Adobe、ユーザーの懸念によりAdobe製品の利用規約を再び更新へ

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2024年6月10日(現地時間)- Adobe は、最近の利用規約の更新対するユーザーの懸念を受けて再び利用規約を更新することを発表しました。

騒動の経緯

この一連の騒動は、最近のAdobeの利用規約の更新の同意を求める文書から始まりました。順を追って説明したいと思います。

利用規約の更新

ソフトウェアおよびサービスの使用に関して、アドビの一般利用条件に以下の変更を加えました:

  • コンテンツのレビューなど、自動および手動の両方の方法でお客様のコンテンツにアクセスする場合があることを明確にしました(第2.2項および第4.1項)。
  • アクティブでないアカウントのコンテンツを削除する当社の権利を修正(第5.3項)
  • 紛争を非公式に解決する期間を60日から30日に更新(第14.1項)

このウィンドウを閉じると、アドビのアプリケーションおよびサービスを引き続き使用できなくなります。「同意して続行する」をクリックすると、利用規約を読み、同意したことになります。

問題となった部分は、『コンテンツのレビューなど、自動および手動の両方の方法でお客様のコンテンツにアクセスする場合があることを明確にしました(第2.2項および第4.1項)。』の部分です。これにより、多くの世界中のユーザーが自分のコンテンツを勝手に見られるという懸念を抱き、これが今回の騒動の発端となりました。

そして、この問題はさらに拡大します。疑念が抱いたユーザーが利用規約を確認したところ『さらにヤバいこと書いてある!』となったのです。問題となっているのは以下の第4.2項の規約です。

4.2 お客様の本コンテンツに対するライセンス お客様は、当社に対し、本サービスおよび本ソフトウェアの運用または改善の目的に限り、本コンテンツの使用、複製、公開、配布、変更、二次的著作物の作成、公開、および翻訳を行うための非独占的、世界的、ロイヤリティフリー、サブライセンス可能なライセンスを付与するものとします。例えば、当社は、他のユーザーとの写真の共有など、本サービスおよび本ソフトウェアで意図された動作を実現するために、本コンテンツに対する当社の権利をサービスプロバイダーや他のユーザーにサブライセンスすることがあります。これとは別に、以下の第4.6(フィードバック)では、お客様が当社に提供するフィードバックについて規定しています。

※「本コンテンツ」とは、お客様が本サービスおよび本ソフトウェアにアップロードし、読み込み、使用できるように埋め込み、または本サービスおよび本ソフトウェアを使用して作成するあらゆるテキスト、情報、コミュニケーション、または素材(例えば、オーディオファイル、ビデオファイル、電子文書、画像)を意味します。(第4.1項)

利用規約ページへ

つまり、Adobeはユーザーが作成したもののライセンスを所有していてそれを他のユーザーにサブライセンスすることができるというものです。サービスとソフトウェアの運用または改善の目的という制限はありますが、その内容も不明確であり、昨今の生成AIのトレーニングにおける作品の無断使用の問題とも相まって、Adobe Fireflyのモデルのトレーニングに自分のコンテンツを勝手に使われるのではないかという不安を抱くには十分な内容となっています。

これに対して、6月6日(現地時間) Adobe は規約を明確にするために更新を行いました。

しかし、これがさらに火に油を注ぐ結果となりました。上記のポストにつけられているコミュニティノートからもわかるように、第4.2項の規約にはノータッチであったためです。これに激怒してAdobeの解約をするユーザーが現れたり、Adobeの代替ツールの一覧が出回るまでの騒ぎになっています。

Adobe製品の利用規約を再び更新へ

この大きく発展した問題に対して6月10日再びAdobeが動き、再び利用規約を変更することを発表しました。

Adobeは、今後数日間にわたりユーザーに説明しながら2024年6月18日までに最新の変更を適用する予定としています。

以下、Adobeの最新の利用規約に関する発表の内容となります。

アドビでは、私たちの姿勢、お客様に対するコミットメント、そしてこの領域で責任を持ってイノベーションを行うことに、あいまいさはありません。顧客のコンテンツに生成AIをトレーニングしたことも、顧客の作品の所有権を取得したことも、法的要件を超えた顧客コンテンツへのアクセスを許可したこともありません。また、最近の利用規約の更新の一環として、そのような慣行を検討したこともありません。とはいえ、私たちのコミュニティに対するコミットメントを反映させるために利用規約を進化させることは、正しいことであることに同意します。

来週、利用規約を更新する際に、私たちが明確にする重要な部分については、以下をお読みください。

利用規約で明確にする部分

  • コンテンツの所有権はお客様にあります。あなたのコンテンツはあなたのものであり、いかなる生成AIツールのトレーニングにも使用されることはありません。アドビにサービスを運営するために付与されたライセンスは、あなたの所有権に取って代わるものではないことを、ライセンス付与のセクションで明確にします。
  • 私たちは、お客様のコンテンツで生成AIをトレーニングすることはありません。私たちは、これがアドビの法的義務であることを安心していただくために、この記述を利用規約に追加します。Adobe Fireflyは、Adobe Stockなどの許可を得たライセンスコンテンツと、著作権が失効したパブリックドメインコンテンツのデータセットでのみ学習されます。
  • 当社の製品改善プログラムに参加しないという選択肢もあります。当社は、機械学習(生成AIではありません)を含む技術により、お客様の製品体験を向上させ、マスキングや背景除去などの機能を開発するために、使用データとコンテンツの特性を使用することがあります。お客様には、当社のデスクトップ製品改善プログラムを拒否する選択肢が常にあります。
  • 当社がお客様に代わって当社製品を操作し、改善するために必要なライセンスは、必要とされる行為に限定されるべきです。お客様に代わって当社製品を操作するために必要なライセンスは、標準的な法定著作権を使用しますが、今後はその意味と必要な理由を分かりやすく例示します。また、当社製品の改良に必要なライセンスを分離してさらに制限し、オプトアウトオプションを強調します。これらのライセンス付与は、いかなる場合においても、お客様のコンテンツの所有権をアドビに譲渡するものではないことを再度明記します。
  • Adobe は、お客様のコンピューターにローカルに保存されているコンテンツをスキャンすることは一切ありません。お客様が当社のサーバーにアップロードしたコンテンツについては、他のすべてのコンテンツ ホスティング プラットフォームと同様に、Adobe はお客様が当社のサービスにアップロードしたコンテンツを自動的にスキャンし、児童性的虐待コンテンツ (CSAM) を保管していないことを確認します。自動化されたシステムで問題があると判断された場合、人間が調査を行います。人間がお客様のコンテンツを確認するその他の唯一のケースは、それが公共のサイトに掲載されている場合、または法律を遵守するために、お客様の要求があった場合(サポートリクエストによる)だけです。

最後に、ここ数日間、多くのお客様との会話から学んだことを共有したいと思います。

  • 第一に、私たちはもっと早く利用規約を近代化すべきでした。テクノロジーが進化するにつれて、私たちは日常業務だけでなく、私たちの法的要件を積極的に絞り込み、わかりやすい言葉で説明する方法で、私たちのポリシーと慣行を進化させる法的言語を進化させなければなりません。
  • 第二に、クリエイターのためのコンテンツをホストするプラットフォームとして、私たちにはクリエイターが直面する現代の課題を反映した利用規約を作成する機会を得ているということです。

自分のデータがどのように使用され、どのように生成AIモデルが訓練されるのかについて顧客が不安を抱く世界では、顧客データやコンテンツをホストする企業の責任として、そのポリシーを公開するだけでなく、法的拘束力のある利用規約で宣言する必要があります。

私たちが来週発表する予定の最新の利用規約は、より正確で、私たちが現在および近い将来に行う必要があるとわかっている活動のみに限定され、よりわかりやすい言葉と例を用いて、利用規約の意味と私たちが利用規約を定める理由をお客様に理解していただけるようにします。

利用規約の他にも、Content Credentials(クリエイターの帰属表示、コンテンツの出所表示、オンラインで共有される画像への「Do not train」タグの追加を可能にする)や、コンテンツクリエイターをなりすましから保護するFAIR法のような取り組みを進めるなど、この新しい時代に顧客を保護する方法を革新し続けることを約束します。

私たちは、信頼は獲得されなければならないと認識しています。皆様からのフィードバックに感謝し、今週、私たちのコミュニティで多くのお客様とつながり、私たちのアプローチとこれらの変更について話し合い、これからの時代においてクリエイターにとって信頼されるパートナーになることを決意しています。そのために、たゆまぬ努力を続けてまいります。

とのことです。

好意的に見れば、多くのコンテンツを所有して他社に対してアドバンテージがあり、FAIR法などクリエイターを保護する取り組みを行っているAdobeが、リスクを冒してユーザのコンテンツを勝手に生成AIのトレーニングに使用するという半ば違法的な行為を意図して今回の発端となった利用規約の更新や問題となった規約を作成したとは考え難いように思います。

今回の発表に示されたとおり、疑念を抱く恐れがある部分を明確化することで一定の疑念は拭うことができるかと思います。しかし、生成AIモデル自体がブラックボックス化されており、検証ができないということもあり、今後もこういった疑念は残り続けるのでしょう。

最新の発表の原文はこちらから(Updating Adobe’s Terms of Use)

利用規約が更新

更新された利用規約(英語)はこちらから

説明動画が公開されています。

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