2021年10月27日(現地時間)SideFXは、ノードベースの3DCGソフトウェアの最新アップデートである Houdini 19 をリリースしました。
Houdini 19 新機能と機能強化
このリリースでは、アーティスト指向のリアルタイムツールとリアルタイムフィジックスの継続的な開発により、Solaris によるルック開発・レイアウト・ライティング、Karma によるレンダリング、KineFX によるモーション編集とリターゲティングなどの新機能が追加されています。
モデリング
Houdini 19 の新ツールは、より多くのことを効率的に、より簡単にできるように設計されています。
■新しいCURVEツール
・BEZIER ハンドル:
新 Curve ツールには Bezier ハンドルに加え、複数ポイントを一度に編集したり、複数カーブを一度に描くことを可能にする機能が備わっています。このツールのインターフェイスは Python ステートによって構築されています。
・ラウンドコーナー:
コーナーの丸みを設定する機能も追加され、グループまたは個々にコントロールすることができます。。これらはベイクすることで、Bezier ハンドルの作業に戻ることができます。
・ CHAIN LINK:
この新しい Curve ツールのもう一つの特徴は、他のツールに組み込めることです。つぎの Chain Link の例では、ベジェ曲線とそのハンドルすべてがデジタルアセットに含まれています。
■SIDEFX LABS | POLY SLICE
このツールは、ポリゴンをポリゴンストリップやポリラインのにスライスします。大量のスライスの処理が可能で、ほとんどのデータを新しく作成されたジオメトリに渡すことが出来るので、UV などのアトリビュートが実行後に正しく動作します。
■TOPO TRANSFER
Topo-Transfer 機能では、非多様体ジオメトリをメインメッシュと一緒に入力することに対応しました。
目玉、歯茎、歯などの別ジオメトリをプロセスに含めることができ、ワンステップでジオメトリすべてを転送ができます。
■UV FLATTEN
異なる経路探索モードを切り替えることができるようになりました。
また、トポロジに応じて動作するミラー面が追加され、インタラクティブなカット&ソーイングがより簡単に行えるようになっています。
■UXの改善
・一人称視点ナビゲーション(First Person Navigation):
First Person Navigation は、WASDキーによる移動とMouseによる視点操作でシーン内でカメラ操作を可能にし、FPS ビデオゲームでのレベル移動と同じ要領で操作できます。ビューア内のジオメトリをダブルクリックすると、カメラがそのジオメトリの真正面にジャンプします。
・Python ステート情報パネル:
Houdini の多くのツールが Python ステートを使用するようになり、ホットキーやマウスボタンの使い方のや現在の設定を含む情報パネルを表示できるようになりました。これらのツールヒントは、ビューア用 Heads Up Display 情報オーバーレイ API の初期実装で、TDが独自ツールを構築する際にアクセスできます。
Solaris
この最新リリースでは、堅牢なシーンインポート、大規模セットドレッシングのための新しいブラシベースのワークフローなど、ルック開発、レイアウト、ライティングにおいての新機能や改善が多くあります。
■シーンインポート
Scene Import LOP はアートワークを Solaris に取り込む方法ですが、Houdini 19 ではこのワークフローを強化すると同時に、Karma ROP 内にも Scene Import を実装、オブジェクトレベルでの作業でも Karma レンダラに簡単にアクセスできるようになりました。
■Component Builder
Solaris で使用するアセット準備時に USD を最大限に活用するために必要な手順がいくつかありますが、Component Builder は、USDアセットを簡単に構成するためのノードのネットワークです。
■レイアウト
・アセットギャラリー:
アセットを適切に設定し、レイアウトアセットギャラリにロードすると 簡単にLayout LOP へ持ち込むことができます。
このギャラリーにより、アセットの読み込み、新しいブラシワークフローを使ったショットへの設定が容易になり、PDGを使えば、ギャラリーで使用する多くのアセットを短時間で処理することができます。
・ブラシワークフロー:
新しい Layout LOP は、シーンへの迅速なレイアウトに対応するのブラシワークフロー環境を提供しています。
この新しいツールには、アセットの配置と向き、ナッジのためのツールと、広いエリアを扱うためのフィルブラシが用意されています。また、インスタンス化を核として、ショットを配置するための効率的なアーキテクチャを提供しています。
Layout Brushes
Large Scene Layout
Fill Brush
・カスタムブラシ:
レイアウトアーティストの特定のニーズを満たすために、Layout LOP用のカスタムブラシを作成することができます。次の動画は、ツールビルダーがLayout環境でカスタムワークフローを設定する方法を確認することができるネットワークの例となります。
■Background Plate
Solaris に Background Plate LOP が追加され、CG要素の実写ショットへの統合が必要な VFX ワークフローのサポートが向上しました。
このノードはシャドウキャッチャーとして機能し、CG のジオメトリへ光をバウンスすることもできます。
■Snapshot | Background Render
Solaris の Snapshot Gallery で作業中でも、ショット作業を続けながらバックグラウンドでレンダリングを行うことができるようになりました。
また、これらのレンダリングをファームに送信することで、レンダリングプロセスをワークステーションから完全にオフロードすることもできます。
Karma Render
CPU版 Karma は製品として完成し、可能な限りMantra の機能セットと一致するようになりました。また、Houdini 19 には Karma XPU への早期アクセスが含まれています。Karma XPU と CPU は MaterialX シェーダにも対応、 VOP コンテキスト内でノードの構築が可能になっています。
■Karma CPU
Karma CPU 版は実制作対応となり、速度、メモリ使用量、精度のどれにおいても、すべてのレンダリングの要求に耐えることができるレベルに達しました。
新しいRender ROP を使って Mantra で行っていたように作業を行ったり、アセットをSolarisに持ち込んで、より完全なUSDベースのライティングワークフローを実現することもできます。また、Karmaは Hydra デリゲートとして使用も可能で、 USD View などの他のアプリケーションでも使用可能です。
■Karma XPU | Alpha
Karma XPU は、GPU と CPU の両方で動作し、高速に結果を得られる新しいレンダリングエンジンです。アルファテスト用にリリースされ、ユーザーからのフィードバックにより、急速に進歩することが期待されています。
■シェーダー| MaterialX
MaterialX は、2012年に Industrial Light & Magic 社より発表されたリッチマテリアルやルックデベロップメントコンテンツを表現するためのオープンスタンダードです。
Karma CPU と XPU の両方でサポートされており、プラットフォームに依存しない記述や、アプリケーションやレンダラ間での交換を可能にします。
■ヘアーとファー
新しいヘアシェーダは、Karma CPU と XPU の両方で動します。
Karma XPU ではグルーム評価のための高速レンダリングを、Karma CPU では最終レンダリングのための完全な機能セットを提供します。
■ライセンシング
Karmaは、Houdini 内部でも、Hydra デレゲートとして他のUSDベースのアプリケーション内部でも動作するようになったため、Houdini Core と FX にはライセンスを無料で提供、追加ライセンスは有料になる予定です。
この新価格は2023年1月1日から適用されます。それまでは、Mantra から移行のために、無料の Karma トークンが利用可能です。
なお、日本円価格は現在調整中です。
KineFX
KineFX は キャラクタモーションの制作・操作のためのプロシージャルなアプローチです。Houdini 19では、モーションキャプチャのリアルタイム取り込み、モーション編集ツール、物理のネイティブ対応に焦点が当てられています。
KineFX の完全体には、ダイナミック・リギングのための完全なフレームワークと、それを活用するための新しいアニメーション環境が含まれる予定です。
■Motion Blending
KineFX には強力なスケルトンブレンディング機能があり、モーションキャプチャ、キーフレームアニメーション、セカンダリーモーション、ラグドールエフェクトを1つのクリップにまとめることができます。
■Secondary Motion
モーションクリップにラグやオーバーシュートを追加しセカンダリーモーションを作ることができます。
また、ラグドールの物理現象を利用して、シミュレーションによるリグの操作も可能です。これらのエフェクトはリグにブレンドされ、最終的なシーケンスとしてエクスポートできます。
■Motion Capture
モーションキャプチャやフェイシャルキャプチャが KineFX に直接ストリーミングできるようになりました。
また、Houdini 19は、幅広いモーションキャプチャソリューションに対応、その結果を KineFX ツールセットを使ってキャラクタにリターゲットすることができます。
■Extract Key Pose
KineFX にモーションキャプチャを取り込むと、非常に高密度なデータを扱うことになります。Extract Key Pose を使えば、モーションの精度を維持したまま、クリップをより少ないポーズ数に減らすことができます。これにより、セカンダリーモーションの追加が容易になります。
■Export Motion
Houdini にモーションが取り込んだ後、他のアプリケーションと共有したい場合、Live Linkを使用して Houdini の KineFX から Unreal にモーションをストリーミングしたり、シーケンスを GLTF でエクスポートすることができます。
■Animation Controls
KineFX のリギングツールは進化し続けており、Houdini 19では Attach Joint Geometryノードによりリグにコントロールジオメトリの追加が容易になりました。
このノードは、ビューポートからの操作でリグにコントロールを素早く追加できるようにしています。
Character FX
Houdini 19 の CFX は、一から再設計された Vellum ベースの筋肉、組織、皮膚のシミュレーションシステムのベータリリースが導入されています。また、ヘアグルーミングツールセットの新しいバージョンは高速化され、リアルなコーミングを可能にするVellum物理ブラシを搭載しています。
■MUSCLES
筋肉、組織、皮膚のシミュレーションシステムは、Vellum ソルバのパワーとスピードを活用しています。
・インタラクティブワークフロー:
モーションキャプチャからのクリップに筋肉を取り付け、皮下部や皮膚を様々に定義できます。
パイプラインには、四面体トメッシュに変換した筋肉のジオメトリの読み込み、筋繊維のグルーミング、アニメーションしたボーンジオメトリの入力、筋肉の筋の線の描画、筋肉の張力のアニメーション、そして Vellum を使った全体のシミュレーションが含まれます。
■Groom
・ガイドヘアー:
新しいGuide Grooming ワークフローにより、キャラクタやクリーチャのグルーミングを、よりインタラクティブに行うことができるようになりました。ガイドヘアをまばらに配置し、ヘアの大まかな方向と長さを定義してから、Plant ツールによりガイドに基づいてヘアを埋めていきます。
Scatter モードでは、ガイドに応じたヘアの配置がより高速になり、。配置後、ヘアを移動、削除、カリング、結果のスカルプトなどが可能です。
・物理ブラシ:
Guide Groom では、物理現象を利用したヘアの配置も可能です。これは長い髪の毛に適しており、特にキャラクタのボディとの相互作用の定義に有効です。
いつでも、ライブシミュレーションに移行して、ヘアを適切に静止させることができ、ヘアを膨らませてからブラシワークフローを使ってキャラクタのヘアスタイルをスカルプトすることもできます。
Vellum
Vellumは、拡張されたPosition Based Dynamicsアプローチを採用したシミュレーションフレームワークです。布、髪、ソフトボディ、風船、穀物など、さまざまなものを作成するのに使用できます。PBDのアプローチの主な利点は、制御性、安定性、そして信憑性のある結果を素早く生み出すことができる点です。
Houdini 19 では Vellum に Fluids が追加されたことで完全な統合マルチソルバとなり、様々なビジュアルエフェクトショットの作成にさらに役立つようになりました。また Vellum はビューポートでインタラクティブに使用することもでき、アーティスト主導のワークフローをサポートします。
■UNIFIED Solver
流体が追加されたことで、Vellum は、リジッドボディ、クロス、グレイン、ワイヤ、流体を単一シミュレーションに組み合わせることができる完全な統合マルチソルバとなりました。
■Vellum ブラシ
Vellum ブラシは、髪の毛や布を動かすのに便利なブラシでしたが、今回、流体とグレインで使用できるようになりました。
これにより、シミュレーション開始点のアートディレクションや、有機的形状のモデリングが容易になりました。このブラシは GPU 上で動作します。
■Rigids & Plasticity
シェイプマッチングにより、Vellum シミュレーションに剛体要素を含めることが可能になりました。さらに塑性変形も可能になり、へこみを表現することもできます。
大規模エフェクトには Bullet ソルバが必要ですが、Vellum は小規模な統合シミュレーションに適したソリューションを提供します。
■Grains
Houdini 19で Vellum ソルバに流体が追加された結果、Grains も大幅に高速化されました。
次の動画は、Tim Van Helsdingen 氏よって制作された疑似CMです。この映像では、Vellum のすべてのツールが単一プロジェクトの中で連動しているとのことです。
PyroFX
Houdini 19 での Pyro FX は ゲーム開発と VFX アーティストの両方のためにリアルタイムソルバがより深く掘り下げられています。
UX面では、より多くのノードがSOPに移動し、専用の 3D ハンドルやビューポート体験が導入。また、Sparks や Shockwaves など、より複雑でハイエンドなツールセットが搭載されています。
■Minimal Solver
Minimum ソルバにより、PyroFX がGPU上で作成可能です。Houdini 19では、インスタンス化した Pyro ソースの使用が可能になり、アニメーションしたジオメトリにペアレント化することで、移動しながらシミュレーションを行うこともできるようになりました。
■FX形成
PyroFX にはシミュレーション中に強力な操作を可能にする Axis Force 、シミュレーションを引き延ばすことができる Velocity Scale 、既存モデリングツールでディテールを失うことなくボリュームを再形成することができる Volume Deform が追加されました。
Axis Force
Volume Deform
■Debris Source ツール
Debris Source ツールが大幅に強化され Packed Primitives にも対応しました。また、既存のシミュレーションに副次的なピースやデブリを追加することができるようになりました。
■アーティスト向けツール
よくある VFX タスクの設定サポートのため、Sparks、Muzzle Flash、Shockwavesのようなワークフローの合理化のためのツールを引き続き搭載しています。これらのツールは、複雑なネットワークを実制作ですぐに使用できるようになっています。
Sparks
Muzzle Flash
■ビューポートレンダー
Pyro FX のビューポートレンダリングが改善され、アンビエントオクルージョンの設定により、ライトがなくとも Pyro FX の評価が可能です。新しいフィルタリングアルゴリズムとともに、明るい部分へのブルーム効果が利用できます。
■SideFX Labs | Realtime FX など
SideFX Labs には、Vertex Animation Textures や Texture Sheet Export などのツールが含まれており、アーティストがビデオゲームへの リアルタイム FX を簡単に作成できるようになっています。 また、Pyro FX シミュレーションと連動する高度な File Cache ノードもあります。
Vertex Animation Textures
Texture Sheets
Advanced File Cache
他にも多くの新機能や改善があります。すべてのアップデート内容の確認はこちらから(英語)
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価格とシステム要件
Houdini 18.5 はWindows 8 (64 ビットのみ)以降(Windows 11テスト中)、Mac OSX 10.13 以降(64 ビットインテル CPU またはAppleSiliconMac搭載 )Linux: Ubuntu 18.04 + LTS (64ビット) / Debian 10.0+ (64ビット)/ RHEL 7+ (64ビット) / Fedora 28+ (64ビット) / Open SUSE 15+ (64ビット) / CentOS 7+ (64ビット) / Mint 19.3+ (64ビット) / Pop! 20.04 LTS に対応しています。
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