Blenderではプロジェクトの長年の伝統のひとつとして、年の始めに開発予定が発表されます。
この度2025年のBlenderの開発目標が発表されましたので、その内容を紹介したいと思います。
昨年は長年のプロジェクトの仕上げに焦点が当てられ、すべて成功しました。2024年第1四半期に発表されたすべてのプロジェクトが最新リリースで利用可能となりました。

昨年のリリース
2025年はBlenderの全領域の安定と文書化を目指すWinter of Qualityプロジェクトから始まり、現在新しいプロジェクトの開始に焦点を移しています。
そのうちのいくつかは通常のモジュール作業であり、以前に合意されたプロジェクトです。その他はBlender Studioの今後のオープンプロジェクトの開発目標であり、伝統的なBlenderのやり方での方向性(とテスト)を手助けするものです。
2025年のBlenderプロジェクト
今年提案されたプロジェクトは以下の分野に分かれています。
ノードシステム
■異なるワークフロー間でノードシステムを統合
ノードツリー間の統合を改善することで、シェーディングやコンポジターなど、異なるタイプのノードシステム間でノードグループを共有できるようになる予定です。
ジオメトリノードは、レガシー パーティクルヘアシステム(Legacy Particle Hair System)と機能が同等になるよう計画されています。
これは、既存の高レベルシミュレーションシステムを置き換えるための第一歩となり、大きなマイルストーンとされています。
プロダクションツール
プロジェクト全体の変数や環境を意味するプロジェクトセットアップ(Project Setup)は、1つのプロダクション内の複数の.blendファイル間で設定やプロパティを共有する統一された方法を提供するものです。
これにより、アセット管理とショット作成がより効率的になり、パイプライン全体の一貫性が確保されます。
オンラインリモートアセットにより、アーティストは、サードパーティのコミュニティがキュレーションしたコンテンツや様々なストアなどのオンラインライブラリから直接リソースにアクセスできるようになります。
この機能は、独自のアセットライブラリを必要とするリモートプロダクションにも役立つもので、Extension Platformの次のステップとなっています。
オーバーライドは、ファイル、シーン、コレクションなど特定のコンテキストに対してプロパティを動的に定義する直感的な方法を提供するため、簡素化され再度検討される予定です。
これらの改善により、オーバーライドの競合を処理するための外部ツールの必要性が減り、プロダクションパイプラインがよりスムーズで信頼できるものになります。
スカルプト
マルチレゾリューションの伝搬における突起(spikes)は依然として重大な問題として認識されています。これは、低いサブディビジョンレベルでの変更が上位レベルに適切に反映されない場合に発生し、その結果として有名なアーティファクト(視覚的な欠陥)が生じます。この問題を解決することは、マルチレゾリューションモディファイアが制作現場で確実に機能するようにするための優先事項とされています。
スカルプトレイヤーは、昨年のパフォーマンス向上のおかげで、スカルプトモードがより多くのデータを扱えるようになった今、次のステップとして計画されています。
複数のレイヤーをミックスするためのサポートを追加することで、アニメーションのワークフローに不可欠な、より高いレベルのディテールと変形レイヤーが可能になり、アーティストはより大きなコントロールと柔軟性を得ることができます。
■タブレットペンのサポート
タブレットペンのサポートは、スカルプト、ペイント、2Dアニメーションなどのワークフローにとって重要です。マウスはペンで代用できることが多いものの、Blenderはキーボード入力に大きく依存しているため、操作が面倒です。ディスプレイタブレットや、将来的にはポータブルデバイスではなおさらです。
最初の焦点として、ナビゲーション、アンドゥ、リドゥのための基本的なジェスチャーを備えたタッチ入力のサポートが計画されています。
パフォーマンス
パフォーマンスの向上は継続的な取り組みですが、特に現在、一部の制作要件でブロックされている領域が2つあります。
- EEVEEマテリアルシェーダのコンパイルは、現在、特定プロダクションの要件、特に重いアセットを使用したルック開発時に障害が発生しています。並列コンパイルを可能にすること、シェーダーキャッシュの問題を調査すること、複雑な制作シーンにおけるマテリアルコンパイルの最適化が重点的に行われる予定です。
- シェイプキーは、特に、より細かいディテールや調整レイヤーのために複数のシェイプキーに依存するキャラクタパイプラインにとって、注意が必要な分野のひとつです。現在のストレージシステムは、スケーラビリティに大きな影響を与えています。計画では、ストレージを近代化し、より汎用的なアトリビュートシステム(UVに使用されているアプローチと同様)に移行し、スパースストレージを実装して、シェイプキーの異なる部分のみが保存されるようにすることが予定されています。
ストーリーツール
以下のVSE(ビデオシーケンスエディター)からのストーリーボード作成と基本的なカメラ編集が計画されています。
- シーケンス・データブロック。
- アクティブなシーンストリップのグリースペンシル描画へのクイックアクセス。
- VSEからのシーンストリップカメラの編集/アニメーション。
- ストーリーボードツール(簡単に新しいシーンストリップを作成できるなど)。
Storypencilアドオンに触発され、Grease Pencil 3.0が完成した今、チームの一部は編集ツールに焦点を移しています。目標は、スケッチ、タイミング、編集を組み合わせて、アーティストが効率的にストーリーを具現化できるシームレスなワークフローを作成することとされています。
進行中のプロジェクト
現在進行中のプロジェクトには、以下のようなものがあります。
- レンダリング(Cycles、NPR、…)。
- Vulkan ( Vulkanised 2025でのプレゼンテーションを含む)。
- UV 同期とその他の改善。
- すべてのエディターで HDR をサポート。
- レイヤーアニメーションとその他のアニメーションの改善。
- glTF を介した USD とゲームの相互運用性。
- Blender 5.0 の下位互換性のない変更。
- その他のモジュール作業。
当サイトで紹介したところでは、NPRレンダリングの強化と先日Blender Studioが発表したゲームプロジェクト『Project DogWalk』もこの中に含まれていると思われます。
リリース予定
上記で紹介したプロジェクトは特定のリリースを目標としていませんが、Blender Foundation は年3回のリリースの流れに従っています。
2025年のリリース予定とその最初の日付は以下の通りです:
- Blender 4.4 (3月) は安定性と改良に焦点が当てられます。
- Blender 4.5 LTS (7月) Blender 4シリーズの総仕上げ。
- Blender 5.0 (11月)、新しい開発サイクルを開始。
これに加え、LTSリリースのアップデートが年間を通して予定されています。2024年にはBlender 3.3 LTS、3.6 LTS、4.2 LTSのうち24のLTSリリースがありました。
- Blender 3.6 LTS – 2025年6月まで。
- Blender 4.2 LTS – 2026年7月まで。
- Blender 4.5 LTS – 2027年7月まで。
また、その他の予定のニュースとしては、アムステルダムで開催されるBlender Conferenceの日程が今年は9月に移動するようです。詳細はこちらから
開発を支援
Blenderの開発はすべて、寄付と継続的なコミュニティの参加と貢献のおかげで可能になっています。
2025年に向けた野心的な計画は、Blenderの範囲の拡大を反映していますが、現在利用可能なリソースによって制限されるものでもあります。Blenderはコミュニティ主導のプロジェクトですが、作業の多くはBlender Instituteに雇用された開発者や、開発助成金によって行われています。
さらに、開発チームが継続的なメンテナンスの管理や予期せぬ遅延への対応に忙しくなれば、ここに概説した目標のいくつかは延期や保留が必要になることもあります。
Blender AppsやLayered Texturesのような、長年にわたって提案されてきた特定の開発目標についても同様で、現在のチーム規模では実現不可能となっています。
Blenderの開発をサポート
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