2022年11月16日 – 先月よりプレビュー版として利用可能だった Unreal Engine 5.1 が正式リリースとなりました。
新機能ハイライト
今回のリリースでは、UE5 で導入された機能セットをベースとしてさらなる構築が行われ、あらゆる業界のクリエイターにとって堅牢性、効率性、汎用性が向上しています。
レンダリング
次世代コンソールや次世代対応PCで、60fps のゲームの制作をサポートするため Lumen、Nanite、および仮想シャドウ マップの改善が行われました。
Lumen ダイナミック グローバル イルミネーションおよび反射システム、Nanite 仮想化マイクロポリゴン ジオメトリ システム、仮想シャドウ マップ (VSM) の基盤を確立することで、高速の対戦ゲームや詳細度の高いシミュレーションをレイテンシーなく動作させることができるようになっています。
Lumenの改善
・両面フォリッジ:背面からライティングを集め、リーフを通してそれを散乱させ、マテリアルの SubsurfaceColor で減衰させることで、両面フォリッジ シェーディング モデルがサポートされるようになりました。また、Lumen のソフトウェア レイ トレーシング では、確率的半透明のディスタンス フィールド レイトレースにより、フォリッジでの過度なオクルージョンが修正される従来よりも正確な新しい表現が追加されています。
・時空間ブルーノイズ:カメラが動いていない場合に特に、よりクリーンな画像品質にするために時空間ブルーノイズが使用されます。品質が最も大きく改善されるのは、Lumen で次世代コンソールでの 60fps を対象とする High Global Illumination スケーラビリティ レベルが使用されている場合です。
・サーフェス キャッシュ サンプリング:Lumen の ソフトウェア レイ トレーシング では、低解像度で光漏れが発生しやすいボクセル表現ではなく、サーフェス キャッシュが直接サンプリングされるようになりました。これによって、小さなエミッシブ サーフェス要素からのセカンダリ バウンス、反射、グローバル イルミネーションが改善されています。
・プロジェクトで [High Quality Translucency Reflections (高品質透過性反射)] が有効になっている場合、Lumen の反射は、透過サーフェス マテリアルの最前面レイヤーでのミラー反射となります。
・Lumen の反射で 単一レイヤーの水面 (Single Layer Water) がサポートされるようになり、その反射は強制的にミラーになっています。
Naniteの改善
今回のリリースでは、Nanite が更新され Programmable Rasterizer が追加されました。Programmable Rasterize を使用することでワールド位置オフセットによるマテリアル駆動のアニメーション及び変形と、オパシティ マスクを利用利用可能となっています。これにより、特定のオブジェクトの動作 (風に舞う葉を描写した Nanite ベースのフォリッジなど) をプログラミングすることができます。
Nanite に以下の機能と改善が加えられています。
■マテリアルサポートの追加
以下のオプションを使用しているマテリアルがサポートされるようになりました。
- 両面
- マスク ブレンド モード
- ワールド位置オフセット (ベータ機能)
- カリングの境界はまだ更新されていないため、使用方法によっては三角ポリゴンが消えることがあります。
- ピクセル深度オフセット
これらの機能の期待されるパフォーマンス特性の詳細については、Nanite のドキュメントで確認できます。
■フォリッジ ジオメトリのサポート
- Nanite スタティックメッシュのための新しい [Preserve Area (エリアを保持)] オプションにより、フォリッジに対して有効にした場合に遠距離でジオメトリが間引きされるのを防ぎます。
- ランドスケープ グラス メッシュで Nanite を有効にできるようになりました。
- Nanite のフォリッジのパフォーマンスは複雑なトピックであり、コンテンツへの依存が大きい、多数の要素の影響を伴います。これらの詳細については、Nanite のドキュメントをご覧ください。
■その他
- ハイブリッド Nanite および非 Nanite のワークフローで、Nanite をサポートするプラットフォームとサポートしないプラットフォームの両方でオーサリングを目的とした改善。
- Nanite 対応メッシュで [Hidden Shadow (シャドウを非表示)] フラグがサポートされるようになったため、カスタム シャドウ プロキシ メッシュを Nanite にすることができるようになり、仮想シャドウ マップのパフォーマンスが向上。
- インスタンス化されたスタティックメッシュ コンポーネントの Nanite としての描画で、距離に基づくカリング設定が反映されるように。
- (実験的機能) Nanite を使用してレンダリングされるようにランドスケープを変換できるようになりました。
r.RayTracing.Nanite.Mode=1
を設定することで、Nanite メッシュのネイティブのレイ トレーシングおよびパス トレーシングの初期サポートを有効にできます。初期段階のテストでは、低品質のフォールバック メッシュのレイ トレーシングの 5 ~ 20% のパフォーマンス負荷であることが分かりましたが、結果はコンテンツによって異なります。
他にも品質とパフォーマンスに関する多くの改善が行われています。
パストレーサー
今回のリリースでは、パス トレーサーに以下の機能と改善が加えられています。
- 次のようなさまざまなエンジン機能のサポートが追加されています。
- 指数関数的高さフォグと Sky Atmosphere
- 指数関数的高さフォグ コンポーネントでは、ボリュメトリック フォグ を有効にする必要があります。ローカル ライトはデフォルトでボリュメトリック シャドウをキャストしないため、その設定内で有効にする必要があります。これは、リアルタイムのライティングとデフォルトのワークフローに一致する設定です。
- スカイ環境は、[Reference Atmosphere (参照アトモスフィア)] ポストプロセス ボリューム設定でサポートされています。この設定を有効にした場合のボリュメトリック クラウドのサポートはまだ行われていません。
- 平面デカール
- 水のジオメトリと Single Layer Water シェーディング モデル
- インスタンスごとのカスタム データとインスタンスごとのランダム マテリアル式
- ライト関数のサポートが追加されました。r.PathTracing.LightFunctionsColor を有効にすることで、色付きライト関数もパス トレーサーでのみ使用できます。
- 指数関数的高さフォグと Sky Atmosphere
また、他にも、より正確なモーション ブラーを生成するための [Reference Motion Blur (参照モーションブラー)] オプション、マルチ GPU レンダリング (mGPU) のサポート、Optix デノイザーの実験的サポート、テンポラル ノイズ除去の実験的サポートが追加されています。
その他
- GPU Lightmass の改善:Sky Atmosphere、固定スカイライト(ベント法線あり)、静的ライト用のボリューメトリックシャドウなどのエンジン機能のサポート、ボリューメトリックライトマップレンダラでの品質、パフォーマンス、GPUメモリの使用量の改善などがされています。
- 透過オーバーレイ マテリアル:スタティックメッシュおよびスケルタルメッシュにセカンダリ オーバーレイ マテリアルを割り当てることができるようになりました。これを使用して、メッシュを複製することなく、特定のビジュアル エフェクトを実現できます。
- ストラータ マテリアル (実験的機能):Strata (ストラータ) は、Default Lit や ClearCoat などのシェーディング モデルの固定スイートを置き換えるマテリアルを作成する新しい方法であり、より広範なサーフェス外観やより幅広い動作範囲のパラメータ空間を提供する、より表現力に優れたモジュール式のフレームワークを使用しています。
- On-Demand Shader Compilation:On-Demand Shader Compilation (ODSC) では、エディタで画面に表示されているものをレンダリングする場合、およびオンザフライでのクックを使用する反復的プラットフォーム開発時にレンダリングする場合に、必要とされるシェーダーのみがコンパイルされます。ODSC は、定期的にビルドを同期させていてコンパイルするシェーダーが多数ある場合、マテリアルとシェーダーでコンパイルを頻繁に繰り返す場合、キャッシュされているシェーダーを利用するためのリモート DDC へのアクセス権がない場合に、コンパイルする必要があるシェーダーの数を大幅に減らすことができます。
- DX12 PSO のコンパイルの改善:UE 5.1 では、オブジェクトがレンダリングされる時点ではなく、コンポーネントがロードされたときに早い段階で PSO をコンパイルし始めることで、シェーダーのコンパイルで発生する遅延を減らすことを目指しています。そうすることで、時間のかかるプロセスであり完全にカバーしていることは保証できない、PSO キャッシュを手動で収集する必要性が軽減または解消されます。
アナモフィック被写界深度とカメラ トリミング (実験的機能):被写界深度で、垂直方向に伸びたボケの形状になるアナモフィック レンズのサポートが追加されました。
- DirectX 12 がデフォルトに:Unreal Engine 5 で新規作成されるすべてのプロジェクトでは、PC 上でシェーダー モデル 6 (SM6) がデフォルトで有効になっている DX12 が使用されるようになりました。DX12 では CPU 時間、GPU 時間、メモリ使用量に関するあらゆる面で効率が向上するため、新機能を活用できます (最も顕著なのがレイ トレーシング)。Nanite および仮想シャドウマップでは、SM6 が有効になっている DX12 がいずれは必要になります。
- テクスチャおよびテクスチャ アセット エディタの改善:テクスチャを、32 ビット浮動小数点の単一チャンネルおよび 4 チャンネルの形式である R32F および RGBA32F でインポートできるようになりました。他にも次元が 2 の累乗ではないテクスチャでミップマップの使用、ツールバー オプションの追加などが行われています。
- マテリアル エディタでのインライン編集:80 個以上の マテリアル式 が見直されて、マテリアル グラフにあるノードで直接定数値とプロパティをインライン編集できるようになりました。
- ライト ミキサー (ベータ機能):ライト ミキサー は、シーン内のすべてのライトがコンパクトな表形式で表示される新しいエディタ ウィンドウであり、シーンの環境光コンポーネントが入っている 環境光ミキサー と同様に、検査や編集を素早く行うことができます。
- 仮想シャドウ マップ – 遠方ライトモード:仮想シャドウ マップ を使用すると、少し離れてレンダリングされるローカル ライトが多数あるシーンの効率が向上します。これを有効にするには、コンソール コマンド
r.Shadow.Virtual.DistantLightMode
を使用します。 ハードウェア レイトレーシングの Windows 10 バージョンの要件:ハードウェア レイ トレーシング は、Nanite および仮想シャドウ マップで Windows 10 バージョンが同じ最小要件となりました。詳細についてはこちらをご覧ください。
ワールド ビルド ツールの機能強化
このリリースでは、大規模なオープンワールドを構築するためのツールの機能強化が引き続き行われており、機能の追加やワークフローの改善がされています。
■Large World Coordinates サポート
今回のリリースでは新たに、デフォルトのワールドの範囲が 22 km から 88,000,000 km に拡大され、さらに大きなワールドを作成できるようになりました。また、Large World Coordinates (LWC) では、ベータ機能としてWorld Partition のサポートが追加されています。
■World Partition によって高速化された ソースコントロール ワークフロー
Unreal Engine の ソース コントロール システムでは、バージョン管理によりアセット ファイルとコード ファイルの共有を容易にすること、およびファイルのバックアップとプロジェクトの変更履歴を提供することで、開発チーム内でのコラボレーションがサポートされています。
Unreal Engine 5.1 では、ソース コントロールの操作性にいくつかの改善が加えられ、管理外チェンジリスト が利用されるようになりました。この機能では、プロジェクト内の書き込み可能なすべてのファイルが追跡され、すべてのローカルな変更に関する現状のリストが提供されます。
■HLOD (階層詳細度)でのWater Body アクタ サポート
Unreal Engine の Water システム のレンダリング ツールおよびメッシュ化ツールでは、水を表現するためにさまざまな Water Body アクタ タイプをレベルに追加する機能が提供されています。
今回のリリースでは、Unreal Engine の Hierarchical Level of Detail system (HLOD) で Water Body アクタが完全にサポートされるようになりました。各アクタを HLOD レイヤー に割り当てることができ、各アクタにはプロジェクトのニーズに合わせてカスタマイズできるさまざまな HLOD 設定項目があります。
■その他
- World Partition のデータ レイヤーの改善
- アクタ エディタ コンテキスト:Unreal Engine 5.1 リリースでは、エディタの 3D ビューポートの右下隅にアクタ エディタ コンテキストが表示されるようになりました。
バーチャル プロダクション
Unreal Engine 5.1 では、インカメラ VFX ワークフローのパフォーマンスおよびユーザビリティが大幅に向上し、ブロードキャストおよびライブ イベント領域にも同等に適用できるようになりました。
■In-Camera VFX エディタ
ICVFX ステージ操作で最もよく使用されるコントロールを 1 つの選定された UI に集めるための、専用のステージ オペレーターパネルが追加されました。nDisplay 調整、色補正、ライト カードが 1 か所に提示されるようになったため、特定のオブジェクトやコントロールを見つけるためにアウトライナーを探し回る必要がなくなり、ステージ操作を効率的に行うことができます。
■改善されたライト カード システム
ライト カードが LED ウォールで表現されるときに、意図された形状を維持する UV 投影ロジックを使用するように、ライト カードが機能強化されました。
■ICVFX 用の色補正コントロールの改善
ICVFX プロダクション用の色補正のワークフローが拡張されました。色補正範囲は 3D で動作し、2D 形状と組み合わせることや、パワー ウィンドウとして 2D 形状と連動させることができます。
■Media Plate アクタ
これまでは、シーンでメディアをストリーミングするには、ブループリントを使用して複数の要素をまとめて手動でマッピングする必要がありました。その代わりとして Media Plate アクタが追加されました。。メディア プレートでは、最高品質で最大解像度で最大色深度の画像シーケンスに対して EXR タイリングとミップが使用されます。
事前作成された球形と矩形の形状をメディア プレートで使用する場合、Unreal Engine はカメラで現在表示されているピクセルのみをストリーミングするため、ストリーミングの割り当て負荷が軽減されます。これにより、ユーザーがレンダリング ノードの負荷のバランスを取ることができ、PC ごとの帯域幅制限が改善されます。
■EXR プレートのパフォーマンス
非圧縮 EXR を一連のタイルとミップマップ レベルに前処理し、分割する新しいシステムが追加されました。
■バーチャル カメラ を刷新
バーチャル カメラ(VCam)の出力に WebRTC Pixel Streaming のサポートが含まれるようになり、Live Link VCam アプリと Web ブラウザのどちらでも表示できる、信頼性とパフォーマンスが向上したストリーミング オプションが提供されるようになりました。
また、バーチャル カメラにはエディタでの拡張入力のサポートが搭載され、サポートされているハードウェア デバイスで VCam の再マッピング可能な制御が可能になっています。これらの変更は新しい VCamActor ではデフォルトで有効になっています。VCamActor は VirtualCamera2Actor を置き替えるもので、ライブ アクション カメラのような感触とクリーンなフレーム画像に重点を置いて再設計されたデフォルトのオペレーター HUD を備えています。
さらに、バーチャル カメラの UI および UX が改善されています。
メディアおよびエンターテインメント領域向けの Unreal Engine 5.1 のその他の新機能の詳細については、Epicの以下の記事を参照してください。
https://www.unrealengine.com/ja/blog/unreal-engine-5-1-delivers-new-features-for-filmmaking-broadcast-animation-and-live-events
アニメーション、リギング、モデリングの機能強化
■UV エディタ (ベータ機能)
5.0 で実験的機能として導入された UV エディタ が、5.1 ではベータ機能になりました。UV エディタには、以前はプラグインを使用してアクセスできましたが、次の 3 つの方法で素早くアクセスできるようになりました。
- [Modeling Mode (モデリング モード)] にある [UV] パネルを使用する
- レベル 内のメッシュを 右クリック する
- コンテンツ ブラウザ でスタティックメッシュを 右クリック する
■パターン ツール
アーティストのモデリング ツールキットが拡張されて、パターン ツールが追加されました。選択されている 1 つまたは複数のメッシュを、可動 3D 平面に向いているライン、グリッド、または円に沿ってタイリングできます。
補間する平行移動、回転、スケールなど、タイリング パターンごとにさまざまなパラメータを指定でき、生成されるパターンは、マージされた Dynamic Mesh コンポーネント、要素ごとの Actor コンポーネント (スタティックまたはダイナミック)、またはインスタンス化された Static Mesh コンポーネントとして出力されます。
■機械学習 (ML) デフォーマ (ベータ機能)
システムを使用することで、ユーザーが独自の ML デフォーマ モデルを作成して、Unreal Engine で高品質のメッシュ変形を近似できるようになりました。
プラグインとしてパッケージされている ML デフォーマ フレームワーク では、メッシュを変形させる ML デフォーマ モデルをトレーニング、検査、デバッグできます。ML デフォーマ システムでは、デフォーマ グラフ システムとの統合も提供され、ユーザーはそれを使用して、生成されるメッシュ変形を編集および微調整できます。
新しい ニューラル モーフ モデル プラグインを有効にし、作成済みの高性能デフォーマ モデルを利用すると、キャラクターの高品質の変形を少ないメモリ使用量でトレーニングできます。
また、ML デフォーマ フレームワーク と ニューラル モーフ モデル の導入に加えて、ML デフォーマ アセット エディタ にはパフォーマンスと操作性にいくつかの改善が加えられています。
その他のキャラクターの変形に関する改善としては、グラフの作成と編集をより簡単にするデフォーマ グラフ エディタの機能強化があります。
■Rewind Debugger
ユーザー インターフェースが刷新された Rewind Debugger では、アニメーション データ トラックの情報の視覚的グラフである タイムライン が表示されるようになり、それを使用して、キャラクターのアニメーション システムのデバッグ中にアニメーション データのきわめて重要な更新や変更を確認できるようになりました。
■Physics Control コンポーネント (実験的機能)
Physics Control コンポーネント は、シンプルで直感的、そしてパワフルな物理ベースのコントロールをブループリントに追加する手段を提供するプラグインです。これらの物理コントロールを使用すると、アーティスティックな制御やゲームプレイの制御を維持したままで、スタティックメッシュやスケルタルメッシュの新たな物理的動きを利用できます。
Content Examples プロジェクトにある Physics Control レベルでは、全身エフェクト、二次的動き、ヒット リアクションなど、Physics Control コンポーネントの応用例を確認できます。
■Motion Matching (実験的機能)
Pose Search プラグインに、ステート マシン の動的代替である新しい Motion Matchingアニメーション ブループリント ノードが追加されました。
Motion Matching ノードはランタイム時に、キャラクターの移動アニメーションが入っている データベース アセットを使用して、キャラクターの 移動モデル に合致するように、格納されているアニメーションのセットから情報に基づくアニメーション ポーズ選択を行います。Motion Matching ノードを使用すると、複雑なステート マシン ロジックを必要とせずに、高品質で応答性に優れたキャラクター移動アニメーション システムを効率よく迅速にセットアップできます。
Pose Search プラグインのパッケージには、Rewind Debugger のカスタム統合も付属しています。これにより、Motion Matching ポーズの選択プロセスを記録および分析でき、どのポーズが選択されたか、どのポーズが選択されなかったか、そしてその理由を確認できます。
■シーケンサー
コンストレイントのサポートの追加と、ブループリントおよび Python のスクリプト処理を介した追加機能の公開によってシーケンサーが拡張されました。
さらに、UI/UX のリファクタリングにより安定性と拡張性が向上し、アニメーション オーサリングおよび編集ワークフローが改善されています。
■コンストレイントのサポート
Unreal Engine の新しい コンストレイント 機能を使用してさまざまな方法でシーケンサー オブジェクトを動的に制約できるようになりました。他のアニメーション ツールにある制約メソッドと同様に、親コンストレイント でトランスフォーム全体を制約することも、平行移動、回転、視線、または スケールのコンストレイント で個々のチャンネルに沿って制約することもできます。
コンストレイントを使用すると、シーケンサー アニメーションで オブジェクト、アクタ、コントロールリグの コントロール を動的で非破壊的に、互いに対してアタッチすることが容易になります。
■コントロール リグ
類似した他のブループリント ツールとの一貫性を高めるため、セットアップ イベント という名前が コンストラクション イベント に変更されました。また、新しい Spawn ノードが追加されたことで、コンストラクション イベント でのプロシージャル リグの作成がより迅速で簡単になっています。
他にも、コントロール リグに対していくつかの操作性の改善と UX の変更が行われ、ワークフローが改善されています。
■IK リグと IK リターゲッタ
・調整可能なストライド (歩幅)
IK リターゲッタ の使用時に利用可能な、IK 目標の長さ、幅、広がりを制御するための新しいプロパティが追加されました。ほとんどのケースで、リターゲットされたキャラクターの歩幅や全体のスタンスの調整にこれを使用できます。
・速度プランティング
速度プランティング ワークフローを使用することで、足の滑りや類似した他の問題を軽減できるようになりました。このワークフローの詳細については、「Speed Planting」のページを参照してください。
他にも、IK リグと IK リグ リターゲッタのエディタでユーザー インターフェースとユーザー エクスペリエンスのいくつかの変更が行われ、ワークフロー、レイアウト、ツールの動作が改善されています。
シミュレーション
流体
Unreal Engine 5.1 では、乱流モデルと小規模な力に改善が加えられています。これらの改善により、最先端のシミュレーションにディテールを追加することが簡単になりました。これにより、形状がより目立つように表示されるため、シミュレーションがさらに自然に見えるようにできます。
また、新しいトリキュービック補間モードを使用すると、シミュレーション全体の解像度を高くすることなく特別なディテールを追加できます。これにより、これまでのバージョンの Unreal Engine と同程度のコストで、より詳細なシミュレーションになります。
さらに、流体シミュレーションのメモリ消費量に、いくつかの改善が加えられています
破壊
Unreal Engine 5.1 で、Chaos Destruction に大きな改善が加えられています。
■改善されたフラクチャ階層
フラクチャ階層で、ボーンリストをスクロールすると、親クラスタが自動的に積み重ねられるようになりました。また、階層をレベルごとに色分けすることにより読みやすさを向上させることができるようになりました。他にも、オプションに基づいてコンテキスト情報が表示される、新しい列モードが導入されています。
■ダメージ ウォッチャー
5.1 では、フラクチャ モード に新しいランタイム ダメージ ウォッチャー が追加されています。[General (全般)] 設定にある [Enable Runtime Data Collection (ランタイム データコレクションを有効化)] オプションをオンにして、[Simulate (シミュレート)] をクリックすると、ダメージ結果を記録できます。
■ツールの改善
5.1 のアップデートには、いくつかのフラクチャ モード ツールの改善が含まれています。
・メッシュ ペイント
[Mesh Paint (メッシュ ペイント)] モードで Geometry Collection がサポートされ、ジオメトリにある頂点カラーとテクスチャをユーザーがペイントできるようになりました。また、頂点カラーは破砕によって生成された新しい頂点に伝播するため、それらを使用するマテリアルの動作の一貫性が向上します。
・インポートされたコリジョン
Geometry Collection の構築に使用された元のスタティックメッシュからのコリジョンを使用できるようになりました。これにより、特に非凸型形状で、コリジョンを細かくカスタマイズできます。
他にも GeoMerge ツール、凸型ツール、検証ツール、選択ツール、自動クラスタ ツールが改善されています。
■伝播システム
予測可能性と制御性が向上した破壊動作を提供する、新しいダメージ伝播システムが利用可能になりました。このシステムをインスタンス レベルでパラメータ化でき、破壊および衝撃波によって引き起こされるダメージ伝播に対する制御を提供できます。
他にも、新しい 破壊時に除去 機能の導入、新しい接続グラフ、新しい一連のブループリント関数の追加、ランタイム時とプロセス作成時の両方のパフォーマンスに関するいくつかの改善が行われています。
クロス
UE 5.1 では、クロス シミュレーションにいくつかの改善が加えられています。
■クロス圧力
新しい 圧力 コントロールがクロス コンフィギュレーションに、また、新しい Set Pressure 関数がブループリントの Chaos Cloth Interactor に追加されました。これらのコントロールでは、シミュレートされたクロスの各トライアングルに、一定の圧力を追加できます。
■座屈
曲げ要素 コンストレイントに、新しい 座屈 機能が追加されました。この機能を使用すると、座屈率 と 座屈剛性 のパラメータに応じて、曲げ要素コンストレイントを弱めるか強めることができます。これらのパラメータにより、シミュレーション中のクロス マテリアルの折り目をよりうまく制御することができます。
■機械学習クロス (実験的機能)
UE 5.1 では、新しい Nearest Neighbor Model プラグインが利用できます。このプラグインは、比較的小さいランタイム時のオーバーヘッドとメモリ使用量で、折り目やしわを豊かに表現したゲーム内のクロスを作成するツールを提供します。
プラグインのエディタで、ユーザーはニューラル ネットワークに学習させ、任意のポーズを対象として、事前にシミュレーションされた小規模なデータ セット (通常、50 ~ 100 フレーム) で最近傍探索を行うことができます。続いて、特定のポーズのクロスに対してジオメトリの詳細を転送するために最近傍が使用され、忠実度の高いランタイム時シミュレーションとなります。
他にも、シーケンサー内でクロスシミュレーションを録画および再生できるようになるクロスキャッシング、セルフコリジョンの改善が行われています。
Niagara
■GPU のリボン
これまでのバージョンでは、リボン レンダラ は CPU エミッタにのみ追加できました。ゲームでのニーズや使用する機能に応じて、GPU と CPU のどちらでレンダリングするかを選択できるようになりました。
■フリップブック ベイカー (ベータ機能)
フリップブック ベイカー は、エフェクトのラスタライズしたフリップブックをベイクするために使用されるツールで、UE 5.0 で初めて導入されました。UE 5.1 では、ユーザー エクスペリエンスが向上し、オプションが追加されています。このツールでは次の 3 つのタイプをベイクできます。
- 2D テクスチャ
- ボリューム テクスチャ
- シミュレーション キャッシュ (実験的機能)
■異種ボリュメトリック レンダリング (実験的機能)
Niagara Fluids レンダリングは UE 5.0 で導入されました。初回の実装は限定的であり、2 つのディレクショナル ライトを流体シミュレーションに追加できるだけで、流体にシャドウをキャストすることもできませんでした。
異種ボリュメトリック レンダリング は、シーンにセットアップ済みのライティングを取り込んで、それを流体シミュレーション レンダリングに適用できるように設計されています。このタイプのレンダリングは、ディレクショナル ライトだけではなくすべてのタイプのライトで機能します。使用できるライトの数に上限はありませんが、現時点での実装では、ライトが追加されるごとに負荷が直線的に大きくなります。
■Niagara エディタの新しいレイアウト
Niagara エディタ が、効率化された新しいレイアウトになっています。[Parameters (パラメータ)] パネルが左下に移されて、中央にある [System Overview (システムの概要)] に余裕ができています。[Curve Editor (カーブ エディタ)] と [Log (ログ)] が一番下にドッキングされ、[Timeline (タイムライン)] の横に配置されています。
■その他
- 異なるプラットフォームで再生するエフェクトを微調整するためのスケーラビリティ モード
- エミッタのバージョン管理
- レンダリング依存関係グラフ
- Niagara Fluids の品質の改善 (ベータ機能)
オーディオ システムの機能強化
プロフェッショナルでインタラクティブなサウンドの制作が、より迅速かつ簡単にできるようになり、サウンド デザイナーは、プロジェクトで最も重要な作業により多くの時間を費やすことができます。
MetaSound の更新では、ノード タイプの追加、各種マルチチャンネル出力フォーマットのサポート、リアルタイムのノード接続のフィードバック表示機能の追加が行われました。
また、プロシージャルな環境音を生成するプラグイン、Soundscape (ベータ)も導入されています。
AI ツールセット
今回のリリースでは、UE 5.0 で導入された複数の人工知能 (AI) ツールが、Experimental ステータスから移行し、スマート オブジェクト および State Tree が Production-Ready に、また、MassEntity が Beta になりました。
■スマート オブジェクト
UE 5.1 では、スマート オブジェクトに全般的な安定性とワークフローの改善が加えられて、スマート オブジェクト定義のセットアップがさらに便利になっています。API は UE 5.0 との整合性が保たれているため、プロジェクト移行時の後方互換性が確保されています。
■State Tree
State Tree のアップデートには、アクタとブループリント中心のワークフローの改善が含まれています。ユーザーがブループリントのみのワークフローで State Tree を活用できるようになりました。
少し多くなってしまいましたが、まだまだ新機能は機能強化がたくさんあります。すべての新機能の確認はこちらから
価格とシステム要件
Unreal Engine 5.1 はWindows 10 64-bit version 1909 revision .1350 以上、または 2004 / 20H2 revision .789 以上、最新の MacOS Ventura、Linux Ubuntu 22.04が推奨動作環境となっています。
より詳しい情報はシステム要件の確認はこちらから
価格は、映画などのリニアコンテンツ及びカスタムプロジェクト、内部向けプロジェクトでの Unreal Engine の使用は無料です。ゲーム開発についても、多くの場合は無料になります。タイトルが100万ドル以上の収入を生み出した場合のみ、5% のロイヤリティが発生します。
最新版のダウンロードは、Epic Games Launcher か Github から可能となっています。
Epic Games Launcherのダウンロードはこちらから
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