2023年10月11日(現地時間)- Krita開発チームは、無料のオープンソースペイントソフトウェアの最新アップデート Krita 5.2 のリリースを発表しました。
新機能ハイライト
1年にわたる開発を経て、Krita 5.2が正式にリリースされました。このリリースでは、Krita 5.2がついに登場しました。テキストやアニメーション・オーディオの処理の抜本的な変更から、選択されたすべてのレイヤーを変換するといった小さな機能まで様々な新機能が追加されています。
アニメーション
アニメーションに関して、オーディオの再生 ( MR 1323 ) と、ビデオエクスポートの簡素化 ( MR 1599 ) の2つの問題にアップデートが行われました。
■オーディオの再生
オーディオが添付されたアニメーションを再生する際のオーディオビジュアル同期の様々な問題を解決するために、アニメーション再生の大部分が作り直されました。これには、MLT framework.というものが使用されています。MLTは、 Kdenliveのようなビデオ編集プログラムで使用されている実績のある柔軟なフレームワークで、フレームごとの同期を念頭に設計されており、Kritaのアニメーターが、プログラム内でも、エクスポートしたアニメーションビデオでも、キーフレームがボイスワークやBGMと一致していることを確実にするのに役立つものです。
■ビデオエクスポートの簡素化
以前のKritaでは、アニメーションビデオのエクスポート、アニメーションとしてのビデオのインポート、ペインティングセッションを録画するためのレコーダードッカーなど、ビデオに関連する多くの機能を使用するために、ユーザーがシステムのどこかにFFmpegの実行ファイルを指定する必要がありました。
これは、スタジオで使う分にはこれで十分でしたが、それほど技術的でないユーザーにとってはセットアップがまだ難しく、Androidのようなロックされたシステムや学校のコンピューターではほとんど不可能でした。なので、FFmpegの基本的なビルドは、Krita自体に組み込まれるようになり、ffmpegを別途ダウンロードする必要がなくなりました。
テキスト
Wolthera氏により、テキストレイアウトエンジンが完全に書き直されました。これまでのレイアウトエンジンでは、基礎となるテキストを十分に制御することができなかったため、拡張するのが難しく、また、その上により良いテキストツールを書くのが難しかったことが理由とされています。
新しいテキストレイアウト機能には、旧エンジンで可能だったすべての機能、テキストオンパス、縦書きテキスト、折り返しテキスト、テキストインシェイプを扱うことが可能です。また、OpenType機能へのアクセスや、絵文字(ビットマップおよびcolrV0タイプ)のレンダリングも可能になりました ( MR 1607、 MR 1767 )。
Krita 5.2では、これらの新機能にアクセスするには、まだSVGコードエディタを使用する必要がありますが、Krita 5.3では、テキストツールをオンキャンバスにし、メニューとプリセットで新機能を設定できるようになる予定です。
ツール
■塗りつぶし(Fill)ツール
Deif Lou氏が塗りつぶしツールに新しいモード:同系色の領域を塗りつぶす( MR 1577 )を追加しました。
さらに、塗りつぶしツールと囲み塗りつぶしツールは、最も暗い、または最も不透明なピクセルで成長を停止し、特定の境界色まですべての領域を塗りつぶすことができるようになりました( MR 1549、1560 )。また、ブラシツールと同じブレンディングモードを使用するか、独自のブレンディングモードを使用するかを切り替えることができるようになりました ( MR 1749 )。
上の画像は4つの画像は隣り合っていて、最初の画像は点だけを示していますが、残りの画像は、その点から塗りつぶしを開始すると、オプションの違いで異なる塗りつぶし結果になることを示しています。マニュアルによると、画像Aの例を赤い点で塗りつぶすと、Bでは通常の塗りつぶし、Cでは塗りつぶしをピクセル数で拡大、Dでは「境界色まで塗りつぶす(fill to boundary color)」が有効になっています。
■選択(Selection)ツール
連続塗りつぶしにも、塗りつぶしツールと同じ選択範囲の拡張オプションが追加され ( MR 1549 ) 、選択範囲の装飾の不透明度を設定できるようになりました ( 1697 )。さらに、選択範囲のデコレーションがHDIに対応しました(MR 1774)。
■ショートカット
いくつかの新しいアクションが追加されました:
- 消しゴムプリセットの切り替え( MR 1689 ) を使用すると、タブレット スタイラスの「消しゴム」側に保存されるプリセットに切り替えることができます。すすべてのスタイラスに消しゴム側があるわけではありませんし、ホットキーで作動させることを好む人もいます。
- サンプルスクリーンカラー( MR 1720 ) を使用すると、Kritaの外でも、画面上の任意の場所で色を選択できます。
- キャンバス入力設定 Select Layers From Menu ( MR 1766 )を使用すると、ドロップダウンメニューからキャンバス上のレイヤーを選択できます。
- Krita には CLIP STUDIO PAINT と互換性のあるショートカット スキームが追加されました 。 ( MR 1565 )
- Krita はキャンバス入力設定のショートカットの競合を検出できるようになりました ( MR 1725 )。
select-layers-menuのアクション
■その他
- Dmitry Kazakov氏は累積アンドゥ機能をオーバーホールしました。この機能はアンドゥ操作をマージすることができ、多くの異なるストロークを描くときに便利です。コードは単純化され、オプションはより直感的に使えるようになりました。 ( MR 1780 )
- Przemysław Gołąb氏によって、スケッチブラシエンジンの結果にアンチエイリアスをかける機能が追加されました。( MR 1425 )
- Freya Lupen氏により、変形ツールで選択したすべてのレイヤーを一度に変形する機能が追加されました。( MR 1792 )
Dockers
Mathias Wein氏により「広色域カラーセレクター(Wide Gamut Color Selector)」が追加されました。このセレクタはアドバンストカラーセレクタとほぼ同じですが、sRGBだけでなく広色域の色を選択できる点が異なります。最終的にはアドバンストカラーセレクタを削除して、このセレクターを使うようにしたいと考えられています。
広色域カラーセレクターは、ここでは虹色の円を囲んだグラデーションの正方形で表示されています。
また、レイヤードッカーには、以下のような表示オプションが追加されました:
- Android では、複数のレイヤーを選択するのは難しいため、 レイヤーの側面に追加のチェックボックスが実装されました。 ( MR 1665 )。
- Freya Lupen 氏は、レイヤーの不透明度とブレンディング モード ( MR 1501、 MR 1520、 MR 1615 )に関する追加情報を表示する機能を追加し、レイヤーの自動接尾辞(サフィックス)をオプションにしました ( MR 1498 )。それに加えて、ファイルレイヤーのスケーリングフィルターを変更できるようになりました ( M 1784 )。
- ブラシプリセットのdockerが水平モードできれいに見えるようになりました( MR 1670)。
- ブラシ プリセット履歴が設定可能になりました ( MR 1623 )。
- パレットドッカーにアンドゥ、リドゥなどが追加されました ( MR 1617 )
ファイル形式
- CMYK ブレンディングモードの動作方法が変更され(設定で切り替え可能) ( MR 1796 )、ブレンドモードがPhotoshopのCMYKでのブレンドモードの扱い方に合わせられました。これにより、CMYKのPSDを必要とするクライアントとのPSDファイルの交換が簡単になります。
- Rasyuqa A. H.氏は、JPEG-XLの保存と読み込みのコードを改善し、JPEG-XLにCMYKを実装し、JXLライブラリにより多くの色空間情報を与えることで圧縮を改善し、より良いメタデータ処理とJPEG-XLへのラスターレイヤーの保存と読み込みをサポートを追加しました。(MR 1656、1693、 1673、1722、1795)また、WebP圧縮の改善( MR 1785 ) 、ICC転送特性コードの改善も行われています( MR 1667 および 1690 ) 。
- EXR マルチレイヤー処理を改善 ( MR 1677 )。
- より良いメタデータ処理とアニメーションサポートを追加することで、webPエクスポータを改善(MR 1468)。
その他
その他に行われた技術的な大きなアップデートのひとつとして、ブラシ設定のコードをLagerというライブラリで動作するように書き直したことがあります。古いコードでは、ブラシ・プリセットとウィジェットがますます複雑に絡み合っていて、設定を拡張するのが難しくなっていました。この作業をベースに、ブラシ設定ウィジェットの再設計が予定されています。(MR 1334)。
- 単一の最近使用したドキュメント ( MR 1666 )を削除する機能が追加。
- タブレットテスターは傾きデータにアクセスできるようになりました 。( MR 1678 )
- Android 用のより簡単なリソースの場所の選択を実装( MR 1771 )。
- テンプレートを使用するときに Krita がドキュメントのメタデータをリセットするように ( MR 1769 )。
- カラー プロファイルの表示名を改善( MR 1768 )
- 左右の UI ( MR 1683、 MR 1696、 MR 1702、 MR 1701、 MR 1732、 MR 1744、 MR 1742、 MR 1772 ) をクリーンアップ。
- Lambert shading ブレンディングモードが追加 (MR 1566).
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