2024年2月29日(現地時間)- Ragdoll Dynamics は、アニメーションのためのリアルタイム物理ソルバー『Ragdoll for Blender 』を正式にリリースしました。
Ragdoll とは
Ragdollは、元々Autodesk Maya用に作られたアニメーター向けのリアルタイム物理ソルバーです。2月の初めから始まった早期アクセス期間を経て、この度Blenderに正式にサポートしました。
2021年にアニメーター/プログラマーの Marcus Ottosson氏によって開発が開始されて以来、Ragdollは、以下のような世界中の大手のVFXスタジオや、AAAやインディーズゲームスタジオで採用されています。
- Weta ( AvatarやPlanet of the Apesなど)
- Double Negative(Furious Xなど)
- Framestore (Harry Potterなど)
- Imageworks (Spiderverse など)
- Digital Domain(Tron Legacyなど)
- Kojima Productions(Death Stranding)
- CD Projekt Red(Cyberpunk 2077など)
- Deck Nine Games(Life is Strangeなど)
- などなど
ここ数年の間に映画館に足を運んだことがある人なら、ラグドールを使ったアニメーションを目にしたことがあるはずです。
Ragdollを選ぶ理由
キャラクターアニメーションは難しいです。コンピューターやソフトウェアを理解するという技術的な壁があり、それだけでも大変なのに、ストーリーを伝えるための芸術的な選択も必要になります。ポーズもあればタイミングもある。さらに、勢いやコンタクト、重量感も必要です。
ですが、重要なことではあると同時に退屈なことでもあります。
観客は勢いやコンタクトのようなものに対して敏感な目を持っています。それは正しいか間違っているかのどちらかに感じられる。そして、アニメーターとして、それを正しく表現するのは非常に難しいことです。
そこでRagdollが役に立ちます。
アニメーションとは、無生物に生命を吹き込むことですが、同時に生命を感じさせないことでもあります。それは様々な領域(spectrum)に及ぶことであり、Ragdollはその大部分をほとんど一人で処理することができます。
どのように機能するか
Ragdollはアニメーションをモニターし、物理学に任せた場合のプレビューを提供します。
上の動画では、青いキャラクターがもとのアニメーションで、カラフルな方がシミュレーション版の「ガイド」です。
上の動画はさらに複雑な例となります。注目すべき点は:
- サイのアニメーションがループしていること
- 接触がすべてラグドールによって処理されていること
- アニメーションのシンプルさ
- シミュレーションがいかにアニメーションに近いか
です。
以上のように、「Ragdoll」は、アニメーターがリアルタイムで物理演算を制御し、キャラクターのリグにリアルな二次モーションを生成するためのツールです。これにより、アニメーターは、機械的な組み立てから布、髪、筋肉まで、ビューポート内でリアルタイムの物理演算を直接操作できます。
パフォーマンスについて
BlenderのRagdollはMayaに比べて0.6倍のパフォーマンスで動作します。Mayaのプラグインが完全にコンパイル言語で書かれているのに対して、アドオンの多くがPythonで書かれていることを考えると、期待していたよりもはるかに高いパフォーマンスとされています。
Blenderのネイティブ物理演算と比較すると、RagdollはBlenderよりも多くのことを行うため、比較は難しくなりますが、共通するサブステップの多いオブジェクトの一般的なシミュレーションでは、Ragdollはより安定しており(爆発が少ない)、より正確です(自動的に計算される質量と重心)。
上の動画では、ラグドールはネイティブのBlenderの物理演算よりも約30%高速に動作します。
とはいえ、このシーンではオブジェクトの相互干渉が激しいので、Split Impulseを有効にしています(ラグドールも似たようなことをします)。これがない場合、Blenderは交差の処理に苦労しますが、Ragdollより10倍速いオーダーではるかに速く動作します。
この点を考慮すると、Blenderのネイティブの物理演算は、建物の破壊などのような疎なオブジェクトの大きなシーンに適していると言えます。
Maya版との比較
以下のようにMaya用のRagdollを引き継ぐ部分と引き継がない部分があります。
機能 | 対応状況 | 注記 |
---|---|---|
Solver | ✔️ | |
Marker | ✔️ | |
Group | ✔️ | |
Manipulator | ✔️ | |
Live Mode | ✔️ | |
Constraints | ✔️ | |
Export Physics | ✔️ | |
Load Physics | ✔️ | |
Record Simulation | ✔️ | |
Retargeting | ✔️ | |
Licencing | ✔️ | |
Collision Group | ❌ | ただし、代わりにマーカーの Overlap Group を使用することもできます。 |
Force Fields | ❌ | Coming Soon ™ |
Snap to Simulation | ✔️ | |
Import Physics | ❌ | |
Export Physics | ✔️ | |
Update Physics | ❌ |
その他詳しい情報はこちらから
インストールについて
Ragdollは、BlenderアドオンとRagdoll Coreに分かれており、Ragdoll の利点を活用するには両方をインストールする必要があります。Blenderアドオンは通常のアドオンと同様にインストールが可能で、 Core インストーラーは.msi
ダブルクリックして実行する Windows ファイルとなっています。
ダウンロードはこちらから
また、Blender アドオンとRagdoll 専用に開発されたライブラリ bpx
は MIT ライセンスでGithubからも利用可能です。
使用について
アドオンが有効になると、Blender UI にいくつかの新しい要素が表示されます。
- シーンにRagdoll ソルバーが含まれていると、このアイコンを使用してインタラクティブに操作できるようになります。
- 整理しやすいように、すべての新しいRagdoll オブジェクトがこのグループに分類されます。
- Ragdoll シミュレーションを制御するプロパティはすべてこのタブに表示されます。
- Ragdoll のすべてへのアクセスポイントです。
- (検索パネルを使用してすべてのラグドール オペレーターを検索することもできます)
次の動画では、こちらで公開されているBlenderStudioのリグを使用したRagdollの使用方法を確認できます。
価格とシステム要件
Ragdollはすべてのプラットフォームのユーザーに提供することが目標とされていますが、MacOS版です。これは、最近ビューポートのレンダリングが Metal に移行したためです。Ragdoll は元々 OpenGL と DirectX をサポートして構築されており、Metal 用にやり直すには少し時間がかかるとされています。
Blender | Windows | Linux | macOS |
---|---|---|---|
3.4 | ✔️ | ✔️ | ❌ |
3.5 | ✔️ | ✔️ | ❌ |
3.6 | ✔️ | ✔️ | ❌ |
4.0 | ✔️ | ✔️ | ❌ |
価格は以下の通りです。
- Freelancer – 199ドル(永久ライセンス、商用、フル版、1年間のアップデート)
- Personal – 99ドル(永久ライセンス、非商用、制限あり、永久無料アップデート)
- Studio – 79ドル/月~
- 30日無料体験版
すでにMaya版のライセンスを所有している場合、Blender 版も利用できます。
また、早期アクセス終了後、このアドオンはBlendermarketから購入できるようになる予定とされていましたが、今のところまだないようです。
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