2023年9月6日 – Epic Games は Unreal Engine 5.3 のリリースを発表しました。
新機能ハイライト
このリリースでは、幅広い多数の改善が加えられ、コアとなるレンダリング、デベロッパー向けイテレーション、およびバーチャル プロダクション ツールセットに加え、レンダリング、アニメーション、シミュレーションの実験的な新機能も導入されています。EpicGames japanから機能ハイライト動画が公開されています。
UE5 のコアレンダリング機能の改良
このリリースでは、継続的な目標である、次世代コンソールで 60 fps で稼働するゲームにおいてデベロッパーが高品質でその機能を活用できるようにすることを目指しています。
Nanite では、フォリッジなどのマスクされたマテリアルのパフォーマンスが向上し、新しい [Explicit Tangents (明示的接線)] オプションによってより広範囲のサーフェスを表現できるようになりました。
また、ハードウェアレイ トレーシングを備えたLumen は、複数の反射バウンスなど、拡張された機能を持つようになり、コンソール上でのパフォーマンスがより高速になりました。
その他の新機能としては、プロダクションに対応可能になった 仮想シャドウ マップ (VSM)、テンポラル スーパー解像度 (TSR)、ヘア グルーム、パス トレーシング、Substrate があります。
映画品質のボリュメトリック レンダリング(実験的)
2 つの新機能、スパース ボリューム テクスチャ (SVT) と異種ボリュームのパス トレースによって煙や火などのボリュメトリック エフェクト用に多くの新機能が導入されました。
SVT には、煙、炎、水など、ボリュメトリック メディアを表すベイクされたシミュレーション データが格納されています。SVT は、他の 3D アプリケーションで作成された OpenVDB (.vdb
) ファイルをインポートすることで作成でき、単一ファイルやアニメートされたシーケンスがサポートされています。さらに、Niagara Fluids は、SVT に対して内部でキャッシュされるようになり、パフォーマンスとメモリが大幅に改善されました。
さらに、パス トレーサーの実験的機能として、より完全なボリュームのレンダリングのサポートが利用可能になりました。これによって、UE5 で直接制作される、シネマティック、映画、エピソード形式のテレビ、その他のリニア コンテンツ制作にグローバル イルミネーション、シャドウ、散乱など、高品質なボリューメトリック レンダリングが可能となりました。
ゲームやバーチャル プロダクションなど、リアルタイムのユースケースでは、ボリュメトリック要素の再生のために SVT で実験的機能を開始することもできます。ただし、パフォーマンスは現時点では制限されており、コンテンツに大きく依存します。
正投影レンダリング(実験的)
正投影(Orthographic)レンダリングは、建築や製造業でプロジェクトを視覚化するための非常に一般的な方法であり、ゲームでもスタイル的なカメラ選択として使用されています。UE のカメラ オプションとして長い間使用可能でしたが、多くのレンダリング機能がサポートされていなかったため、実用的ではありませんでした。
5.3 から、オルソグラフィック レンダリングが Experimental としてサポートされるようになりました。パースペクティブ投影とオルソグラフィック投影の間のパリティを達成するために、エンジンの複数の領域が修正されました。Lumen、Nanite、Shadows、TSR など、UE5 のほとんどの最新機能が動作するようになりました。
スケルタル エディタ(実験的)
新しいスケルタル エディタにより、アニメーターはスケルタルメッシュの作業で、スキンウェイトをペイントするツールなどさまざまなツールを使用できるようになります。DCC アプリケーションとの間を行ったり来たりすることなく、より多くのキャラクター ワークフローを Unreal Editor 内で完結することが可能となります。
現在以下のことが可能です。
- スタティックメッシュのスケルタルメッシュへの変換
- スケルトンの作成と編集
- ボーンの追加
- ボーンの削除
- ボーンの方向の変更とボーンの編集
- ボーンのミラーリング
- スキン ウェイトの作成
- ペイント ウェイト ブラシ ツール
- 頂点選択でのウェイトの編集
- フラッド / 緩和 / プルーン / 平均 / 正規化操作
- ミラー ウェイト
- マップのペイント
- ボーンとウェイトに対する Python API のサポート
ML シミュレーションを備えたパネルベースの Chaos クロス(実験的)
新しく Panel Cloth Editor とスキン ウェイト転送アルゴリズムの導入、エンジンでの将来のクロス生成の基礎として XPBD (Extended Position-Based Dynamics) コンストレイントの追加が行われました。これにより、速度と精度をトレードオフ可能な非破壊的クロス シミュレーション ワークフローを実現できます。さらに、パネルベースのクロスにより、見栄えの良いシミュレーションを実現できます。
また、新しい Panel Cloth Editor と ML デフォーマー エディタを併用することで、クロスをシミュレートしてエンジンにキャッシュできるようにもなりました。
プロシージャル コンテンツ生成 (PCG)
5.2で追加されたPCGにも階層生成、外部データからのルールの処理などの新機能が追加されています。
階層生成
では、同じ PCG グラフ内でのさまざまなグリッド サイズの実行が可能になります。
PCGグラフの設定でデフォルトのグリッドサイズを設定した後、Grid Size ノードの追加を開始して、ダウンストリーム要素が実行される場所での粒度を定義できます。大きいグリッド サイズで処理されたデータは、より小さなレベルで使用できます。この階層的なロジックを使用すると、特にランタイム時に大規模なワールドで、ユーザーはより最適なプロシージャル生成を実現できます。
外部データからのルール処理は、City Sample プロジェクトの Rule Processor プラグインと同等の機能を提供し、外部データの管理、処理、ターゲット アクタでのアーティファクトの生成を行います。
これには以下が含まれます:
- Alembic点群およびデータテーブルの外部データサポート
- AlembicファイルをPCG設定アセットに変換するユーティリティ
モデリング
モデリング モードのツールセットの開発も引き続き行われています。UE 5.3 では、スプラインを使用する新しいツールに加えて、リクエストされている拡張機能がツールセットに追加されました。他にもUV ツール (ベータ)やワークフローの改善も行われています。
■モデリング ツール (ベータ版)
UE 5.3 では、スプラインを使用する新しいツールに加え、要望の多かった機能強化がツールセットに追加されました。新しい要素選択ワークフローは、一連の新しいツールでもサポートされています。
- スプラインツール:クリエイターが新しいスプラインを描画し、リボルブやフラットメッシュ操作に使用できる新しいツールを作成メニューに追加しました。
- 要素選択ツール:要素選択ワークフローでは、選択範囲を直接操作するツールの新しいメニューを活用できるようになりました。パレットには、押し出し、ベベル、オフセット、インセット、ループ挿入などの一般的なツールが含まれています。また、ポリグループやトライアングル編集にも素早くアクセスできます。
- LODサポート:ベイクトランスフォーム(Bake Transform)ツールとピボット編集(Edit Pivot)ツールは、オプションですべてのLODを新しいトランスフォームまたはピボットで更新できるようになりました。
- 頂点カラーペイント:頂点カラーをペイントする新しいツールが追加されました。この新しいツールは、複数または特定のチャンネルに色をペイント、塗りつぶし、ブレンドすることができます。
- その他の改善:法線の編集(Edit Normals)、ウェルド(Weld)、テクスチャのベイク(Bake Texture)、ポリグループの生成(Generate PolyGroups)が改良されました。
UV は、最終的なレンダリングのためだけでなく、レベル デザインの重要な部分として、メッシュを扱う際に非常に重要な要素です。UE 5.3 では、UV エディタに 2 つの重要な新機能が追加されました。
- UV エディタのディストーション(歪み)表示:UV エディタ(UV Editor)に、ディストーションのオプション表示モードが追加されました。これにより、テクセル ストレッチまたは密度のレベルをインタラクティブに表示できます。
- UVオートレイアウト:このツールは、テクセル密度の正規化をサポートするようになりました。このオプションは、レイアウト全体の平均密度を一定に保つために、個々のアイランドのサイズ変更を試みます。
マルチプロセス クック(ベータ)
マルチプロセス クック を使用すると、コンテンツを内部 UE 形式からプラットフォーム固有の形式に変換するときに使用可能な CPU コアおよびメモリのリソースを利用することで、ビルド ファーム サーバーまたはローカル ワークステーションからクックされた出力を取得するのにかかる合計時間を大幅に短縮できます。
Cine Cam Rig Rail
新しい Cine Cam Rig Rail アクタで、トラックや台車に沿って動く従来のカメラの動きのワークフローと結果をエミュレートできるようになりました。
新しい Cine Cam Rig Rail アクタを使用すると、カメラの回転、焦点距離、焦点距離などの設定を振り付ける機能など、パスに沿ったさまざまなコントロール ポイントで既存の Rig Rail よりも洗練されたコントロールが可能となります。エディタ内と VCam ワークフローの両方がサポートされます。
VCam の機能強化
このリリースのVCam システムには、iPad 上でテイクを直接レビューすることによってイテレーションを高速化する機能、さまざまなチーム メンバーにさまざまな VCam 出力を同時にストリーミングすることで共同での VCam 撮影を促進する機能 (たとえば、ディレクターではなく、カメラのオペレーターのカメラ コントロールで)、遅いフレーム レートでレコーディングして通常の速度で再生することによって動きの速いアクションを簡単にキャプチャする機能など多くの機能強化が行われました。
SMPTE ST 2110 の nDisplay サポート(実験的)
次世代の LED プロダクション ステージに備えるため、SMPTE ST 2110 の nDisplay に NVIDIA ハードウェアと Rivermax SDK を利用した実験的なサポートが追加されました。
これは、LED ステージの新しい可能性を広げる、さまざまなハードウェア構成の基礎となります。最も優れた構成では、各カメラ錐台に専用マシンを利用し、可能なレンダリング解像度を最大化し、フレーム レートを増加させ、以前に可能だったシーン ジオメトリとライティングをさらに複雑なものにすることができます。
このソリューションによって、現在のシステムでは負荷がかかり、高解像度と複数カメラによる撮影が必要となる、より広角のレンズの課題に取り組むことが可能となります。また、これによって、信号チェーンの簡素化によってシステム内のレイテンシーが低下することになります。
この他にも多くの新機能があります。
より詳しい情報はロードマップが公開されたときの以下の記事をご参考に
また、さらに詳しい情報は公式ドキュメントページへ
ダウンロード
Unreal Engine 5.3 は、Epic Games ランチャー、GitHub または Linux からダウンロードすることができます。
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