現地時間)- Godot Foundationと開発コミュニティーは、無料オープンソースのゲームエンジンの最新アップデート Godot 4.4 のリリースを発表しました。

ハイライト&全般、システム、プラットフォーム&スクリプトの3ページに分けて新機能を紹介したいと思います。

ハイライト

このリリースには、QOLの向上が数多く盛り込まれており、これには、より速いロード速度、スタッターの減少、合理化されたプロセスなど、バックグラウンドで多くの最適化が含まれています。

その上、ゲームウィンドウの埋め込みやインタラクティブなゲーム内編集といった待望の快適機能は、他のソフトウェアとほぼ同等となっているとのことです。エディターのオーバーホールだけでも、今回のリリースの大部分を占めているとのことです。

Jolt Physics

Jolt拡張は、2022年末の登場以来、多くのGodot開発者によって事実上の物理エンジンとして使用されていため、エンジンに直接統合するのは理にかなった選択として採用されました。

Jolt Physics自体は、独立したオープンソースの物理エンジンであり、その開発者がGodotにも大きく貢献しています。

現在「実験的」ラベルを外すために、フィードバック(および GitHub issues)を募集しています。

それまでは、Godot Physicsの代替オプションとして、プロジェクト設定で有効化する必要があります。使用する前に、ドキュメントを確認し、あなたの用途が適切にサポートされているかをチェックしてください。

埋め込みゲームウィンドウ

Godotは、以下の2つの理由で、エディタとは別のプロセスとしてゲームを実行します。

  • リソースの共有を最小限に抑えるため
  • ゲームがクラッシュした場合でも、エディタを維持しデータ損失を防ぐため

しかし、この設計選択のために、ゲームウィンドウをエディタ内に埋め込むことがこれまでできていませんでした。特に、シングルモニター環境やノートPCなど、画面スペースが限られているユーザーにとっては不便でした。

今回、ウィンドウ管理の工夫により、ゲームをシームレスに埋め込みつつ、バックグラウンドではプロセスを分離したまま動作させることが可能になりました。

なお、現在の対応プラットフォームはLinux、Windows、Androidのみです。macOSの対応には技術的に異なるアプローチが必要となります。

インタラクティブなゲーム内編集

実行中または一時停止中のゲームをエディタ内から直接変更するのが、これまでになく簡単になりました。

このリリースでは、シーン内の要素をクリックしたり、カメラを移動したりすることで、ゲームの世界をより自由に探索できるようになっています。

XRデバイス向けのAndroidエディタ対応

Godotエディタは、エンジン自体を使用して開発されているため、Webやモバイルなどの通常とは異なる環境にも展開できます。

このリリースは、OpenXRを活用し、既存のAndroidエディタをXRヘッドセット向けに適応させる最初のステップとなっています。

現在、Meta Quest 3、Quest 3S、Quest Pro に対応しています。

Ubershadersによるスタッター(カクつき)軽減

Ubershadersは、ロード時に準備される各シェーダーの機能をすべて含んだプリコンパイル版です。

新しいオブジェクトを描画する際に、バックグラウンドで専用シェーダーがコンパイルされるまでの間、Ubershadersが代わりに使用され、フリーズ(カクつき)を完全に回避できるようになりました。

この変更により、多くのゲームでカクつきが軽減され、特にコンテンツの変更を必要とせずに改善が実感できるはずです。

ただし、一部のケースではUbershadersが適用されないこともあります。詳しくは公式ドキュメントのシェーダースタッターの対処法を参照してください。

現在、既存のシェーダーもこの新しい仕組みに対応するよう更新作業が進められています。

3D物理補間

Godot 4.3で2D物理補間が導入されましたが、3D版も今回のリリースで追加されました。プロジェクト設定で有効化して使用することができます。

物理演算の更新(ティック)とディスプレイのフレームレートを分離することで、前回の物理位置と現在の位置の間に追加のフレームを生成します。これにより、特に高リフレッシュレートのディスプレイでのカクつきを軽減し、より滑らかな描画を実現します。

特にモバイルゲームでは、この変更によりティックレートを下げてもスムーズな動作を維持できるため、大きな恩恵があります。

AgXトーンマッピング

このトーンマッピング手法は近年急速に人気を集めています。Blender でも従来の「Filmic」トーンマッピングをAgXに置き換える動きがありました。

Godotの実装はBlenderに近いものの、リアルタイム用途に最適化されています。

AgXは映画のような品質を提供し、非常に明るいシーンの処理に優れています。

ACES AgX

型付き辞書(Typed Dictionaries)

ユーザーの要望に応え、Godotに型付き辞書(Typed Dictionaries)が導入されました!

これはエンジンのコア、GDScript、および他のスクリプト言語にも影響を与え、Godotの Dictionary型をより安全かつ柔軟に扱えるようになります。

また、インスペクタのUI/UX も改善され、適切なキーと値を直接エディタ内で割り当てられるようになりました。

以上がハイライトです。

ここからはより詳しい新機能の紹介となります。長くなるのでページに分割しました。

全般

コア

最適化

Godot 4のコア機能が安定してきたことで、現在は全体的な最適化に注力するフェーズへと移行しました。

4.3リリース前に完成しテストされたものの、マージ期限に間に合わなかった最適化が今回のリリースで一気に適用されました。

ManifoldライブラリによるCSG実装の置き換え

Constructive Solid Geometry(CSG) のサポートは、Godot 3.1から導入され、素早いプロトタイピングに便利なツールとして活用されてきました。

しかし、従来の内部実装には安定性の問題やバグが多く存在しました。さらに、このエンジン機能には専任のメンテナがいないため、同等の機能を持つオープンソースライブラリが公開された際に、すぐに移行を決定しました。

今回導入されたManifoldは、従来の実装を完全に置き換えます。GodotのCSG処理の内部構造が大きく変わる一方で、ユーザーAPIへの影響は最小限に抑えられています。

アップグレード後にプロジェクトが正しく動作するか確認し、問題があれば報告してほしいとのことです。

一時ファイル & ディレクトリユーティリティ

新しいAPIにより、一時的なファイルやディレクトリを作成・削除できるようになりました。

これにより、ユーザーデータを汚すことなくディスク上にコンテンツを書き込むことが可能になります。デフォルトでは、作成したファイルやディレクトリは自動的に削除されます。特にツール開発者にとって便利です。

Curveの定義域を[0,1]の範囲外にも拡張

Curve値の定義域を従来の正規化範囲 [0,1] から拡張することで、関数やデータを柔軟にマッピングできるようになりました。

SceneTreeシステムのオーバーホール

SceneTreeシステムのノード変更処理に関する改良により、エディタのパフォーマンスが向上しました。

特に複雑なシーンでのノード移動やリネームが、これまでよりもはるかに高速になりました。

エディタ

ユニバーサルUIDサポート

Godot 4.0 から一部導入されていたユニーク識別子(UID) は、ファイルパスに依存せずにリソースを参照できる仕組みです。しかし、これまで多くのファイル形式で活用されていませんでした。

今回のアップデートにより、プロジェクト内のファイル構成を変更しても問題が発生しにくくなり、大規模プロジェクトに適した環境 になりました。

また、Godot 4.3 からの移行をスムーズにするため、UIDへの変換を自動化するアップグレードツールも用意されています。

3Dオブジェクトのスナップ

エディタ内で3Dオブジェクトを配置する際、他のサーフェスにスナップできるようになりました。

これはコリジョン検出レイ を活用しており、オブジェクトの再配置が格段に簡単になります。

お気に入りのエディタ項目

インスペクタでよく使うプロパティを上部に固定して、簡単にアクセスできるようになりました。

新しい式評価ツール

エディタ下部のパネルに新しい「式評価(expression evaluator)」タブ が追加されました。

これにより、ブレークポイントで停止中に、ローカルの状態を直接使って式を評価できるため、デバッグがより直感的になります。

Camera3Dプレビュー

Camera3Dのプレビューを直接インスペクタ内で表示できるようになりました。

これにより、ビューポートを切り替えずにカメラのキャプチャを確認できるため、調整が大幅に楽になります。

GDScriptのツールチップ

GDScriptエディタで関数、変数、クラスなどにマウスをホバーすると、ツールチップが表示されるようになりました。

統合されたドキュメントの情報だけでなく、新しいドキュメントシステムを使って自分で追加したメモ も表示できます。

また、UIDもマウスオーバー時に人間が読めるパスとして表示されます。

LightmapGIのシャドウマスク

LightmapGIを使用する際、完全なベイクされた静的シャドウと完全な動的シャドウのどちらかを選ばなくても済むようになりました。

シャドウマスクを有効にすることで、遠くの影は静的、近くの影は動的にすることが可能になります。

これにより、遠くの影は低解像度でリソースを節約しつつ、プレイヤーの周囲のディテールは維持できます。

特にモバイルゲームの最適化に有効です。

ビジュアルシェーダーの改良

ビジュアルシェーダーエディタに、以下の改善が追加されました。

  • マテリアルのプレビュー & 新しいサイドドック
  • メッシュをドラッグ & ドロップすると自動でメッシュエミッターを作成

@export_tool_button アノテーション

@toolスクリプトを使用して、インスペクタにカスタムボタンを追加できるようになりました。

これは、ツール開発者にとって非常に便利な機能です。

その他

ウィンドウの状態を保持

Godotエディタは、フルスクリーン/ウィンドウモード、表示していた画面、ウィンドウサイズ・位置 を記憶するようになりました。

これらの設定は次回起動時に自動で復元されます。

シーン起動の最適化

エディタのロード速度がさらに向上しました。特に大規模プロジェクトでは最大3倍の高速化が期待できます。

この最適化は、プロジェクトの起動やファイルシステムのスキャン処理 にも影響します。

すべてのプロファイラにオートスタート機能を追加

ゲームの起動時にプロファイラを自動開始するオプションが追加されました。

これにより、最初の数秒間のプロファイルデータを見逃さずに記録 できます。

エラーのない初回プロジェクトインポート

バージョン管理システム(VCS)からプロジェクトをインポートした直後にエラーが発生する問題が解決されました。

以前は、.godot フォルダがリポジトリに含まれていない場合、最初の起動時に自動生成されるが、その影響でエラーが発生 していました。

現在は、エディタを再起動することなく、エラーなくプロジェクトを開ける ようになっています。

開発をサポート

次のリンクからエンジンの開発をサポートすることができます。

金銭的な支援以外にも、質の高いバグレポートの作成、コードベースへの貢献、ドキュメントの作成、チュートリアルの作成(ドキュメントや自分のスペースで)、さまざまなコミュニティプラットフォームで質問に答えたり役立つヒントを提供したりすることもサポートにつながります。

ダウンロード

Godot Engine 最新版のダウンロードはこちらから


Godot Engine ウェブサイトへ

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