2025年2月27日(現地時間) – Foundry は、ノードベースのデジタルコンポジットツールの最新アップデート Nuke 16.0 のリリースを発表しました。
新機能ハイライト
Nuke 16.0では、複数のショットを同時に処理し、大規模なロトパフォーマンス、ショットのレビュー、承認、配信の高速化といった新機能が追加されています。これらの機能は、VFXリファレンスプラットフォーム2023で運用されているNuke 15.2にも一部対応しています。
変数対応のマルチショットワークフロー
Nuke16.0には、効率的で信頼性が高く、スケーラブルなマルチショット合成を可能にする、変数対応のワークフローがネイティブに追加されました。
これにより、同じようなショットに同じ変更をシンプルかつ直感的に適用できるようになり、複数のショットまたはシーケンス全体を一度に合成することができます。
Graph Scope Variables
Graph Scope Variables (GSVs) は、Nukeのマルチショット合成ワークフローを支えるバックボーンとなる新機能です。
これにより、複数のコンテキストやスコープに必要なデータを、1つのNukeスクリプト内で定義、保存、アクセスすることができます。特に、Groupノードと組み合わせることで、GSVの機能がさらに強力になり、変数の継承やオーバーライドが可能になります。これにより、複数のショットを効率よく処理できるようになります。

VariableSwitchノード
新たに追加されたVariableSwitchノードでは、変数を使ってショットやスコープを切り替えることができ、マルチショットワークフローの「分割と結合(split and join)」の作業が簡単に行えます。このノードは、従来のSwitchノードと似ていますが、変数を活用して、複数のショットを効率的に管理するための柔軟性な制御が可能になります。
その他
Variables Panel
新しく追加されたVariables Panelでは、スクリプト内の変数を視覚的に管理できます。
プロジェクト設定内のVariablesタブで変数を表示可能に設定すると、変数がVariables Panelに表示され、簡単にインタラクションできるようになります。
この機能により、変数を効率よく操作し、ショットごとの調整が簡単に行えるようになります。
VariableGroupノード
Nuke 16.0では、VariableGroupノードも新たに追加され、変数やスコープの定義がより直感的に行えるようになりました。
このノードは、通常のGroupノードと似ていますが、新しいVariableGroupが作成されるたびに、プロジェクト設定内のVariablesタブに対応する項目が作成されます。
また、VariableGroupノード内のVariablesタブには、変数や変数セットを作成、編集、削除できるGsvKnobが含まれており、変数の管理が簡単になります。
GSVコマンドラインレンダー
Nuke 16.0では、コマンドラインインターフェースが拡張され、Graph Scope Variables (GSV) を使用して、適切なショットコンテキストでスクリプトをレンダリングできるようになりました。
LiveGroupsでのGSVサポート
LiveGroupsでも、ユーザーがローカル変数を定義できるようになり、これらの変数はLiveGroupが公開される際に.nkスクリプトに書き込まれ、同じスクリプトを使用するLiveGroupインスタンスでローカル変数として読み込まれます。これにより、プロジェクト全体で一貫性のある変数の管理が可能となります。
アーティストツール
リンクノード
Nuke 16.0のノードグラフでは、新しいタイプのノード「リンクノード」が導入されより自由に作業できるようになりました。リンクノードを作成することで、ノードを同時に変更したり、ノブごとのオーバーライドを利用したりできるようになり、クローンなしで必要なコントロールができます。
グループノードの内部表示
新しいグループビュー機能により、アーティストは複数のグループノードの内容を、異なるタブに移動することなく確認・編集できるようになりました。これにより、複数のグループでコンポジションを同時に調整する際の作業が速く、簡単になります。このアップデートにより、スムーズなマルチショットワークフローがサポートされ、複数のスコープを整理して管理することができるようになりました。
より高速な大規模ロト
大規模な、または多くのシェイプを扱うスクリプトを高速化するために、rotoノードが改良されました。これには、キャッシュ、再生、ビューアでのシェイプの編集や移動時のインタラクティブ性、モーションブラーのパフォーマンスの向上が含まれます。
HieroPlayerのコンタクトシート
HieroPlayerのコンタクトシート(NukeおよびNukeXライセンスで無料)によって、すべてのショットを一度に表示したり、他のアーティストのショットと比較することで、完全な一貫性を確保できるようになりました。
BlinkScript
■改善されたエディタ
BlinkScriptエディタの更新によりIDE機能のサポートが追加され、カスタムエフェクトや新しいルックを作成することがより直感的にできるようになりました。また、フォーマットの変更、エラーハンドリングの更新、新しいキーボードショートカットなどが追加されました。
主なアップデート内容:
- 検索と置換機能: 新しいタブメニューでオートフィル提案や、Blink言語に関するドキュメントを表示
- エラーメッセージ改善: 循環エラーがエディタ内のエラーアコーディオンに表示されるようになった
- コード補助: オートインデント、インデントガイド、括弧の自動閉じ機能など、コードの記述が直感的に

■ライブラリファイル
ライブラリファイルの追加により、複数のカーネルやプロジェクトで共通の関数やコードスニペットを共有できるようになりました。以前は、同じ関数を各カーネルごとに再作成する必要がありましたが、ライブラリファイルを使うことで再利用でき、スタジオ内で一元的に管理できます。

■セーフティレール (Safety Rails)
新しいセーフティレールオプションにより、基盤となるプロセッサ上で直接実行した場合に問題を引き起こす可能性のある操作をキャッチして報告してくれるようになりました。これにより、Kernelコードでの問題の原因を特定し、修正することが容易になります。println()関数も追加され、範囲外のピクセルアクセスをデバッグし、情報やエラーはターミナルにログとして出力されます。

3D システム (ベータ版)
現在Nukeでは、直感的なUSDベースの3Dシステムが構築中です。このリリースでは、アーティストのフィードバックに基づいてベータシステムにいくつかの更新を加え、3D作業時の制御がさらに強化されました。このアップデートにより、コンポジターのために作られ、コンポジターと共に作成された3Dシステムが、フルリリースに向けてさらに一歩前進しています。
■ScanlineRender2 – モーションブラーとAOV出力の改善
ScanlineRender2は、3Dシステムの進化と共に大きく改善され、アーティストはモーションブラーやAOV出力をより詳細に制御できるようになりました。
また、ScanlineRender2はデフォルトでレイトレーシングアーキテクチャに基づくようになり、レイ深度バウンスの制御が追加されました。現在はシェーダーサポートが進行中ですが、コンポジターが必要とするレンダーパスを取得し、複雑なレンダリングを実現できます。
■コアノードの改善
- GeoCard, GeoCube, GeoSphere, GeoCylinderノード: UIレイアウト、ツールチップ、パスのデフォルトが改善されました。
- GeoTransformノード: 新しいスナップメニューで、頂点点やプリムのバウンディングボックスへのスナップが可能になり、シーン内での作業が効率化されました。
- GeoMergeとGeoSceneノード: デフォルトでAパイプが表示され、A/B入力に関係なく接続可能に。新しいオプション「Isolate Prims From」で、孤立したパイプをより直感的にマージできます。
- ジオメトリ修正ノードのデフォルト変更: すべてのノードが「All」に設定され、ノードグラフの変更がスクリプト出力に影響を与えにくくなりました。
- などなど
■その他
USD バージョン 24.05
USD 24.05にアップデートされ、最新のバグ修正と機能が追加されました。
GeoXformPrimノード
GeoXformPrimノードが新たに追加され、Xformを作成・編集できるモードを切り替えられるようになりました。これにより、シーングラフ管理が改善され、プリムの編集が効率化されました。
GeoConstrainノード
GeoConstrainノードでは、1つのプリムを他のプリムに制約できる新しい機能が追加され、LookAt、Transformation、Parentなどの複数の制約タイプが選べ、さらに空間や時間でオフセット可能になりました。
マルチチャンネルソフトエフェクト
新しいマスク対応のソフトエフェクトを使用して、意図を伝え、埋め込まれたEXRレイヤー/チャネルを使って視覚表現を正確にコントロールすることができるようになりました。
このNuke StudioおよびHieroのアップグレードは、InferenceとBlinkScriptのソフトエフェクトにもマルチソースチャネルと追加の出力チャネルを強化しています。
■マルチレイヤーEXR
タイムライン内でマルチレイヤーEXRを表示・編集できるようになりました。
■ワークフローの効率化
- VFXスーパーバイザーは、タイムライン上でサンプルフレームを作成し、より正確で洗練されたフィードバックを提供できます。その後、作成した内容をNukeノードとして保存することも可能です。
- VFXエディターは、タイムラインで直接レイヤー変換を行えるため、スラップコンプに費やす時間を削減し、効率的なスクリプト作成ができます。
■クリエイティブなチャネルの使用
- 深度やマットなどの非RGBAレイヤーを使って、色のソフトエフェクトをマスクできます。
- RGB以外のチャネル(例:ライティングパスをぼかす)を調整し、その後RGBに対してクリエイティブなエフェクトを適用できます。
ワークフローの強化
コンタクトシート
Nuke StudioとHieroで利用可能なコンタクトシートでは2つのモードを通じて、柔軟な表示環境を提供します。
ピック(Pick)モードでは手動でクリップを選択し、タグ(Tag)モードではタグとフィルターを使用します。Nuke StudioとHieroで利用可能です。
クイックエクスポート
シーケンスから動画ファイルをエクスポートする新しい方法であるクイックエクスポート (Quick Export)機能が導入されました。
これにより、レビュー用のシーケンスのエクスポートが最大12倍速くなり、他のチームと素材を共有する時間が大幅に短縮されました。これは、Nuke StudioとHieroで利用可能。
その他
- タイムライン上の新しいソフトエフェクト
- HueCorrect:色相範囲内での彩度レベルの精度調整。
- FilterErode:サイズコントロールに対して入力ピクセルをフィルタリング。
- Blur:画像またはマットにぼかし効果を追加。
- VFX リファレンス プラットフォーム 2024 (Nuke 16.0)
- VFXリファレンスプラットフォーム2023(Nuke 15.2)
- OpenAssetIO アップデート
- FFmpeg 6.1.1
- FoundryGL:macOSでは、NukeはAppleのシステムOpenGLライブラリを使用せず、代わりにFoundryの代替であるFoundryGLを使用しています。この変更の理由は、AppleがOpenGLを非推奨にし、今後のmacOSバージョンで削除する可能性があるためです。この変更はユーザーには特に影響はないはずですが、サードパーティのプラグインやユーザー提供のライブラリなど、一部の外部依存関係を変更または再構築する必要がある場合があります。
価格とシステム要件
詳しいシステム要件はこちらから
価格はサブスクリプションで、Nukeの価格は 3,649ドル/年、NukeXの価格は4,969ドル、Nuke Studioの価格は6,069ドルです。四半期ごとのサブスクリプションライセンスもあります。個人アーティスト向けのNUKEインディーライセンスは499ドル/年です。
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