2024年8月26日(現地時間)- 8月にBlender HQで開催された ビデオシーケンサーエディター(VSE – Video Sequence Editor)ワークショップの内容が共有されました。ここではその内容を紹介したいと思います。
VSEワークショップについて
このワークショップは、はBlenderのDalai Felinto氏、Falk David氏、Sergey Sharybin氏、そしてBlender 4.1 と 4.2 の VSE の機能と改善に貢献してきた Aras Pranckevičius 氏で行われ、すでに開発中のもの、近々取り組む予定のもの、実現したいがいつ誰がやるかわからないものなどVSEに関する様々なトピックが議論されました。
前回のVSEワークショップは2年前に開催されました。この時からVSEの機能の全体的な設計や希望は変わっていませんが、現在の貢献者の数では、「これらのタスクは数ヶ月で 完了する」というのは楽観的すぎで、当初予想していたよりもタスクの完了に時間がかかるとされており、より多くの貢献者を募集しています。
このワークショップの一部は、誰かが「すぐに」実際に行うであろうという明確な考えを持つタスクについて議論するもので、他の部分についてはタイムラインがまだ不明確となっています。
全体的な目標
VSEはストーリーを語るためのツールです。理想的には、以下のようなツールであることが目標とされています。
- レイアウト作業、ストーリーボード(絵コンテ)作成、グリースペンシルによる注釈をシーケンサースペースから直接行うことできる
- セカンダリーウィンドウを持つ必要なし、専用の3Dビューポートも必要なし、余分なクリックも必要なし。
- タイムラインと、強力なツールによるプレビューがあるのみ
「複数のビデオクリップからビデオを組み立てる」ことは、Blenderで可能ですが、第一の目標ではありません。グリースペンシルやシーンストリップを使ったVSEインタラクションや、すべてが同じアプリケーション内にあることは、Blenderを他のビデオ編集アプリケーションと一線を画すものとなります。
問題点
以上が全体的なアイデアですが、これを洗練して実現するには多くの作業が必要です。
大きな問題の1つは、Blenderはアプリケーション全体で1つのシーン(「現在のシーン(current scene)」)を表示できますが、VSEデータはシーン内に存在するということです!つまり、VSEのタイムラインを編集することと、(シーンストリップが使用する)あるシーンを同時に編集することはできないということです。「Developing Grease Pencil at the SPA Studios」BCON22の講演は、この問題を解決するために人々がどのようにアプローチしているかの一例です。
上記の問題に対処するため、Falk氏はいくつかの可能な解決策を提示しました。
- 何もせず、ただ2つのBlenderインスタンスを編集に使う。長所:今日から可能。短所:その他すべて。
- VSE のタイムラインウィンドウ内で 「scene override」 を持つ。難しいことではありませんが、少しハックする必要があり、違和感があるかもしれません。
- VSEタイムラインをシーンの外に移動し、「Movie 」または 「Sequence 」と呼ばれるオブジェクトに移動する。これは広範囲に影響し、大きなプロジェクトになります。この新しい最上位のオブジェクトは、おそらく、レンダリング設定をシーンからオブジェクトに移動させる必要があるでしょう。
- アクティブストリップ(active strip)」をより目立つ機能とし、すべてのストリッププロパティを通常のプロパティウィンドウの一部に移動させる。
上記の中で大きなアイデアの1つは、VSEをシーンの外に移動し、「Movie 」オブジェクトかそれに似たものにすることでした。これらのアプローチの長所と短所について議論が行われ、簡単なプロトタイプが作成されました。最終的なデザインは決定されませんでしたが、今後チームで検討される予定です。
詳細はフォーラムのスレッドを参照してください。
パフォーマンスについて
どのような製品であれ、ほとんどの領域で歓迎されるのは、より高いパフォーマンスです。VSEも例外ではありません。
Blender Studioでは、最大の問題はプレビューのパフォーマンスと、毎日の 「playblast」(完全なムービーではなく、ミーティングのステータスアップデートのための一部分)のレンダリングにかかる時間です。
パフォーマンスの向上は技術的な最適化作業になるかもしれませんが、そのほとんどはデザインの決定やワークフローの変更を必要としないという意味では 「簡単 」 なものとされています。物事が「ただ速く」なれば、誰にとってもメリットがあります。
議論された主な内容は以下の通り:
- ffmpeg関連のビット:新しいムービークリップの再生開始時のストールの削減、GPUアクセラレーションなど
- CPU SIMDの最適化
- VSE内でのGPU使用
- プロキシ、キャッシュ、プレビュー領域での一般的な高速再生
- シーンストリップの最適化
全体として、第一の目標はプレビュー(再生、スクラブ)をよりスムーズにすることであり、第二の目標はレンダリングを高速化することです。
詳しくはフォーラムのスレッドを参照してください。
まとめ
その他、ノード、テキストの改善、厳密に型付けされたチャンネル(strongly typed channels)など、様々な機能や改善について議論されました。
前回のワークショップで概要がまとめられた機能の多く(専用のカラーグレーディングエディター、メディアビン、インタラクティブなファイルプレビュー)は、明確には語られませんでしたが、まだ欲しい機能であることには変わりありません。
しかし、現実的には、VSEに積極的に取り組んでいる人々の数からすると、上記のすべてを実現することさえ「いつになるかわからない」状態です。
VSEは Blender 4.1 と4.2で改善されており、今後もこのペースを維持したいと考えられています。そのため、より多くの貢献者を必要としており、手伝いたい人は #sequencerチャットチャンネルに連絡してほしいとのことです。
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