2021年2月25日(現地時間)Blender Foundationは、2021年の最初のメジャーリリースとなるBlender 2.92 をリリースしました。
Blender 2.92 新機能ハイライト
このリリースでは、全く新しい主要な機能としてGeometry Nodes(ジオメトリノード)が導入されています。Geometry Nodesは、ノードインターフェースを介してジオメトリを操作できるカスタムモディファイアです。現在はポイントとアセットのスキャッタリングワークフローに焦点が当てられていますが、今後のリリースで機能が拡張される予定となっています。
その他のアップデートとしては、数回のクリックでインタラクティブにプリミティブを作成できる新しいプリミティブ追加ツールとパフォーマンスとUIの改善、Blenderのスカルプトワークスペースには、新しいグラブシルエットオプション、Multires Displacement Smearツールなどが追加されています。
また、Grease Pencilにはベジエ曲線のようにストロークを編集するオプションが追加され、ビデオ編集機能も強化されています。
以下詳しく新機能を見ていきたいと思います。
ジオメトリノード(Geometry Nodes)
新しいジオメトリノードエディタは、ノードベースのシステムを使用してメッシュを作成、操作するための新しい方法です。
■新しいモディファイア
モディファイアスタックのノードからプロパティをエクスポーズすることで、使いやすいインターフェイスのオリジナルのカスタムモディファイアを作成することができます。
■ポイントスキャッター
この最初のリリースでは、基礎的な作業、オブジェクトのスキャッタリングとインスタンス化に焦点が当てられています。
以下は、このリリースで使用することができるすべてのノードとなります。
- Attribute
Attribute Color Ramp Attribute Compare Attribute Fill Attribute Math Attribute Mix Attribute Randomize Attribute Vector Math
- Color
ColorRamp Combine RGB Separate RGB
- Geometry
Join Geometry Transform
- Input
Object Info Random Float Value Vector
- Mesh
Boolean Edge Split Subdivision Surface Triangulate
- Point
Align Rotation to Vector Point Distribute Point Instance Point Rotate Point Scale Point Separate Point Translate
- Utilities
Boolean Math Clamp Float Compare Map Range Math
- Vector
Combine XYZ Separate XYZ Vector Math
- Group
Make Group Ungroup
- Layout
Frame Reroute
このジオメトリノードのサンプルファイルがいくつか用意されています。サンプルのダウンロードはこちらから可能です。
また、すでに多くの方がジオメトリノードを使用した作品を公開しています。twitterで#Geometry Nodesで検索するとジオメトリノードの様々な使用例を確認することができます。
スカルプト
■Multires Displacement Smear
このツールは、色やトポロジースライドのスミアリングが機能するのと同じように、限界面(limit surface )上での多点変位のスミアリングが可能です。
このツールを使うと、頂点の変位値がトポロジーの上を「スライド」し、表面の詳細を塗りつぶしているような効果が得られます。
ブラシは座標の代わりに変位値を変更するだけなので、影響を受ける領域の総変位は変化しません。
つまり、このスミアリング効果は、トポロジーにアーチファクトを発生させることなく、同じ領域に何度も使用することができます。
pinch mode
ブラシをピンチモードまたは拡張スミアモードで使用すると、変位の違いが同じ領域に押し込まれ、ハードな トポロジーを挟むことなくサーフェス効果を利用することができます。
■Grab silhouette option
The Grab Brush has a new option to deform only the silhouette of the mesh without modifying the opposite side of the shape. #b3d #devfund https://t.co/Knbg5M8xtz pic.twitter.com/cHJo38h1gi
— Pablo Dobarro (@pablodp606) October 22, 2020
■Elastic Snake
このモードでは、ブラシ半径の内側に直接変位を適用するのではなく、ケルビネットを使用してメッシュを変形するので、スタイル化された形状のスケッチに最適です。
The Snake Hook brush now also supports elastic deformations, which is great for stylized shapes sketching. #b3d #devfund https://t.co/GedhwGv1Nn pic.twitter.com/TNyTLM0gSy
— Pablo Dobarro (@pablodp606) November 13, 2020
■Mesh Fairing
メッシュフェアリングは、選択されたFace Setの領域に可能な限り滑らかなジオメトリパッチを作成することで、メッシュの一部を視覚的に除去することができます。
Initial support for mesh fairing.
This tool can create an smooth as possible geometry patch from a Face Set. The same algorithm will be used to improve other existing tools. #b3d #devfund https://t.co/KCESNCbWLA pic.twitter.com/DjuXsmD6mI— Pablo Dobarro (@pablodp606) November 19, 2020
■その他のスカルプトのアップデート
- 変位消去メッシュフィルターの反転を許可(Allow inverting the Erase Displacement mesh filter)
- ペイントスタジオライトプリセット(Paint Studio Light preset)
- スカルプトセッション統計(Sculpt Session Stats)
- フェイスセット編集ジオメトリ削除操作(Face Set Edit delete Geometry operation)
- グラブツールの平面変形フォールオフ(Plane Deformation Fall-off for Grab Tool)
グリースペンシル(Grease Pencil)
ベジェ曲線を使用してグリースペンシルストロークを編集できるようになりました。
この機能は、3Dビューポートのヘッダーで、トグルボタン(Bézier curve icon)を使って曲線編集を有効にすることで使用できます。
■Trace Motion
「Trace Images to Grease Pencil」ツールは、白黒画像をトレースし、グリースペンシルのストロークを生成することができます。画像が白黒でない場合は、内部的に変換されます。
より良い結果を得るためには、画像を手動で白黒に変換し、画像の解像度を小さく保つようにする必要があります。
■Smooth
グリース ペンシル補間(interpolation)が改良され、さまざまなサイズのストロークに対応できるようになりました。以前は、長いストロークはカットされていましたが、新しいアルゴリズムでは、極端な形状でも正確にフィットするようにストロークが適切に引き伸ばされます。
■その他のグリースペンシルのアップデート
- Joinオペレータの改善(Improved Join Operator)
- 補間のための改良された方法(Improved Method for Interpolation)
- カッターツールの新しいフラットキャップ(Cutter Tool New Flat Caps)
- オートマージストローク(Auto-merge Strokes)
- テクスチャ モディファイアのドットとストロークでテクスチャを回転(Rotate textures in Dots and Strokes in Texture modifier)
- Ctrl+Lで効果をコピー(Copy Effects with Ctrl+L)
- 頂点カラーデータのリセット(Reset Vertex Color Data)
- ベイクアニメーションを選択したフレームに制限(Limit Bake Animation to Selected Frames)
- レイヤーオニオンスキンをデフォルトで有効(Layer Onion Skin Enabled by Default)
- 描画モードの補間ツール(Interpolate Tools in Draw Mode)
グリースペンシルのすべてのアップデート内容の確認はこちらから
新しいオブジェクト追加ツール
2回のクリックでプリミティブをインタラクティブに追加することが可能になりました。
レンダリング
■Cryptomatte
合成用のマットを効率よく作成するために、CryptomatteがEeveeでも使用できるようになりました。この設定は、EeveeとCyclesで共有しています。
■シェーダーのAOV
コンポジットに欠かせない任意の出力変数(Arbitrary Output Variables)が、Eeveeでレンダリングする際にも使えるようになりました。シェーダーのAOV設定もCyclesと共有されています。
■ボリュームレンダリング
ボリュームレンダリングは、sparse NanoVDBグリッドを使用することで、メモリ効率が大幅に向上します。
NanoVDB(https://www.aswf.io/nanovdb/)は、プラットフォームに依存しないスパースボリュームデータ構造であり、GPUでOpenVDBボリュームを使用できるようにします。今回のパッチは、これをCyclesでのボリュームレンダリングに使用し、以前の高密度3Dテクスチャの使用を置き換えているということです。
詳細はこちらをご覧ください。
■NVIDIA RTX
シミュレーション
シミュレーションの新しい方法であるAPICが導入されました。
FLIPが、空気中に多数の粒子が分散している非常に派手なシミュレーションを生成するのに対してAPICは、より安定したシミュレーションを生成します。また、APICでは液体内の渦は、FLIPよりもよく保存されます。
■その他のアップデート
- 新しい粘度メソッド(New Viscosity Method
- 粒子サンプリングの改善(Improved particle sampling
- 再生速度の向上とキャッシュサイズの縮小(Faster Playback and Smaller Cache Sizes
- クロスが頂点グループを使用してオブジェクトの衝突から面を除外をサポート(Cloth now supports excluding faces from object collision using a vertex group
- モディファイアを削除せずにコライダーを無効化(Disable colliders without removing the modifier
コンポジター
■Exposure(露光) node
コンポジターの新しい露光ノードに新しい Exposure node(露光ノード)が追加されました。以下の画像で、左側には露光ノードの結果、右側にはraw imageが表示されています。
他にもコンポジターには、ファイル出力ノードにレンダーとして保存するオプションの追加やKeying Node(キーイングノード)でのより良い事前乗算(Premultiplication)が可能になっています。
アニメーション
- より良いオイラー不連続フィルター(Better Euler Discontinuity Filter)
- コンストレイント用のカスタムオブジェクトスペース(Custom Object Space for Constraints)
- 新しいNLAストリップでは、同期の長さ(Sync Length)が有効になります(New NLA strips will have Sync Length enabled.)
- B-Bone Preserve Volumeの改善(Improvements on B-Bone Preserve Volume.)
- モディファイアのFCurvesがNLAストリップに固定されて描画されるようになりました。(FCurves with Modifiers are now drawn anchored to the NLA strip.)
- ウェイトペインティングの自動正規化の改善(Weight Painting Auto-Normalize Improvements.)
- ベイクアクションオプションのクリーンアップ(Bake Action Optional Cleanup)
- ユーザーインターフェイスの改善(User Interface Improvements.)
その他のアップデート
- 複数のトラックのトラッキングの大幅な高速化
- VSEメディアトランスフォーム(VSE Media transform )の再設計
- シミュレーションキャッシュライブラリのオーバーライド
- アウトライナで選択可能なオブジェクトをフィルタリング
- Cyclesマルチスレッドエクスポート
- VSEテキストストリップの背景の長方形オプション
- About と StartupScriptExecution ダイアログの改善
- ライブラリオーバーライドはNLAをサポート
- Intel Iris と Xe GPU OpenCLサポート
- アウトライナをプロパティエディタと同期
- アウトライナでライブラリのオーバーライドを一覧表示
- ビデオシーケンサーのテーマの交互の行の色
- ドラッグ中にパネルを垂直方向に拘束
- ノードグループソケットリストを改善
2.92で実装された変更点の全リストはこちらから確認することができます。
Blender 2.92 のダウンロードはこちらから
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