BartoszStyperek(jose conseco氏)による Blender アドオン『 Hair Tool 3 』の紹介です。
Hair Tool 3
Hair Tool は、非破壊でヘアカード、シェルヘア、カーブヘアを生成することができるBlenderアドオンです。特にリアルタイムヘアと呼ばれるヘアカードの作成に役に立ち、Ubisoftなども購入したことがある人気のヘア作成ツールです。
Hair Tool では、ヘアカードのボーンとウェイト ペイント データを生成する簡単なオプションも提供されており、シンプルな jiggle physics を使用してアニメーションの作成も可能です。
Hair Tool 3.0は、BlenderのジオメトリノードとPythonを使用して作成されており、Blenderの新しいヘアシステムをフルサポートするようになりました。すべてのヘアプリセットはゼロから作り直され、新しいヘアカーブベースの新しいヘアシステムを使用するようになっています。ヘアライブラリも更新されています。
ヘアカードを生成する方法について
Hair Toolでは、ヘアを生成する方法が複数用意されています。
■ヘアシステム(Hair System)
ジオメトリノードに基づくプロシージャルヘア生成方法で、あらゆる複雑なヘアスタイル(三つ編み、カール、パンクなど)やまつ毛の作成に最適です。詳細は後述する「ヘアシステムについて」を参照
■グリッドサーフェス(Curves From Grid Surface)
グリッドメッシュによって髪の流れをガイドすることができる長い髪のモデリングに最適な方法です。バージョン3.0では、新しいヘアカーブを使用するように書き換えられました。
ヘアカーブを編集するのではなくガイドメッシュをスカルプト・編集することでヘアーを作成できる方法です。ショートからミディアムのヘアスタイルに最適です。
選択したメッシュ サーフェスからヘアを描画したり、既存のカーブを延長したりできます。バージョン3.0では、新しいヘアカーブを使用するように書き換えられました。
■ショートヘアモデリング(short hair modeling)
このモデリング手法では、メッシュエッジにヘアカードをインスタンス化しています(ヘアカードの数はメッシュエッジの数と同じになります)。ショートからミディアムの長さのヘア、動物の毛皮、短髪のヘアスタイルに最適。
■シェルヘア(shell hair)モデリング
このモデリングテクニックは、ベースメッシュのレイヤーを玉ねぎのように重ねて作成し、そのレイヤーに特殊なヘアシェーダを適用するというものです。密度はシェルテクスチャのサイズのみに基づいているため、ジオメトリをあまり追加することなく、ヘアーを好きなだけ密集させることができます。
シェルヘアは、ショートヘアカードと比べて、上から見たときによく見え、非常に短い髪(毛皮、カーペット)に最適です。
特殊なヘアシェーダーのセットアップが必要なため、ゲームエンジンでの設定が少し複雑です。Unreal Engine シェル シェーダーがこちらから提供されています。詳細はこちらから
ヘアシステムについて
上記で紹介したシェルヘアとショートヘアはヘアシステムワークフローを使用していませんが、ヘアシステムのコンポーネントは、Hair Toolのほぼすべての場所で使用されています。なので、ヘアシステムのUIなどの概要を以下に説明したいと思います。
ver3.0以降、Hair Toolは「Hair System」(ジオメトリノードベースのモディファイアスタック)を使用して、プロシージャルに髪の束を生成し、修正することができるようになりました。主な機能には、ノイズ、クランピング、ブレイド、カールなどのヘアデフォーマが含まれます。また、選択ツール、入力マスク、ストランドを簡素化するためのオペレータ、オブジェクト間のシステムの転送などもカバーされています。
パネルの構成は以下の通りです。
- ガイドカーブとソースメッシュを割り当てるセットアップセクション(Hair System Setup)。
- ジェネレータとデフォーマを備えたヘアサブシステム(Sub-systems)。
- ストランドにジオメトリ、UV、マテリアルを追加するヘアプロファイル(Profile)。
セットアップセクション(Hair System Setup)
セットアップのパネルには以下が表示されます。
- ガイドカーブ(ヘアシステムがガイドカーブにアタッチされている場合、灰色で表示されます。)
- ソースメッシュ – ストランドが生成される場所で通常は頭皮 (ヘアシステムがソースメッシュにアタッチされている場合はグレーになります。)
上の画像では、ヘアシステムはガイドカーブSuzanne_curve_hair(黄色)に取り付けられており、ストランドはソースサーフェス(Suzanne_Scalpメッシュ)から生成されます。
このヘアセットアップにより、あるオブジェクトから別のオブジェクトへ(例えば、ガイドカーブからメッシュオブジェクトへ)ヘアシステムを転送することが可能となります。
このセットアップはオプションで、ヘア描画ツールでヘアカーブを描くときには使用しません。
ヘアサブシステム(Sub-systems)
サブシステムはヘアカーブの生成とデフォーマによる修正を行います。ヘアサブシステムを追加するには、サブシステムタブの[+]アイコンをクリックします。
上の図にはParent (親) と Child (子) という名前の二つのヘアサブシステムがあります。子は、Strand Generator、Noiseなどのデフォーマで構成されています。
■サブシステムの種類
現在、次の 3 種類のサブシステムがあります。
- Strands Generator:メッシュ (通常は頭皮) からストランドを生成します – メッシュは必須であり、セットアップ セクションで割り当てる必要があります (通常はヘア ツールによって自動的に行われます)
- Strands Filter:ストランドを生成しませんが、スタックの上にある他のサブシステムによって生成されたストランドに影響を与えることができます。(‘Tag’ フィールドを使用することで、選択したストランドのみに影響を与えることができます)
- Strands From Grid Surface:ガイドグリッドの表面からストランドを生成します。グリッドには、’sharp’ (Ctrl+E -> Mark Sharp)としてマークされた境界ループが必要です。これは、アドオンに毛根を配置する場所を指示します。
■デフォーマ(Deformers)について
デフォーマでは、髪にノイズを加えたり、カールさせたり、サーフェスにスナップさせたりなど、髪の見た目を変えることができます。Blenderのモディファイアと同じように、1つ1つ重ねることができ、並び替えることも可能です。デフォーマの中には、ヘアーシステムが子としてセットされている場合にのみ機能するものもあります。
すべてのデフォーマの種類はこちらから確認できます。また次の動画では、すべてのでフォーマ―についての説明を見ることができます。
ヘアプロファイル(Profile)
ヘアプロファイルは、ヘアシステムスタックの最後にあるモディファイアです。ヘアプロファイルだけでなく、UVやマテリアルもカーブに割り当てられます。
プロファイルの種類にはプロファイルなし (Blender Hair)、通常のヘアカード(Flat Profile)を始め、Curve、Circle、Braid、Curls 、Mesh といった多くのプロファイルが用意されています。
マテリアルタブでヘアオブジェクトにマテリアルを割り当てても機能しないので注意してください。ヘアプロファイルパネルを使用する必要があります。
その他詳しい情報はこちらのドキュメントページをご覧ください。
アップデート情報
v3.1
- Particle Hair from Curves と Particle Hair to Curves のオプションを復元
- スプラインのないカーブを再サンプル/デシメート(resample/decimate)しようとしたときのエラーメッセージを改善
- Deformer Updaterの修正 – 利用可能な場合、新しいソケットを再接続しないように
- Curls’ deformer – Project to/from Normalを追加
- デフォーマをコピー&ペーストするオプション
- Track to Mesh/Curveデフォーマに’Separate Target per Island’スイッチオプションが追加
- Y軸でUVを反転させるオプションを復元
- 頂点グループ入力マスクの反転動作を修正
- 頂点グループ入力マスク – ストランドルートまたは各スプラインポイントごとにサンプリングするオプション追加
- アーマチュアのないメッシュのボーン生成を修正
- ctrl+Shift+HのパイメニューからHSystemポップアップパネルを表示するオプションを追加
- UV regionsが常にユニークになりました(以前はSetUVRegion deformer間でシェーディングできました)
v3.2
- ヘアシステムに「Physics」デフォーマを追加し、ロープやバネで髪をシミュレートできるようになりました
- Attach To Surface(Attach To Surface) デフォーマ追加
- Duplicate Strandsデフォーマは、より均等なストランドの分配をするように
- プロファイルのランダムUV反転を無効にするオプション追加
- グリッドサーフェイスからの曲線(Curves From Grid Surface)の修正
- AO生成をpythonからGeoNodesに変更
- Hair Baking マテリアルのアップデートでエラーが発生するのを修正
- Embed rootsデフォーマ – カスタムメッシュサーフェスを使用するオプション追加
- AO – アルファに書き込むオプションを追加
- Track To MeshCurveデフォーマの「影響範囲(influence range)」入力の動作を変更
- UVサンプリングを修正
- ストランド(Strand)補間がよりシンプルに(回転差の計算がよりシンプルに)
- 英語以外のUIを持つユーザー向けに「Draw Hair」を修正
v3.3
- Blender 4.0互換性の修正
- 修正されたカーブ編集モード – 半径調整(Adjust Radius)と傾き(Tilt) – ソフトな選択範囲をサポート
- jiggle physicsの時間による過度の減衰を修正
- Remove Strands( ストランドの削除)デフォーマ追加
- Attach To Border ( 境界線にアタッチ ) デフォーマ追加
- ‘Selection Mask(Curve)’に新しいモードを追加: 乗算(Multiply)、加算(Add)
- Wキーメニュー(カーブ編集モード)で、ヘアカーブの方向を切り替えるオプション追加
- 三つ編み(Braid)デフォーマは、より均等なストランドの分布で形成されるようになりました(旧バージョンでは、サブストランドの一部が非常に細かったり、欠けていたりして、2つの目に見える塊だけでできた三つ編みが残っていました)。
v3.5
- Set UV Regions オペレータに、U方向にUVを手動で反転させるオプション追加
- ショートヘア – ウェイトがゼロの頂点グループで「length multipiler」入力をマスクすると、ヘアが爆発する問題を修正、
- Curve ProfileタイプのUV生成を修正
- Flat ProfileのUV幅をストランドの半径にリンクするオプションが追加
- ターゲットオブジェクトにUVがない場合、ヘアの描画が機能しない問題を修正
- UV Regionをカラー化し、そのカラーアトリビュートをヘアマテリアルで使用する機能を追加
- オブジェクトに9つ以上のサブシステムが割り当てられている場合、UIでデフォーマを描画するように修正
- 複数のUVリージョンが重なっている場合に、カーソル下のUVボックスをピックするアルゴリズムを改善
- Track To、Curls Deformersを簡素化
- シンプルなカーブマッピング入力マスクタイプを追加
- ベクタータイプのハンドルでカーブを使用する際の、カーブプロファイルの不具合を修正
- ヘアツールのホットキーの取り扱いをリファクタリング
- IKモード(チェーン)の’Hair Modeling’ツールのコリジョンサポートを追加
- Hair Modelingワークスペースツールがカーブスカルプトモードで使用できるように
- Hair Profileのエッジの最初の列がCreasedとしてマークされるようになり、別のHair Systemの「Grid Guide」として使用できるようになりました
- Hair Baking Scene にベイク用のプリセットが追加されました、
- ヘアプリセットライブラリが更新され、新しいプリセットが追加されました。Hair Libraryを最新版にアップデートすることが推奨されています。以前のヘアライブラリからの古いプリセットは、最新のHT 3.5では正しく動作しない場合があるようなので注意してください。
上記の動画では、Hari Tools 3.5 の新機能について紹介されています。
髪のシェーダーが改善され、より多くの色制御が可能になりました。基本色、根元、先端の色を調整できるようになり、深度混合色やアンビエント色の調整も可能です。頂点カラーを使って髪の特定の部分に色や陰影を追加する方法、UVマッピングを利用した色分け、髪のモデリングツールの改善、新しいルートモード、境界線への移動デフォーマーなど、多くの新機能や改善点が紹介されています。これらの機能により、よりリアルで詳細な髪の表現が可能になり、髪のモデリングがより直感的で効率的になりました。
以下は上記の動画の説明内容とタイムスタンプ(おおよそ)となっています。
- 0:00~:髪のシェーダーの改善により、基本色、根元、先端の色を細かく調整できるように。
- 1:07~:深度ミックスファクター、アルファ強度、サブサーフェススケールなどの新しいシェーダーパラメータが追加され、髪の質感をよりリアルに表現できるように。
- 2:24~:Vert color AOを使用して、髪の毛のリアルな影を作り出す方法が紹介されました。
- 3:49~:パフォーマンス最適化のためのアンビエントオクルージョン計算のヒント。
- 5:06~:UV領域を色分けして髪の毛に異なる色を割り当てる方法。
- 7:05~:髪の毛を異なる色のUV領域に分散させる方法と、色の間の自然な遷移を作るためのマスクとランダム化の使用方法。
- 8:00~:ブレイドデフォーマーの改良された分布アルゴリズムと「Global Time」パラメータ。
- 10:29~:髪のモデリングツールの改善、IKモードでの衝突検知、スカルプトモードでの使用が可能に。
- 12:53~:新しいルートモードや「Move to Border」デフォーマーなどの機能が追加され、髪のスタイリングがより簡単かつ詳細に行えるように。
- 15:06~:「Move to Border」デフォーマーの使用例や、髪の毛の分布を均等にする新しいアルゴリズム、髪の流れを自然にする「Global Time」パラメータなどの改善が紹介されています。
更新履歴はこちらから
価格とシステム要件
Blender 3.6では、Hair Tool 3.x(新しいヘアカーブのみサポート)とHair Library 3.0_date が使用できます。
‘古い’バージョン Hair Tool 2.46(「古い」カーブをサポートする最後のバージョン) – HairLib_18_12_2022 は、Blender 3.3から3.6まで利用できます。
価格は、58ドル(日本では購買力平価により40.02ドル)となっています。
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