2022年4月6日 – EpicGamesは、リアルタイム3D制作ツールの最新アップデート Unreal Engine 5 のリリースを発表しました。
Unreal Engine 5 が正式リリース
2020年の5月に発表され、早期アクセスやプレビュー版を経て、幾度か紹介してきた Unreal Engine 5 が正式にリリースされました。
このリリースでは、制作チームの規模にかかわらず、ビジュアル面でもインタラクティブ面においても限界に挑戦できるようにすることを目指しているとされており、次世代のリアルタイム3Dコンテンツや体験をこれまで以上に自由に、高い忠実度で、柔軟に作成することを可能にします。
UE5の新機能と新しいワークフローは、フォートナイトのゲーム開発や The Matrix Awakens: An Unreal Engine 5 Experience デモでテストされ、すでに制作の実績があります。

一方で Lumen や Nanite などゲーム以外のワークフローではまだ検証されていない新機能もあります。UE 4.27 でサポートされているワークフローを使用し続ける場合でも、設計が一新された Unreal Editor、パフォーマンスの向上、アーティストが使いやすいアニメーション ツール、メッシュの作成/編集ツールセットの拡張、パストレーシング機能の向上など、多くの改良のメリットがあります。
主な新機能
新機能については、何度か紹介してきましたが改めて紹介したいと思います。
リアルタイムレンダリング
Unreal Engine 5 では、高い忠実度のディテールでリアルタイムワールドをレンダリングするための新しい機能のコレクションが導入されています。
■Lumen
Lumen は、直接ライティングやジオメトリの変化に対してオンザフライで間接ライティングが適合するリアルなシーンの作成を可能にする、完全に動的なグローバルイルミネーションソリューションです。
Lumen を使用すると、ライトマップ UV の作成、ライトマップのベイクの待ち時間、反射キャプチャの配置は不要になります。Unreal Editor 内でライトを作成、編集するだけで、ゲームやエクスペリエンスがターゲットプラットフォームで実行されている場合にプレイヤーが見ることになるのと同等の最終的なライティングを確認することができます。
■Nanite
Naniteは、仮想化マイクロポリゴンジオメトリシステムで、膨大なジオメトリックディテールを備えたゲームやエクスペリエンスの制作を可能にします。ZBrush のスカルプトからフォトグラメトリスキャンまで、映画品質の数百万ポリゴンのソースアートを直接インポートし、数百万個設置しても、見た目の忠実度を損なわずにリアルタイムのフレームレートを維持することが可能です。
■仮想シャドウマップ (VSM)
仮想シャドウマップ (VSM) は、適正で制御可能なパフォーマンス負荷で、本物っぽいソフトシャドウを実現することができる機能です。Lumen および Nanite とうまく連携するように特別に設計されており、Nanite と VSM は、知覚できるディテールのみを処理してスマートにストリーミングします。これにより、ポリゴン数やドローコール数の制限を大幅に取り除き、ディテールの法線マップへのベイクや LOD モデルの手動作成といった時間の掛かる仕事を削減します。
■テンポラルスーパー解像度(TSR – Temporal Super Resolution)
テンポラルスーパー解像度(TSR)は、プラットフォームに依存しない高品質なビルトインのアップサンプリング システムです。これを使用することにより、エンジンは、従来よりもはるかに低解像度で、より高解像度でレンダリングされたフレームと同程度の忠実度のレンダリングが可能となり、結果としてパフォーマンスが向上します。
新しいオープンワールドツールセット
■World Partition
Unreal Engine 5 では、新しい World Partition システムによって、レベルの管理、ストリーミングが変わります。ワールドは自動的にグリッドに分割され、必要なセルがストリーミングされます。
■One File Per Actor (アクタあたり 1 つのファイル)
One File Per Actor (1 アクタあたり 1 ファイル) システムにより、チームメンバーは、同一のワールドの同一の領域について同時に作業できるようになります。また Data Layers によって、一つのワールドについて日中のバージョンや夜のバージョン、壊れる前と後のジオメトリなど複数のバリエーションを作成できます。
■ラージワールド座標 (LWC)
内部で倍精度値を使用するラージワールド座標 (LWC:Large World Coordinates) の初期サポートがされました。Unreal Engine 4(UE4) では、32 ビットの浮動小数精度タイプによってワールドのサイズが制限されていましたが、LWC では、主要なデータタイプに 64 ビットの倍精度を提供することで、プロジェクトのサイズを大幅に向上します。これらの新しい変更により、ユーザーは広大な規模のワールドをビルドできるようになり、アクタの配置に関する正確性と方向の精度が大幅に改善されます。
キャラクターとアニメーション用のビルトインツール
■アニメーションモードの新しいツール
アニメーションモード が改善されて、よりアニメーションフレンドリなインターフェースになりました。また、Unreal Editor 内で直接作業できるようにアニメーションワークフローを支援する新しいツールがいくつか追加されています。
機能強化された実制作対応のコントロールリグを使用してリグを素早く簡単に作成して複数のキャラクター間で共有し、それをシーケンサーでアニメートして 新しいポーズブラウザ でポーズを保存および適用、ブレンドしたキーを Tween ツールを使用して2 つのキーフレーム間の補間を調整する、といったことができます。以下が新しいツールとなります。
- Poses (ポーズ):コントロールリグ ポーズ ツールは、コントロールにデータを保存したり、コントロールからデータを取得するツールです。選択したコントロールの相対的なポーズの保存、サムネイル アイコンの調整、保存したポーズを対称コントロールに適用する設定ができます。
- Tweens (Tween):Tween ツールを使用すると、 再生ヘッド の場所に中間キーとして第 3 のキーフレームを追加することで、2 つのキーフレーム間の補間を調整できます。
- Snapper (スナッパー):Snapper ツールを使用すると、一定時間、コントロールを他のソースにピン留めできます。コントロールをアタッチするのではなく、キーフレームをベイクするので、スナップ後、結果のアニメーションを簡単に修正できます。
- Trails (トレイル):モーション トレイル ツールを使用すると、ビューポートに操作可能な曲線としてモーションを描画して、全体的なコントロールの動きをプレビューできます。このモーションは、カーブに沿ってキーフレームを操作することで編集できます。
- Pivot (ピボット):Pivot ツールは、選択したコントロールに一時ピボット ポイントを作成し、選択したコントロールを任意のポイントに移動できるようにします。ピボットを回転させると、ピボット ポイントを基準にコントロールを操作できます。このツールは、一時的に他のポイントを基準にコントロールを操作する必要がある場合に役立ちます。
■IKリグとIKリターゲター
IKリターゲッターを使用すると、スケルトンとプロポーションが異なるキャラクター間でアニメーションを転送できます。人間のアニメーションを狼にリターゲティングすることも可能です。
IKリグでは、動いているキャラクターが常にターゲットに目を向けるようにするなど、キャラクターのアニメーションを加算的に調整できます。
■ロコモーションの改善点
また、ゲームプレイ状況 (速度や地形の違いなど) を補うようにランタイム時にアニメーションを調整するために利用できる新機能もいくつか追加されました。
・モーションワープ:単一のアニメーションから様々なターゲットに合わせてキャラクターのルートモーションの位置を動的に調整できます。例えば、様々な高さの壁に対する飛び越えアニメーションを作成できます。
・距離マッチング:ブループリント内で、ゲームプレイ アニメーションのスピードと再生をプロシージャルに管理できます。距離マッチングでは、アニメーションカーブデータを使ってアニメーションの再生をキャラクターの動きに同期します。これを ストライドワープ と組み合わせることで、フットスライディング (足滑り) に関連する一般的な問題を解決できます。
・ポーズワープ:キャラクターのストライド (歩幅) 方向、歩行速度、足の配置をプロシージャルに変更できるようになりました。ポーズ ワープは新しい一連のアニメーション ブループリント ノードで、アニメーション ポーズのコンポーネントを動的にワープさせることができます。これらのノードを使用することで、キャラクターの複雑なアニメーションを開発するための手間を省くことができます。
エディタ内モデリング、UV 編集、ベイク
UE5 では、メッシュ モデリング、UV 編集、ベイクのツールセットが大幅に拡張および強化されています。
これらのツールは、先日発表されたRealityCapture のようなフォトグラメトリツールを使用して生成されたメッシュや、Quixel Megascans をキットバッシングして生成されたメッシュなど、高密度のメッシュを扱う場合に便利です。

■メッシュの作成および編集
コアであるモデリング、スカルプト、再メッシュと単純化の機能での複数の強化が行われています。今後のツール用のフレームワークを作り出すアーキテクチャの更新もされているようです。
■UV 編集ツール
UV 編集ツールのスイートが大幅にアップデートされました。新しい UV エディタのパネルでは、2D 空間での UV のレイアウト/選択/トランスフォーム/カッティングとソーイング、UV チャンネルの表示/コピー/追加、自動アンラップ、チェッカーまたはカスタム テクスチャを使用した 3D でのプレビューがサポートされています。また、Project UV ツールと Auto UV ツールも改良されています。
■ベイクおよびメッシュ属性
ベイクおよびメッシュ属性のツールセットが大幅に拡張されています。新しいベイク ツールでは、法線、AO、頂点のベイクが改良されていて、アップデートされたツールセットの重要な機能として、マルチサンプリング、テクスチャ フィルタリング、UV レイヤー、N 対 1 のベイクがあります。
エディタ UI とワークフローの強化
■Quixel Bridge が統合
Quixel Bridge が統合され、別途ダウンロード手順を踏むことなく、Megascans のライブラリ全体にドラッグアンドドロップで直接アクセスできるようになりました。
コンテンツの取得やアクタの作成と配置を行うための単一の場所である新しい [Create (作成)] メニューからアクセスすることが可能です。
■エディタ UI
ツールとコンテンツをすぐ手の届く所に配置したままで、ビューポートの操作により多くのスペースを確保するために、ホットキーまたはボタンでコンテンツブラウザを簡単に呼び出すことができるコンテンツドロワー、折りたたみできるサイドバーに任意のエディタタブをドッキングする機能が追加されました。
また、[Details (詳細)] パネルで探しているプロパティにより素早くアクセスできるように、頻繁に使用されるプロパティをパネルに保持するお気に入りシステムと、関連するプロパティのグループにワンクリックでアクセスするためのセクションバーの両方が備わっています。
デフォルトで有効になった Chaos Physics
Chaos Physics (ケイオス物理) は、Unreal Engine 5 に導入されたカスタマイズ可能な軽量の物理シミュレーション ソリューションで、次世代ゲームのニーズに対応できるよう新たに構築されました。
システムの主な機能は、以下のとおりです。
- Rigid Body Dynamics (剛体力学) および Ragdolls (ラグドール)
- Rigid Body Animation Nodes と Cloth Physics (クロス物理)
- Destruction (破壊)
- Vehicles (ビークル)
- Physics Fields (物理フィールド)
- Fluid Simulation (流体シミュレーション)
- Hair Simulation (ヘア シミュレーション)
Chaos Physics システムは既存のシステムを置き換えるもので、主な新機能として、非同期物理シミュレーションや堅牢な破壊システム、物理フィールド、流体シミュレーションなどが搭載されています。倍精度のワールドに対する完全なサポートも提供されます。
完全にプロシージャルなオーディオエンジン
MetaSounds はオーディオ レンダリングのあらゆる側面を管理して、次世代のプロシージャル オーディオ体験を制御することができる新しいシステムです。マテリアルエディタがシェーダーの制作を助けるように、オーディオでプロシージャルなコンテンツ制作が可能になります。
パストレーサー
Unreal Engine 4.27 で導入されたパストレーサーは、DXR で高速化された物理的に正確なプログレッシブ レンダリングモードです。イメージコンテンツまたはリニアコンテンツを作成する場合、Unreal Engine だけを使用してわずかな時間で、オフラインレンダラ品質のイメージを生成できます。
Unreal Engine 5 のパストレーサーでは安定性、パフォーマンス、機能の完全性が向上していて、ヘア プリミティブや目のシェーダーモデルのサポート、サンプリング、BRDF モデル、光のトランスポート、サポートされているジオメトリなどでの改良も行われています。
以上となりますが、他にも多くの新機能があります。またプレビュー版リリース時には準備中だったドキュメントページも利用可能となっています。
その他の新機能やその詳細の確認はこちらから
新しい無料サンプル
UE5のリリースと同時に新しい無料サンプルが2つリリースされました。
Lyra Starter Game
Lyra Starter Game は、新しいゲームを作る際のスタート地点や実践的な学習リソースとして役立つように、UE5の開発と並行して構築されたサンプルゲームプレイプロジェクトです。今後も引き続き更新が行われる予定です。
Cityサンプル
無料のダウンロード可能なサンプルプロジェクト City サンプル には、The Matrix Awakens: An Unreal Engine 5 Experience の都市シーンが含まれています。
このプロジェクトは、ビル、車両、MetaHuman キャラクターの群衆がある完全な都市から構成されていて、Unreal Engine 5 での新しいシステムおよび改良されたシステムをどのように使用してエクスペリエンスを生み出しているかの実例を示しています。完全なサンプルに加えて、そのコンテンツを個別のパックとして提供しているので、たとえば車両だけをダウンロードすることもできます。
個別サンプルは以下のリンクからダウンロード可能です。
価格とシステム要件
Unreal Engine 5 はWindows 10 64-bit、macOS Big Sur、Linux Ubuntu 18.04が推奨動作環境となっています。
価格は、映画などのリニアコンテンツ及びカスタムプロジェクト、内部向けプロジェクトでの Unreal Engine の使用は無料です。ゲーム開発についても、多くの場合は無料になります。タイトルが100万ドル以上の収入を生み出した場合のみ、5% のロイヤリティが発生します。
最新版のダウンロードは、Epic Games Launcher か Github から可能となっています。
Epic Games Launcherのダウンロードはこちらから
コメント