2024年1月22日(現地時間)に Blender Studio のブログ で共有されたリトポロジーツールの紹介です。
以下では、 Blender Studioが映画制作でリトポロジープロセスをスピードアップするために作成したツールとその使い方を紹介したいと思います。
ツールの目標
まず、このツールは次のようなタイプのリトポロジに焦点が当てられています。
- 細分化(サブディビジョン)を使用したオフラインレンダリング
- 均等に配置されたクワッド(四角形)のトポロジー
- 有機的な変形
- 戦略的に配置されたループと頂点
詳細については、Blender Conference 2022のプレゼンに関するこちらの記事をご覧ください。
このツールは、他のリトポロジーの形態(例えば、より具体的で静的なサブディビジョントポロジーや リアルタイムレンダリングの三角形トポロジー、非常に一般的な背景アセットなど)でも使うことができる場合もありますが、あまり重要視されていません。
重要とされているのは、アーティストが重要なループの配置に集中できるようにし、他のすべてのトポロジーを自動的に分散させることとされており、これは以下の機能で解決されます:
- エッジループを固定し、その形状を滑らかにしない(頂点はエッジループに沿ってスライドしたまま)。
- 頂点をピン留めして、その位置を滑らかにしない。
- ピン留めされたエッジに追加の “Proximity Loops(近接ループ)”をマークする( 両側のループも自動的にピン留め )。
- メッシュ境界は自動的にエッジループとしてピン留め。
- メッシュ境界の角は自動的に頂点として固定。
- モディファイアまたはメニューツールを使用して、固定されていないジオメトリをすべてリラックス。
次の動画は、以上の機能などを紹介したリトポロジーモディファイアのデモとなります。(フル版はこちら)
一般的にメッシュをリラックスさせるには、スカルプトモードでリラックスブラシ、または入念なスムージングやシュリンクラッピングを使用しますが、この新しい方法はより直感的となっています。
使い方
ノードツールは retopo_tools.zipからダウンロードできます。使用するには、これらをアセットライブラリに追加してください。
https://cginterest.com/2023/10/06/blender-4-0-%e3%81%ae%e6%96%b0%e6%a9%9f%e8%83%bd%e3%83%8e%e3%83%bc%e3%83%89%e3%83%84%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%ef%bc%81/
ノードツールは編集モードのヘッダー メニューとモディファイアリストに表示されます。
- 「GN-visualize_mesh_pinning」モディファイアをオブジェクトに追加すると、固定されたジオメトリが表示されます。今のところ、開いているメッシュ境界だけが自動的に固定され、青く表示されます。Visualizeモディファイアのサイズスライダをお好みで微調整してください。
- 「GN-relax_mesh_around_pins」モディファイアは、”pinned (固定)”されていないジオメトリをリラックスさせるもので、Visualizeモディファイアの前に置く必要があります。
- Iteration:デフォルトの10 Iterationsで十分な結果が得られるはずです。この値を調整すると、リラックス効果が強くなりますが、速度も遅くなります。
- Methods:Methodsの値は、一般的なスムージングの動作を変更します。これはまだテスト中です。
- Proximity Level:「Proximity Level(近接レベル)」を1にするオプションもあります。サブディビジョンサーフェスでクリース(折り目)を保持するのにとても便利です。
エッジメニュー ( Ctrl E
) メニューと頂点メニュー ( Ctrl V
)を使って、選択した頂点とエッジを固定することができます。これらはVisualizeモディファイアでマゼンタ色に表示されます。
また、メニューから選択範囲にリラックスを使用することもできます。これはメッシュ(Mesh)メニューにあり、ショートカットやクイックお気に入りに追加して素早くアクセスすることも可能です。
BlenderStudioの記事では、Project Goldでこのツールがどのように使われたかが紹介されています。
残された問題
この記事のツールはまだプロトタイプあるいは、より大きな機能のためのproof of concept(概念実証)とされており、まだ問題があります。
そのひとつが、属性補間(Attribute interpolation)です。現在、新しく作成されたジオメトリに属性を渡さないようにする方法はありません。そのため、2つの頂点が固定されていると、ループカットを行う際に、その間の頂点も固定されてしまいます。理想的ではないので、ピン留めされた頂点を後から追加するのがオススメです。
また、カスタム属性用のオーバーレイもありません。これがVisualizeモディファイアが存在する理由であり、Seamsのような他のネイティブ属性を使用してエッジループを視覚化し、再選択するのが望ましい理由でもあります。重要なのは、モディファイアの可視性がオーバーレイのトグルや編集モードとは別にあるということです。ジオメトリを非表示にしたり、モードを切り替えたりするときに少し煩わしくなります。
リラックス動作にも問題があります。そのため、さまざまな方法のオプションがあり、Advanced “Pin Loop Ends “があります。完璧に動作しない場合は、トラブルシューティングが必要です。
そして最後に、ワークフローが限られていることが挙げられます。モディファイアを常に有効にしておくことは可能ですが、これはジッタリングやジオメトリの狂いを引き起こしやすくなります。理想的なのは、固定されたループと頂点の配置だけが対象となるように、リラックスが選択的に自動的に適用されることですが、それはまだ不可能です。
ダウンロード
このツールはまだプロトタイプであり、もっと洗練する必要がありますが、現状でもプロダクションで使用することは可能とのことです。
ノードツールのダウロードはこちらから
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