2021年8月1日(現地時間)にリリースされたVFX用のアセット管理ソフトウェア「das element」の紹介です。
das element とは
das element は、VFXのエレメントライブラリを管理・整理すことができるソフトウェアです。ScanlineVFXやMackevisionのVFXEditorとして仕事をした経歴をもつJonas Kluger氏によって作成されました。
エレメントライブラリは、日々のVFXワークフローにおいて重要な役割を果たしており、das element を使用し、ライブラリをきちんと構造化、整理することで、アーティストはショットに最適なエレメントを素早く見つけることが可能になります。
das elementでは、アセットをフォルダ(階層ツリー)構造と命名規則に基づいて保存されます。アセットの保存時にはプロキシファイルが作成され、サムネイルやクイックプレビューが可能です。VFXの要素だけでなく、テクスチャ、参照画像、インターネットからのクリップ、マットペインティングなども分類できます。
複数のライブラリを作成可能で、特定のプロジェクトのために個別のライブラリを作成することができ、作成したデータベースは、世界中のスタジオ全体で共有することができます。
このソフトウェアは、OpenEXR、DPX、PSD、QuickTime (.mov)など、一般的な画像や動画のファイル形式に対応しています。(現在、3Dファイルには対応していません。)また、完全にオフラインで動作し、インターネット接続を必要としないのも特徴です。
■AIを活用した自動タグ付け機能
エレメントを素早く見つけるためには、タグ付けされたエレメントが不可欠です。das elementでは、これを支援するために、自動タグ付け機能が搭載されています。
この機能は、VFXエレメントに特化して訓練された独自の機械学習モデルを使用しており、ファイヤーのようなメインカテゴリーだけでなく、フレーム、ロールオーバー、トーチなどの子カテゴリーも認識します。
この自動タグ付け機能は、あくまで支援機能であり、場合によっては間違っている場合があるためチェックする必要がありますが、AIモデルは時間とともに向上し、カテゴリーの数は常に増加していきます。
VFXの専門家が開発したソフトウェアなので、VFXスタジオの特定のニーズを理解しており、他にも便利な機能があります。あるエレメントがすでに含まれているかどうか判別し、必要に応じてその場所に導いてくれたり、エレメントがどこから来たのか、元のカラースペースは何だったのかを追跡することができたり、シーケンスにフレームが欠けている場合に警告してくれたりします。
アップデート情報
Version 1.1.4
Version 1.1.4では、以下のような多くの新機能が導入されています。ユーザーインターフェースは、より使いやすいように多くの改良がされ、より使いやすくなりました。また、ソフトウェアの安定性も大幅に向上しています。
■「意味のある(meaningful)」サムネイル
この機能では、内容を反映していないようなサムネイルではなく、ファイルシーケンスやムービーファイルのエレメントの代表的なフレームを自動的に選定し、サムネイルとして取り込むことができます。
■プロジェクトファイルをサポート
プロジェクトファイルのサポートが追加されました。カメラレポートやラインナップシートなどのPDFを取り込むことができるだけでなく、Nukeのテンプレート、After Effectsのプロジェクト、IllustratorやIndesignのファイルを整理することができます。
■サーバー上でのファイルベースのデータベースサポート
サーバー上でファイルベースのデータベースが使用できるようになりました。これにより、ITサポートの必要性が減り、ソフトウェアのセットアップが簡単かつ素早く行えます。
■新しい評価システム
エレメントの新しい評価システムにより、ユーザーは特定のエレメントを品質ごとにさらにグループ化することができまるようになりました。
Version 1.2
この最新リリースでは、チーム内でエレメントを共有する機能、HDRスフィアの整理、Python 2 & 3両方をサポートする新しいAPIなどが追加されています。
■チーム内でエレメントを共有するためのショッピングカート/コレクション
今回のリリースでは、ユーザー間のチームワークをサポートする新機能が追加され、より使いやすくなりました。
・コレクション:この機能では、エレメントを選択してコレクションにバンドルし、他のチームと共有することができます。コレクションは、ディスク上のカスタムフォルダ構造で整理でき、あらゆるタイプのエレメントを追加できます。。また、各ユーザーは、個人的なコレクションやお気に入りを作成することができ、数回のクリックで公開または非公開にすることも可能です。
・ショッピングカート:既存のすべてのライブラリをブラウズし、有望なエレメントを1つのバンドルコレクションにドラッグする機能が追加されました。この機能は、「ショッピングカート」と呼ばれています。ここでエレメントを集め、それらをすべて合成ソフトウェアや他のメディアプレーヤーにインポートして、高解像度のメディアファイルを確認することができます。
■Python 2 & 3両方をサポートする新しいAPI
Python 2と3の両方に対応したあたらしいAPIが追加されました。コマンドラインツール(CLI-Version)は、パイプラインTDとソフトウェア開発者がスタジオのパイプラインに緊密に統合するために必要なすべてのツールを提供するようになり、APIには、新しいエレメントの取り込みや既存のエレメントの更新などのタスクを達成するために使用できるサンプルスクリプトと同様に、分かりやすくシンプルなドキュメントが付属しています。これにより、”das element “をワークフローに統合する際に、より柔軟性を持たせることができます。
■HDRスフィアの整理
「sphere」という新しいメディアタイプが導入され、HDRスフィアの整理・分類が可能になりました。各スタジオは3Dアプリケーションの画像ベースのライティングのために、HDRスフィアの大規模なコレクションを構築しています。これらを異なるプロジェクトやサーバーに分散させることができます。
新しいスフィアビューアは、3Dシーンやマットペイントでどのように見えるかをより理解するために、HDRスフィアでナビゲートすることが可能です。
■その他
- 特定の日や日付の範囲に取り込まれたすべてのエレメントを取得できる新しいフィルタのように、UIに様々な改良が加えられ、マルチセレクションが調整されました。
- プロジェクトファイル(Nuke、After Effectsなど)の作業を改善するために、これらのアイテムをダブルクリックして、対応するソフトウェアで直接開くことができるようになりました。テンプレートでの作業がさらに速くなりました。
- ライブラリ構成をロックして、新しいエレメントの編集や取り込みを防止できるようになりました。この機能は、複数の施設間でライブラリを共有したい場合や、ライブラリへの変更を避けたい場合に非常に便利です。
- 現在のシステム利用状況を把握するために、新しいステータスバーが追加されました。エレメントのインジェストやトランスコードテンプレートの再レンダリング時に、システムの CPU やメモリー使用量、現在レンダーキューにあるジョブを確認できるようになりました。
- 最新の開発状況と今後予定されている機能について、より透明性を高めるために、「das element」のウェブサイト(www.das-element.com)に提案欄が追加されました。ユーザーは、新機能について自ら提案したり、他の人のアイデアをアップボートしたりすることができます。
価格とシステム要件
das elementは、Linux(Debian / Centos)/ Windows10(MacOS版は今後リリース予定)で利用できます。
standard、lite、cliの3種類のエディションがあり、それぞれの価格は次のようになります。
■standard:このスタンダード版は、デジタルメディアアセットの整理に役立つソフトウェアです。パイプラインやレンダリングテンプレートを設定したり、ライブラリを作成したり、フォルダ構造にファイルを取り込んだりすることができます。AI機能は、要素のタグ付けをサポートします。価格は、499ユーロ(約64000円)/年です。
■cli:CLIバージョンは、与えられたメディアファイルに対するラベルの予測を返すコマンドラインソフトウェアです(GUIはありません)。これは、レンダリング後の処理で、レンダリングにラベルを付けるために使用できます。価格は、399ユーロ(約51500円)/年です。
■lite:ライトバージョンは、アーティストがライブラリをブラウズするために使用します。複数のライブラリを読み込むことができます。ライブラリの作成、インジェスト、AI機能は使用できません。価格は、49ユーロ(約6300円)/年です。
注:このライトバージョンだけを手に入れても、あまり意味がなく、ライブラリをセットアップするには、少なくとも1つの標準バージョンが必要です。
(ライセンスは、サブスクリプション形式で、すべてのライセンスはフローティングライセンスとなります。)
それぞれのエディションの価格、機能比較、システム要件の確認はこちらから
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