2024年9月12日(現地時間)- Unity の社長兼CEOのMatthew Bromberg氏は、ゲーム領域向け Runtime Fee の撤回についての発表を行いました。
Runtime Fee に関するこれまでの経緯
Unity Runtime Feeは、Unity がサポートする全ゲームプラットフォームでの各ゲームのインストール(ダウンロード)数に基づいた追加の利用料金となります。実質的な追加の値上げということで、開発者から不満が続出、CEOが交代するまでの事態となりました。経緯は以下の記事をご覧ください。
- Unity、ゲームがインストールされた回数を基準とした Unity Runtime Fee の導入を発表
- Unity、コミュニティからの不満を受け Runtime Fee のポリシー変更を発表
- Unity、Runtime Fee ポリシーの変更内容を発表
- Unity の CEO が交代
ゲーム領域向け Runtime Fee を撤回
しばらくこの件ついての発表はありませんでしたが、この度ゲーム領域向け Runtime Fee の撤回が発表されました。
これにより、年内リリース予定の Unity 6 を含め、Unity のいずれのバージョンで制作されたゲームでも、Runtime Fee は発生しないこととなりました。
これは、2024年5月からUnity の社長兼CEOを務めるMatthew Bromberg氏によって発表されました。彼は今回の撤回の決定について次のように述べています。
「日頃より Unity をご利用いただき、誠にありがとうございます。このたび、Unity のコミュニティやお客様、およびパートナーと数か月にもわたり協議を重ねた結果、ゲーム領域向け Runtime Fee を撤回することを決定いたしました。この決定は、本発表をもって直ちに適用されます。なお、ゲーム業界以外のお客様におきましては、変更による影響はございません。
過去 20 年にわたり、Unity はデザイナー、開発者、アーティストやエンジニア、パブリッシャーおよびプラットフォームの皆様と、誰もが、あらゆるユーザーのために素晴らしいゲームを作れる世界を築いてまいりました。私たちはこれを「ゲーム開発の民主化」と呼んでおり、それは今日においても Unity のコアミッションであり続けています。
しかし、お客様と対立する形をとってまでそのミッションを追求するべきではなく、信頼に基づいたパートナーシップこそが、本来の優先事項であるからです。この 3 か月、多くのユーザーから強い Unity であってほしいという声や、価格の引き上げはゲームの発展を促進するために必要だ、などのご意見をたびたび頂戴しました。しかし、こうした価格の引き上げは物議を醸すような奇抜な形で実施されるべきものではありません。Unity は、適正な価格と正しい方法で価値を提供することで、今後も皆様に安心して製品をご利用いただけるパートナーであり続け、皆様の長期的なビジネス構築をお手伝いしていきたいと考えております。また、皆様との良好なパートナーシップを維持し、今後も優れたソフトウェアとサービスを提供していくことにより、皆様と共に達成できる成果は、これまでにも増して大きなものになっていくと確信しています。
このような理由から、ゲームのお客様の料金体系を従来のシートベースのサブスクリプションモデルに戻すことを決定いたしました。この変更の対象は、高いパフォーマンスと安定性を備えた Unity 6(年内リリース予定)ユーザーも含まれます。」
変更内容は以下のとおりです。
- Unity Personal:昨年発表したとおり、Unity Personalは引き続き無料でご利用いただけます。これまで設定されていた総収益および調達金額の上限を現在の 10 万米ドルから倍の 20 万米ドルに引き上げます。これにより、より多くの方に Unity を無料でご利用いただけるようになります。また、年内に予定されている Unity 6 のリリースをもって、Unity Personal で開発されたゲームでの「Made with Unity」スプラッシュスクリーンの使用は任意となります。
- Unity Pro と Unity Enterprise:2025 年 1 月 1 日より、サブスクリプション価格、年間の総収益および調達金額のしきい値が変更されます。これらの変更は、2025 年 1 月 1 日以降に新規、または既存の Unity Pro および Unity Enterprise のお客様が、サブスクリプションを購入・アップグレード・更新した際に適用されます。
- Unity Pro:Unity Pro ライセンスは、8% の価格引き上げが適用され、シートあたり年間 2,200 米ドルとなります。※ 年間の総収益および調達金額が 20 万米ドルを超えるお客様につきましては、Unity Pro のご利用が必須となります。
- Unity Enterprise:Unity Enterprise ライセンスは、25% の価格引き上げが適用されます。※米ドル価格の場合。年間の総収益および調達金額が 2,500 万米ドルを超えるお客様につきましては、Unity Enterprise のご利用が必須となります。また、サブスクリプションの最低購入数が適用される場合がございます。このライセンスは最も多くのお客様にご利用いただいていますが、各お客様が独自のニーズをお持ちで、Unity の製品やサービスを多数ご利用いただいているため、今後すべてのお客様にご連絡をし、カスタマイズされたパッケージについてご相談させていただく予定です。
以下が主な変更点をまとめた表となります。
プラン | 変更点 | 現在 | 変更後 |
---|---|---|---|
Unity Personal | 総収益および調達金額の上限 | 10 万米ドル | 20 万米ドル |
Unity Pro | 価格 | シートあたり年間 2,040 米ドル | シートあたり年間 2,200 米ドル (8% の価格引き上げ) |
Unity Enterprise | 価格 | カスタム価格 | カスタム価格 (25% の価格引き上げ) |
今後、Unity はより慣習的なサイクルで、年に一度の価格改定の可能性を検討していくとしています。今後、エディターソフトウェアの利用条件の変更に対し、お客様からのご同意をいただけない場合は、ご利用中の Unity バージョンとその利用規約を継続して利用することができるとのことです。
今回の発表は以上となっています。最後の毎年の価格改定を検討するという不穏な発言は少し気になりますが、値上げは行われるものの Runtime Fee の撤回自体は開発者にとっては良かったのではないでしょうか。
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